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Re:[3122] 小田急の「D-ATS-P」は、なぜATCと呼ばれないのか

列車 車両 線路 研究 実装 尤度 絶縁 コネクタ 逆線運転


小田急の「D-ATS-P」は、なぜATCと呼ばれないのか
ATCに関する博士論文を「見る」
つくばエクスプレスは150bpsで20bit


 直接には[3122]の補足ですが、後半では、ATCに関する電磁気工学の話に移ります。


●小田急の「D-ATS-P」は、なぜATCと呼ばれないのか


[3122]
 > 9月12日に小田急線内で新しい保安装置「D-ATS-P」への切り替えが行なわれ、現在、JRの車両の小田急線での試運転などが進められています。
 > 小田急線で先月12日に使用が開始された「D-ATS-P」は、ATCと同等の機能を備えた、最新のATSです。名前こそ「ATS」ですが、情報のやり取りはレールと車輪を通して行なう方式です。

 小田急の「D-ATS-P」は、なぜATCと呼ばれないのでしょうか。

・個人のブログ「小田急の新しい信号・保安装置「D-ATS-P」」(2011年4月5日)
 http://mirai-report.com/blog-entry-1012.html

 あっ、なるほど、と「氷解」しました。線路条件のデータベースを車上に持たせるとATC、そうでない(どこにも持たせない、または、地上に持たせる)とATSだということですね。

※呼び分けの視点が列車≒運転士にあり、外部からの信号を「パッシブに受ける」だけならATS(止まれと言われたので止まります、しかじかの速度以下で走れと言われたので減速します)、外部からの信号を基に「アクティブに考える」ならATCだということですね。

※地上側にデータベースを持たせ、これはもう、ほとんどATCでしょ、という場合でも、列車としては「(地上装置から)詳細な指示を受け、その通りに走ります(考えません)」ということですから、あくまでATSと呼ばれるということだと思います。

 レールを通じて連続的に通信を行なう方式の保安装置において、通信ができないとなれば、ただちに停止すべし(あるいは、次の信号機が停止現示だとみなせ)、という「愚直にして最高のロジック」を車上に備えておくことになりましょう。その時、▼(新幹線や地下鉄など)停止するまでにも線路条件がわかっていないと安全に停止できない、という場合と、▼見通しがよいので、とにかく停止しさえすればよい(架線のセクションや曲線のカントなど考えない:何か別の方法で対応することとする)、という場合とに分けられ、前者ではATCでないといけない、後者では、データベースを地上に持たせて「ATS」だと呼ばれる構成であっても、まあ、ダイジョーブ、ダイジョーブ、ということなのだろうか、と読み解かれました。本当でしょうか。

・(再掲)個人のブログ「小田急の新しい信号・保安装置「D-ATS-P」」(2011年4月5日)

 > 小田急のD-ATS-Pで特徴的なのは駅ホームの両端にある緑色の無電源地上子です。今回参考にした文献には地上子の種別などは特に記述はありませんでしたが、D-ATS-Pには乗降扉の誤開扉防止機能が内蔵されていることから、緑色の地上子は駅構内であるか否かを区別するために設置されているものと推測しています。
 > (写真)一般的な白色のD-ATS-P地上子(手前)とホーム両端にある緑色の地上子。ともに無電源。新百合ヶ丘駅構内にて

 「駅構内であるか否かを区別するために設置」が太字で強調されていますが、「もう一声」ほしくあります。また、どこまでが文献の内容で、どこからが推測で、その推測の根拠は何か、を、きちんと本文の中でまとめなければなりません。読者が写真を見て何をわかればよいのか、この文章ではよくわかりません。

・停止位置目標を超えた先に「緑色の地上子」が置かれている
・ホーム両端に「緑色の地上子」が置かれている
・(列車の進行方向の上で)手前側も、停止位置より外側に「緑色の地上子」が置かれている?(写真の左側の線路は対向の線路?)
・└→ (編成全体の停止位置の前後=外側を挟むように)ホームの両端に「緑色の地上子」が置かれている

 この理解を踏まえて、マコトにイカンですが勝手に「朱っ☆」させていただきますと、以下のようになりましょうか。

・小田急のD-ATS-Pでは乗降扉の誤開扉防止機能があるということです。駅ホームの両端には、列車の停止位置の外側となる箇所に緑色の無電源地上子が設置されていることから、この地上子を用いて開扉可能区間への進入と進出を判別しているものと推測できます。

