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【研究ホワイトボックス】

研究を楽しく「追体験」! 真っ白のキャンバスに虹色の未来を描く方法、教えます。



[3340]

新訂版「自由研究あり検」ができるまで(仮)

発想 研究 自由研究 キット ダイオウイカ 平均文数 平均文長 適正値 試案


1稿:動機とサーベイを「素直そして正直」に書き下す
2稿:「調査」と「考察」の枠組みを仮組みする
3稿:「成果物の表現形式」を定義する
4稿:導入部(イントロ)に旬のダイオウイカを仕込む
5稿:表1ならびに表2
6稿:表2を年代順に並べ替え、表3、表4.1、表4.2を追加
7稿:わが名はブーメランと呼ばれる考察、泣きっ面にもバチッと容赦ないのが考察と呼ばれるブーメランである(定義が循環しています)
8稿:お探しのお忘れ物はこちらですか??
9稿(暫定0版):マージそして4節から2節へ
10稿:冷たく、冷た〜く
表1 自由研究における成果物の順序関係
表2 自由研究に関する指示の例
表1 自由研究における成果物の順序関係
表2 自由研究に関する指示の例(抜粋)
表3 一般化した論文の目次と評価の観点の対応関係
表4.1 自由研究に関する指示の例と一般化した論文の目次の対照
表4.2 自由研究に関する指示の例と論文が備えるべき具体的な性質の対照
表4.3 自由研究における成果物の表現形式への言及
表1 自由研究における成果物の種類とその順序関係
表2 自由研究に関する指示の例(抜粋)
表3 一般化した論文の目次と論文が備えるべき具体的な性質との対応関係
表4 自由研究に関する指示の例と一般化した論文の目次の対照
表5 自由研究に関する指示の例と論文が備えるべき具体的な性質の対照
表6 自由研究における成果物の種類への言及
表1 自由研究における成果物の種類とその順序関係
表2 自由研究に関する指示の例(抜粋)
表3 一般化した論文の目次と論文が備えるべき具体的な性質との対応関係
表4 自由研究に関する指示の例と一般化した論文の目次の対照
表5 自由研究に関する指示の例と論文が備えるべき具体的な性質の対照
表6 自由研究における成果物の種類への言及


 [3339]が「約5000字」とのことで(=このフォーラムの表示による)、きちんと書けば「3,600字くらい」かなぁ、と思われました。試しに書きなおしてみようではありませんか。


・1.はじめに
・2.背景
・3.調査
・4.考察
・5.まとめ

 さすがに「科学実験」ではなく「社会科の調べ学習」の系統のまとめ方にさせていただきます。(実験しないで調査します、の意。)


★1稿:動機とサーベイを「素直そして正直」に書き下す


・1.はじめに

 本稿では、自由研究を日常の学習指導の発展と位置づけ、自由研究における成果物の表現形式が有する学習指導上の機能についてまとめる。

・2.背景

 近年、高大連携による先進的な理科教育を目的として「SSH」が実施されている[3094]が、大学からは、工学との連携の不足[3137]、数学教育の絶対的な不足[3094]、実社会の諸課題と真摯に向き合う姿勢の欠如[3126]などが指摘されている。

 野島は、化学分野における実験ノートの運用に関する注意点を、学部1年生向けにまとめている[3339]。実験ノートは、研究が実際に行なわれたことや、適切な方法で進められたことを保証する唯一の証拠であり、記録漏れおよび改ざんを防ぐことのできる形式や形態で運用される必要があるとしている。

 新井は、大学の法学部に合格するやいなや、高校の数学の教科書を庭で焼いたとしている[3099]。文系の研究者の多くが、断片的な数学的知識または個別の統計手法などを、十分に検討することなく採用せざるを得ない状況にあることが知られている[3097]。また、理系の研究者の中には、英語でのディスカッション能力に課題がある者が少なくないことが知られている[3152]

 大西らは、企業で発明に従事する博士の特許出願件数および被引用件数を、課程博士と論文博士の間で比較している[3126]。修士了で論文博士を取得した者と比べ、課程博士の生産性がライフサイクル全体で約63%高いとしている。基礎研究に取り組む企業では、修士了の人材に数年の経験を積ませた上で博士後期課程に進学させ、課程博士を取得させるというキャリアパスが一般的になってきていることが知られている[3126]

 筆者は、論文の目次を一般化する「メタ目次」の研究指導への導入について検討している[3093]

・3.調査

・4.考察

・5.まとめ

 本稿では、自由研究を日常の学習指導の発展と位置づけ、自由研究における成果物の表現形式が有する学習指導上の機能について検討した。

 具体的には、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて収集し、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討した。その結果、


★2稿:「調査」と「考察」の枠組みを仮組みする


・3.調査

 本節では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて収集し、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討する。また、実際の学習指導に即して、自由研究における成果物の表現形式ごとに対照する。

・4.考察

 調査結果より、自由研究における成果物の表現形式が有する学習指導上の機能についてまとめる。


★3稿:「成果物の表現形式」を定義する


・3.調査

 本節では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて収集し、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討する。また、実際の学習指導に即して、自由研究における成果物の表現形式ごとに対照する。

 自由研究における成果物には、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」がある。本稿では、「実物」を除く3種類を、自由研究における成果物の表現形式とする。


★4稿:導入部(イントロ)に旬のダイオウイカを仕込む


・1.はじめに

 本稿では、自由研究を日常の学習指導の発展と位置づけ、自由研究における成果物の表現形式が有する学習指導上の機能についてまとめる。

 自由研究の目的と方法について、広く一般に共通の認識が確立しているとはいえず、特に初等教育の現場や家庭での理解には混乱がみられる。目的と方法は不可分のものとして一体的に検討される必要があるにもかかわらず、目的だけを示して方法の指導がなかったり、目的が定かでないまま方法だけが指導されたりすることが背景になっているとみられる。

 自由研究の指導例として慣習的に「昆虫の採集(標本作り)」や「植物の観察(栽培の記録または標本作り)」が挙げられることや、一般に「自由研究お助けセット(キット)」として工作(教科としての図工、美術、技術に属する内容)のキットが販売されていることから、「実物」や「作品」の提出を受け付ける学校やコンクールが多い。

 実際の研究で、「実物」そのものが研究成果とみなされる例はきわめて限定される。例えば、深海に生息するダイオウイカの捕獲について、捕獲されたダイオウイカ(実物)を成果物とみなすのは誤りであり、いつでも誰でも(別の海洋学者が、同規模の予算や人員で、同等の資機材を用いて)ダイオウイカを捕獲できるための「捕獲の方法」が論文にまとめられて初めて成果物とみなすことができる。また、ダイオウイカの形質や生態について、ダイオウイカの標本がありさえすればいいというものではなく、ほかの種類のイカとの違いが分析され、また、予想されていた違いを生体や標本で確かめたということがあって初めて研究成果とみなすことができる。

 以下、2節で自由研究を含む研究の指導における課題や研究の実施に関する状況についてまとめ、3節で調査方法および調査結果を示し、4節で考察し、5節でまとめる。


★5稿:表1ならびに表2


・3.調査

 本節では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて収集し、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討する。また、実際の学習指導に即して、自由研究における成果物の表現形式ごとに対照する。

・3.1 成果物の表現形式

 自由研究における成果物には、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」がある。本稿では、「実物」を除く3種類を、自由研究における成果物の表現形式とする。研究の実施におけるこれらの順序関係を表1に示す。

■表1 自由研究における成果物の順序関係

成果物の種類
(一般の呼称)
着手する
順序
(段階)
完成する
順序
(段階)
備考
主論文
(論文、レポート)
33主論文を作成する段階を3とする。
3で並行して作成してよいのは掲示物のみとする。
野帳
(実験ノート)
14最初から最後まで野帳に記録する。
掲示物
(ポスター)
3〜43〜4主論文が完成してから取り組まれるのが望ましいとされる。
ポスター発表に際して1〜2ページの短報を課す場合がある。
実物
(標本、試作品、写真、
回収した調査票の原本、
展示物、ソフトウェア)
1〜2
または
4
2
または
4
実験や試作としての実物は1〜2の段階、
デモンストレーションとしての実物は
4の段階で作成されるとする。
写真や調査票の見本など紙上に掲載できるものは
論文の付録に含める。


 最終的には「主論文」のみが研究成果として扱われるが、研究内容の発表に際して、「掲示物」や「実物」が補助的に用いられる。また、「実物」は研究の過程を体現するものであるから、発表での使用の有無にかかわらず保管または撮影等により記録される必要がある。

 「野帳」は、研究の過程で最初から最後まで一貫して記録され続けるものである。また、研究上の不正が疑われたときに証拠となるものである。「野帳」には、未発表のアイデアや交友関係など秘密とすべき内容も含まれることから、一般には公開するものではないが、自由研究においては、学習の過程を評価対象にすることから、「野帳」の提出を求めることにしているとみられる。

・3.2 自由研究に関する指示の例

■表2 自由研究に関する指示の例

神栖市立大野原小学校*1
(茨城県、1978年開校)
・「理科科学研究の手引き」
・「理科科学研究の手順」
・「掲示物の作り方」
・「作品規定」
豊中市教育センター*2
(大阪府、1949年開設、
1957年から2003年まで「教育研究所」)
・「テーマを見つけよう」
・「研究を深めよう」
・「自分なりにまとめよう」
・「夏休み理科自由研究相談会」
・「科学賞やコンクールの作品」
仙台市科学館*3
(1952年から実験指導、
1968年から科学館)
・「研究の部・標本の部・科学工作の部」
・「テーマを見つけよう」
・「ほかの人の研究を参考に」
・「研究の流れ」
・「研究の方法を考えよう」
・「観察や実験のしかた」
・「思うようにいかなくても」
・「まとめる順序(おおよその目安)」
学研キッズネット*4
(民間のウェブサイト、
1996年開設)
・「編集部のおすすめ研究テーマ」
・「ワークシート」
・「かっこよく見えるまとめ方」


*1 http://www.sopia.or.jp/onohara/wp/wp-content/uploads/2014/08/H26-%E7%90%86%E7%A7%91%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%E3%83%BB%E6%89%8B%E9%A0%86.pdf
*2 http://www.toyonaka-osa.ed.jp/educ/index.cfm/1,1792,27,116,html
*3 http://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/h26topics/topic14_10.htmlhttp://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/doc/14_06/H26independent_research_E56.pdf
*4 http://gakken-plus.co.jp/news/201604/20160401.html

