(約8000字)
・インプレス「改造バカ、アウトランダーPHEVに乗ってデュアルXeon機を野外で使う 〜1,500W電源搭載車PC Watch的活用術(ジンギスカン+バンジージャンプ付き)」(2014/10/15)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20141015_668958.html
> ランチはジンギスカン! 羊を見た後にジンギスカン!
> 全力でジンギスカンを食らう。4K(3,840×2,160ドット)で撮影。
> YouTubeの設定ボタンを押して、「2160p 4K」を選択すると、4Kで再生されます。
> 例えば自然災害で地形などに変化が生じた被災地に、アウトランダーPHEVで駆けつける状況。
・羊を見た後にジンギスカン!(インプレス)
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/chobi/20130711_607231.html
・羊を見ながらジンギスカン!(食べログ 北海道)
http://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010303/1000342/
東日本大震災以降、(大きい小さいはありますが)災害というものが頭をよぎらない日はないといえるほど、悩ましい問題です。とはいえ、何でもかんでも安易に災害対応に結びつけるのもまた、あまりよいことではないといえます。では、なぜ以下のように述べたかといいますと…
・[2947]
> ※避難所で手書きの壁新聞が役に立つように、いざという時のための技術の維持として「ピタネット」も温存しておいてよいのかもしれません。
災害時といえども、日常の延長としてしか活動できない面もあるでしょう。専門性が求められる内容では特に、そうではないかと思います。普通の人では代わりが利かない、つまり「人海戦術」というものをとることができないのが、専門家の仕事です。このような人的な制約がある限り、機材だけを増やしても間に合わないということです。
「ピタネット」というのは、まさしく指令という専門家としての技能ですから、その大部分がシステムによって代替されても、技能の維持に努めることが望まれてくるわけです。普段使わないものが、非常時に使えるはずがありません。
そんなところから、「ピタネット」についても、もっと日常のものとして考えることができないか、と思ったわけです。
・日立評論「2013年度 日立技術の展望」「交通」(2013/1)
http://digital.hitachihyoron.com/pdf/2013/01/2013_01_rail.pdf
> 7 石勝線運行管理システムの新設
> 列車集中制御装置の老朽更新に伴って2012年4月に新設を完了
> (2)運行表示盤に代わる大型液晶モニタによる指令室の省スペース化
> (3)電子式ピタネットシステム〔付せん貼(ちょう)付〕の採用
> (4)予想ダイヤスジドラッグによる複数駅開閉塞順序変更の実現
見落としていました。さすがジンギスカン、いえ、自然環境としても経営環境としても条件が厳しい北海道だけあって、東日本とは違う形で進化しているわけですね。いろいろな事情や形態で「ピタネット」を「温存」している会社や線区も、当然あるのでした。CTCがあってもPRCがなければ、CTCの表示盤(材質がスチールであれば)にマグネットを貼って、つまり手作業で列番を「表示」するという、東京圏とは異なった背景からの「ピタネット」が、きっときのうまで(2012年4月まで)現役だったのではないでしょうか。
・ウィキペディア「石勝線」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E5%8B%9D%E7%B7%9A
※石勝線(せきしょうせん)は全線が単線で、12の駅と11の信号場があり、全駅で交換可能となっているとのことです。歴史的には、大正初期には複線化したものの、昭和初期には逆に単線化したということで、用地の取得が問題にならない(せっかく複線化したのを単線に戻しても用地がもったいなくない、それよりも距離ゆえ、維持費のほうが問題になるという)北海道ならではという印象を受けます。にわか調べで恐縮ですが、もっといろいろ、東京圏では想像できないような事情がたくさんあることでしょう。
そうした背景から「電子式ピタネットシステム」を実装するにいたったのだろうと思いますが、いろいろ示唆に富む話だと思います。
