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この件、何と呼べばいいんでしょうか。
行政としては「重大インシデント」ですが、事業者としても利用者としても「事故」(死傷者が出る、の意)ではなく、列車が長時間止まったことについても、それ自体は他の原因によってもよくあることであり、特に都心部では振替輸送によって何とかなってしまう面(※)もあります。感情的なものをいっさい排したときに、利用者にとって、これは「何」なのでしょうか。
※厳密には、普段は(定期券では)運賃の通算を優先して遠回りなJRを乗り継ぐところ、振替輸送によって、実質、近道となる地下鉄に乗れるとなれば、かえって「得」をすることになります。東京メトロと都営地下鉄の両方を数駅分ずつ乗る(それぞれ初乗り運賃がかかる)ような振替にあたれば、さらに「得」です。仮に、長時間の「運転見合わせ」(運休)の「損得勘定」(影響の金額換算)を利用者の立場で(事業者としての損失≒逸失利益でなく、利用者の実質の損益に着目)するのであれば、単に「影響人員×運賃」とするのでなく、「得」をするほうも算定に入れなければフェアでないといえます。
・読売新聞「JR、土日で作業員集まらず支柱の工事先延ばし」(2015年4月13日)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150413-OYT1T50079.html
> 10日深夜に支柱の傾きを確認して作業員を手配したが、週末を挟んでいたために作業員を十分に集められず、工事を3日後に先延ばししていた
> 10日深夜に神田―秋葉原駅間で支柱付近を工事した際に傾きに気付き、施工会社に緊急手配をかけた。しかし金曜日だったため、必要とされる数十人の作業員が確保できず、週明けの13日に工事を行うことを決めた。
> 「倒れるほどの傾きではない」と判断して先延ばししたという。
> 作業着姿の社員ら数人が柱の傾きの有無などを目視でチェックしていた。
「作業員」でなく、「作業着姿の社員(ら=作業員も含む)」というところが細かいですね。記者としては、このあたりを厳密に見ていく(区別して考える)のは当然でしょうが、できれば利用者(直接の山手線の利用者ということでなく、広い意味で公共交通を利用するすべての人)としても、それとなく見ておきたい(知っておきたい)ところです。
つまり、この件、「山手線が止まると困る」とか、「安全が(ただちに)オビヤカサレル」という日常生活上の具体的な話としてよりも、もっと人事や労務の面で、他の業界にいる人にとっても、もれなく降りかかってくる話ではないかと感じました。
報道によれば、10日(※金曜日です)に把握され週明けの13日(※月曜日です)に対応する予定だったところ、12日(※日曜日です)に倒れてしまった、というタイムラインであります。
(今回の件とではタイムスケールが全然違いますが)総武線(各駅停車)の103系で配電盤が破裂し、209系(E231系)の導入が前倒しになった時のことや、HEP&JES工法を使った工事現場でトラブルが続いたことなどを連想しました。(あくまで連想です。本件と直接の関係はありません。)
・このサイト「E231系試運転における旅客案内」(2000年3月2日)
http://atos.neorail.jp/atos3/topics/topics_11.html
当時(上掲のページで)言及したわけでなく、その後に考えていたことを「後出し」的に出すことになって恐縮ですが、「103系はそのうち置き換えられる」という背景の中、「置き換えまで持てばよい」(過剰な整備をしていると、退役してすぐ廃車にするときにもったいない)といった観点から、整備の要求水準が陰に陽に下がった(老朽化の進行に応じて、本来なら点検の頻度引き上げや早めの部品交換が必要となるところ、それをせず「これまで通り」の整備を続けた)といったことがあったとすれば、今回の件と似ている面があるように思います。
※最近、南武線で退役間近の205系に乗ったところ、座席がひどい状態で驚いた(2000年ごろに山手線の205系で維持されていた座り心地が、維持されていなかった)という体験もあり、同じようなことは今後も起きうるのではないかと心配しています。もっとも、座り心地の悪化ぐらいは、退役間近ということを考慮すれば納得できる範囲で、配電盤についても、一度、破裂したのですから、二度と破裂しないように整備されていると信じます。「同じようなこと」とはいえ、実際に起きるとすれば、未知のトラブルが起きるわけです。「見逃されていた原因から未知のトラブルが起きる」という構図が似ているという意味です。
・個人のブログ「人とシステムの付き合い方」(2006年7月16日)
http://tht.sblo.jp/article/973032.html
> インターネットの普及で何ごとにつけても詳細な情報を得るのが楽になったが、一方で総合的な視点を得るのは難しくなった。細部を知るために必要な情報と、全体を知るために必要な情報は異なる。