・3.3 結果


★6稿:表2を年代順に並べ替え、表3、表4.1、表4.2を追加


・3.調査

 本節では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて収集し、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討する。また、実際の学習指導に即して、自由研究における成果物の表現形式ごとに対照する。

・3.1 成果物の表現形式

 自由研究における成果物には、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」がある。本稿では、「実物」を除く3種類を、自由研究における成果物の表現形式とする。研究の実施におけるこれらの順序関係を表1に示す。

■表1 自由研究における成果物の順序関係

成果物の種類
(一般の呼称)
着手する
順序
(段階)
完成する
順序
(段階)
備考
主論文
(論文、レポート)
33主論文を作成する段階を3とする。
3で並行して作成してよいのは掲示物のみとする。
3以後で実験のやり直しをしてはならない。
野帳
(実験ノート)
14最初から最後まで野帳に記録する。
掲示物
(ポスター)
3〜43〜4主論文が完成してから取り組まれるのが望ましいとされる。
ポスター発表に際して1〜2ページの短報を課す場合がある。
実物
(標本、試作品、写真、
回収した調査票の原本、
展示物、ソフトウェア)
1〜2
または
4
2
または
4
実験や試作としての実物は1〜2の段階、
デモンストレーションとしての実物は
4の段階で作成されるとする。
写真や調査票の見本など紙上に掲載できるものは
論文の付録に含める。


 最終的には「主論文」のみが研究成果として扱われるが、研究内容の発表に際して、「掲示物」や「実物」が補助的に用いられる。また、「実物」は研究の過程を体現するものであるから、発表での使用の有無にかかわらず保管または撮影等により記録される必要がある。

 「野帳」は、研究の過程で最初から最後まで一貫して記録され続けるものである。また、研究上の不正が疑われたときに証拠となるものである。「野帳」には、未発表のアイデアや交友関係など秘密とすべき内容も含まれることから、一般には公開するものではないが、自由研究においては、学習の過程を評価対象にすることから、「野帳」の提出を求めることにしているとみられる。

・3.2 自由研究に関する指示の例

 インターネットで収集した自由研究に関する指示の例を表2に示す。

■表2 自由研究に関する指示の例(抜粋)

豊中市教育センター*1
(大阪府、1949年開設、
 1957年から2003年まで
 「教育研究所」)
・「テーマを見つけよう」
・「研究を深めよう」
・「自分なりにまとめよう」
・「夏休み理科自由研究相談会」
・「科学賞やコンクールの作品」
仙台市科学館*2
(1952年から実験指導、
 1968年から科学館)
・「研究の部・標本の部・科学工作の部」
・「テーマを見つけよう」
・「ほかの人の研究を参考に」
・「研究の流れ」
・「研究の方法を考えよう」
・「観察や実験のしかた」
・「思うようにいかなくても」
・「まとめる順序(おおよその目安)」
神栖市立大野原小学校*3
(茨城県、1978年開校)
・「理科科学研究の手引き」
・「理科科学研究の手順」
・「掲示物の作り方」
・「作品規定」
印西市立原小学校*4
(千葉県、1996年開校)
・「デジカメでのこそう」
・「表やグラフにまとめてみる。」
・「しらべるのにつかった本やビデオ,
 パンフレット,ホームページなどを書く。」
・「論文は,原稿用紙又はパソコン等を
 使って書くことが望ましい。」
・「スケッチブックに貼る。」
・「本やホームページなどだけから調べた
 ものは研究にはなりません。」
・「毎年出品作品が少ないので
 賞に入りやすいです。」
学研キッズネット*5
(民間のウェブサイト、
 1996年開設)
・「編集部のおすすめ研究テーマ」
・「ワークシート」
・「かっこよく見えるまとめ方」


*1 http://www.toyonaka-osa.ed.jp/educ/index.cfm/1,1792,27,116,html
*2 http://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/h26topics/topic14_10.htmlhttp://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/doc/14_06/H26independent_research_E56.pdf
*3 http://www.sopia.or.jp/onohara/wp/wp-content/uploads/2014/08/H26-%E7%90%86%E7%A7%91%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%E3%83%BB%E6%89%8B%E9%A0%86.pdf
*4 http://inzai.ed.jp/hara-es/12rika/jiyuukennkyuu.pdf
*5 http://gakken-plus.co.jp/news/201604/20160401.html

 Googleを用いて検索し、上位に表示されたものを取得した。「神栖市立大野原小学校」「仙台市科学館」「学研キッズネット」の例は、本稿に先だって把握していたものである。「豊中市教育センター」の例は「自由研究 site:.ed.jp」、「印西市立原小学校」の例は「自由研究 パソコン site:.ed.jp」のクエリで検索して取得したものである。かぎ括弧内の記述は原文の通りで、2016年8月23日に取得したものである。

・3.3 一般化した論文の目次

 一般化した論文の目次と、論文の査読における評価の観点との対応関係を表3に示す。

■表3 一般化した論文の目次と評価の観点の対応関係





見出しの例主に述べる観点









重み
weight
1はじめに(動機、序論)
introduction
新規性・独創性1/3+1/2=5/6
2背景(先行研究)
background
新規性・有用性1/3+1/2=5/6
3実験(調査、提案手法)
experiment
新規性・独創性・再現性1/3+1/2+1/2=4/3
4考察(評価、分析)
evaluation
有用性・正確性・再現性1/2+1+1/2=2
5おわりに(結論、まとめ)
conclusion
独創性・有用性N/A
33312


 本稿では、論文の査読における評価の観点を、論文が備えるべき具体的な性質とみなし、「新規性」「独創性」「有用性」「正確性」「再現性」の5種類があるとする。観点そのものの定義は行なわない。

・3.4 結果

 インターネットを用いて収集した自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次と対照した結果を表4.1に、論文が備えるべき具体的な性質と対照した結果を表4.2に示す。

■表4.1 自由研究に関する指示の例と一般化した論文の目次の対照

1 動機2 先行研究3 計画4 考察5 まとめ
豊中市教育センター
仙台市科学館
神栖市立大野原小学校×
印西市立原小学校×××
学研キッズネット×


■表4.2 自由研究に関する指示の例と論文が備えるべき具体的な性質の対照

新規性独創性有用性正確性再現性
豊中市教育センター
仙台市科学館
神栖市立大野原小学校
印西市立原小学校
学研キッズネット××


 一般化した論文の目次との対照では、自発的な動機やきっかけに基づいてテーマを選ぶよう促す記述があれば「1 動機」を「○」、前年度の入賞作品などを参照することを促す記述があれば「2 先行研究」を「○」、実験や観察の計画立案や実施手順について具体的な記述や見本があれば「3 計画」を「○」とした。また、実験結果の考察について具体的な方法、特に予想が外れたときの対応に言及する記述があれば「4 考察」を「○」、研究成果のまとめ方について具体的な方法や手順を示す記述があれば「5 まとめ」を「○」とした。

 論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「自分なり」のテーマ探しを促す記述があれば「新規性」「独創性」を「○」、コンクールへの応募を念頭にした記述があれば「有用性」を「※」、観察や実験の正確な記録を促す具体的な記述があれば「正確性」を「○」とした。

 また、いずれの対照においても、逆のはたらきが懸念される記述等があれば「×」とし、特に示唆を与えず本人や家庭の判断に委ねられているものは空欄とした。

 豊中市教育センターの記述では、「3 計画」「4 考察」「5 まとめ」について具体的な言及はない一方、「夏休み理科自由研究相談会」で対応されているとみられることから「△」とした。

 「独創性」について、豊中市教育センターの記述では「独創性」「他人の知識やインターネットの情報に頼って予想される結果を確かめる研究よりも、失敗したとしても自分の発想で挑戦した研究の方がずっとワクワクできると思います。そのワクワク感を味わって欲しいな。」と明示されていることから「○」とした。仙台市科学館の記述では、「本やインターネットで調べたことの再現は研究じゃないですよ」「実験と観察を組み合わせた研究」「研究のための新しい観察法や実験装置の工夫」と具体的に述べられているものの、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっているとみられることから空欄とした。

 「2 先行研究」について、印西市立原小学校の記述では、参照する媒体の種類が列挙されており、結果的に本人や保護者が他人の自由研究の成果物(入賞したものやテーマが近いもの)を先行研究として参照することを妨げる恐れがあるとみなし「×」とした。神栖市立大野原小学校の記述では「友だちの研究から」との記述はあるものの、前年度や他校の例を積極的に参照させようという意図がみられないことから空欄とした。

 「4 考察」について、神栖市立大野原小学校の記述では「考察」という語が使われず「よく考え,結論を出すことが大切です。」「研究の反省」「かんそう」と曖昧に述べられているほか、「ぜんぶ自分のやった観察記録を「表やグラフでデータとしてまとめ」るなどして,よく考えてまとめます。」と述べられ、「3 実験」と「4 考察」を書き分けることへの理解を妨げる恐れがあるとみなし「×」とした。

 民間の学研キッズネットでは、「編集部のおすすめ研究テーマ」「ワークシート」が用意されていることが最大の特徴であり、これらの活用により自由研究を確実に達成させることに主眼がある。「3 計画」について、具体的な計画を例示していることから「○」とした。しかし、自発的な動機に基づく主体的な活動には直結せず、翌年度以降に発展させることも困難になる恐れがあるとみられるため、「1 動機」「新規性」「独創性」を「×」とし、その他の項目を「△」とした。「有用性」については、理科の単元の正確な理解への到達が目標とされており、応用的な研究やコンクールへの応募は想定されていないとみられることから空欄とした。

・参考

 1) 文部省「学習指導法の一般」(1947年) https://www.nier.go.jp/guideline/s22ej/chap4.htm


★7稿:わが名はブーメランと呼ばれる考察、泣きっ面にもバチッと容赦ないのが考察と呼ばれるブーメランである(定義が循環しています)


・4.考察

 調査結果より、自由研究における成果物の表現形式が有する学習指導上の機能についてまとめる。

 本稿では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて5件収集した。これらは、開設や開校の時期が1950年代、1970年代、1990年代の3つに大別できる。ただし、参照した記述はいずれも現時点のものであり、開設や開校の時期の違いが現時点の記述の違いにも影響しているのかは不明である。

 自由研究は、1947年から実施された学習指導要領(試案)において教科の1つと位置付けられ、これを受け、1950年代、各地に科学実験の指導ができる人材や施設が配置されていった。豊中市教育センターの前身の教育研究所や、仙台市科学館の前身のサイエンスルームでの実験指導は、この時期の取り組みの典型である。また、このような経緯から、自由研究の指導はその後も理科の教員が主な担い手となって続けられてきた。

