・締切から逆算する ・締切に間に合うように計画する ・締切に間に合うよう研究を切り上げる
(約4000字)
[3091]に続いて、自由研究をまとめます。
★締切から逆算する 私、できないのでたいへん恐縮ですが、締切に間に合わせるというのがもっとも重要なことです。(と、いわれます。)
・1. 締切第一!
・2. 締切に間に合うように計画する(終わらないほど大量の項目を予定しない)
・3. 締切に間に合うよう研究を切り上げる(実験や調査が途中であっても、まとめにとりかかる)
万一にも遅れても大丈夫なように、前倒しした「マイ締切!」を設定して、それを本当の締切だと思い込んで動く、というのが一つの手であります。
・8月20日に完成して、8月25日までに発表練習(発表会や口頭試問がある場合)ですね、わかります。
・8月15日までに(仮でもいいので)1回しあげ、8月20日までに何回も見直しながら、足りないところを補ったりしていくんですね、わかります。
・8月10日までに実験や調査を終えて、万一にもデータや資料などの取り忘れがあれば8月15日までに取りなおすんですね、わかります。
・8月5日までに実験や調査の準備(出かけたり、必要なものを買ったり、人に話を聞く約束など)を終えておくんですね、わかります。早い人や、難しいことに取り組む人は、既に人に話を聞きに行ったり、見学を終えたりしているんですね、焦ります焦ります(焦ってくださーい)。
「5日単位」で、曜日を問わず働く…いえ、「動く」ことが求められます。ブラック…いえ、「チャレンジ」とまでは称しませんけれども、そうしないと取り組めないことというのもあるのです。それを体験するのが、長期休暇中に自分で計画して取り組む(上司の命令でなく、自主的に「勉強」と称して取り組む限りは曜日や時間の上限が適用されません。なんということでしょう!)「自由研究」の本当のねらいですね、わかりますわかります(その上でわからないふりをしておきまーす)。
冗談はさておき(これを冗談といいきるのも気が引けますが、いえいえ、現実社会は冗談のようなものです:みんなわかっていながらそうしている、ということのなんと多いことよ、の意)、以下、研究テーマにかかわらず問われる「研究のすすめかた、まとめかた(段取り)」のようなものをまとめてみたく思います。
★締切に間に合うように計画する プログラム(ソースコードと呼ばれる:ソフトウェア)の規模が「行数(ステップ数)」で示されるように、研究の規模は、実験項目の数(や、その工数、サンプル数、所要時間など)で表すことができます。
※取り組むテーマが難しいかやさしいかは、問題ではありません。自分に合った難易度のテーマが既に選ばれていることを前提とします。そこは学校のセンセイに、夏休みより前に相談しておくべきことで、いまからでは手遅れです。来年、がんばりましょう。
評価する対象となる実験項目が増えると、実験の工数(手数のようなもの、実験で設定する条件のバリエーションの数)は指数的に増えていきます。工数の上限を4(片手で数えてお釣りがくる=マージンのようなものが1ある)や8(両手で同、2ある)だと先に決めれば、項目は1または2に絞らなくてはいけないことがわかります。
※項目が3つあると、それぞれの項目を2値で扱うだけでも23=8、4つあると同じく24=16となります。(比較のための群を用意する話です。)項目が3つや4つだからといって、工数が3や4では済まないことを、わかっておかなければなりません。シミュレーションすればいいんだ(かかるのは電気代だけ[3052])、と潔くいえればよいですが…いえいえ、自由研究でシミュレーション実験って、ありなんでしょうか? 自由研究は、だいぶ初期の段階ですから、どんなに規模が小さくとも、どんなに拙かろうとも、自分の手で実験し、現象なり感覚なりを直接(模擬ではなく)体感することが目的でしょう。
大学の(学部の)卒業論文(卒論)でも1つ、修士論文で1つか2つ、博士論文でも、1つか2つで行なった成果を2つ分、という具合で、ここが3つや4つになることは、研究では通常ありません。
