フォーラム - neorail.jp R16
発行:2014/10/26
更新:2018/9/3

[2968]

「ろくでもないおもてなし」転じて成田エクスプレスで遊ぶ


(約6000字)

 [2967]でも触れました成田エクスプレスについて、補足いたします。また、[2909],[2944],[2957]の続きでもあり、いわば、訳せる訳せない、案内を拡充する云々の、それ以前の話(下のレイヤーで取り組むべき課題)にあたります。

 成田エクスプレスを利用する機会はないので恐縮ですが、成田空港駅からの利用では、飛行機の到着の遅れは予想しきれるものでなく、利用客があらかじめ指定席を取っておくことは難しい(かなり時間の余裕を見ておかないと心配⇔飛行機が定刻に着くと、やたら先の列車まで延々と待つ⇔成田空港駅でその場で指定席券を買うには行列で待たされ、その間にも列車が出てしまう)のではないかと思います。普通列車グリーン車や、中央線特急の自由席くらいに簡易な手続きでパッと乗れる手軽さ(後述の「just simply hop on」)がほしいと思う方も多いのではないかと推測します。

 あるいは、外国人客向けに成田エクスプレスばかり、あるいは十把ひとからげに「JR EAST PASS」をアピールする副作用として、「JR EAST PASS」や成田エクスプレスの料金だけを見て「JRは高い」という印象を持たれ、敬遠されるということもあるのではないでしょうか。特急(特別車)には乗ってもらえなくても、普通車(一般車)に乗ってもらえれば、少なくとも運賃はJRに入ってきます。そういう考えは…あまりないのかもしれませんね。

・JR東日本「訪日旅行のお客さま向け お得なフリーきっぷ「JR EAST PASS」リニューアル! 〜フレキシブル5日 JR東日本全線乗り放題〜」(2013/6/9)
 http://www.jreast.co.jp/press/2013/20130609.pdf

 > 新幹線も乗り降り自由で、大人22,000円、小児11,000円と大変便利でお得なきっぷです。

 長期滞在型の(「ぜいたく」[2965]な)旅行で、新幹線にたくさん乗らないと元が取れません。かなり客層が限られるかと思います。多くの旅行客は、私たち(=国内で日常生活を送り、JRを利用する客)と同じように、移動時間や距離を最短に、そして運賃を最少にしたいと考えるはずです。Suicaや都区内フリーきっぷの類が案内されたほうがココロに響くという客のほうが多いのではないでしょうか。

 > 以下のGDS端末(航空券予約発券システム)を備える旅行会社等(航空券販売箇所約15万店舗)及びAccesRail社とRailNet契約のある旅行会社等。
 > 発券可能GDS端末:Amadeus, WorldSpan, Apollo, Galileo, Sabre, Abacus, Topas

※…といわれましても実感が沸かないのですが、かなりワールドワイドに展開されているのでしょうか。あるいは、北米やEU圏内などに偏っているのでしょうか。そのうち調べてみようと思います。

・「Is a seat reservation required ?」(2009/9/3)
 http://www.japan-guide.com/forum/quereadisplay.html?0+66973

 > I will use a JR ordinary pass to take Narita express to Tokyo. Do I need to reserve a seat first before I get on a train? Can I just simply hop on the train? In Japan, can I just get on any JR train without an reservation ? or I will have to always make a reservation first via internet?

 お悩みは、かなり深刻です。

 このような「日本式」、正確には「旧国鉄の制度そのまま」というわかりにくさという、いきなり顔にパイが飛んでくる(pieing)ような、あるいは頭から氷水をかぶるような(Ice Bucket Challenge)何かを浴びせられるという形の「ろくでもないおもてなし」、いわば「『うら』のおもてなし」(negative 'Omotenashi': barriers to entry)をしてしまっているというのは、痛切に反省して改善していかねばならない部分だと、誰もが思うところ(※)だと思います。

・Pieing
 http://en.wikipedia.org/wiki/Pieing

・Ice Bucket Challenge
 http://en.wikipedia.org/wiki/Ice_Bucket_Challenge

※日本ではなじみがなく、慣れないと「何だこれは」と思うものの例として。

※思わないというのは、いわば「国鉄病」が「重症」だということです。


・YouTube 鎌倉、逗子、田浦での成田エクスプレス(2014/4/6)
 http://www.youtube.com/watch?v=YUoqVrwHdNU