 初等学校での理科教育における転機は、1970年代と1990年代にもみられる。これらと自由研究の指導との関係について、以下にまとめる。

 1970年代には、1973年に開学した筑波大学を端緒とする「新構想大学」が展開され、その後、新しい体制やカリキュラムで教員免許を取得した者が教育現場の主流になっていった。1978年に開校した神栖市立大野原小学校では、開校時の教員らによって当時の最新の知見に基づき形成された理科教育の方針などが、その後も大きく変えられることなく続けられているとみられる。また、同校に限らず茨城県内では、筑波大学の開学や、1985年の科学万博の波及効果によって、この時点までに確立されていた科学技術に関する教育が普及しているとみられる。

 1990年代には、公立の学校でパソコン教室の整備が進められた。これに呼応して、自由研究についてもマルチメディアの活用に重点を置いて指導してきたとみられるのが、1996年に開校した印西市立原小学校である。「パソコン等を使って書くことが望ましい。」とする一方で「スケッチブックに貼る。」と説明するなど、新しい設備やメディアの活用と従来の指導法との間で混乱があるように見受けられる。また、表計算ソフトやプログラミング言語の活用の可否には言及されていない。「毎年出品作品が少ないので賞に入りやすいです。」とも記述するなど、科学的な研究の進め方についての配慮は薄く、科学館学習の導入期に目指されてきた理科教育や、新構想大学の成否が注目された時代に普及した科学技術教育との間には断絶がある。

 本稿では、収集した自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次、および、論文が備えるべき具体的な性質と対照した。

 まず、一般化した論文の目次との対照では、自発的な動機やきっかけに基づいてテーマを選ぶよう促す記述があるのは豊中市教育センターと仙台市科学館で、印西市立原小学校と学研キッズネットでは、自発的な動機が醸成されるのを待たずに資料やワークシートを参照させている。先行研究として他者の自由研究を参照するよう明示的に促しているのは豊中市教育センターと仙台市科学館に限られる。論文の目次の5項目すべてに対応する具体的な指示となっているのは、豊中市教育センターと仙台市科学館に限られることがわかった。

 論文の核となるのが実験または調査である。実験や観察の計画立案や実施手順について具体的な記述や見本を示すことは、多大な労力を要することであり、学校が作成する場合は教科書の範囲など、ごく限られたものになりがちであるとみられる。印西市立原小学校の記述では、「標本を作ろう」の例示のみが具体的であるが、ほかのテーマに対応する具体的な記述や見本はない。「本やホームページなどだけから調べたものは研究にはなりません。」との記述があることから、事実上、個別の研究テーマに関する見本をインターネットで参照することを前提にしているとみられる。また、自由研究で活用できるデータやツールの拡大が急速に進む中、短期間で陳腐化する恐れのある具体的な研究例を示すことに対して慎重になっているとみられる。

 論文でいう考察には一定の形式や方法がある。前節までで導入した先行研究および実験や調査の結果のみを用いて、論文の目的に即し、実験や調査が目的を達成したかどうかを詳細に述べるのが考察である。神栖市立大野原小学校の記述にある「よく考え」という表現は、国語辞典における「考察」の語釈によっているとみられるが、この説明では、論文でいう考察を説明することにつながらない。

 研究成果のまとめ方については、5件とも、具体的な方法や手順を示す記述があった。しかし、実験に失敗した場合の対応、および、論文の構成とは異なる実際に取り組む際の順序(研究の流れ)に言及しているのは、仙台市科学館と神栖市立大野原小学校に限られることがわかった。豊中市教育センターでは、「夏休み理科自由研究相談会」での個別の人的対応および「科学賞やコンクールの作品」の参照によって解決すべきとされていることになるため、事前の指示としての明文化に不備があるとみなした。

 次に、論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「新規性・独創性」に対応する指示のある群と「正確性・再現性」に対応する指示のある群の2つに大別されることがわかった。学習指導上の方針や施策との関連では、前者は「発明・工夫」や「アクティブ・ラーニング」に通じるもので、後者は「単元の正確な理解と定着」に資する追試の性格が濃いものである。

 印西市立原小学校の記述は、「正確性」を除く4つの性質に対応する指示があり、5件の中で最も厳格なものである。なお、仙台市科学館の記述は、5つの性質すべてに対応するものの、「新規性・独創性」について、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっているとみられることから、この2つの性質には対応しないとみなした。

 自由研究において「有用性」を問うのは困難であると考えられるが、校外の科学賞やコンクールに応募する際は問われることになることから、自由研究の指示としても実質的に「有用性」を問うている例がほとんどで、「有用性」を不問にして取り組ませるのは学研キッズネットに限られることがわかった。


★8稿:お探しのお忘れ物はこちらですか??


・3.4 結果

 (続き)

 次に、インターネットを用いて収集した自由研究に関する指示の例における、自由研究における成果物の表現形式への言及について表4.3に示す。

■表4.3 自由研究における成果物の表現形式への言及

主論文野帳掲示物
豊中市教育センター
仙台市科学館×
神栖市立大野原小学校×
印西市立原小学校×
学研キッズネット


 豊中市教育センターの記述は、具体的な表現形式には言及していないが、実質的に「主論文」をまとめるよう促しているとみられる。しかし「これらの項目は1つの例ですので、自分で自由に決めて研究をまとめましょう。」と説明しているため、具体的な指示はされていないとみなす。「野帳」に関しては、「記録をしっかりと残すことも大切です。気付いたことは何でもメモするようにします。」と説明しており、限定的ながら注意点が挙げられている。

 仙台市科学館の記述は「詳しく記録したレポート」として、実質的に「主論文」と「野帳」を合冊にした成果物のまとめ方を説明している。「掲示物」については「模造紙半分の大きさ1枚に研究の概要をまとめてください。(詳しくは,学校の先生に聞いてください)」と指示している。「野帳」に関する明示的な言及はみられず、「写真を撮る」「観察の結果,実験の結果と調べたこと,考えたことは区別しよう」との説明により間接的に「野帳」に関する注意点が示されている。

 神栖市立大野原小学校の記述では「ここまでで,野帳はほぼ完成です。野帳はまとまったものでなくても構いません。」とされている。「理科科学研究の手順」では「主論文」と「野帳」の区別があいまいなまま研究の流れが示されている。「掲示物」については「主論文の内容を簡潔に表したもの。」との説明がある。

 印西市立原小学校の記述では「主論文」と「野帳」の区別がないまま「つぎのようにまとめて書いていきましょう。」として、冒頭で「研究テーマ(題名)」を書くよう指示している。実質的な「野帳」の説明をしているとみられ、その後の箇所で「科学論文を書こう」に進む構成になっている。この中で「図表,パネルは,模造紙大以内の大きさとし,1点以内にする。」という指示があり、事実上、科学賞に応募させるための「掲示物」をつくらせるための指示とみられる。「主論文」と「掲示物」の明示的な区別はされていない。

 「野帳」に求められる注意点は、神栖市立大野原小学校、印西市立原小学校ともに言及されていない。

 学研キッズネットでは「掲示物」ができあがるように構成された「ワークシート」が提供されている。

・4.考察

 (続き)

 これらの対照を踏まえ、自由研究における成果物の表現形式が有する学習指導上の機能について以下にまとめる。

 研究遂行能力の核となり、研究倫理の遵守にも資するのが「野帳」である。このような観点から「野帳」の運用上の注意点に言及するものは、5件の中にはなかった。豊中市教育センターの記述は、限定的ながら「野帳」の重要性を強調するものとなっており、仙台市科学館の記述では、間接的ながら研究実施の証拠としての写真撮影に言及している。一方、印西市立原小学校の記述ではデジタルカメラの使用への言及があるものの、具体的な活用方法や研究上の写真撮影の意義については言及されていない。

 「主論文」は、「野帳」との区別の上に成り立ち、実験や観察、調査など一連の研究内容から特定の研究成果に絞り、一定の形式に従ってまとめるものである。仙台市科学館の記述は、「野帳」と区別なく「詳しく記録したレポート」としているものの、「主論文」の説明として十分であるとみなせる。神栖市立大野原小学校と印西市立原小学校の記述でも、説明される手順に従って自由研究を進めれば「主論文」にあたる成果物が完成するようになっている。一方、豊中市教育センターの記述では、「主論文」の目次とみられる内容が例示されながら「これらの項目は1つの例ですので、自分で自由に決めて研究をまとめましょう。」としており、一定の形式に従ってまとめることを学ぶ面で機能を失っている。

 「掲示物」は、「主論文」の作成を終えた後、その要約(概要)として、研究成果の要点を視覚的にアピールするものである。神栖市立大野原小学校の記述では「主論文の内容を簡潔に表したもの。」との説明がある。印西市立原小学校の記述では「図表,パネルは,模造紙大以内の大きさとし,1点以内にする。」という指示があり、「掲示物」の位置づけが正しく示されているとはいえない。学研キッズネットでは、説明される手順に従って自由研究を進めれば「掲示物」にあたる成果物が完成するようになっている。


★9稿(暫定0版):マージそして4節から2節へ


・1.はじめに

 自由研究の目的と方法について、広く一般に共通の認識が確立しているとはいえず、特に初等教育の現場や家庭での理解には混乱がみられる。目的と方法は不可分のものとして一体的に検討される必要があるにもかかわらず、目的だけを示して方法の指導がなかったり、目的が定かでないまま方法だけが指導されたりすることが背景になっているとみられる。

 自由研究の指導例として慣習的に「昆虫の採集(標本作り)」や「植物の観察(栽培の記録または標本作り)」が挙げられることや、一般に「自由研究お助けセット(キット)」として工作(教科としての図工、美術、技術に属する内容)のキットが販売されていることから、「実物」や「作品」の提出を受け付ける学校やコンクールが多い。

 実際の研究で、「実物」そのものが研究成果とみなされる例はきわめて限定される。例えば、深海に生息するダイオウイカの捕獲について、捕獲されたダイオウイカ(実物)を成果物とみなすのは誤りであり、いつでも誰でも(別の海洋学者が、同規模の予算や人員で、同等の資機材を用いて)ダイオウイカを捕獲できるための「捕獲の方法」が論文にまとめられて初めて成果物とみなすことができる。また、ダイオウイカの形質や生態について、ダイオウイカの標本がありさえすればいいというものではなく、ほかの種類のイカとの違いが分析され、また、予想されていた違いを生体や標本で確かめたということがあって初めて研究成果とみなすことができる。