むしろ、タッチ操作に対応したディスプレイの低廉化・高信頼化・大画面化によって、複数人で囲むテーブルトップ端末(大型のタブレット端末)のような形で、改めて「ピタネット」していくのも、方法の一つといえます。
・エム・ティ・プランニング「大型メディアテーブル」
http://www.mt-planning.com/works/media_table.html
例えば、昔であれば当然、図面(駅や線路、信号の位置を示した、いわゆる配線図)を机に広げて、というところ、CTCになった途端に、表示盤というものを構築する都合上、やむなく表示面がむっくりと、垂直に立ち上がったわけです。本来、地面に水平に走っている線路(の図面)を、垂直に立ち上げて見るというのは、直感に反します。見てわからないということはなくても、無意識のうちに追加の情報処理(垂直の表示盤を水平に置き直す、あるいは、実際の駅や線区での自分の体験を思い出し、頭の中で列車を運転する)を頭の中で行なう必要が生じているはずです。
・「むっくり」
http://www.weblio.jp/content/%E3%82%80%E3%81%A3%E3%81%8F%E3%82%8A
※博物館によくある、広大なジオラマ(模型)の中にランプが仕込んであって、手前のボタンを押すとランプが光るアレ、私的(わたしてき)に理屈抜きで大好きなのですが(逆に、好きなだけなので、その程度の話と受け止めていただければと思います)、アレも、きちんと水平になっていますが、かなり場所をとります。CTCの表示盤が垂直になってしまったのは、しかたのないことでもあります。ただ、小規模な線区や駅の扱い所、まさに「くりはら田園鉄道」では、表示部と操作部が一体的で、表示部も45度くらいの傾斜になっていると思います。これはこれで直感的だと思います。
なお、ディスプレイがCRT(ブラウン管)であった時代には、ユーザ(作業者)の身体的負担(疲労など)も大きく、VDT作業に関する指針がとりわけ大きな意味を持っていました。CRTを机に埋め込むという設置方法がありますが、PRCの時代になってCTCセンターなどでそれをやっていたとしても、上述のような認知上の負荷(垂直と水平に関する)を考えていたとは限らないでしょう。
・日本クリエイタ「ドライアイ予防デスク エルゴデスク誕生物語」
http://www.nihon-creator.com/tanjyou/tanjyou.htm
> いまから思えば、松本にとってエルゴデスクの開発は「プロジェクトX」であった。かの有名な「プロジェクトX」とは、月とスッポンだが、ひそみに倣って、それ風に記してみる。
> ところが、彼女たちから、「目が痛くなった。」「ショボショボする。」とか、「画面から放射能が出ていると聞いた。」などという声が出てきたのである。しかも、「タイプライタのときは目が痛くなかった。」という。「なぜだ?」。彼は原因究明を急いだ。
> (解決策がみつかるまで、彼ら設計陣の努力と、時間の積み重ねが果てしもなく続けられた。と書きたかったが、あまりにも簡単だったので「プロジェクトX」風になりません。トホホ)
・「…のひそみにならう」
http://ejje.weblio.jp/content/%E3%81%B2%E3%81%9D%E3%81%BF%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%86
・厚生労働省 労働基準局安全衛生部労働衛生課「快適なVDT作業のために」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/040325-1.html
> VDT作業の種類
> ノート型機器等については、マウスやテンキーなどを利用できるようにしてください。
タッチパッドやポインティング・スティック、カーソルキーやスペースキーの連打はいかんというお達しです。マウスの長時間連用も手首の負担になりますので、メニュー項目の選択なども、マウスでなく専用のキーやテンキーで行なうことが望まれていたかと思います。ご興味があれば、銀行や郵便局、みどりの窓口でこっそり観察すると、いろいろなことがわかるでしょう。
作業効率の面でも、マウスの「コールドスタート」といえる、マウスから手を放している状態からの操作では、「カーソルはどこへいった?」となり、3〜5秒ほどのロスが生じます。この間に時速80キロの電車が66〜110メートルも進んでしまうと考えれば、大きなロスといえます。キーであれば、手を放している状態からでも1秒以内に操作を完了できます。在来線の電車1両分ちょっと(22メートル)、ですね。