※「朱」といいながら、現在のスタイルシートでは「緑色」で表示されます。「左R右L」(ひだりあーる・みぎえる[3062])並みですね、わかります。緑地に赤色の文字で「緑色」と書くよりはマシだということで、ご容赦ください。

 あなたが勝手に推測しているのでなく、同じ情報を集めれば誰でも同じように推測できます、という客観的な事実を述べたほうがよいですよねぇ(「私は『(自分が)推測している』ことを述べるのでなく、『(誰もが)推測できる』ことについて(私情を挟まずに)述べています」という文章上の形式をとるほうが、エッセイでない記事として望ましいですよねぇ)、と心配されます。恐縮です。

※もしかすると、「間違いではないんだけれども、ちょっと、そんなに単純な対応関係ではないんだよねぇ」といって本職の人(ただし現場でない)に笑われるようなことも、あるのかもしれません(「ドクターイエローは秘密!」[3101]も参照)。例えば、TASCの運用がほぼ予定されていながら、なぜ「緑色の地上子」が置かれるのでしょうか。「誤開扉防止機能」は、ホームドア(可動式ホーム柵)の制御装置との関係から、ホームドアの制御装置と「D-ATS-P」にまたがる形で実現される機能(両方での実装によって、機能が完成する、の意)ではないかと読み解くことも可能です。それでも「緑色の地上子」だというからには、レールを通じて連続的に通信ができるとはいえ、地上装置から車上装置への片方向の通信しかできないため、地上装置の側では車両の速度がわからない、といったことが想像され、このため、停止した列車が動き出したことを検知するために「緑色の地上子」がなければならない、ということかもしれません。(あくまで想像です。)

 別の観点からは、仮に現場の人が地上子を指して「ATS」だと呼んでいたとしても、それは現場にあってミスを防ぐための慣用的な呼び方であるといえますから、あくまで外部から、ATSと呼ばれる装置(system)全体をやんわりと紹介する文脈にあっては、さりげなく無視することが妥当と考えられます。その意味では、「小田急のD-ATS-Pで特徴的なのは駅ホームの両端にある緑色の無電源地上子です。」の一文は誤解を招きそうだと心配されます。緑色かどうかは本質的なことではありませんし、特定の(種類の)地上子を指して(装置全体の)「特徴」とまで持ち上げて言うのは、ちょっとスコープやレイヤーのようなものがグダグダなような印象が出てしまいます。つまり、(装置全体にあって)「特徴的」と評せるのは「緑色の地上子」ではなく「誤開扉防止機能」だということです。逆に「緑色の地上子」を「特徴的」として紹介するには、「無電源地上子の設置や保守において取り違えを防ぐ工夫として緑色に塗り分けられている(とみられる)」「停止後に運転士が視認できなくなる停止位置目標に代わり、停止後も、開扉可能区間に停止していることが簡便に確認できる(ためでもあるとみられる)」といった、もっと詳細な運用(運転や保守のマニュアルなど)の話に言及しなければなりません。そこまでの資料の提供を受け検討するのは趣味の域を超え、しかるべきBtoBなイトナミとなり、記事の発表の場も、しかるべき協会発行のソレ、となってきましょう。


●ATCに関する博士論文を「見る」


 保安装置に関して詳しく勉強したい、というかたにあっては、現状や、現場から漏れ伝わるとも何ともいえない何か的なもの(趣味誌とも何ともつかない特定の雑誌=ただし学術誌でない=を含む)に頼ることなく、かといって古い教科書をうのみにする(そして「最近の保安装置はキホンがナッテナイ!」などとのたまう)でもなく、もう、きちんと論文や技報を追っていくほうがよいと思われます。

・ATC/TDに関する博士論文「安全性・信頼性向上のための鉄道信号システムの設計手法に関する研究」早稲田大学(2008年2月)
 http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/28727/3/Honbun-4772.pdf

 > 本研究は鉄道信号システム設計について,第1に単線線区の信号システムを 安全性・信頼性・保全性の向上を初期投資の増加なしに実現する手法を開発し,第2に車両と信号のEMCを適切に実施して高速・高密度線区に適用するATCの開発を行った。さらに,新幹線の安全を確保する基本設備であるATCに対する異周波き電に起因する異周波妨害対策法を開発し,北陸新幹線に適用して新幹線の安全・安定輸送に寄与した。加えて,交流電化からの誘導障害対策のための誘導予測計算についてトンネルおよび高架橋を誘導予測計算に組み込む手法を提案し。誘導予測計算の高度化に寄与した。