 本稿では、自由研究に関する指示の例を詳細に検討し、自由研究が有する学習指導上の機能についてまとめる。以下、2節で自由研究を含む研究の指導における課題や研究の実施に関する状況について述べ本稿の位置づけを示し、3節で調査方法および調査結果をについて述べ、4節で考察し、5節でまとめる。

・2.背景

 自由研究は、1947年から実施された学習指導要領(試案)において教科の1つと位置付けられ、これを受け、1950年代、各地に理科の実験の指導ができる人材や施設が配置されていった。科学館学習は、この時期の取り組みの典型である。また、このような経緯から、自由研究の指導はその後も理科の教員が主な担い手となって続けられてきた。

 1970年代には、1973年に開学した筑波大学を端緒とする「新構想大学」が展開され、その後、新しい体制やカリキュラムで教員免許を取得した者が教育現場の主流になっていった。この時代に開校した学校では、開校時の教員らによって当時の最新の知見に基づき形成された理科教育の方針などが、その後も大きく変えられることなく続けられているとみられる。

 1990年代には、公立の学校でパソコン教室の整備が進められた。これに呼応して、自由研究についてもマルチメディアの活用に重点を置いて指導する学校が現れたとみられる。しかし、一般に新しい設備やメディアの活用と従来の指導法との間で混乱や葛藤が絶えないことが知られている。その上、科学的な研究の進め方についての配慮をも尽くすには、多大な労力を必要とする。

 自由研究の成果物は、最も厳密に形式が指定される場合、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」の4種類に分けられる。これらは、一般にいう論文、実験ノート、ポスターと、一定の期間保存される試料やサンプルまたは新技術のデモンストレーションのための資機材にあたる。

 実験ノートは、研究が実際に行なわれたことや、適切な方法で進められたことを保証する唯一の証拠であり、記録漏れおよび改ざんを防ぐことのできる形式や形態で運用される必要がある。野島は、化学分野における実験ノートの運用に関する注意点を、学部1年生向けにまとめている[3339]。自由研究において「野帳」を書く理由は、これと同じであるとみられるが、成果物として「野帳」を提出させるのは、自由研究の過程を学習の記録として評価対象に含めるためとみられる。

 論文は、実験や観察、調査など一連の研究内容から特定の研究成果に絞り、一定の形式に従ってまとめるものである。ポスターは、論文を要約して作成するものであり、研究成果の要点を視覚的にアピールするものである。

 自由研究の成果物の形式を厳密に指定する例があるのは、コンクールへの応募を念頭にしているためとみられる。とはいえ、自由研究を、日常の学習の延長の活動とみなすことと、コンクールへの応募を念頭にした特別な活動とみなすことは、両立させることができると考えられる。「野帳」は、日常の学習におけるノートのつけかたを再確認し、また補強するものである。「主論文」は、通常の学習では行わない詳細な検討を体験するもので、特別な活動である。「掲示物」は、学習に限らず日常の生活の中で必要とされる情報の要約やプレゼンテーションの能力を養うものである。

・3.調査

 本稿では、学校や科学館などがインターネットで公開している、自由研究に関する指示の例を収集し、その内容を検討する。具体的には、自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討する。また、実際の学習指導に即して、自由研究における成果物の表現形式ごとに対照する。

・3.1 成果物の種類

 自由研究における成果物には、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」がある。研究の実施におけるこれらの順序関係を表1に示す。

■表1 自由研究における成果物の種類とその順序関係

成果物の種類
(一般の呼称)
着手する
順序
(段階)
完成する
順序
(段階)
備考
主論文
(論文、レポート)
33主論文を作成する段階を3とする。
3で並行して作成してよいのは掲示物のみとする。
3以後で実験のやり直しをしてはならない。
野帳
(実験ノート)
14最初から最後まで野帳に記録する。
掲示物
(ポスター)
3〜43〜4主論文が完成してから取り組まれるのが望ましいとされる。
ポスター発表に際して1〜2ページの短報を課す場合がある。
実物
(標本、試作品、写真、
回収した調査票の原本、
展示物、ソフトウェア)
1〜2
または
4
2
または
4
実験や試作としての実物は1〜2の段階、
デモンストレーションとしての実物は
4の段階で作成されるとする。
写真や調査票の見本など紙上に掲載できるものは
論文の付録に含める。


 最終的には「主論文」のみが研究成果として扱われるが、研究内容の発表に際して、「掲示物」や「実物」が補助的に用いられる。また、「実物」は研究の過程を体現するものであるから、発表での使用の有無にかかわらず保管または撮影等により記録される必要がある。

 「野帳」は、研究の過程で最初から最後まで一貫して記録され続けるものである。また、研究上の不正が疑われたときに証拠となるものである。「野帳」には、未発表のアイデアや交友関係など秘密とすべき内容も含まれることから、一般には公開するものではないが、自由研究においては、学習の過程を評価対象にすることから、「野帳」の提出を求めることにしているとみられる。

・3.2 自由研究に関する指示の例

 本稿で検討する自由研究に関する指示の例を表2に示す。

■表2 自由研究に関する指示の例(抜粋)

豊中市教育センター*1
(大阪府、1949年開設、
 1957年から2003年まで
 「教育研究所」)
・「テーマを見つけよう」
・「研究を深めよう」
・「自分なりにまとめよう」
・「夏休み理科自由研究相談会」
・「科学賞やコンクールの作品」
仙台市科学館*2
(1952年から実験指導、
 1968年から科学館)
・「研究の部・標本の部・科学工作の部」
・「テーマを見つけよう」
・「ほかの人の研究を参考に」
・「研究の流れ」
・「研究の方法を考えよう」
・「観察や実験のしかた」
・「思うようにいかなくても」
・「まとめる順序(おおよその目安)」
神栖市立大野原小学校*3
(茨城県、1978年開校)
・「理科科学研究の手引き」
・「理科科学研究の手順」
・「掲示物の作り方」
・「作品規定」
印西市立原小学校*4
(千葉県、1996年開校)
・「デジカメでのこそう」
・「表やグラフにまとめてみる。」
・「しらべるのにつかった本やビデオ,
 パンフレット,ホームページなどを書く。」
・「論文は,原稿用紙又はパソコン等を
 使って書くことが望ましい。」
・「スケッチブックに貼る。」
・「本やホームページなどだけから調べた
 ものは研究にはなりません。」
・「毎年出品作品が少ないので
 賞に入りやすいです。」
学研キッズネット*5
(民間のウェブサイト、
 1996年開設)
・「編集部のおすすめ研究テーマ」
・「ワークシート」
・「かっこよく見えるまとめ方」


*1 http://www.toyonaka-osa.ed.jp/educ/index.cfm/1,1792,27,116,html
*2 http://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/h26topics/topic14_10.htmlhttp://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/doc/14_06/H26independent_research_E56.pdf
*3 http://www.sopia.or.jp/onohara/wp/wp-content/uploads/2014/08/H26-%E7%90%86%E7%A7%91%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%E3%83%BB%E6%89%8B%E9%A0%86.pdf
*4 http://inzai.ed.jp/hara-es/12rika/jiyuukennkyuu.pdf
*5 http://gakken-plus.co.jp/news/201604/20160401.html

 Googleを用いて検索し、上位に表示されたものを取得した。「仙台市科学館」「神栖市立大野原小学校」「学研キッズネット」の例は、本稿に先だって把握していたものである。「豊中市教育センター」の例は「自由研究 site:.ed.jp」、「印西市立原小学校」の例は「自由研究 パソコン site:.ed.jp」のクエリで検索して取得したものである。かぎ括弧内の記述は句読点を含め原文の通りで、2016年8月23日に取得したものである。

・3.3 一般化した論文の目次

 一般化した論文の目次と、論文の査読における評価の観点との対応関係を表3に示す。

■表3 一般化した論文の目次と論文が備えるべき具体的な性質との対応関係

見出しの例









重み
weight
1はじめに(動機、序論)
introduction
1/3+1/2=5/6
2背景(先行研究)
background
1/3+1/2=5/6
3実験(調査、提案手法)
experiment
1/3+1/2+1/2=4/3
4考察(評価、分析)
evaluation
1/2+1+1/2=2
5おわりに(結論、まとめ)
conclusion
N/A
33312


 実際の論文の目次は、分野や著者により大きく異なるが、近年、一定の収れんを見つつあることが知られている。本稿では、表3に示す5つの見出しからなる構成を「一般化した論文の目次」と呼ぶ。また、論文の査読において一般に用いられる評価の観点を、論文が備えるべき具体的な性質とみなし、「新規性」「独創性」「有用性」「正確性」「再現性」の5種類があるとする。論文が備えるべき具体的な性質そのものの定義は行なわない。

 これら5種類の性質について、論文中のどの節で主張するのかを表3中に○印で示す。節ごとに異なる役割があることが明らかである。なお、5節のまとめは、1節から4節までで述べたことの繰り返しとなる。5節を除く論文全体で、各性質について均等の重みで主張する場合、4節の考察が最も重く、次いで3節の実験、第3に1節と2節が同じ重みで並ぶと見積もられる。実際の各節の文字数と対応するものではないが、4節でどのように考察するのかを実験計画を立てる段階で考えておくことが求められる。あるいは、4節の考察に十分な労力をかけた上、4節の展開に耐えるよう他の節を補うなど、節間を行ったり来たりしながらの推こうが求められる。

・3.4 結果

 インターネットを用いて収集した自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次と対照した結果を表4に、論文が備えるべき具体的な性質と対照した結果を表5に示す。

■表4 自由研究に関する指示の例と一般化した論文の目次の対照

1 動機2 先行研究3 計画4 考察5 まとめ
豊中市教育センター
仙台市科学館
神栖市立大野原小学校×
印西市立原小学校×××
学研キッズネット×


■表5 自由研究に関する指示の例と論文が備えるべき具体的な性質の対照

新規性独創性有用性正確性再現性
豊中市教育センター
仙台市科学館
神栖市立大野原小学校
印西市立原小学校
学研キッズネット××


 一般化した論文の目次との対照では、自発的な動機やきっかけに基づいてテーマを選ぶよう促す記述があれば「1 動機」を「○」、前年度の入賞作品などを参照することを促す記述があれば「2 先行研究」を「○」、実験や観察の計画立案や実施手順について具体的な記述や見本があれば「3 計画」を「○」とした。また、実験結果の考察について具体的な方法、特に予想が外れたときの対応に言及する記述があれば「4 考察」を「○」、研究成果のまとめ方について具体的な方法や手順を示す記述があれば「5 まとめ」を「○」とした。