 なんと、鎌倉での成田エクスプレスの発着時にも英語アナウンスがあるんですね。流暢で聞き取りにくいですが、「All seats, /on the 'Narita Express' /are reserved. /*****************, /may not ** on the train. / Thank you.」(「成田エクスプレス号は全車指定でございます。指定席特急券をお持ちでないとご乗車になれません。」の英語版ですね)といっているようです。なお、エアポート成田の「次発放送」には英語アナウンスは追加されていません。7月の武蔵小杉などが最初とみられます。

 ただ、ATOSによる文節区切りかどうかはわからず、単にタイミングを合わせて駅事務室でボタンを押すなどして、固定の英文メッセージをワンショット再生しているだけ、という可能性もあります。もしATOSによる自動のものであるのなら、この種の英語アナウンスの使用開始が2014年3月のダイヤ改正までさかのぼる可能性が出てきました。

 成田エクスプレスに関する旅客案内上の課題は、以下の3つにまとめることができます。

・1. 「全車指定席」
・2. 「列車番号」「乗車位置(「号車」)」
・3. 「停車駅」

 1.は、「乗りたければ指定席特急券を買え/買わないなら乗るな」というメッセージです。あえて日本語で書きましたが、端的にはこのくらいぶしつけなことを言っているのです。これのどこが「おもてなし」でしょうか。

 2.は、「買った指定席券にあわせて正しく乗れ」ということで、1.であるために必要となる案内です。これも同じく、どこが「おもてなし」でしょうか。

 3.は、万一、間違って乗ったときのエラーが重大なものになる原因です。例外的に、車内で「立席特急券」の発券を受けるとなれば予想外の出費がかかりますし、列車を間違えれば、目的地へ行かない(別の目的地へ行く、または途中駅までしか行かない)ということになります。

 2.は、1.を見直すことによって改善できます。つまり、成田エクスプレスの編成中間に普通車自由席の車両を増結し、乗車口を普通車に限定すればいいのです。そして、普通車の車内に指定席の発券窓口を設け、指定席を購入すれば指定席車両へ移動できる、購入しなければそのまま普通車を利用する、という、指定席を買うか買わないかという判断を、車内でできるようにすればよいのです。

 降車については、バスと同様の降車予約型のボタン式(車内のみにドアボタンを設置、かつ予約型の動作)とすればよいでしょう。停車駅が近づくたびにアテンダントが巡回し、降りるべき客が確実に降りられるように対応するとともに、指定席車両の降車専用口から誤って乗車してくる客がいないか見ていればよいのです。あるいは、乗ってしまった客を普通車の発券窓口へ案内するのであれば、そもそも「誤って乗車」というエラー自体を、なかったことにできます。

 こうすれば、ホーム上の煩雑な「成田エクスプレス乗車口」のLED表示板は全廃でき、「成田エクスプレスに乗りたければココ!(わからなくても、とりあえずココ!)」という単一の乗車口(unified boarding、とでもいいましょうか)にすることができ、わかりやすい案内(single voice、とでもいいましょうか)が実現できます。

 また、乗車する客が集中することとなる普通車では、両開きのドアで2ドアなり3ドアなりとすることで、乗降時間を短縮できます。これによって、これまで乗降時間の問題から増やすことが難しかった途中の停車駅も、増やしやすくなると期待できます。例えば、都営新宿線に乗り換えることができ(て、成田エクスプレスに乗ったまま新宿へ向かうよりも速く、あるいは人気の高尾山に直行でき)る馬喰町に停車することも可能でしょう。多言語の対応を車内で行なうこととすれば、駅側での対応は最小限(英語だけ、あるいはとりあえず乗る「just simply hop on」のサポートだけ)に留めることが可能でしょう。

 このような方法は普通列車のグリーン車や、将来の新たな「着席サービス」にも応用できます。目先の課題として、いま、「2階建てグリーン車」を何とかするというレガシーな対応を考えるとしますと、平屋部分を普通車扱いとし、ここにSuicaグリーン券の券売機を設置すればいいのです。そして、普通車部分とグリーン車部分を仕切る自動ドアを設け、購入したSuicaグリーン券をタッチすれば、グリーン車部分に入ることができるようにすればいいのです。降りるほうは、通常のタッチ式の自動ドアでよいでしょう。営業上も、事前料金と車内料金という二重の制度を解消し、わかりやすく(≒公平に)することができるでしょう。

 こうすれば、とりあえず乗った(「just simply hop on」)あとからでも「やっぱりグリーン車にしよう」という選択ができるようになります。むしろ積極的に、「ただいまグリーン車に空席がたくさんございます。遠方までご利用のお客さま、ゆったりしたシートで快適なグリーン車をご利用になりませんか? 詳しくは6号車まで」といった「販促」を行なうこともできるようになります。よくわからないまま普通車のロングシートに並んで座った(そしてにぎやかな)シニアのグループなど、「あら、いいわねぇ」などといいながら(そしてにぎやかに)グリーン車に移ってくれるかもしれません。