> 知れば知るほどわからなくなる気がするのは、見ている情報が細かすぎるからだ。
> 元請や現場監督の仕事はホワイトカラーである。(略)他の誰がミスや事故を防げるのか。
> 幸いにも山手線の事故では「運転士が気がついて止める」という「仕掛け」が有効に機能したため、大事には至らなかった。つくづく鉄道というシステムが持つ手厚い、有形あるいは無形のフェールセーフの仕組みを実感させられる。
今回、当初の報道では「運転士が報告した」とされていましたので、その時点では、『大事に至らなかった点で同じく運転士が正しく仕事をしたということになるわけですが、運転士に(運転以外の)仕事をさせるというのは、最終段階です。(これまでもされてきているように、本件に関しても)もっと手前の段階で講じることができる対策をすべて講じていくことになるでしょう。』と書こうとしていました。しかし、前掲の新聞記事にあるように、直近の工事において、現場で傾きが把握されていたことが明らかにされています。フェールセーフの最終段階としての運転士の重要性は変わりませんが、それでも、この件の核心はホワイトカラーなところ(工事の手配や監督をする側の問題)にあって、だからこそ他の業界でも身につまされる話になってくるわけです。
・「身につまされる」
http://thesaurus.weblio.jp/content/%E8%BA%AB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B
「総点検」を「一斉」に行なうところまでは、これ全体が「これまで通り」の対応で、取って当たり前でありつつ、いつでも取れるように準備されている対応といえます。
・ツイッター(2013年1月16日)
https://twitter.com/kaorurmpom/status/291705561387524097
> 震災と技術者の話の続き。何が凄いって、対策の結果被害が少なかったことは喜ぶんだけど、それ以上に、見落としてたことや後回しになってたことを悔やんですぐ対策に入るんですよ。例えば、東日本大震災で多数倒れた新幹線架線柱とか。鉄道に限らないと思うけど、本当に凄い人達ですわ。
・国土交通省「「新幹線脱線対策協議会」の結果について」(2011年5月13日)
http://www.mlit.go.jp/common/000144351.pdf
> 電化柱の折損、架線の切断が多く、また余震による被害もあったが、地震発生から49日目の4月29日に全線で運転を再開した。
> 営業列車に脱線はなかった。
> 損傷した高架橋の柱及び電化柱については、実務レベルからなるワーキングループで検討を行うこととした。
> 電化柱の折損・傾斜・ひび割れ、架線の断線
> 電化柱の折損・傾斜・ひび割れ 計 約810箇所
> 3/11本震による被害 電化柱:約540箇所
> 4/7余震による被害 電化柱:約270箇所
※「ワーキングループ」は原文ママですが、「ワーキンググループ」ですね。
新幹線の49日間での復旧については、まさに阪神大震災や新潟県中越地震の後で準備されていたものが、半ば自動的に発動されて完遂されたものといえます。本当にすごいことではありますが、それでも見落とされていたものはいろいろあり、天井の仕上げ材の崩落と架線柱(電化柱)の折損・倒壊がその最たるものです。
・群馬県「群馬県地震防災戦略(原案)に関する意見募集について」(2013年2月22日)
http://www.pref.gunma.jp/07/am4900031.html
・同「地震防災戦略(原案)に関する意見及び意見に対する考え方」
http://www.pref.gunma.jp/contents/000233968.pdf
> 電化柱の破損にも触れるべきではないか。
> いただいた意見については、各事業者と調整のうえ、次のとおり対応しました。
> (東武鉄道)
> 架線柱(電化柱)の耐震性能については、適応していることを確認済みです。
> (JR東日本)
> 電化柱への対策についは、新たに開発した耐震補強工法等により補強工事に着手していく予定です。
※「についは」は原文ママですが、「については」ですね。
・JR東日本 東京電気システム開発工事事務所「業務紹介」
http://www.jreast.co.jp/tesco/06_business/index.html
> 当事務所では、電路設備の簡素・統合化や新幹線電化柱の耐震補強等工事を行っています。
> 新幹線電化柱耐震補強
・「コンクリート柱(電車線路用)耐震補強工法」
http://www.rail-act.org/pdf/1-5.pdf
> 既設電化柱を直接補強するので、
> 基礎新設、および既存電化柱撤去が不要
> 建て替えした場合に比べ、約1/10のコストダウン
