フォーラム - neorail.jp R16
発行:2014/10/23
更新:2018/9/3

[2963]

【貨物線のいま】

貨物線のいま(3) 奥ゆかしい国際展示場


(約6000字)

 [2962]の続きで貨物線の話題です。そして、貨物線の話題ではありますが、奥ゆかしい旅客流動の話([2911])でもあります。

 りんかい線と京葉線の直通運転を望む声が大きくなっております。

・千葉市「市議会における質問と答弁:交通政策(h25408)」(2014/2/26)
 http://www.city.chiba.jp/somu/shichokoshitsu/hisho/acca-h25408.html

 > これまで、JR京葉線とりんかい線の相互直通運転について、平成13年から継続的に要望活動を行っているが、ICカードによる運賃徴収が課題となり、実現に至っていない。
 > 今後は、沿線の関係自治体と協力して、新木場駅や東京駅での乗換利用者数の実態調査やアンケート調査などを検討している。
 > さらに、この調査を踏まえ、直通運転による効果を検証するための「ホームライナー号」の試行運行を、鉄道事業者と協力の上、平成28年度を目途に実施したいと考えている。
 > 将来的には、ICカードの課題を解決し、恒久的にJR京葉線とりんかい線の相互直通運転を目指すものである。

 JR側から「Suicaが(PASMOが)云々」と回答されたというだけで、もはや運賃制度しか見えなくなっているといえます。江東区と同じ([2955])で、視野が狭すぎるといわざるをえません。

・東京新聞「京葉線−りんかい線 直通運転実現を 千葉市など利用実態調査」(2014/10/15)
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20141015/CK2014101502000164.html

 > 千葉、浦安、船橋など沿線各市で構成する協議会は、両線が乗り入れている新木場駅(東京都江東区)と東京駅で十六、十九両日に利用実態調査を実施する。
 > 調査は民間調査会社に委託。十六、十九両日に新木場駅で乗り継ぎ客を対象に調査票をそれぞれ八千部ずつ配布するほか、東京駅で京葉線から山手線で渋谷、新宿方面に乗り継ぐ客を対象にウェブ上でも実施する。
 > 調査内容は、鉄道の利用目的、乗り換える路線、乗り換えにかかる時間、乗り換える場合の問題点など。
 > その後、調査結果をJR東日本など関連会社に示し、直通運転実現の追い風にしたい考え。

・千葉市「JR京葉線・東京臨海高速鉄道りんかい線の相互直通運転に係る利用実態他調査業務委託の案件情報」(2014/8/1)
 http://www.city.chiba.jp/toshi/toshi/kotsu/sougochokutsu-hacchu.html

 > 履行期間 契約締結日の翌日 〜 平成27年3月25日
 > 分類 土木コンサルタント

 > 主な委託業務は以下のとおり。
 > 1.現状把握
 > 2.乗り継ぎ実態の把握
 > 3.相互直通運転による利用動向分析
 > 4.運賃等に関する検討
 > 5.各種会議等の運営
 > 6.とりまとめ

※折りしも、(よほどの火急の非常事態:噴火などが起きない限りは)2015年1月にもまとまるとみられる「次期答申」に向けて、千葉市(や、沿線の自治体)として一定の発言力を確保しておきたいというねらい(焦り?)もあるのではないかと思いますが、ちょっと間に合わない感じがあります。とはいえ、データが集まることは貴重なことだと思います。早く結果を見たいですね…といっても、年度末(もしくは4月1日)にならないと出てこないという。そして、報告書をほぼまとめたところで「次期答申」が出てきて、てんやわんやという。え゛ー。

・「てんやわんや」
 http://thesaurus.weblio.jp/content/%E3%81%A6%E3%82%93%E3%82%84%E3%82%8F%E3%82%93%E3%82%84

 京葉線とりんかい線の直通運転ができない(現にされていない)のは、運賃の制度のため(だけ)ではありません。そんなもの(※)、北千住−亀有間や白金高輪などを見ればわかるように、いざとなればどうにでもできます。根本の問題は、依然として混雑率が高いこと、駅施設での旅客の滞留できる容量が限界に近いことといった、旅客流動にあるとみられます。

※とはいえ、鉄道事業者が自ら「混雑率」に言及することは避けられる傾向がある(言及すると、いろいろ矛盾が出てくる:いわゆる「幅広車両の投入」で改善したのではなかったか、あるいは「お客さま」に向かって「電車に乗るな」と言うのか、など)ようで、自治体から要望や問い合わせがあっても、上述のような「真の問題」を教えてくれるということは、たぶんないんだろうと思います。(あくまで推測ですが。)

・国土交通省「路線別の最混雑区間輸送量及び輸送力(片道最混雑1時間)」(2001/1/27)
 http://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha00/koho00/tosin/kotumo/images/kotumo3.pdf

