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8月も15日になりました。みなさま、自由研究は進んでいますでしょうか。
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> ・8月15日までに(仮でもいいので)1回しあげ、8月20日までに何回も見直しながら、足りないところを補ったりしていくんですね、わかります。
キビシクも冷たく、「8月15日は『48時』まであるっ!」と叫んで徹夜しても、無情にも「8月16日の0時」がやってきてしまいます。…しかじかでカクカク、つきましては「あと2日」「月曜日まで」待ってはいただけないでしょうか、などといって、小さくなるんですね、わかります。
※小さくなりっぱなしです。それでも、3歩も歩いたら元通りで、だからこそ毎回、小さくならなければいけないんです。カナシイですね。
・読売新聞「夏休みの学び(2)自由研究 イベントを活用」(2015年8月15日)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20150810-OYT8T50002.html?cx_text=04&from=ytop_os_txt2
> 学研(東京)の子ども向けサイト「学研キッズネット」内の「夏休み自由研究プロジェクト」では、500の研究テーマを掲載。科学実験など分野ごとにまとめ方も説明している。昨年7、8月の2か月間のアクセス数は約4300万件。「テーマ選びに困る人が多く、アイデア探しによく利用されている」と同社の担当者。
具体的なアクセス数が紹介されていました。…といっても、多いのか少ないのかわかりません。たぶん、取材で聞いても最低限のこと(7月と8月の合計のアクセス数だけ、本当にそれだけ)しか教えてくれないんでしょう。いえ、教えないですよねぇ。
※7月と8月のどちらが多いのか、7月上旬はどのくらいなのか、8月下旬にピークはあるのか、年間のうちこの2カ月は何%なのか等々。
> 鹿児島市立南小では2年前から夏休み直前の授業で、自由研究の方法などを3〜6年生に教える「わたしのけんきゅう」を実施。同校では自由研究の提出は任意で、それまでは半数以下の児童しか提出していなかったが、昨夏は6割に上昇した。
> 今年も、紙の種類によって紙飛行機の飛ぶ距離が違うなど、身の回りにあるもので簡単に自由研究ができることを教えた。7月22日には「親子科学教室」も開催。児童45人と保護者30人が参加し、ゼリー状の感触を楽しむ「スライム」を洗濯のりなどで作った。
> 同校では、教師同士で自由研究の方法の教え方を話し合う研修も行っている。中心になって進めてきた***教諭(48)は、「テーマや方法を自分で考える自由研究を通して、問題解決を図る姿勢が育つ。教師も教え方を学ばないといけない」と語った。
おおー、先進的ですね、と思ったのですが、しかし、「スライム」を作ってどうするんでしょう。まず教科書には出てこないでしょうし、うーん。
そして「問題解決」はもはや1人でできることはほとんどなく、そこはチームで取り組むPBLでしょう。1人でできないといけないのは「問題発見」です、たぶん。
まず、自由研究をするかどうか自体を児童に選択させるというのは、なかなか難しいですね。「おうちで相談すべし」としても、保護者が勝手に「うちの子はできないから」などと言ってしまうのも困ります。そんなこと、児童が自分で決めることであるとともに、やってみてからわかることでもあります。本来なら、難易度は変えつつも全員が取り組むというのが望まれます。
研究テーマを探す、その前段としては、前年の同学年の児童が取り組んだ「成果」を、入選作などに限らずなるべく幅広く見せ(ジャンルやテーマが偏らず、の意)、できれば、そこに本人(上級生)も来ていただいて、ちょっとした「ポスター発表」をできるといいですね。この際、発表する側は4年生から6年生まで一緒、3年生にも高学年の成果を見させるのがよいようにも思えます。(実施に支障はなく、実施によって困ることもないと思います。)
※これです! これを小学生のうちにやっておいていただけると、とっても後々、役に立つと思われます。教員が「教えよう教えよう」とがんばってもなかなか実現できないことを、子ども同士、いとも簡単に成しえます、たぶん。「教える」のが難しいことが、必ずしも「学ぶ」のが難しいとは限らず、むしろ、「教えにくい」ことが実は「学びやすい(学ぶのはたやすい)」ということはありましょう。
