フォーラム - neorail.jp R16
発行:2015/1/20
更新:2016/7/17

[3004]

【新しい広域流動】

新しい広域流動(1) 神奈川県厚木市・清川村・愛川町


(約4000字)

 [3003]への補足です。

 2000年の「18号答申」から現在までの大きなできごととして、リニア中央新幹線の着工が筆頭に挙げられます。東京圏における鉄道整備において、これまでのように狭い地域だけ、沿線の需要だけを考えて新線や接続線を検討していくだけでなく、より広域の流動を見渡して検討していくことが求められてきます。

 リニア中央新幹線では、横浜線・相模線の橋本付近に「神奈川県駅」を設置する計画となっており、リニアのダイヤにもよりますが、受け皿となる在来線の輸送力増強が急務といえます。まず、横浜線の「大増発!」は、さほど大きな投資を必要とせずに実現できると見込まれます(※)が、小田急沿線で、これまで小田原へ向かっていた新幹線の利用客が、一転して橋本に集中するとなりますと、厚木−町田間の小田急線が混雑するということになります。小田急線のバイパスとして、相模線の輸送力増強や、小田急多摩線の上溝−厚木間での延伸(後述)などが次の一手として繰り上がってくることになります。

※横浜線と根岸線の全面的な直通化や、根岸線内での京浜東北線直通電車の快速運転や桜木町折り返しなど、車両の運用を大幅に変え(根岸線の運用を横浜線側に移管するような)、横浜線の車両を大船や磯子にも滞泊できるようにするなどしていけば、横浜線内も増発できるということになります。

・日経BP「リニア詳細、全ルート・6駅の位置が明らかに」(2013/9/19)
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20130918/632629/?P=2

 > 今回、公表した環境影響評価の準備書は、11年9月に公告した方法書などに基づいて実施した調査や予測、評価の結果を踏まえて作成したもの。内容は事業の目的から実施区域の状況、環境影響評価の調査結果、関連資料など都県別の構成で平均約1400ページに及ぶ。JR東海は9月18日に沿線の7都県知事と39市区町村長に送付した。

 > 準備書は9月20日から1カ月間、JR東海の環境保全事務所や沿線の自治体で縦覧できる。さらに、同社は9月27日から10月18日までの間に沿線の地域で合計92回、説明会を開催する。準備書に対する意見は1カ月半の間に募り、意見に対する同社の見解を付して都県知事と市区町村長に送付。これに対して都県知事は、市区町村長の意見などを踏まえて120日以内に意見を述べることになる。その後、JR東海は最終的な評価書をまとめる。

 馬車を286台つなげるような([2999])というのは、まさにこのことです。工区が細かく分割され、「準備書」が沿線自治体ごと(7都県、39市区町村)に分割して作成され、説明会も「準備書」と同じ区割りで別々に開催され、「準備書に対する意見」も、分割された準備書に対する意見であって、リニア中央新幹線の事業全体に対する意見を受け付けるための法的な背景は、ないのです。

※ただし、文句を言われたくないからこうした、というのではなく、法律がそうだから、こうするしかない、ということのはずですので、そこを誤解(曲解)してはいけません。

 駅の幅は、ターミナル駅で60m、中間駅で一律50mとなっており、駅の幅から開業後のダイヤを予想することは困難です。もっとも、南砂町([2965])を見ればわかるように、後から拡げるのは不可能ではなくともたいへん困難ですから、だいぶ余裕を持たせてあるのでしょう。

※また、「わが町にも中間駅を」とこぞって出てくる要望に対しても、作るならこれだけの幅が必要で、幅が確保できないなら中間駅はあきらめてください、ということもできたのではないかと邪推します。在来線とは違った意味で、これまた奥ゆかしい話ですね。

・相模原市「リニア中央新幹線計画の概要と本市の取組みについて」
 http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/toshikotsu/20804/24853/001663.html