 現状のまま(輸送力が同一となるダイヤで)京葉線とりんかい線が直通したら、どうなるでしょうか。いま、新木場駅で京葉線ホームに降り立ち、JRの改札を出て、りんかい線の改札を入り、そしてりんかい線のホームで電車に乗り込むという、時間方向に引き伸ばされた旅客流動(※)が、葛西臨海公園や舞浜のホーム上に凝縮して放り込まれるのです。これはこわいことです。

※旅客としては「通路を歩かされている」ということにほかなりませんが、施設の設計上は、このような乗り換えの経路上での滞留も計算にいれて、ようやくギリギリで(? 十分なマージンはとってありましょうが、それでもかなりギリギリなのではないでしょうか)成り立っているのだと思います。

※そういう視点では、武蔵小杉も、ホームの狭さを連絡通路の長さで補っている(降車客をとりあえず連絡通路へ追いやることで、ホーム上の安全を確保している)といえます。実に奥ゆかしい([2911])ですね。

 さらに、北朝霞([2911])と事情は同じで、この事態(ホーム上に旅客があふれる)を解決するまでは、列車の増発もできない、すなわち、りんかい線に直通する分、京葉線の東京へ向かう列車を減便しなければならなくなるということです。すると今度は、東京へ向かう列車を待つ旅客が新木場の手前の駅のホームにどんどん滞留していくことになり、ますますホーム上が混雑するという、負のスパイラルに陥ってしまいます。だから直通しない(できない)んですね。根本的には、新木場−新浦安間の複々線化(によるホームの増設)や、新浦安−津田沼間の連絡線の事業化(※)を待たないといけないという話になります。順当に進めば、次の15年(「次期答申」)で開業を目指すことになろうかとみられます。

※いったいどうなるのでしょう。ルートも工期も工法もどうにでもできるとして、スキームだけは、開業後の運賃などにも影響しますので、利用客としても気になるところです。デフォルトでは、「おおさか東線」や「相鉄・JR直通線」のような、JR旅客会社が主体の事業でありつつ、建設費用の負担を鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に負わせるという、将来的には真っ白になるかもしれないにもかかわらず、もはや誰も驚かなくなった上下分離方式となるのだろうとは思いますが、それで大丈夫なんでしょうか。30年後や50年後が心配です。

※さらには、東京臨海高速鉄道(TWR)をいまさらながら第三種事業者化し、新しい連絡線などを整備・保有させる(とともに、新たな沿線自治体となる浦安市、船橋市、それに江戸川区、葛飾区など=後述=から出資を受ける)といった驚きの、とはいえ、ただちに白いとまではいえない手法が「開発」されていくのかもしれません。これでも、江東区のLRT構想よりは、よほど手堅いと思います。…と、大それた余談でした。もっとも、建設主体や施設保有者がどうなろうとも、運行系統の上では「りんかい線の津田沼延伸」と表現でき、たいへんわかりやすいと思います。「東急大井町線の溝の口延伸」と似た話ですね。京葉線の複々線化ではなく、あくまで「りんかい線の延伸」であるところがミソといえます。

 旅客流動の面では、りんかい線の側でも、京葉線との直通を実現するには、例えば国際展示場駅を2面4線化して混雑を緩和しつつ、緩急接続にも対応する(優等運転を行なうことで列車を増発し、路線としての輸送力を増強する=ホーム上に旅客を滞留させず、とにかく列車に乗せる、いわば「線路上に滞留」させないといけない)といった施策も必要(※)になってくるとみられます。同様の工事としては、東西線の南砂町での工法などが応用できるとみられ、建設会社としては当然、工法を売り込みたいと考えるところでしょう。

※あったほうが便利(≒してほしい)という意味でなく、これをしないと旅客をさばけないので直通できないという、クリティカルな話として。

・個人のブログ「東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2014年5月2日取材)」(2014/8/30)
 http://mirai-report.com/blog-entry-1316.html

 と、特段、目新しい工法が使われるというわけでもないのでしょうか。

・東京メトロ「南砂町駅の改良工事を分かりやすくご紹介します 「メトロ・スナチカ(工事インフォメーションセンター)オープン」」(2014/3/3)
 http://www.tokyometro.jp/news/2014/pdf/metroNews20140303_minamisunamachipr.pdf

 > メトロ・スナチカでは、南砂町駅改良工事の工事内容及び工事工程等について、年表やジオラマシアター、はたらくクルマ等の写真パネル・映像・模型等の展示物によりわかりやすくご紹介します。また、沿線のお客様に東京メトロに親しんでいただけるよう、地下鉄シミュレーターの体験コーナーやキッズコーナー、東西線と東京オリンピック(昭和39年)、東西線における他の改良工事、砂町の今昔等の歴史コーナー、鉄道模型展示コーナーを設置します。