 成田エクスプレスや訪日客に関する「わかりにくさ」の問題は、国内で日常生活を送りJRを利用するだけの利用客(≒各種の施策を検討する立場にある人たちの多くも、ここに含まれます)にとっては目が向きにくいと思われます。しかし、上述のように(ここでは、成田エクスプレスを改善する方法が普通列車グリーン車にも応用できる例を示しました)、この問題にきちんと取り組むことは、国内での利便性や快適性をも高めていくものだとわかります。ユニバーサルでわかりやすく、手軽にパッと乗れる(「just simply hop on」)列車が実現されることを期待します。

※「おもてなし」は人(訪日客)のためならず(ためだけでなく)、自分たちをも助ける(便利になる)ということにほかなりません。


 もう少し積極的かつ意欲的に遊んでみますと、こんなことも考えられます。

・211系の2階建てグリーン車や215系の付随車を改造
 座席をなくし、階段を広げ、あるいは平屋部分を少し広げた車両とし、大きな荷物を持った客にとりあえず乗ってもらう(「just simply hop on」)ための広いスペースを確保する、ということもできるでしょう。簡素なベンチを、車内中央に設けてもよいかと思います。いわば、6ドア車の空港アクセス版ですね。安い旅を楽しむ若い人たちが気兼ねなくワイワイできれば(移動時間を使って飲食もできるとなおよい)、ほかの移動手段(バスや普通列車)にはないオンリーワンの魅力が出てきます。

・成田エクスプレスの車内に売店
 全国のおみやげが買える「東京駅名店街」(「東京駅一番街」の「おみやげプラザ」)の逆といいましょうか、主要な海外リゾート地のおみやげを、現地で買い忘れても列車内で買えるとなれば、おもしろいのではないでしょうか。また、上り列車と下り列車で品揃えを切替えるシステムを入れれば(座席転換の要領で陳列棚ごと転換すればよいのです)、上りでは国際版名店街、下りでは日本のおみやげを並べるということも簡単にできるでしょう。特に、富士山や鎌倉、あるいは将来的に日光までも直通するようになれば、乗車時間が長くなる分(「エコノミークラス症候群」を予防するためにも)、車内でいろいろと歩き回ったり楽しんだりできる要素が求められてきます。これも、バスでは実現できないことですね。上述の2階建て車両で、2階部分を展望・くつろぎスペースとすれば、1階部分を売店にすればよいでしょう。その昔の新幹線を思い出します。

・冬季限定のこたつでみかん列車
 足湯や本格的なお座敷は難しいとして、上述のような広いスペースや売店を活かして、車内に季節感や日本らしさ(単にインテリアデザインを和風にするという見かけだけの話でなく、体験として)を持ち込むことも検討されてよいのではないでしょうか。畳スペースを用意してお茶やお花でも、七夕でも正月飾りでも、いろいろできると思います。商業的な話だけでなく、例えば沿線の学校と連携して、いわゆる「国際理解教育」の場として活用する(生徒や学生の発表の場とする)ことも可能でしょう。観光旅行で日本を訪れても、日本の子ども(や学生)と直接、話ができる機会を得られる人は意外と少ないと思われますので、たいへん喜ばれるのではないでしょうか。

・国際理解教育
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%90%86%E8%A7%A3%E6%95%99%E8%82%B2

 また、やや微妙な話にはなりますが、いわゆる「鉄道離れ」が深刻な地域への取り組みとして、JR側の負担で子どもに成田エクスプレスの乗車を体験させる(列車の利便性や快適性をまったく知らないまま大人になることを防ぐ)ということも、検討されてよいかと思います。航空会社では、「初日の出フライト」などの事例があります。

・JAL「初日の出 初富士フライト」
 http://www.jal.co.jp/domtour/hatsuhinode/

 これは有料のツアーですが、出発地に戻ってくるフライトという、乗ることだけを目的としたコースが設定されているところに特徴があります。通常、乗るだけ、といっても往復の運賃が必要となってしまい、簡単には乗れません。(もったいないので、何か用事がないと乗れません。)

 鉄道でも、いずれは持ち出しとなるような施策も必要になってくるくらい、事態は深刻だと思ったほうがよいのかもしれません。…と、遊びのつもりでしたが難しい話になってしまいました。とにかく、いろいろとできることがあり、少なくとも成田エクスプレスの余った編成を遊ばせておく余裕などないのだということだけは確かです。


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