工法そのものについては直接ご参照ください。簡単に言えば「揺れを逃がす法隆寺」で、頑丈ではあるが脆いPC構造を、しなやかに変形できるRC構造に変える工法で、現場で施工できることが特徴です。
・日建設計「五重塔のような、制振構造」
http://www.nikken.co.jp/ja/skytree/structure/structure_04.php
> 心柱
> 本来は五重塔など仏塔の中央部に建てた柱のことです。東京スカイツリーにおいては、同じく中央部に建てられる円筒部(鉄筋コンクリート造、内部は階段室)を指します。
・JR東日本「安全報告書」(2014年)
http://www.jreast.co.jp/safe/pdf/report2014/report2014_08.pdf
> 東日本大震災による電化柱の損傷例と補強イメージ
> 【電化柱の補強・門型化】
> ビームによる倒壊防止
> 基部の補強
厳密には「耐震補強」と「倒壊防止」は別の施策であることに注意して見ていく必要がありましょう。地震でなくても倒壊は起きるわけですから、たとえ使用を終えて撤去を待つ部材であっても、現に撤去が完了するまでは線路沿いに建植されたままであるわけですから、速やかに撤去を完了するか、撤去の完了までの間もきちんと強度が管理される必要があるとわかります。
これは、今後、続々と直面する全国の都市モノレールのインフラ部の老朽化に対しても重要となる話で、どこぞのドリームランド線のようにいつまでも放置されるということはあってはなりません。
・はまれぽ「運行休止していた、大船駅とドリームランドを繋ぐモノレール「ドリームランド線」って今はどうなったんですか?」(2011年8月8日)
http://hamarepo.com/story.php?story_id=393
> 開業から10ヶ月後の1967(昭和42)年3月、タイヤがパンクしたことをきっかけに、車両の重量が超過していることが判明。設計ミスである。
> 同年9月22日に東京陸運局から運行休止勧告が下され、9月27日に営業休止となった。
> しかし、責任の所在を巡ってドリーム交通と設計を担当した東京芝浦電気(現・東芝)の間で裁判が起こってしまう。
> 裁判は長期化し、和解したのは14年後の1981(昭和56)年。
> 路線の総距離は5.3km。撤去には約100億円の費用と約5年間の歳月が費やされた(2006〈平成18〉年)
> この記事どうだった?
> 面白かった 1508
> 面白くなかった 15
※こんな重い話、「面白い」といっては語弊があります。「面白い」という評価軸によってのみ評価することを迫るというのは、かなりぶしつけな印象を受けます。
・ツイッター(2015年4月11日)
https://twitter.com/kaorurmpom/status/587033670424268800
> なにをどうしたらこうなるんだ…土木軌道建築電力信通のどれだ…建設保守のどっちだ…
※いえいえ、すべてにまたがるから上掲の「当事務所」があるんですよねぇ。
「耐震補強」については、時限付きで迫られているという外的要因(※)もあって、たいへん速やかに進んでいるという印象を受けていますが、そうでない部分、電化柱の「倒壊防止」(ビームによる)や、新幹線でなく在来線での同種事例への対策といったものは、どうしても後回しにせざるを得ない(優先順位を付ければ低くなる=やらないという意味ではないが遅くなる、作業量も多い)部分といえます。
※http://atos.neorail.jp/atos3/news/news_140820.htmlも参照。いまだに、「羽田空港アクセス線(構想)」と緊急輸送道路をからめて報じる記事が、他社(うちは「社」ではありませんが)からは出てきません。みなさん、よほど緊急輸送道路には興味がないんですね、わかります。
それでも、「柱は柱」です。新幹線の電化柱と在来線の電化柱の間で、何か決定的な違いがあるわけではありませんから、新幹線で「(ビームによる)倒壊防止」が必要となれば、それは在来線でも必要となります。さらには、撤去を待つ部材についても、同じ考え方やその延長で「倒壊防止」を図っていくことが期待されます。
この点で、HEP&JES工法を使用した工事現場での事故の話とつながってきます。個々の詳細な事故原因は違いますが、それでも「HEP&JES工法を使用した工事現場」であることには変わりはなく、その両方を通じて、また、まだ起きていない事故をも考慮して、総合的な対策をとっていくことが、(ホワイトカラーには)求められているといえます。「総点検」は、当座の安全を確認するために行なうだけでなく、未知の点検項目を発見するためのものでもあるのです。今月いっぱいかけて5万か所を目視で点検するとのことですが、その際にはぜひ、単に「異常なし」と報告させる(=ホワイトカラーから見て※)だけでなく、「何か気づいたことはありませんか?」という一種の「自由記述欄」を設けて、ありとあらゆる観察結果を収集することも行なってほしく思います。そして、もし「総点検」についても考課のソレとする、一種の「競争」を導入するのであれば、いかに速く多く「異常なし」と報告するかを競わせるのでなく、「何か気づいたこと」を一点でも多く出すことを競わせるほうが「建設的」(文字通りにも比ゆ的にも)といえましょう。