 全体としてEMC(特にEM shielding:electromagnetic shielding)の研究のようですから、「第1」を本研究の成果とするのはしっくりきません(これだけで、まるで別の分野の研究です)。「第2」「さらに」「加えて」と、「第1」の外に3つあるわけですが、このうち、北陸新幹線に関する「さらに〜異周波妨害対策法」「加えて〜トンネルおよび高架橋を誘導予測計算に組み込む手法」が、本研究での直接の提案となっています。最も厳しくは、土木構造物の遮蔽効果計算の高度化に絞って、北陸新幹線の異周波電源切り換え地点における対策(※※)は除外するくらい、一種「クリアー」にされたほうがよいともいわれるかもしれませんが、いえいえ、論文審査委員会がよいといえばいいんです。

※研究内容がしっかりしていても、日本語が全然ちっともまったくグダグダなのは気のせいではなく、まず英語で書かれてから日本語に訳されたら、こうはならないと思われます。次善の策としては、後から英語に訳すつもりで日本語を書くべし、ということになりましょうか。

※※ATC信号を「電源同期式」とすることで対策としてきたATCにあって、「電源の切り換え地点」というのは一種「盲点」となっていたわけです。大きな貢献ではありますが、しかし、土木構造物の遮蔽効果を使って解決しているわけではないでしょう。

・同「博士論文審査報告書」
 http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/28727/2/Shinsa-4772.pdf

 博士論文の審査でこの大学、といいますと世間では難しいところ、中身を見れば、確かに博士論文だといって安心されると思います。(研究の経緯や状況についても、155ページからの謝辞で詳細に示されています。)何かの授賞([3066])でも、競技などのランキングの1位([3112])でも同じことがいわれましょうが、一種「ボーダーライン上」では判定(審査)があやうく、そうしたラインは軽々と越えていてあたりまえ、ともいわれます。通常、指導教員において「ボーダーライン」を確かに越えた成果(外形的には、所定の数の査読付き論文)が積み上げられていると認めて初めて、論文審査委員会を招集できるというわけです。指導教員に加え通常4名の論文審査委員を迎え、いわば「5倍の尤度(確からしさ)」で審査しようというわけですね、わかります。3重化されたコンピューターよりも確からしいのです。

※審査委員が1名でなく5名になることで何が5倍になるのかといって、その実、ネチネチととっちめられる度が5倍…ということではなく、時間が5倍…というわけでもなく、つまり、リニアに5倍に増える物理量があるという話ではなく、(理想的には)尤度だけが5倍になるんだというわけです。しかし、「5名で審査!」といったとき、素朴には「何かが5倍!(5倍すごい!)」「40割増!」などと…いえいえ、とにかくそういう積分値っぽいイメージでとらえられましょうが、そうではないんだということです。(「TOEICとCEFR」[3061]も参照。)

・日本キスラー「積分値」
 http://www.kistler.co.jp/products/software/framepage14.htm

・個人のブログ「尤度比」
 http://m03a076d.blog.fc2.com/blog-entry-1440.html

・ウィキペディア「量」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F

・「物理量」「精度と確度」
 http://www.chem.tsukuba.ac.jp/kazuya/kazuya/Chap02.pdf

・横河電機「まめ知識 確度表現について」
 http://www.yokogawa.co.jp/ns/tips/ns-tips11-ja.htm

※審査委員の数を5倍にするのは、測定5回で平均、とも違って(そんな単純な寄せ集めチームではありませんですとも)、確度と似たようなものだと曲解されます。(あくまで曲解です。)そして、論文の審査は測定ではありませんから確度とは呼べず、仮に「尤度のようなもの」「(できるかどうか明らかではないが)しようとする」くらいにはいえるかなぁ、ということです。

 参考文献リストを参照しますと、英語の教科書らしき書籍が2件、英語論文(ただし1920年代)が2本、訳書が1件、挙げられています。(章ごとに示されているため、同じ英語論文が3回ずつ挙げられています。)これまでのお仕事の一種「集大成」ということなのでしょうけれども、いま博士論文に取り組まれる若いかたにあっては、これからの研究(他人によるものを含む)に資するべく、国際的な視点から、先行研究を広く丹念に調査すべきである、と指導されるかと思います。