と、ちょうどこんなリリースが出ておりました。
・ゆうちょ銀行「金融サービスご提案ツール「テーブル型光タッチディスプレイ端末」の導入〜お客さまからのご相談に、「分かりやすく」・「快適」にお答えします〜」(2014/10/8)
http://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/press/2014/abt_prs_id001051.html
> 株式会社ゆうちょ銀行は、シャープ株式会社が開発した、金融サービスご提案ツール「テーブル型光タッチディスプレイ端末」を2014年10月8日(水)から、大阪支店、茨木店(大阪府)、神戸店(兵庫県)の資産運用窓口に試行設置します。
> ○ ディスプレイ32インチ
> 3840×2160画素
ジンギスカンの動画と同じ「4K」ですね。みどりの窓口としては、銀行であり郵便局な「ゆうちょ銀行」に、先を越された格好です。とはいえ、「操作を1秒でも速く」という出納や発券の窓口と、「複雑な説明をわかりやすく」という相談の窓口とでは、かなり性質が違います。ユーザーインターフェースに、1個ですべてに対応できる万能な設計というものはありえず、個々のユースケースに応じて適切に選択したり、作り込んでいったりすることが重要だということが実感できます。
「ピタネット」というものは、おそらくはCTC以後のもので、ホワイトボードやシート状のマグネットが普及してからのものと思われますから、「ピタネット」を水平でやろうという発想は、なかなか出てきにくいと思います。何も考えず、CTCの表示盤が垂直だから、あるいは大きなホワイトボードはキャスターつきの脚がついていて垂直だから、ということで、垂直のまま「ピタネット」してきたのでしょう。
企業での黒板からホワイトボードへの世代交代がいつごろか、といいますと、ウィキペディアによれば「1985年ごろ」とのことです。本当でしょうか。
※新聞のデータベースや縮刷版を漁って、春闘の一斉回答が初めてホワイトボードに書かれた年を調べれば、一つの目安になりそうです。(しかも、業界ごとの早い遅いまでわかってしまいそうです。)ご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひお調べください。
・ウィキペディア「ホワイトボード」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89
・マグエックス「会社案内」
http://www.magx.co.jp/company.html
> プラマグの研究開発を進めるに当たり、各原材料メーカー及びプラスチック成形機メーカーに協力を要請、幸いにして各メーカーにおけるプラマグに対する興味と関心のもと、惜しみない、且つ熱心な研究開発協力により国内で初めての本格的なプラスチック・マグネットを誕生させることができました。
・ネオマグ「「永久磁石の歴史と磁気科学の発展」年表」
http://www.neomag.jp/magnet_history/history_top.html
> 1972年〜1974年 「サマリウム・コバルト(SmCo5)焼結磁石、ボンド磁石」の工業化(日本)
ということは、CTC以後まもなく、黒板の時代に「ピタネット」が始まっていたかもしれないということですね。すると、いよいよもって、「水平なピタネット」というものは考えにくかったということになるでしょう。他方で、当時としては、いまでいえば「ライフハック」な界隈の人たちが最新のガジェットで遊ぶような、一種の「たしなみ」としての側面(新しいものをいち早く取り入れたいというキモチ)もあったのかもしれません。いま、「昔話」として「ピタネット」を語るだけでなく、当時どうだったのか、という視点からも見ていくことが重要といえます。
テーブルトップ端末で「水平なピタネット」をやってみるというのは、ATOSの時代でも案外、有効なことかもしれません。もちろん、北海道と東日本ではダイヤの密度がけた違いですが、群管理といいますか、複数の列車の動きを抽象化して、大まかな「方針」のようなものを入力したり、その結果をシミュレートしたりするためのユーザーインターフェースとしては、いまもなお「ピタネット」がベストであるのかもしれません。(いいかえれば、状況を監視するためのユーザーインターフェースと、操作・入力するためのユーザーインターフェースとでは、求められるものが異なるということです。)