 > 改良工事や砂町の歴史を身近に感じていただくことで、沿線のお客様とともに歩んできた東京メトロの取組みについてご理解を深めていただくきっかけとなればと考えています。

 傍題ですが、広報としても、パブリック・リレーション(PR)としても、理想的な取り組みですね。JRでは、なかなか常設で展示をしようという話は少ない(記念イベントなどで短期間で終わってしまう)ようですが、もう少し本格的に取り組んでもよいのではないでしょうか。(東京駅など特別なものだけでなく、もっとフツーの、日常のものや工事を、しっかり広報してもらいたいなぁ、という希望でございます。)

 > (完成予定年度)平成32年度
 > (総投資額)約340億円

 工期は約7年ですね。国際展示場で同種の工事をする場合、工期はほぼ同じ、費用は、幅が2倍として2倍、上部が空地ではないため余分にかかるとして1.2倍(2割増)、資材や人件費の高騰で1.2倍(2割増)とすると、約979億円と試算することができます。(あくまで「私算」です。)本当でしょうか。

・内閣府「様々な指標からみた公共投資の現状」(2014/6/20)
 http://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2014/0620/topics_032.pdf

 これまで、年3%くらいのペースで「土木用資材価格」が上昇しているように読み取れます。さすがに2割増とするのは、値上がりしすぎでした。

 別の方法でやり直してみましょう。費用の詳細はブラックボックスのまま、施工する容積によらない「固定費」が3割、容積に応じて増える「変動費」が7割で、容積が2倍、上部が空地でないので固定費が1.2倍として、これを7年で割り、毎年3%ずつ値上がりするとしますと、約655億円と出てきます。もっと、本当でしょうか。(あくまで「私算」です。)

 我こそはという土木な方は、もっと精緻な試算をしてみてください。幅が2倍で2倍、というのがラフすぎると思います。固定費と変動費の比率も妥当か、私にはよくわかりません。工期を延ばしたり縮めたり、あるいは単価が下がり始めてから着工すれば、安くなるかもしれません。本当に約655億円くらい(南砂町の単純2倍よりは少し「勉強」しました、という印象が出る額)なら、上記のような計算方法をまったく知らない人から見ればとても「お買い得」に見え、もっと詳しい計算方法を知っている人が見ても悪い気分はせず、いわゆる「ゴーサイン」が出るのではないでしょうか。

※2020年を過ぎたら本当に下がり始めるんでしょうか。10年間くらい上がる一方なら、なるべく早く着工したほうが安いということになります…というと、巷の不動産屋さんみたいですけれども。上述の約655億円というのは、ただちに着工した場合の額で、同じ計算方法で5年後に着工したとすると約759億円となり、約104億円も余計にかかる計算になります。そういうこともあって、鉄道関連でも工事を急いでいる面はあるのでしょうか。

※発注する側から見えるものと、受注する側から見えるものもまた異なるもので、南砂町での「約340億円」には、当然ながら受注した会社の利益となる分も含まれているわけです。勉強として、お試しで試算(「私算」)する分には、いっさいコミコミプランざんまいワイドでいいと思います。

 本題に戻りますと、つまり、千葉市の努力は方向がおかしく、「直通を実現させたいので、いかに多くの需要があるかを示す(そのためのデータ=いわば「署名集め」にも似た=を集める)」というのでは、鉄道事業者にしてみれば言わずもがなな話で終わってしまいます。逆説的ですが「いかに需要を減らせるか」というデータ、つまり、「混雑緩和のための時差出勤やテレワークなどの推進に、沿線の事業所がどれだけ取り組んでいるか、また今後、改善の余地がどのくらいあるか」といったことを調べることが、自治体の側には求められているのではないでしょうか。あるいは、自治体が直接できる範囲で、通勤・通学需要のピークシフトに協力する(学校や役所の始業時間を早めるなど)という方法もあります。

 少なくとも、土木コンサルタントに依頼する内容=交通計画の話ではないと思います。第8層といいましょうか、もう少し上のレイヤーに取り組むのが自治体の仕事のはずです。あるいは、逆に第0層といいましょうか、混雑緩和のためのホームや通路の拡張、増発のための留置線の整備などに協力(用地や費用に関して)しますよ、という、もっとダイレクトな施策であるかもしれません。いずれにせよ、鉄道事業者と自治体は役割も立場も違います。鉄道事業者にとっての本分である第1層から第7層に、自治体が口を挟むことは困難です。むしろ、外側にある第0層や第8層をうまく「コントロール」することで、鉄道事業者が自然と、ある方向で取り組みを進めていけるような、いわば「環境づくり」とか「政策誘導」(補助金など)といった部分で、自治体(や中央省庁など行政の)の出番があるんだと思います。

※…といったことすらも、まずは土木コンサルタントに発注してみないことには、誰もタダでは教えてくれないということなのかもしれません。


この記事のURL https://neorail.jp/forum/?2963


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