 論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「自分なり」のテーマ探しを促す記述があれば「新規性」「独創性」を「○」、コンクールへの応募を念頭にした記述があれば「有用性」を「※」、観察や実験の正確な記録を促す具体的な記述があれば「正確性」を「○」とした。

 また、いずれの対照においても、逆のはたらきが懸念される記述等があれば「×」とし、特に示唆を与えず本人や家庭の判断に委ねられているものは空欄とした。

 豊中市教育センターの記述では、「3 計画」「4 考察」「5 まとめ」について具体的な言及はない一方、「夏休み理科自由研究相談会」で対応されているとみられることから「△」とした。

 「独創性」について、豊中市教育センターの記述では「独創性」「他人の知識やインターネットの情報に頼って予想される結果を確かめる研究よりも、失敗したとしても自分の発想で挑戦した研究の方がずっとワクワクできると思います。そのワクワク感を味わって欲しいな。」と明示されていることから「○」とした。仙台市科学館の記述では、「本やインターネットで調べたことの再現は研究じゃないですよ」「実験と観察を組み合わせた研究」「研究のための新しい観察法や実験装置の工夫」と具体的に述べられているものの、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっているとみられることから空欄とした。

 「2 先行研究」について、印西市立原小学校の記述では、参照する媒体の種類が列挙されており、結果的に本人や保護者が他人の自由研究の成果物(入賞したものやテーマが近いもの)を先行研究として参照することを妨げる恐れがあるとみなし「×」とした。神栖市立大野原小学校の記述では「友だちの研究から」との記述はあるものの、前年度や他校の例を積極的に参照させようという意図がみられないことから空欄とした。

 「4 考察」について、神栖市立大野原小学校の記述では「考察」という語が使われず「よく考え,結論を出すことが大切です。」「研究の反省」「かんそう」と曖昧に述べられているほか、「ぜんぶ自分のやった観察記録を「表やグラフでデータとしてまとめ」るなどして,よく考えてまとめます。」と述べられ、「3 実験」と「4 考察」を書き分けることへの理解を妨げる恐れがあるとみなし「×」とした。

 民間の学研キッズネットでは、「編集部のおすすめ研究テーマ」「ワークシート」が用意されていることが最大の特徴であり、これらの活用により自由研究を確実に達成させることに主眼がある。「3 計画」について、具体的な計画を例示していることから「○」とした。しかし、自発的な動機に基づく主体的な活動には直結せず、翌年度以降に発展させることも困難になる恐れがあるとみられるため、「1 動機」「新規性」「独創性」を「×」とし、その他の項目を「△」とした。「有用性」については、理科の単元の正確な理解への到達が目標とされており、応用的な研究やコンクールへの応募は想定されていないとみられることから空欄とした。

 次に、インターネットを用いて収集した自由研究に関する指示の例における、自由研究における成果物の種類への言及について表6に示す。

■表6 自由研究における成果物の種類への言及

主論文野帳掲示物
豊中市教育センター
仙台市科学館×
神栖市立大野原小学校×
印西市立原小学校×
学研キッズネット


 豊中市教育センターの記述は、具体的な形式には言及していないが、実質的に「主論文」をまとめるよう促しているとみられる。しかし「これらの項目は1つの例ですので、自分で自由に決めて研究をまとめましょう。」と説明しているため、具体的な指示はされていないとみなす。「野帳」に関しては、「記録をしっかりと残すことも大切です。気付いたことは何でもメモするようにします。」と説明しており、限定的ながら注意点が挙げられている。

 仙台市科学館の記述は「詳しく記録したレポート」として、実質的に「主論文」と「野帳」を合冊にした成果物のまとめ方を説明している。「掲示物」については「模造紙半分の大きさ1枚に研究の概要をまとめてください。(詳しくは,学校の先生に聞いてください)」と指示している。「野帳」に関する明示的な言及はみられず、「写真を撮る」「観察の結果,実験の結果と調べたこと,考えたことは区別しよう」との説明により間接的に「野帳」に関する注意点が示されている。

 神栖市立大野原小学校の記述では「ここまでで,野帳はほぼ完成です。野帳はまとまったものでなくても構いません。」とされている。「理科科学研究の手順」では「主論文」と「野帳」の区別が明確にされないまま研究の流れが示されている。「掲示物」については「主論文の内容を簡潔に表したもの。」との説明がある。

 印西市立原小学校の記述では「主論文」と「野帳」の区別がないまま「つぎのようにまとめて書いていきましょう。」として、冒頭で「研究テーマ(題名)」を書くよう指示している。実質的な「野帳」の説明をしているとみられ、その後の箇所で「科学論文を書こう」に進む構成になっている。この中で「図表,パネルは,模造紙大以内の大きさとし,1点以内にする。」という指示があり、事実上、科学賞に応募させるための「掲示物」をつくらせるための指示とみられる。「主論文」と「掲示物」の明示的な区別はされていない。

 「野帳」に求められる注意点は、神栖市立大野原小学校、印西市立原小学校ともに言及されていない。

 学研キッズネットでは「掲示物」ができあがるように構成された「ワークシート」が提供されている。

・4.考察

 調査結果より、自由研究が有する学習指導上の機能についてまとめる。

 本稿では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて5件収集した。これらは、開設や開校の時期が1950年代、1970年代、1990年代の3つに大別できる。ただし、参照した記述はいずれも現時点のものであり、開設や開校の時期の違いが現時点の記述の違いにも影響しているのかは不明である。

 豊中市教育センターの前身の教育研究所や、仙台市科学館の前身のサイエンスルームでの実験指導は、1950年代の取り組みの典型である。科学館の実験室を活用した実験指導は科学館学習と呼ばれた。

 1978年に開校した神栖市立大野原小学校では、開校時の教員らによって当時の最新の知見に基づき形成された理科教育の方針などが、その後も大きく変えられることなく続けられているとみられる。また、同校に限らず茨城県内では、筑波大学の開学や、1985年の科学万博の波及効果によって、この時点までに確立されていた科学技術に関する教育が普及しているとみられる。

 1990年代には、公立の学校でパソコン教室の整備が進められた。これに呼応して、自由研究についてもマルチメディアの活用に重点を置いて指導してきたとみられるのが、1996年に開校した印西市立原小学校である。「パソコン等を使って書くことが望ましい。」とする一方で「スケッチブックに貼る。」と説明するなど、新しい設備やメディアの活用と従来の指導法との間で混乱があるように見受けられる。また、表計算ソフトやプログラミング言語の活用の可否には言及されていない。「毎年出品作品が少ないので賞に入りやすいです。」とも記述するなど、科学的な研究の進め方についての配慮は薄く、科学館学習の導入期に目指されてきた理科教育や、新構想大学の成否が注目された時代に普及した科学技術教育との間には断絶がある。

 3節では、収集した自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次、および、論文が備えるべき具体的な性質と対照した。

 まず、一般化した論文の目次との対照では、自発的な動機やきっかけに基づいてテーマを選ぶよう促す記述があるのは豊中市教育センターと仙台市科学館で、印西市立原小学校と学研キッズネットでは、自発的な動機が醸成されるのを待たずに資料やワークシートを参照させている。先行研究として他者の自由研究を参照するよう明示的に促しているのは豊中市教育センターと仙台市科学館に限られる。一般化した論文の目次すべてに対応する具体的な指示となっているのは、豊中市教育センターと仙台市科学館に限られることがわかった。

 論文の核となるのが実験または調査である。実験や観察の計画立案や実施手順について具体的な記述や見本を示すことは、多大な労力を要することであり、学校が作成する場合は教科書の範囲など、ごく限られたものになりがちであるとみられる。印西市立原小学校の記述では、「標本を作ろう」の例示のみが具体的であるが、ほかのテーマに対応する具体的な記述や見本はない。「本やホームページなどだけから調べたものは研究にはなりません。」との記述があることから、事実上、個別の研究テーマに関する見本をインターネットで参照することを前提にしているとみられる。また、自由研究で活用できるデータやツールの拡大が急速に進む中、短期間で陳腐化する恐れのある具体的な研究例を示すことに対して慎重になっているとみられる。

 論文でいう考察には一定の形式や方法がある。考察は、その前の節までで導入した先行研究および実験や調査の結果のみを用いて、論文の目的に即し、実験や調査が目的を達成したかどうかを詳細に述べる節である。神栖市立大野原小学校の記述にある「よく考え」という表現は、国語辞典における「考察」の語釈によっているとみられるが、この表現では、論文でいう考察を説明することにつながらない。

 研究成果のまとめ方については、5件とも、具体的な方法や手順を示す記述があった。しかし、実験に失敗した場合の対応、および、論文の構成とは異なる実際に取り組む際の順序(研究の流れ)に言及しているのは、仙台市科学館と神栖市立大野原小学校に限られることがわかった。豊中市教育センターでは、「夏休み理科自由研究相談会」での個別の人的対応および「科学賞やコンクールの作品」の参照によって解決すべきとされていることになるため、事前の指示としての明文化に不備があるとみなした。

 次に、論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「新規性・独創性」に対応する指示のある群と「正確性・再現性」に対応する指示のある群の2つに大別されることがわかった。学習指導上の方針や施策との関連では、前者は「発明・工夫」や「アクティブ・ラーニング」に通じるもので、後者は「単元の正確な理解と定着」に資する追試の性格が濃いものである。

 印西市立原小学校の記述は、「正確性」を除く4つの性質に対応する指示があり、5件の中で最も厳格なものである。なお、仙台市科学館の記述は、5つの性質すべてに対応するものの、「新規性・独創性」について、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっているとみられることから、この2つの性質には対応しないとみなした。

 自由研究において「有用性」を問うのは困難であると考えられるが、校外の科学賞やコンクールに応募する際は問われることになることから、自由研究の指示としても実質的に「有用性」を問うている例がほとんどで、「有用性」を不問にして取り組ませるのは学研キッズネットに限られることがわかった。

 これらの対照を踏まえ、自由研究が有する学習指導上の機能について、自由研究の成果物の種類ごとに考察する。

 研究遂行能力の核となり、研究倫理の遵守にも資するのが「野帳」である。このような観点から「野帳」の運用上の注意点に言及するものは、5件の中にはなかった。豊中市教育センターの記述は、限定的ながら「野帳」の重要性を強調するものとなっており、仙台市科学館の記述は、間接的ながら研究実施の証拠としての写真撮影に言及している。一方、印西市立原小学校の記述ではデジタルカメラの使用への言及があるものの、具体的な活用方法や注意点については言及されていない。