 > 平成25年9月に公表された「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価準備書」において、神奈川県駅が橋本駅付近に設置されることが明らかになりました。
 > 駅は、地下約30メートルに幅最大約50メートル、長さ約1キロメートル、面積約3.5ヘクタールの規模で、主な旅客施設は地下3階構造となる見込みです。地下3階には2面4線の島式ホームが設置されるほか、地下2階に入出場口や旅客トイレなどが設置される予定です。

 > 車両の留置や検査・整備等のため、相模原市緑区鳥屋付近に関東車両基地が建設される計画です。車両基地には、留置線、検査庫、臨時修繕庫及び事務所棟が設置されるほか、保守基地も併設され、面積約50ヘクタールの規模になることが想定されています。

 「神奈川県駅」の配線図が「出典:中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」として掲載されています。駅構内の配線は2面4線ですが、折り返しは非常時や入出庫時に限るようで、上りホーム(リニアも左側通行ですよね)の2線から下り方向にのみ折り返しができる配線が予定されています。下りホームについては、現状の東海道新幹線の品川や新横浜と同様、1面2線での交互発着で列車間隔を詰めようという狙いだとすれば、新横浜と同様の位置付け(速達型列車が軒並み停車)になりましょうが、「東京都ターミナル駅」を発車したばかりの各駅停車型列車を下りの側線で退避させ、10分くらい、まったりと停車している間に2〜3本くらいの速達型列車を通過させようという狙いだとすれば、いわゆる「新横浜の始発で大阪出張」のような感覚で橋本に期待をかけるのは筋違いということになってきます。配線だけではどちらとも決まらず、「全力で通過」できるようにするなら、ホームドアどころか「ホーム壁」がほしいところです。まだ最終決定もしていないのかもしれません。

・神奈川県愛川町「愛川小田急多摩線延伸促進協議会だより第1号」(2014/1)
 http://www.town.aikawa.kanagawa.jp/info/kou_pdf/tayori01.pdf

 > 平成27年に想定される次期答申において、『上溝駅から田名地区を経由し、愛川・厚木方面へ至る路線の延伸』が位置づけられるためには、住民と行政が一体となって、国や県に働きかけていくことが重要です。

 相模線の複線化や速達化に時間がかかり、2027年に予定されるリニア開業に間に合わないとなれば、何としても橋本近辺の流動をさばく必要から、より建設が容易で確実な小田急多摩線の延伸線のほうが優先順位が高くなるということも、ありえなくはありません。逆に、相模線がすんなりと取り組めるのであれば、上溝から先への延伸は2030年以降(2045年目標)に先送りということになる公算が高いといえます。

・神奈川県清川村「小田急多摩線の愛川・厚木方面への延伸に向けて取り組んでいます(「小田急多摩線の延伸促進に関する連絡会」の取組状況報告)」(2014/11/8)
 http://www.town.kiyokawa.kanagawa.jp/userdata/file/del20141108_2.pdf

 上溝と厚木(本厚木)という端点はそのまま、さらに山のほうへ引っ張ろうという話ですね。まさに輪ゴムです。「18号答申フォローアップ」([3003])でも指摘されていますように、都市圏の外縁部を高速に移動できる軸は重要です。今後30年のモデルになるような、外縁部を130〜160km/hで運転でき、駅などの施設は簡素で無人という、ほくほく線というかリニア的な発想の新線を考えるならば、必ずしも新線の沿線の需要は多くなくてもよいのです。建設する総延長が長くなっても、高速に運転でき、土地代も安くあがれば、トータルではお釣りがくるでしょう。むしろ、清川村や愛川町という鉄道空白地帯に、広域の鉄道網へのアクセスポイントとなる「最寄り駅」を点々と配置することができ効果的です。また、小田急小田原線を本厚木まで複々線化することはありえないでしょうが、多摩線の延伸で代替経路が確保されるということは、広い意味で新百合ヶ丘−厚木(本厚木)間の複々線化といえます。これは直感的には意義の大きいことですが、この効果をいかにして定量化するか、どのくらい広域まで、きちんと便益を算定していけるかが、今後の課題といえます。


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