 いま「EM Screening」といって検索しますと、出てきました。

・「Background and introduction to EM screening (shielding) behaviours and measurements of coaxial and symmetrical cables, cable assemblies and connectors」(1998年)
 http://ieeexplore.ieee.org/xpl/login.jsp?tp=&arnumber=710505&url=http%3A%2F%2Fieeexplore.ieee.org%2Fxpls%2Fabs_all.jsp%3Farnumber%3D710505

 よくわからないが遮蔽できたことだけ確認しました、という「shielding」とは違って、いかにしてケーブルやコネクタから出入りするのかを詳細に測定しましょうというのが「screening」なんだと、仮に理解されます。

・「Modelling shielding properties of concrete」(2006年)
 http://ieeexplore.ieee.org/xpl/login.jsp?tp=&arnumber=1629552&url=http%3A%2F%2Fieeexplore.ieee.org%2Fxpls%2Fabs_all.jsp%3Farnumber%3D1629552

 ここからさらに参照されている文献あたりが、実は博士論文でも参照すべきであった、ということはなかったでしょうか。

 > Antonini, G; Orlandi, A; and D'Elia, S, "Shielding effects of reinforced concrete structures to electromagnetic fields due to GSM and UMTS systems", IEEE Trans on Magnetics, Vol 39, No 3, May 2003, pp. 1582 - 1585.

 > Robert, A. "Dielectric permittivity of concrete between 50 MHz and 1 GHz and GPR measurements for building materials evaluation", Journal of Applied Geophysics, Vol. 40, 1998, pp. 89 - 94.

 いかにも「チーン!」と「AF帯」などでATCしているうちは関係なくとも、デジタルになりつつGSMだとか、無線併用の何かでGSMだとかとなってきますと、このあたりなのではないでしょうか。

※いえいえいえ、「チーン!」と聴こえるのでAF帯だ、なんて、そんな『超解釈』をしてはいけません。実際には聴こえない(可聴域でない)周波数であってもAF帯に含めて言及されるということです。

・ウィキペディア「高周波」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%91%A8%E6%B3%A2

http://www.researchgate.net/profile/Giulio_Antonini/publication/3110306_Shielding_effects_of_reinforced_concrete_structures_to_electromagnetic_fields_due_to_GSM_and_UMTS_systems/links/0912f50451cf38509a000000.pdf

 > (文献9)
 > H. Chiba and Y. Migazakim, “Reflection and transmission characteristics of radio waves at a building site due to reinforced concrete slabs,”Electron Commun. Japan, pt. 1, vol. 81, no. 8, pp. 68–80, 1998.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/%28SICI%291520-6424%28199808%2981:8%3C68::AID-ECJA8%3E3.0.CO;2-%23/abstract

 > Hajime Chiba and Yasumitsu Miyazaki
 > 電子情報通信学会

 とのことで、え゛ー、「Y. Migazakim」はないでしょ、と絶句されます。

・『Y. Migazakim』とされるセンセイのホームページ
 http://www.aut.ac.jp/electronic/electronic2/staff/webstaff/miyazaki.htm

 それはそれとしまして(恐縮です)、土木構造物の鉄筋の電磁誘導など(単に絶縁や接地ということでなく、の意)、新幹線くらいに長大で連続する区間がないと大きな影響(いわば「(『無視できないレヴェル』の)実害」)は現れてこないものでしょうから、一般の土木では考慮されず、電気でも、一般の電気通信の研究においては考慮されず(管路内での干渉は研究されましょうが、ここでは鉄筋よりも通信ケーブル同士のほうに興味があって、の意)、鉄道ならではの研究だなぁ、と実感できるかと思います。

・「コンクリートの電気的特性に関する研究(1)」日本大学生産工学部 学術講演会(2006年)
 http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kouendata/No.39/2_denki/2-035.pdf
 http://www.cit.nihon-u.ac.jp/laboratory/industrial-technology/kouen/39

 あるいは、在来線の高架化が進むと在来線でも考慮が必要となってくるのでしょうか。ましてや、ケベック州が「大停電」するような太陽嵐にあって(ケベック州に全線高架の新幹線網があったとして)高架橋の鉄筋に大きな電流が流れ(電流が流入するのでなく、鉄筋が直接、磁気で揺さぶられるのです、の意)、あちこちで火災に(き電線の短絡や落雷には耐える絶縁も破られ、の意)、などと、何をどこまで、誰が考えればよいのかということの切り分けは、かなり微妙であります。