※新聞記事で「○○姿」と評されるのは、暗に「それが本来の仕事なんですか? 本当ですか?」という批判的な視線が込められています。余談ですが、Googleのイメージ検索で「姿」と検索すると、別の意味でアレな、本来と異なる「姿」をした写真がたくさん出てきます。そうしたものと並べられているということでもあるわけで、新聞に「作業着姿の社員」と書きたてられるというのは、実はかなり深刻なことであるかもしれません。本当でしょうか。
・「割烹着姿」
http://www.weblio.jp/content/%E5%89%B2%E7%83%B9%E7%9D%80%E5%A7%BF
・日経MJ「まだ似合う? 卒業したけど「制服ディズニー」」(2014年8月10日)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO75420860Y4A800C1HF0A00/
・総務省統計局「団塊世代をめぐる「2012年問題」は発生するか?」統計Today No.32(2010年12月1日)
http://www.stat.go.jp/info/today/032.htm
> 2007年や2012年に限って突然に大量の退職者が発生するわけではないということが、統計から分かります。この意味で、「2007年問題」も「2012年問題」も、社会全体の労働供給の視点から見れば、いずれも単年の問題としては深刻なものではありません。しかし、仕事をしている人や探している人(男性)の割合は、60歳から67歳にかけて、9割から5割に徐々に低下していきますので、この期間にわたって、それに相当する数の退職者が発生することになります。
> つまり、「団塊の世代」の最年長層である1947年生まれが60歳になる2007年から、最年少層である1949年生まれが67歳になる2016年頃まで、およそ10年間にわたって、巨大なボリュームの人口の中から相当の数の退職者が発生することになるのです。
> この意味で、「2007年問題」や「2012年問題」というよりも、2007年から2016年頃にわたる「団塊世代退職の10年問題」(2007〜2016年問題)とでもいう方が、適当かもしれません。
> 最近では、多くの企業が継続雇用制度を導入するようになって、60歳以上の年齢層の労働力率が上昇していると言われています。それが真実か否か、これから公表される最新の調査結果から明らかになることでしょう。
東日本大震災の影響が甚大だった影響(影響の影響:「超快速」なるいま「超影響」とでも…略)で、特定の単年をあげつらうという意味でホットなカタチとしての「2012年問題」は見過ごされてきたようにも感じていますが、その実、(すっかり慣れっこになったつもりではいますが)いまは「10年問題」の渦中にあるのです。このために業務が進めにくくなっている面もあるのかもしれません。
・「あげつらう」
http://thesaurus.weblio.jp/content/%E3%81%82%E3%81%92%E3%81%A4%E3%82%89%E3%81%86
土日(休日)の工事を見送り、週明けの月曜に対応するという判断がされた背景には、土日の即応態勢を維持するコストや、突発の出動を「お願い」(監理と施工で会社が違えば「お願い」でしょう)するのがどのくらいしやすいことなのかしにくいことなのか(「お願い」する側が若い社員で、される側が定年後再雇用や早期退職で云々等々によって、業務上、本来あってはならない感情的な何か、一種の「遠慮のようなもの」が起きている?)など、いろいろとやっかいな人事や労務の問題が潜んでいそうにも思えます。(あくまで一般論です。)
・明治安田生命「ホワイトカラーの時間管理」クォータリー生活福祉研究 Vol.16 No.2(2007年7月)
http://www.myilw.co.jp/life/publication/quartly/pdf/62_02.pdf
http://www.myilw.co.jp/life/publication/quartly/report_backno.html
・日本能率協会コンサルティング「ホワイトカラーの生産性向上」
http://www.jmac.co.jp/_images/service/consulting/pdf/44.pdf
・「ホワイトカラーの実践知の獲得に及ぼす批判的思考態度の影響」日本認知心理学会第9回大会(2011年10月)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/cogpsy/2011/0/2011_0_9/_pdf
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