※…と、私が検討してもしかたないのですが、現場の方はどうお考えになるでしょうか。
鉄道に限らず、業務系のシステムではユーザーインターフェースの開発に専門のチームを置かない開発態勢となる(ならざるをえない)ことが多く、初期のATOSでの「ドラッグできないマウス」のような、その時点その時点での一般のパソコンにも劣るようなユーザーインターフェースしか実現できないことが、結構あります。(「ドラッグできないマウス」のケースでは、マウスのドライバーをきちんと扱えなければ、ポイントしてクリックという最低限の動作=旧来のジョイスティックに準じた動作しかサポートできなかったのです。)
逆に、一般向けのパソコンでは、ユーザーインターフェースのよしあしは、サポートのコストに直結しますので(業務系なら「マニュアルを読め」と。使う側も仕事なので、マニュアルをあてにします。一般向けでは、こうはいきません)、専門のチームが徹底的に作り込みます。製品の開発だけでなく、その前の段階となる基礎研究にも、熱心に取り組まれています。マイクロソフトでいえば、Kinect(キネクト)のようなものも、その一例です。東芝では、ジェスチャーによって操作するユーザーインターフェースが開発されています。これらが実際にエンドユーザ、特に一般向けのボリュームゾーンに普及していくのは相当、先のことでしょうが、専門のチームがあるということは、そこに多くの知見の蓄積があるということで、これは目先の製品の開発においてもたいへん強力なことといえます。
・Googleスカラー「Arrigo Benedetti」
http://scholar.google.com/citations?user=s6DjmwgAAAAJ&hl=en
> Principal Systems Architect, Microsoft Kinect team
・東芝レビュー「自然な手振りによるハンドジェスチャ ユーザーインタフェース」(2012/6)
http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2012/06/67_06pdf/f03.pdf
※なお、このサイトでは「ユーザーインターフェース(UI)」と表記します。このフォーラムでは「UI」と書いても、現時点ではキーワードとして拾えないため、カタカナで書きます。
この一編だけをもって、東芝ならできる! とまではいいませんが、鉄道システムを手がけるメーカーの中ではもっとも多く(グローバルに見ても)、ユーザーインターフェースに関する蓄積があるメーカーであるのは間違いありません。
※個人的な偏見ですが、大画面(≒既存技術の高度化・高付加価値化という意味で)の三菱、アルゴリズムやアーキテクチャー(≒原理、コンピューターそのものの基礎研究)の日立、ユーザーインターフェース(Rupo以来の日本語入力や携帯電話、DynaBook、エレベーターの操作盤なども含め)の東芝、という各社各様の(一長一短ともいえる)得意分野があろうかと思います。
業務系のシステムで使いやすいユーザーインターフェースを実現するには、二つの方法があり、業務にあわせてとことん作り込む方法と、市販の製品をそのまま採用する方法とがあります。とはいえ、現実的には機器の信頼性などの観点から前者になったり、いろいろな注文に応えようとして前者にしたりと、とにかく前者になることが多いとみられます。
そして、とことん作り込みできればまだいいものの、必ずしもそうはいかず、むしろいかないことが多く、例えば、とあるデータベースソフトのマクロ言語で、やたら単機能なボタンが多数、並ぶ画面を作ってしまったり、色の使い方が無秩序であったり、Windowsを採用する場合でも、Windowsの標準的な操作体系(コード、いわゆる文法)とはかけ離れたものになったりしていくのです。
※http://tht.sblo.jp/article/1048443.html
※http://tht.sblo.jp/article/2761276.html
※http://tht.sblo.jp/article/225017.html
業務システムというものが基本的に「特注」で「独自仕様」である以上は、しかたないといえばしかたないのですが、エンドユーザ(システムを使う側の従業員)が一般のパソコンで習熟した操作がそのまま行なえない、パソコンを導入する前からの仕事の流れや書類の様式が引き継がれない(無理に引き継ぐほうにも問題はありますが)といったことで、システム導入の効果がなかなかあがらないということは、これまで多かったのではないでしょうか。
|