 「主論文」は、「野帳」との区別の上に成り立ち、実験や観察、調査など一連の研究内容から特定の研究成果に絞り、一定の形式に従ってまとめるものである。仙台市科学館の記述は、「野帳」と区別なく「詳しく記録したレポート」としているものの、「主論文」の説明として十分であるとみなせる。神栖市立大野原小学校と印西市立原小学校の記述でも、説明される手順に従って自由研究を進めれば「主論文」にあたる成果物が完成するようになっている。一方、豊中市教育センターの記述は、「主論文」の目次とみられる内容を例示しながら「これらの項目は1つの例ですので、自分で自由に決めて研究をまとめましょう。」としており、一定の形式に従ってまとめることを学ぶという自由研究の機能を損ねていると考えられる。

 「掲示物」は、「主論文」の作成を終えた後、その要約(概要)として、研究成果の要点を視覚的にアピールするものである。神栖市立大野原小学校の記述は「主論文の内容を簡潔に表したもの。」と説明している。印西市立原小学校の記述は「図表,パネルは,模造紙大以内の大きさとし,1点以内にする。」とのみ指示しており、「掲示物」の位置づけが正しく示されているとはいえない。

 自由研究では、学校や家庭で手取り足取り、調べ方やまとめ方がその都度、指導されるのではなく、あらかじめ具体的に示された方法や手順に従って、児童が自分で研究を進めることが目的となる。自由研究の着手の段階で、研究の流れの全体像や成果物の具体的なイメージが示されることが期待されるとともに、事前のガイダンスによって、成果物の種類を明確に区別させ、それぞれの役割を正確に意識させることが重要であると考えられる。

 具体的には、実際の研究の流れと、「主論文」の作成における目次とを区別すること、「主論文」は「野帳」に基づいて作成すること、「掲示物」は「主論文」を要約して作成すること、さらに、「主論文」の中で「考察」は「実験」を受けて述べること、遡って、研究の開始直後に先行研究をよく見ておくことなど、研究上の最も基本となることがらを、自由研究においてもかいつまんで説明することが必要とされていると考えられる。

・5.まとめ

 本稿では、学校や科学館などがインターネットで公開している、自由研究に関する指示の例を収集し、自由研究が有する学習指導上の機能の発揮を促進する内容になっているかを検討した。具体的には、開設や開校の年代などが異なる、豊中市教育センター、仙台市科学館、神栖市立大野原小学校、印西市立原小学校、学研キッズネットの5者に着目した。

 まず、一般化した論文の目次、および、論文が備えるべき具体的な性質と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討した。その結果、一般化した論文の目次すべてに対応する具体的な指示となっているのは、豊中市教育センターと仙台市科学館に限られることがわかった。神栖市立大野原小学校では論文の考察を「よく考え」という表現で説明しており、まったく具体的でないことがわかった。印西市立原小学校と学研キッズネットでは、自発的な動機の醸成を問わずに資料やワークシートを参照させる説明となっていた。論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「新規性・独創性」に対応する指示のある群と「正確性・再現性」に対応する指示のある群の2つに大別されることがわかった。なお、仙台市科学館の記述は、5つの性質すべてに対応するものの、「新規性・独創性」について、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっていた。学研キッズネットを除く4者はいずれも、校外の科学賞やコンクールに応募することを念頭にした説明がみられた。

 次に、神栖市立大野原小学校の記述にある「主論文」「野帳」「掲示物」について、5者それぞれにおける言及を調べた。その結果、これらの区別が明確でなかったり、区別を示さないまま取り組ませる説明となっているものがほとんどであることが明らかになった。特に、研究の遂行上、最も基本かつ重要な「野帳」については、豊中市教育センターが限定的に注意点を挙げ、仙台市科学館が間接的に注意点を示しているに留まることがわかった。

 これらの結果から、事前に研究の流れの全体像や成果物の具体的なイメージが示されること、成果物の種類を明確に区別させ、それぞれの役割を正確に意識させることの重要性が示唆された。

・参考

- 1) 文部省「学習指導法の一般」(1947年) https://www.nier.go.jp/guideline/s22ej/chap4.htm


 推こうするたびにどんどん変わっていく、まさに飴のようなものだね…などと(略)。当初の動機とサーベイはどこへやら、それでいいんです。一種「呼び水」として十分に機能しましたよ。アリガトウ新井センセイ!(恐縮です。)そしてタイトルは未定です! タイトルなんて、そんなの、そんなものッ(※)、最後の最後に決めるものなんですよ。『掲示板』で「タイトル」の入力欄が一番上にあるなんて、とんでもない!

 見出し、表、URLを含めず「10,128字」(Word調べ)とのこと。この話を「3,600字」で無理にまとめると、たいへんぶしつけな「決めつけ調!」のダメ〜な記事になってしまいそうです。うーん…。

 なお、「読みやすさの評価」(同)は、以下の通り。

・文字数:9105
・単語数:3936
・文の数:153
・段落数:59

・1段落中の平均文数(適正値3〜7文):2.5
・平均文長(適正値25〜45文字):59.5
・句点の間平均文字数:0.0

・漢字:42%
・ひらがな:51%
・カタカナ:5%
・アルファベット:0%

 推こうはまだまだ続きます。


★10稿:冷たく、冷た〜く


・1.はじめに

 現在、自由研究の目的と方法について、広く一般に共通の認識が確立しているとはいえない。特に、初等教育の現場や家庭での理解には混乱がみられる。目的と方法は不可分のものとして一体的に検討される必要があると考えられるが、目的だけを示して方法の指導がなかったり、目的が定かでないまま方法だけが指導されたりすることが背景になっているとみられる。自由研究の指導例として慣習的に「昆虫の採集(標本作り)」や「植物の観察(栽培の記録または標本作り)」が挙げられる。また、一般に「自由研究お助けセット(キット)」として工作(教科としての図工、美術、技術に属する内容)のキットが販売されている。学校やコンクールでは、自由研究の成果物として本来は適格とはいえない「実物」や「作品」の提出を受け付ける場合がある。このことも、自由研究とは何かということをわかりにくくしているとみられる。

 実際の研究で、「実物」そのものが研究成果とみなされる例はきわめて限定される。例えば、深海に生息するダイオウイカの捕獲について、捕獲されたダイオウイカ(実物)を成果物とみなすのは誤りであり、いつでも誰でも(別の海洋学者が、同規模の予算や人員で、同等の資機材を用いて)ダイオウイカを捕獲できるための「捕獲の方法」が論文にまとめられて初めて成果物とみなすことができる。また、ダイオウイカの形質や生態について、ダイオウイカの標本がありさえすればいいというものではなく、ほかの種類のイカとの違いが分析され、また、予想されていた違いを生体や標本で確かめたということがあって初めて研究成果とみなすことができる。

 本稿では、自由研究に関する指示の例を詳細に検討し、自由研究が有する学習指導上の機能についてまとめる。以下、2節で自由研究を含む研究の指導における課題や研究の実施に関する状況について述べ本稿の位置づけを示し、3節で調査方法および調査結果をについて述べ、4節で考察し、5節でまとめる。

・2.背景

 自由研究は、1947年から実施された学習指導要領(試案)において教科の1つと位置づけられた。1950年代、各地に理科の実験の指導ができる人材や施設が配置されていった。科学館学習は、この時期の取り組みの典型である。このような経緯から、自由研究の指導はその後も理科の教員が主な担い手となって続けられてきた。

 1970年代には、1973年に開学した筑波大学を端緒とする「新構想大学」が展開され、その後、新しい体制やカリキュラムで教員免許を取得した者が教育現場の主流になっていった。この時代に開校した学校では、開校時の教員らによって当時の最新の知見に基づき形成された理科教育の方針などが、その後も大きく変えられることなく続けられているとみられる。

 1990年代には、公立の学校でパソコン教室の整備が進められた。これに呼応して、自由研究についてもマルチメディアの活用に重点を置いて指導する学校が現れたとみられる。しかし、一般に新しい設備やメディアの活用と従来の指導法との間で混乱や葛藤が絶えないことが知られている。その上、科学的な研究の進め方についての配慮をも尽くすには、多大な労力を必要とする。

 自由研究の成果物は、最も厳密に形式が指定される場合、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」の4種類に分けられる。これらは、一般にいう論文、実験ノート、ポスターと、一定の期間保存される試料やサンプルまたは新技術のデモンストレーションのための資機材にあたる。論文は、実験や観察、調査など一連の研究内容から特定の研究成果に絞り、一定の形式に従ってまとめるものである。ポスターは、論文を要約して作成するものであり、研究成果の要点を視覚的にアピールするものである。実験ノートは、研究が実際に行なわれたことや、適切な方法で進められたことを保証する唯一の証拠であり、記録漏れおよび改ざんを防ぐことのできる形式や形態で運用される必要がある。

 自由研究の成果物の形式を厳密に指定する例があるのは、コンクールへの応募を念頭にしているためとみられる。とはいえ、自由研究を、日常の学習の延長の活動とみなすことと、コンクールへの応募を念頭にした特別な活動とみなすことは、両立させることができると考えられる。「野帳」は、日常の学習におけるノートのつけかたを再確認し補強するものである。「主論文」は、通常の学習では行わない詳細な検討を体験する特別な活動である。「掲示物」は、学習に限らず日常の生活の中で必要とされる情報の要約やプレゼンテーションの能力を養うものである。

 野島は、化学分野における実験ノートの運用に関する注意点を、学部1年生向けにまとめている[3339]。自由研究において「野帳」の記入を指示するのは、実験ノートと同じ理由によるとみられるが、成果物として「野帳」を提出させるのは、自由研究の過程を学習の記録として評価対象に含めるためとみられる。

・3.調査

 本稿では、学校や科学館などがインターネットで公開している、自由研究に関する指示の例を収集し、その内容を検討する。具体的には、自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討する。また、実際の学習指導に即して、自由研究における成果物の表現形式ごとに対照する。

・3.1 成果物の種類

 自由研究における成果物には、「主論文」「野帳」「掲示物」「実物」がある。研究の実施におけるこれらの順序関係を表1に示す。

■表1 自由研究における成果物の種類とその順序関係

成果物の種類
(一般の呼称)
着手する
順序
(段階)
完成する
順序
(段階)
備考
主論文
(論文、レポート)
33主論文を作成する段階を3とする。
3で並行して作成してよいのは掲示物のみとする。
3以後で実験のやり直しをしてはならない。
野帳
(実験ノート)
14最初から最後まで野帳に記録する。
掲示物
(ポスター)
3〜43〜4主論文が完成してから取り組まれるのが望ましいとされる。
ポスター発表に際して1〜2ページの短報を課す場合がある。
実物
(標本、試作品、写真、
回収した調査票の原本、
展示物、ソフトウェア)
1〜2
または
4
2
または
4
実験や試作としての実物は1〜2の段階、
デモンストレーションとしての実物は
4の段階で作成されるとする。
写真や調査票の見本など紙上に掲載できるものは
論文の付録に含める。


