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by tht

[3053]

Re:[3051] これからの「混雑率」の話をしよう

説明 データ 研究 立席 防犯カメラ カチカチ アプリ スマートフォン 混雑率


 [3051]の、早くも後日談のようなものでございます。

・ツイッター(2015年5月23日PST)
 https://twitter.com/okiraku_goraku/status/602033406310907904/photo/1

 > 東急横浜駅にて朝ラッシュ時の中目黒駅の混雑率に関する掲示があり興味深く見ました。気になり過去の自身の調査結果を混雑率変換してグラフにしてみたところ、違いがあり個人調査の限界を感じます。ただ傾向は似ており希望も見えた感じです!

 おお、これはすごい! と喜ばれます。個人での混雑の調査結果の掲載が、ホームページでは2013年ごろで止まっており、いろいろ「行き詰まり感」を持たれているのかなぁ、と(勝手に)心配しておりました(が杞憂でした)。いまどきはツイッターに載せて、どこにも「目次」がないんですね、わかります。

※このフォーラムにも「目次」はありません(有効には機能していません)ので、人のことばかり言えません。

・運輸政策研究機構「都市鉄道の混雑率の測定方法」(2003年)
 http://www.jterc.or.jp/topics/josei_shinpo3.14/8_konzatu_ritu.pdf

 詳細はみなさま、リンク先を直接ご覧いただきまして、その上で要点をまとめますと(ちゃんと原文を読んでくださいね、と念を押しておきます)、以下のようになります。

・1. 事業者や国による混雑率の調査も「目視」である
※個人でも同じことができる⇔個人でもできるような素朴な方法が取られている。

・2. 着席と立席を区別したデータは収集されていない
※個人でも急いで頑張れば先回りして研究成果を出せる。

・3. 混雑率の調査目的が変わりつつある
※鉄道エクスペリエンスの「質」を高めるための調査へ。

・4. 混雑に対する受け止めかたの研究は最近、行なわれていない?
※少なくともメボシイ成果は出ていない。

 1.は、個人や、鉄道業界に属さない研究者にとって「我こそは」と奮起させるに十分な何かです。どうしてそういうことになっているかというと…

・事業者や国による調査は調査会社に発注される
・安く、なるべく広く、多くのデータを得たいという矛盾した要求に応えることが調査会社には求められる
・現地調査や実数調査には、たいへんコストがかかる(人がたくさん要る)
・調査会社ではアルバイトの調査員を(調査のつど、短期に)雇って調査にあたらせる(調査のないときにまで雇っておくことはできない)
・アルバイトの調査員を短期の研修で均質に育て、すぐさま調査にあたらせる必要がある(経験者優遇で採用するといっても限界がある)
・誰でも短期の研修で身につくような、簡単で確実な調査方法しか取ることができない

 …といったことになっているからです。ちょうど今年行なわれる国勢調査でも、似たようなもので、国勢調査の調査員の募集などを見ますと、雰囲気がわかるかと思います。

※日本野鳥の会…いえ、通行量調査のほうが簡単で、カウンターをカチカチと押せばよく、担当者(アルバイト)の違いに影響されにくい、やさしい仕事といえます。対して、目視で混雑率を「判断」する仕事は、判断が加わる分、難しいのです。

 こうして出てくるのが、国や事業者のオフィシャルな「混雑率」ですから、あたかも何かスバラシイ、ハイソ…いえ、「ハイテクな技術」(「超技術」とでも…略)で「きわめて高精度なレゾリューション」(「超解像」とでも…略)で取得されているかのような、あるいは「全米が泣いた」…いえ「『世界が認めた』圧倒的な信頼性」(「超信頼」とでも…略)を持っているかのような幻想を持ってはいけません。おおもとの部分では、個人が調べるのと、ほとんど同じです。違いは、どこをいつ調査すべきか(多客なイベントを避けるなど)、複数人・複数回の結果をあわせて誤差を修正するといった部分で、個人では難しい手厚い対応ができたり、また、そのためのノウハウ(知見)を持っていたり、というのが調査会社というわけです。

・「全米が泣いた」(2015年6月4日)
 http://www.libro.jp/blog/ikebukuro/event/64.php

 2.の観点では、技術的にもまだまだで、かなり先まで目視による調査が重宝される状況が続くとみられます。

・運輸政策研究機構「鉄道分野におけるITの積極的活用方策に関する検討(混雑緩和に関する検討)」運輸政策研究 Vol.11 No.4(2009年)
 http://www.jterc.or.jp/kenkyusyo/product/tpsr/bn/pdf/no43-11.pdf