・「磁気浮上式鉄道の構造物に用いる鋼材の磁気抗力に関する研究」(1996年)
 http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/543/543-122870.pdf


●つくばエクスプレスは150bpsで20bit


 同、博士論文の中で、つくばエクスプレスのATCに関する業績も組み込まれていて、これはこれでたいへん参考になります。

 > 信号通過帯域として200Hzを確保した結果,偏移周波数±37.5Hzで伝送速度150bpsが実現でき,伝送情報量として20bitを確保できる。表3.3に主要な情報の割付を示す。

 > 情報は本線主進路用,本線入換用および車両基地用の3種に区分した。主進路情報には,停止信号と160までの5km/h刻みの速度情報及び,P45等のORP信号を割当てた。また予告情報,到着番線および先行列車までの距離情報を割当て,これを運転台に表示して乗務員の運転操縦性の向上を図った。本線での運転取扱いは,入換えを含めて全て車内信号によるものとし,保安度も全て同一とした。また,入換地上信号機による運転を基本とする車両基地内でも,ATC情報により誤出発防止と終端防護機能を設け,基地内の保安度を向上した。この様に,DCTによる情報量の増大は,線区内における安全性と操縦性の向上をもたらした。

 「5km/h刻み」というところが、うーん、しかし「20bit」ならしかたない、とあきらめられます。

 > 表3.3
 > Speed Code 6 01, 5〜160 , ORP S01, S15〜S45, ORP X01, X25, ORP

 速度情報(運転を許可する最高速度)は6ビットで、(26=)64値をとれることがわかります。このうち、本線で34、いわゆる「副本線」で8、車両基地で3の、あわせて45値(ORP信号が1種類ずつの場合)が使われ、(同)19値が余らせてあるという計算になりますが、あきらかに5ビット(32値)では足りないため、次はいきなり6ビットだという、ちょっとぜいたくな感じもしないでもありません。ATCをこのまま、あと19値でいかなる拡張ができるかなぁ、などと一種「想像」してみるのも勉強になりそうです。本線での逆線運転で「-5〜-90」(18値)とか、できないんでしょうか…いえ、それはまったく別の話ですね、たぶん。

・「20bit」(2010年11月27日)
 http://robotcontroller.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/20bit-de16.html

 「1,048,576通り」の値をとることができるとみると多そうに思えるかもしれませんが、いえいえ、「組合せ」によって一種「爆発」的にビットが消費されます。先行列車までの距離は4bitとのことで、3000mまでを、16値で扱っている…結構、大雑把なんだなぁ、と思わせられます。対数的に、遠くは低い分解能で、近いほど高い分解能となるよう、目盛りが振られているのでしょう、と想像されます。(あくまで想像です。)他方で、線路の区分だけで2bitも使うというのは信じられず、特に、速度情報がそれだけで「15」と「S15」など、線路の区分を包含した値を割り当ててあるのであれば、区分の2bitは要らないのではないか、と素朴には思えます。もっと詳しくは、圧縮アルゴリズムの話に進んでいくんですね、わかります。

 なお、この内容は技報でも公開されています。

・日本信号技報「つくばエクスプレス 信号設備」(2006年3月)
 http://www.signal.co.jp/products/railway/technology/written/docs/2009technicaljournal_2006_1.pdf

 > これら全ての情報を地上〜車上間で伝送するためにはATCとして70情報以上の情報伝送能力が必要
 > プリフィックスコンマフリー符号
 > 20ビット(全36ビット)

 とのことで、(古典的には)スタートビット、ストップビット、エラー訂正ビットなどに16ビットを費やしている、と読みますと、実にたいへんな世界だと実感できるような気がいたします。

・京三製作所「Digital/SINPL-ATC」
 http://www.kyosan.co.jp/product/product02-06.html

 > 地上装置がレールを介して送信するATC電文は、情報20ビットにPCF(prefix comma-free)とCRC符号を付加して、フレーム情報は36ビットとしています。
 > 3電文中2電文の一致を制御に反映させる複数一致理論を採用することで情報の信頼性を向上させました。

 ほぼ同じ仕様だとしますと、150bpsで毎秒4.166...回の送信が可能です。それでもなお「3電文中2電文の一致」としているからには、毎秒1回の送信を保証するために、1回でなく4.166...回は送信しないといけないくらい、エラーが起きるということだろう(きわめて単純には毎秒2回エラーが起きてもしかたがない)と読み解かれます。レール、という制約下では、たいへん貴重な20bitなんだと理解されます。


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