※子どもの「見よう見まねで学ぶ力」は、なかば本能的なもので、かなり強力なものです。逆に、「研究とはなんぞや」「テーマを決めよう」「動機とはなんぞや」「考察とはなんぞや」と、具体的な中身もなく方法論だけを言われても、全然ちっともピンと来ないものです。現物、しかも同じ学校の上級生が取り組んだといった「生々しさ」のあるものを、まずは説明なくドンと見せるのがいちばんではないでしょうか。
※教員としては難しいものだと思っていても、いえいえ、研究とは本質的におもしろいもので、テーマと関心がきちんと一致できている限り、本人にとってはいともたやすいものであることが多いと見受けられます。取り組む前から「難しそう」と思わせることは、何としてでも避けられたく思います。
※もっとも、「前年度を参考に」を繰り返すと、機械学習でいう「過学習」に陥ります。教員が目を配り、前年度に取り組んだ児童がいないテーマやジャンルについては、見本のようなものを作って、並べて示す(混ぜて示す:センセイお墨付きとは受け止められないように、の意)ことが求められましょう。
※体育館や講堂でも、教室ごとにジャンルを決めて数室に分けるでもいいと思いますが、三々五々、興味の向くまま児童自身が「探しながら歩ける」そして「上級生に質問できる」形式が重要です。上級生が順番に前に出て発表するのではいけません。興味は本当に個々人でバラバラですから、興味のないものを聞かされる時間の方が確実に長くなってしまい、退屈なものだという先入観を児童が強めてしまう恐れがあります。
※そして、この段階では自分のテーマを決めるということはさほど意識させる必要がなく、むしろ他者の成果をよく見るという練習をさせられたく思います。コメントを付けさせたり、気に入った研究に投票するような方式でもいいでしょう。漫然と見るのでなく目的を持って見ることの練習ができればそれでよく、ここでただちに自分のテーマが決まらなくていいのです。
自由研究を「選択」した児童には、▼1人ずつ面接を行なってテーマを決定、▼夏休み前に「着手発表会」で、ほかの児童の前で一種「宣言」させて「やる気」にさせる(1人3分くらい)、それに▼登校日などに「中間発表会」で状況を報告させる(1人1分くらい)、と、ここまでできれば理想的ですね。(そうでもしないと、なかなか「やる気」が持続しないでしょうし、ほかの児童の進捗が見えないと、焦りもせず、また行き詰った時に参考にもできずという「袋小路」に陥る恐れが残ります。)
そして、保護者に対しては、▼保護者からの相談に応じる「オフィスアワー」を夏休み中に何回か設ける(必ずしも担任でなく、理科や社会の中学校の免許も持つ教諭などが集中して担当されたほうがよいでしょう:全員に対応しようなどとせず、相談の「枠」はそれなりに狭くてよいでしょう=ほとんどの保護者は相談の場があっても相談なんてしませんです、たぶん)、▼多額の費用をかけずとも優れた研究ができることを伝える(市などが主催する無料あるいは低廉な参加費のイベントを紹介する、図書室や図書館の蔵書からおすすめの理科や社会の参考書をリストアップして紹介するなど)、それに▼児童に代わってインターネット上の資料を探索・活用する際の注意点を伝える(保護者は年齢によっては情報リテラシーの教育をまったく受けていません)といったことが望まれます。
テーマがどうにも決まらない、をいまさらやっているという場合、「学研キッズネット」から理科の実験や社会科の調査モノを選べば間違いはないでしょうが、しかし、それに興味を持てるか、自分で決めたテーマだという実感が持てるかは微妙です。
・1.身近なモノや情報をきっかけにしましょう:買い物のレシート、宅配便の送り状、電気製品の取扱説明書、化粧品や洗剤などの成分表示などは、研究のヒントがいっぱいです
・2.資料で調べてまとめるのも研究です:実地調査(フィールドワーク)や実験だけが研究ではありません
・3.参考図書(辞書、事典、地図、時刻表など)を活用しましょう:本当に迷ったら、目をつむって辞書を開いてみましょう。そこに載っている言葉がヒントに…なるまで繰り返しましょう
1.としては、自由研究が終わった後にも、折に触れては「あの時調べたアレ」と思い続ける(興味が長く持続する)という利点もありましょう。
・レシート:物価や消費税(経済)、商品名の工夫(商業や広告)、感熱紙の仕組み、POSレジの仕組みなど。
・送り状:郵便番号(郵便制度や地理)、電話番号(通信)、お中元やお歳暮の慣習、通信販売の仕組み、カーボン紙や複写機の歴史、東京−大阪間の貸切コンテナ列車など。
・取扱説明書:安全のための注意(消費生活)、販売店やサービス拠点(会社の仕組み)、外国語の注意書き(多国語表記が必要な背景、グローバルな生産チェーン、代理店による輸入品など)、適合する規格(UL、CE、PSE)など。