 「家田ら」の1989年、1995年の論文(利用者の選好モデルに関する実地調査)が引用されつつ、大枠では運賃制度(有料着席型列車の損益のシミュレーション)の話ですが、技術的な背景の説明も充実しています。

 技術を活用してデータを取得する、といっても、自動改札機と応荷重装置、座席にセンサーを埋め込む、といったところが当面の限界で、重量から推定される乗車人員から、座席のセンサーでわかる着席人数を引いて立席人数を推定はできても、吊革につかまっているのかいないか、つかみ棒か、身長は、ドア付近に立っているか、といった細かい状況は、なお目視によらなければ取得できない(※)わけです。

※調査として定量的には把握できない分、計画や開発の担当者自身が自分で乗車してみて定性的に評価し、自分の業務に活かしているとみられます。

 防犯カメラの映像を自動的に解析して、という流れもありますが、広範に利用者の同意が確立しない限り、技術的には可能でも実行に移すことはできません。スマートフォンのアプリによるデータの収集も、スマートフォンを持たない人やアプリを使わない人からはデータを取得できません。

 それでも、後年、そうしたリッチなデータを使うのが「あたりまえのこと」になってほしい、と望むとしますと、そのとき(将来)、比較の対象とする、現在のデータを、できれば残しておきたい、と考えていくわけです。

 とはいえ、それが難しいことかといえば必ずしもそうではなく、現に、みなさまツイッターで「今日は座れた」「吊革すらつかめず疲れた」等々、つぶやかれています。そうした「声」を集める専門のサイトもありましょう。

・情報処理推進機構(IPA)「ITによる鉄道システムのイノベーションについて考える」SEC journal Vol.10 No.3(2014年9月)
 http://www.ipa.go.jp/files/000042134.pdf

 こちらでも、また「東京総合指令室」(交通新聞社新書[2947])でも紹介されていますが、ツイッターのつぶやきが現場でもピックアップされ(広報などの担当者の目に留まったものを関係箇所に伝えるという、いまどきどこの組織でもやっていそうなことがJRでもなされ)ているとのことです。リアルタイムでの反響として着目するばかりでなく、体系的に活かし(現在はつぶやきの合計件数すら把握されていないとみられます)、また自社でも蓄積していくといったことが急がれているといえます。

 3.と4.の観点では、利用者の「実感」を客観的に扱えるようにするための基礎的な研究が十分ではないということを深刻に憂慮しなければなりません。実務上、利用者の「実感」が(マニュアルに従って誰でも)扱えるようになるには15年以上かかるとして、そのマニュアルを作るときにエビデンスとして参照される基礎的な研究成果([3010]も参照)を、10年後までには出しておかなければならない、といった「逆算」が可能です。本当でしょうか。

・夢ナビ「利用者の心理を探り、交通システムを改良する」
 http://yumenavi.info/lecture.aspx?GNKCD=g003409&OraSeq=4172212&ProId=WNA002&SerKbn=1&SearchMod=2&Page=2&KeyWord=%E9%89%84%E9%81%93

 > 土木・環境工学 経営工学
 > ラッシュアワーでの利用者の行動を分析すると、大きく3つに分かれます。まず、2〜3本の電車をやり過ごして座っていく人、そして、1本ぐらい待ち、座れないにしても吊革のあるところに立ちたい、つまりドアのそばでもみくちゃになるのを嫌う人です。そして、全く待たず、混んでいてもいいから早く目的地まで行きたい人です。

 (いわゆる「お勉強」としてはこれで)いいんです。いいんですけれども、これは既に実現している、「これくらいしかできることがなかった」という「昔話」であって、必ずしも未来につながっていく話ではないように感じます。

 今後は、より深いレベルでの利用客の心理状態の検討や、脳波を計測するなどして「快」・「不快」を直接的に調べていく、あるいは、「快」「不快」を周囲に伝播させる利用客や、その相互作用のネットワークといったものの解明にも取り組んでいくことが求められるかと思います。

 こうなってくると、土木や経営では力不足です。鉄道業界が何でもかんでも、きわめて少数の専門家に頼るだけでは、ましてや10年以内になど、到底実現できないのです。

 そうした一種の「焦り」(「試験勉強していれば安心」[2980]、「爆速」[2975]、「ヤ倍速」[3050]なども参照)のようなものもあって、ちょっと(かなり)無茶な話とは思いつつも、[3051],[3052]をしたためた次第であります。


この記事のURL https://neorail.jp/forum/?3053


(約4000字)

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