 最終的には「主論文」のみが研究成果として扱われるが、研究内容の発表に際して、「掲示物」や「実物」が補助的に用いられる。また、「実物」は研究の過程を体現するものであるから、発表での使用の有無にかかわらず保管または撮影等により記録される必要がある。「野帳」は、研究の最初から最後まで一貫して記録され続けるものである。

・3.2 自由研究に関する指示の例

 本稿で検討する自由研究に関する指示の例を表2に示す。

■表2 自由研究に関する指示の例(抜粋)

豊中市教育センター*1
(大阪府、1949年開設、
 1957年から2003年まで
 「教育研究所」)
・「テーマを見つけよう」
・「研究を深めよう」
・「自分なりにまとめよう」
・「夏休み理科自由研究相談会」
・「科学賞やコンクールの作品」
仙台市科学館*2
(1952年から実験指導、
 1968年から科学館)
・「研究の部・標本の部・科学工作の部」
・「テーマを見つけよう」
・「ほかの人の研究を参考に」
・「研究の流れ」
・「研究の方法を考えよう」
・「観察や実験のしかた」
・「思うようにいかなくても」
・「まとめる順序(おおよその目安)」
神栖市立大野原小学校*3
(茨城県、1978年開校)
・「理科科学研究の手引き」
・「理科科学研究の手順」
・「掲示物の作り方」
・「作品規定」
印西市立原小学校*4
(千葉県、1996年開校)
・「デジカメでのこそう」
・「表やグラフにまとめてみる。」
・「しらべるのにつかった本やビデオ,
 パンフレット,ホームページなどを書く。」
・「論文は,原稿用紙又はパソコン等を
 使って書くことが望ましい。」
・「スケッチブックに貼る。」
・「本やホームページなどだけから調べた
 ものは研究にはなりません。」
・「毎年出品作品が少ないので
 賞に入りやすいです。」
学研キッズネット*5
(民間のウェブサイト、
 1996年開設)
・「編集部のおすすめ研究テーマ」
・「ワークシート」
・「かっこよく見えるまとめ方」


*1 http://www.toyonaka-osa.ed.jp/educ/index.cfm/1,1792,27,116,html
*2 http://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/h26topics/topic14_10.htmlhttp://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/truetop/doc/14_06/H26independent_research_E56.pdf
*3 http://www.sopia.or.jp/onohara/wp/wp-content/uploads/2014/08/H26-%E7%90%86%E7%A7%91%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%E3%83%BB%E6%89%8B%E9%A0%86.pdf
*4 http://inzai.ed.jp/hara-es/12rika/jiyuukennkyuu.pdf
*5 http://gakken-plus.co.jp/news/201604/20160401.html

 Googleを用いて検索し、上位に表示されたものを取得した。「仙台市科学館」「神栖市立大野原小学校」「学研キッズネット」の例は、本稿に先だって把握していたものである。「豊中市教育センター」の例は「自由研究 site:.ed.jp」、「印西市立原小学校」の例は「自由研究 パソコン site:.ed.jp」のクエリで検索して取得したものである。かぎ括弧内の記述は句読点を含め原文の通りで、2016年8月23日に取得したものである。

・3.3 一般化した論文の目次

 一般化した論文の目次と、論文の査読における評価の観点との対応関係を表3に示す。

■表3 一般化した論文の目次と論文が備えるべき具体的な性質との対応関係

見出しの例









重み
weight
1はじめに(動機、序論)
introduction
1/3+1/2=5/6
2背景(先行研究)
background
1/3+1/2=5/6
3実験(調査、提案手法)
experiment
1/3+1/2+1/2=4/3
4考察(評価、分析)
evaluation
1/2+1+1/2=2
5おわりに(結論、まとめ)
conclusion
N/A
33312


 実際の論文の目次は、分野や著者により大きく異なるが、近年、一定の収れんを見つつあることが知られている。本稿では、表3に示す5つの見出しからなる構成を「一般化した論文の目次」と呼ぶ。また、論文の査読において一般に用いられる評価の観点を、論文が備えるべき具体的な性質とみなし、「新規性」「独創性」「有用性」「正確性」「再現性」の5種類があるとする。論文が備えるべき具体的な性質そのものの定義は行なわない。

 これら5種類の性質について、論文中のどの節で主張するのかを表3中に○印で示す。節ごとに異なる役割があることが明らかである。なお、5節のまとめは、1節から4節までで述べたことの繰り返しとなる。5節を除く論文全体で、各性質について均等の重みで主張する場合、4節の考察が最も重く、次いで3節の実験、第3に1節と2節が同じ重みで並ぶと見積もられる。実際の各節の文字数と対応するものではないが、4節でどのように考察するのかを実験計画を立てる段階で考えておくことが求められる。あるいは、4節の考察に十分な労力をかけた上、4節の展開に耐えるよう他の節を補うなど、節間を行ったり来たりしながらの推こうが求められる。

・3.4 結果

 インターネットを用いて収集した自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次と対照した結果を表4に、論文が備えるべき具体的な性質と対照した結果を表5に示す。

■表4 自由研究に関する指示の例と一般化した論文の目次の対照

1 動機2 先行研究3 計画4 考察5 まとめ
豊中市教育センター
仙台市科学館
神栖市立大野原小学校×
印西市立原小学校×××
学研キッズネット×


■表5 自由研究に関する指示の例と論文が備えるべき具体的な性質の対照

新規性独創性有用性正確性再現性
豊中市教育センター
仙台市科学館
神栖市立大野原小学校
印西市立原小学校
学研キッズネット××


 一般化した論文の目次との対照では、自発的な動機やきっかけに基づいてテーマを選ぶよう促す記述があれば「1 動機」を「○」、前年度の入賞作品などを参照することを促す記述があれば「2 先行研究」を「○」、実験や観察の計画立案や実施手順について具体的な記述や見本があれば「3 計画」を「○」とした。また、実験結果の考察について具体的な方法、特に予想が外れたときの対応に言及する記述があれば「4 考察」を「○」、研究成果のまとめ方について具体的な方法や手順を示す記述があれば「5 まとめ」を「○」とした。

 論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「自分なり」のテーマ探しを促す記述があれば「新規性」「独創性」を「○」、コンクールへの応募を念頭にした記述があれば「有用性」を「※」、観察や実験の正確な記録を促す具体的な記述があれば「正確性」を「○」とした。

 また、いずれの対照においても、逆のはたらきが懸念される記述等があれば「×」とし、特に示唆を与えず本人や家庭の判断に委ねられているものは空欄とした。

 豊中市教育センターの記述では、「3 計画」「4 考察」「5 まとめ」について具体的な言及はない一方、「夏休み理科自由研究相談会」で対応されているとみられることから「△」とした。

 「独創性」について、豊中市教育センターの記述では「独創性」「他人の知識やインターネットの情報に頼って予想される結果を確かめる研究よりも、失敗したとしても自分の発想で挑戦した研究の方がずっとワクワクできると思います。そのワクワク感を味わって欲しいな。」と明示されていることから「○」とした。仙台市科学館の記述では、「本やインターネットで調べたことの再現は研究じゃないですよ」「実験と観察を組み合わせた研究」「研究のための新しい観察法や実験装置の工夫」と具体的に述べられているものの、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっているとみられることから空欄とした。

 「2 先行研究」について、印西市立原小学校の記述では、参照する媒体の種類が列挙されており、結果的に本人や保護者が他人の自由研究の成果物(入賞したものやテーマが近いもの)を先行研究として参照することを妨げる恐れがあるとみなし「×」とした。神栖市立大野原小学校の記述では「友だちの研究から」との記述はあるものの、前年度や他校の例を積極的に参照させようという意図がみられないことから空欄とした。

 「4 考察」について、神栖市立大野原小学校の記述では「考察」という語が使われず「よく考え,結論を出すことが大切です。」「研究の反省」「かんそう」と曖昧に述べられているほか、「ぜんぶ自分のやった観察記録を「表やグラフでデータとしてまとめ」るなどして,よく考えてまとめます。」と述べられ、「3 実験」と「4 考察」を書き分けることへの理解を妨げる恐れがあるとみなし「×」とした。

 民間の学研キッズネットでは、「編集部のおすすめ研究テーマ」「ワークシート」が用意されていることが最大の特徴であり、これらの活用により自由研究を確実に達成させることに主眼がある。「3 計画」について、具体的な計画を例示していることから「○」とした。しかし、自発的な動機に基づく主体的な活動につなげることはむずかしいとみられ、翌年度以降に発展させることも困難になる恐れがあるとみられるため、「1 動機」「新規性」「独創性」を「×」とし、その他の項目を「△」とした。「有用性」については、理科の単元の正確な理解への到達が目標とされており、応用的な研究やコンクールへの応募は想定されていないとみられることから空欄とした。

 次に、インターネットを用いて収集した自由研究に関する指示の例における、自由研究における成果物の種類への言及について表6に示す。

■表6 自由研究における成果物の種類への言及

主論文野帳掲示物
豊中市教育センター
仙台市科学館×
神栖市立大野原小学校×
印西市立原小学校×
学研キッズネット


 豊中市教育センターの記述は、具体的な形式には言及していないが、実質的に「主論文」をまとめるよう促しているとみられる。しかし「これらの項目は1つの例ですので、自分で自由に決めて研究をまとめましょう。」と説明しているため、具体的な指示はされていないとみなす。「野帳」に関しては、「記録をしっかりと残すことも大切です。気付いたことは何でもメモするようにします。」と説明しており、限定的ながら注意点が挙げられている。

 仙台市科学館の記述は「詳しく記録したレポート」として、実質的に「主論文」と「野帳」を合冊にした成果物のまとめ方を説明している。「掲示物」については「模造紙半分の大きさ1枚に研究の概要をまとめてください。(詳しくは,学校の先生に聞いてください)」と指示している。「野帳」に関する明示的な言及はみられず、「写真を撮る」「観察の結果,実験の結果と調べたこと,考えたことは区別しよう」との説明により間接的に「野帳」に関する注意点が示されている。

 神栖市立大野原小学校の記述では「ここまでで,野帳はほぼ完成です。野帳はまとまったものでなくても構いません。」とされている。「理科科学研究の手順」では「主論文」と「野帳」の区別が明確にされないまま研究の流れが示されている。「掲示物」については「主論文の内容を簡潔に表したもの。」との説明がある。