・成分表示:化学(最先端の高分子化合物など)、化学(着色料や染料、顔料、絵の具などの歴史)、それに化学(弱酸性とお肌、アルカリ性と皮脂)など。(※)
※「添加物はケシカラン」と、大人が勝手にこだわるのは勝手ですが、子どもにわけもわからぬまま吹き込んではいけません。科学的な中立性を保ってください。
2.は、向き不向きもあります。実地調査や実験は華やかですが、いまからでは遅いです。資料をつかってまとめましょう。まったく新しいことを今から始めるのは「とってもチャレンジング」です。「ブラッシュアップ」と称して、あるいは「振りかえり学習」の一環として、これまでに学校で取り組んだテーマや教科書の内容から、もっと深く知りたい、続きを調べたい、といったことを選ぶのがよいでしょう。
本などを1冊だけ、ウェブサイトを1つだけ見て、それだけを引き写すことは、してはいけません。必ず、複数の資料を合わせてみる、その中から自分で取捨選択したり、食い違うことが書いてないか、自分で確かめるということが重要です。
本や、解説的なウェブページ(商品のメーカーの、商品の説明、工場の説明など)を利用するのもよいですが、ちょっとがんばるなら、「一次情報」(生の情報)を集めて、自分でまとめることを体験させてみてください。
例えば、「市内(県内)の工場の立地」など、電話帳やヤフーを利用すれば、いきなりリストでぜんぶ出てきてしまうでしょうが、そこをあえてGoogleマップだけを使い、地図から工場を探し出して、自分で工場のリストを作るのです。工場でなく駅や商業施設などでも構いません。このためにパソコンを占有されるのが困るなら、縮尺の大きい(詳細な)道路地図などを買い与えてもよいでしょう。そして、どんな場所に工場があるのか(工場の周りには何があるか)もまとめて、考察します。
既にリストになっているものから、自分なりの観点でまとめ直すこともできるでしょう。郵便(日本郵政)のサイトで、郵便番号のリストが入手できます。
・「郵便番号データダウンロード 郵便番号簿PDF(平成26年度版)」
http://www.post.japanpost.jp/zipcode/dl/bangobo/index.html
お住まいの都道府県のPDFをダウンロードして印刷し、あとは紙の上でゴニョゴニョとできますね。
市町村ごとに、いくつの郵便番号が設定されているか、数えます。各市町村のホームページか、都道府県庁のホームページで、市町村ごとの人口、面積などを調べます。郵便番号の数と人口、または面積との割り算をし、郵便番号がいかにして設定されているかを明らかにします。全体としては一定の傾向にありながら、それに従わない「変な地域」が見つかったら、それはなぜなのか、調べます。
似たようなことは、コンビニ、銀行のATMなどの店舗一覧を使って(店の数を使って)もできるでしょう。
3.は、最終手段ではありますが、辞書や事典はヒントの宝庫です。どのページを適当に開いても、何がしかのヒントが得られます。探し出すヒントは1つでなくてよく、10つでも20つでも挙げさせ(似通っていてもかまいません)、そこから▼優先順位をつけてみる、▼似たものをグループ化して、たくさんのものが集まったグループを見つける、▼集めた中からアテズッポウで決める、など、いろいろできましょう。あくまで「自分で決めた」と(子ども自身に)思っていただくことが大事です。
・読売新聞「自由研究のテーマ探す「頭の地図」…中曽根陽子」(2015年8月11日)
http://www.yomiuri.co.jp/kodomo/jyuken/ranger/20150809-OYT8T50041.html?from=yartcl_popin
> その時に役に立つのがマインドマップというものです。
いけません、ヤメテクダサイお願いします。
ただでさえ思いつかないのに、どうして「マインドマップ」を使いさえすれば思いつけるんでしょうか。そんなうまい話はありません。思いつかない状況で無理に思いつこうとするのは苦痛そのもので、子どもが「二度とやりたくない」と思ってしまいかねません。これは大人が仕事で、イヤイヤでもやらされるというだけにしておいてください。
そんなことよりは、辞書や新聞など、興味があろうとなかろうと関係なく、世の中のあらゆることが書いてある(とみなすことができる:少なくとも自分で思いつけないことがたくさん書いてある)、一種「カタログ」のようなものをペラペラと、きわめて気楽に眺めつつ、「あっ、これイイな!」と、目に留まるものをピックアップしていけばいいんです。自力で何かを思いつこうなんて、ドダイ、無理なんです。
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