 印西市立原小学校の記述では「主論文」と「野帳」の区別がないまま「つぎのようにまとめて書いていきましょう。」として、冒頭で「研究テーマ(題名)」を書くよう指示している。実質的な「野帳」の説明をしているとみられ、その後の箇所で「科学論文を書こう」に進む構成になっている。この中で「図表,パネルは,模造紙大以内の大きさとし,1点以内にする。」という指示があり、事実上、科学賞に応募させるための「掲示物」をつくらせるための指示とみられる。「主論文」と「掲示物」の明示的な区別はされていない。

 「野帳」に求められる注意点は、神栖市立大野原小学校、印西市立原小学校ともに言及されていない。

 学研キッズネットでは「掲示物」ができあがるように構成された「ワークシート」が提供されている。

・4.考察

 調査結果より、自由研究が有する学習指導上の機能についてまとめる。

 本稿では、自由研究に関する指示の例をインターネットを用いて5件収集した。これらは、開設や開校の時期が1950年代、1970年代、1990年代の3つに大別できる。ただし、参照した記述はいずれも現時点のものであり、開設や開校の時期の違いが現時点の記述の違いにも影響しているのかは不明である。

 豊中市教育センターの前身の教育研究所や、仙台市科学館の前身のサイエンスルームでの実験指導は、1950年代の取り組みの典型である。科学館の実験室を活用した実験指導は科学館学習と呼ばれた。

 1978年に開校した神栖市立大野原小学校では、開校時の教員らによって当時の最新の知見に基づき形成された理科教育の方針などが、その後も大きく変えられることなく続けられているとみられる。また、同校に限らず茨城県内では、筑波大学の開学や、1985年の科学万博の波及効果によって、この時点までに確立されていた科学技術に関する教育が普及しているとみられる。

 1990年代には、公立の学校でパソコン教室の整備が進められた。1996年に開校した印西市立原小学校では、自由研究についてもマルチメディアの活用に重点を置いて指導してきたとみられる。「パソコン等を使って書くことが望ましい。」とする一方で「スケッチブックに貼る。」と説明するなど、新しい設備やメディアの活用と従来の指導法との間で混乱があり、表計算ソフトやプログラミング言語の活用の可否には言及されていない。「毎年出品作品が少ないので賞に入りやすいです。」とも記述するなど、科学的な研究の進め方についての配慮は薄く、科学館学習の導入期に目指されてきた理科教育や、新構想大学の成否が注目された時代に普及した科学技術教育との間には断絶がある。

 3節では、収集した自由研究に関する指示の例を、一般化した論文の目次、および、論文が備えるべき具体的な性質と対照した。

 まず、一般化した論文の目次との対照では、自発的な動機やきっかけに基づいてテーマを選ぶよう促す記述があるのは豊中市教育センターと仙台市科学館で、印西市立原小学校と学研キッズネットでは、自発的な動機の醸成を問わずに資料やワークシートを参照させている。先行研究として他者の自由研究を参照するよう明示的に促しているのは豊中市教育センターと仙台市科学館に限られる。一般化した論文の目次すべてに対応する具体的な指示となっているのは、豊中市教育センターと仙台市科学館に限られることがわかった。

 論文の核となるのが実験である。実験の計画立案や実施手順について具体的な記述や見本を示すには多大な労力を要する。このため、学校が作成する場合は教科書の範囲など、ごく限られたものになりがちであるとみられる。印西市立原小学校の記述では、「標本を作ろう」の例示のみが具体的であるが、ほかのテーマに対応する具体的な記述や見本はない。「本やホームページなどだけから調べたものは研究にはなりません。」との記述があることから、事実上、個別の研究テーマに関する見本をインターネットで参照することを前提にしているとみられる。また、自由研究で活用できるデータやツールの拡大が急速に進む中、短期間で陳腐化する恐れのある具体的な研究例を示すことに対して慎重になっているとみられる。

 論文でいう考察には一定の形式や方法がある。考察は、その前の節までで導入した先行研究および実験や調査の結果のみを用いて、論文の目的に即し、実験や調査が目的を達成したかどうかを詳細に述べる節である。神栖市立大野原小学校の記述にある「よく考え」という表現は、国語辞典における「考察」の語釈によっているとみられるが、この表現では、論文でいう考察を説明することにつながらない。

 研究成果のまとめ方については、5件とも、具体的な方法や手順を示す記述があった。しかし、実験に失敗した場合の対応、および、論文の構成とは異なる実際に取り組む際の順序(研究の流れ)に言及しているのは、仙台市科学館と神栖市立大野原小学校に限られることがわかった。豊中市教育センターでは、「夏休み理科自由研究相談会」での個別の人的対応および「科学賞やコンクールの作品」の参照によって解決すべきとされていることになるため、事前の指示としての明文化に不備があるとみなした。

 次に、論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「新規性・独創性」に対応する指示のある群と「正確性・再現性」に対応する指示のある群の2つに大別されることがわかった。学習指導上の方針や施策との関連では、前者は「発明・工夫」や「アクティブ・ラーニング」に通じるもので、後者は「単元の正確な理解と定着」に資する追試の性格が濃いものである。

 印西市立原小学校の記述は、「正確性」を除く4つの性質に対応する指示があり、5件の中で最も厳格なものである。なお、仙台市科学館の記述は、5つの性質すべてに対応するものの、「新規性・独創性」について、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっていることから、この2つの性質には対応しないとみなした。

 自由研究において「有用性」を問うのは困難であると考えられるが、校外の科学賞やコンクールに応募する際は問われることになることから、自由研究の指示としても実質的に「有用性」を問うている例がほとんどで、「有用性」を不問にして取り組ませるのは学研キッズネットに限られることがわかった。

 これらの対照を踏まえ、自由研究が有する学習指導上の機能について、自由研究の成果物の種類ごとに考察する。

 研究遂行能力の核となり、研究倫理の遵守にも資するのが「野帳」である。このような観点から「野帳」の運用上の注意点に言及するものは、5件の中にはなかった。豊中市教育センターの記述は、限定的ながら「野帳」の重要性を強調するものとなっており、仙台市科学館の記述は、間接的ながら研究実施の証拠としての写真撮影に言及している。一方、印西市立原小学校の記述ではデジタルカメラの使用への言及があるものの、具体的な活用方法や注意点については言及されていない。

 「主論文」は、「野帳」との区別の上に成り立ち、実験や観察、調査など一連の研究内容から特定の研究成果に絞り、一定の形式に従ってまとめるものである。仙台市科学館の記述は、「野帳」と区別なく「詳しく記録したレポート」としているものの、「主論文」の説明として十分であるとみなせる。神栖市立大野原小学校と印西市立原小学校の記述でも、説明される手順に従って自由研究を進めれば「主論文」にあたる成果物が完成するようになっている。一方、豊中市教育センターの記述は、「主論文」の目次とみられる内容を例示しながら「これらの項目は1つの例ですので、自分で自由に決めて研究をまとめましょう。」としており、一定の形式に従ってまとめることを学ぶという自由研究の機能を損ねていると考えられる。

 「掲示物」は、「主論文」の作成を終えた後、その要約(概要)として、研究成果の要点を視覚的にアピールするものである。神栖市立大野原小学校の記述は「主論文の内容を簡潔に表したもの。」と説明している。印西市立原小学校の記述は「図表,パネルは,模造紙大以内の大きさとし,1点以内にする。」とのみ指示しており、「掲示物」の位置づけが正しく示されているとはいえない。

 自由研究では、学校や家庭で手取り足取り、調べ方やまとめ方がその都度、指導されるのではなく、あらかじめ具体的に示された方法や手順に従って、児童が自分で研究を進めることが目的となる。自由研究の着手の段階で、研究の流れの全体像や成果物の具体的なイメージが示されることが期待されるとともに、事前のガイダンスによって、成果物の種類を明確に区別させ、それぞれの役割を正確に意識させることが重要であると考えられる。

 具体的には、実際の研究の流れと、「主論文」の作成における目次とを区別すること、「主論文」は「野帳」に基づいて作成すること、「掲示物」は「主論文」を要約して作成すること、さらに、「主論文」の中で「考察」は「実験」を受けて述べること、遡って、研究の開始直後に先行研究をよく見ておくことなど、研究上の最も基本となることがらを、自由研究においてもかいつまんで説明することが必要とされていると考えられる。

・5.まとめ

 本稿では、学校や科学館などがインターネットで公開している、自由研究に関する指示の例を収集し、自由研究が有する学習指導上の機能の発揮を促進する内容になっているかを検討した。具体的には、開設や開校の年代などが異なる、豊中市教育センター、仙台市科学館、神栖市立大野原小学校、印西市立原小学校、学研キッズネットの5者に着目した。

 まず、一般化した論文の目次、および、論文が備えるべき具体的な性質と対照し、自由研究に関する指示に不備がないか検討した。その結果、一般化した論文の目次すべてに対応する具体的な指示となっているのは、豊中市教育センターと仙台市科学館に限られることがわかった。神栖市立大野原小学校では論文の考察を「よく考え」という表現で説明しており、まったく具体的でないことがわかった。印西市立原小学校と学研キッズネットでは、自発的な動機の醸成を問わずに資料やワークシートを参照させる説明となっていた。論文が備えるべき具体的な性質との対照では、「新規性・独創性」に対応する指示のある群と「正確性・再現性」に対応する指示のある群の2つに大別されることがわかった。なお、仙台市科学館の記述は、5つの性質すべてに対応するものの、「新規性・独創性」について、自由研究に取り組む児童の発達段階にそぐわない説明になっていた。学研キッズネットを除く4者はいずれも、校外の科学賞やコンクールに応募することを念頭にした説明がみられた。

 次に、神栖市立大野原小学校の記述にある「主論文」「野帳」「掲示物」について、5者それぞれにおける言及を調べた。その結果、これらの区別が明確でなかったり、区別を示さないまま取り組ませる説明となっているものがほとんどであることが明らかになった。特に、研究の遂行上、最も基本かつ重要な「野帳」については、豊中市教育センターが限定的に注意点を挙げ、仙台市科学館が間接的に注意点を示しているに留まることがわかった。

 これらの結果から、事前に研究の流れの全体像や成果物の具体的なイメージが示されること、成果物の種類を明確に区別させ、それぞれの役割を正確に意識させることの重要性が示唆された。

・レファレンせず(References)

 1) 文部省「学習指導法の一般」(1947年) https://www.nier.go.jp/guideline/s22ej/chap4.htm


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