傍題ですが、「約550ページ!」だなんて、とんでもない! 標準的には1つで50ページ、2つで100ページですから、11つ(!)も詰め込んだんですね、わかります。形式だけで不合格とされて当然といえます。
・個人のブログ(2015年3月22日)
http://dai-staff.hatenablog.com/entry/2015/03/22/102731
> 今回のニュースは、そういった問題提起でもあるように感じたが、職場で話題になったのは「修士でも単位取得満期退学ってあるんだ」という話だった。
※たまたま「市長」が「市立大」だったのでニュースになりましたが、もっと普通に、指導教員の指導を無視して(必ずしも悪意を持って無視したわけでなく、指導された内容自体が理解できず、理解できなかったことは身につかず、また、理解できなかったということを無意識のうちに容認できず、指導自体がなかったと、後付けで認知されるような、という意味で、結果的に無視して:しかし身に着けた「社会人力」とでもいうべき一種の「コミュニケーション能力」が邪魔をして、理解できていもしないのに、指導教員から見て「理解できている」と誤認させるくらいのスバラシイコミュニケーション=「超コミュニケーション」とでも…略=ができてしまうので、教員は安心してしまう、その結果)「持論を展開」した挙句、不合格になる社会人学生は、いくらでもいるのではないかと感じます。いくら50歳や60歳でも、修士課程にあっては標準22歳、博士課程にあっては標準24歳に戻ったつもりで謙虚に学んでいただきたく思います。萩本氏([3046])ならできそうですね、たぶん。
さて、自由研究にあっても、きちんと1つに絞られているか、再確認してみましょう。
「光るペットボトル風車キット」でいえば、「1つ」とは、例えば「電圧について理解する」「電流について理解する」という定性的なことになりましょうが、それでも1つです。
ここが、例えば「同キットを用いること(1)で、発電のしくみへの基本的な理解を得る(2)とともに、風力発電のしくみを理解(3)でき、超高輝度LEDが点灯する最低電圧を調べる(4)ことにより、ダイオードの基本的な特性について理解(5)できる」などといった「目標」を立ててしまっては、たいへんです。括弧で示したように、ここには5つ(!)もの評価項目が出てきてしまいます。
・1. 別のキットに対する本キットの優位性
・2. モーターの回転速度とLEDの点灯
・3. 風量、風速、それに「風向角」と風車の回転数(回転速度)
・4. 電圧計を用いた実験
・5. モーターを逆に回す、電圧と電流を両方とも明示的に扱う
どれかはできたが別のはできなかった、といった「場合分け」をしていくと、25=32で、自分は32通りのうち、どこへ到達したのか、ということを評価することになってしまいます。自由研究では、それが目的では、なかったはずですよねぇ。
・1. ほかのキットの存在は考えない(実験に含めない)
・2. ここだけ実験する
・3. 今後の課題として述べる(本研究では実験に含めない)
・4. 「先取り学習」といってもほどがあるので避ける
・5. 4.に同じ
たいへん大げさに言えば、卒論で2.をやり、修士に進んで、3.もやれば、風力発電について修論が書ける!(書けた気になれる!)ということにもなろうかと思います。(あくまで例えです。)
★締切に間に合うよう研究を切り上げる 納期が…いえ、夏休み明けには必ず「成果物を持参」することが求められるとあっては、夏休みといいながら、おちおち休んでいられません。
逆に、「物」としての成果物さえ期日に間に合えば、中身は白紙の束でも…などと、いえいえ、メッソウもありません。そんな「逆ブラック」なことを考えてはイケマセン。
・1. テーマの成立に不可欠なものを優先する(何を「すべきか」を決める)
・2. 議論を補強するだけなら参考文献に委ねる(何を「しないか」を決める)
・3. 「今後の課題」送りにする(いつするか、を決める)
括弧で「何」「いつ」と記しましたが、これは「どうやってやればいいのかもわからない」ようなことは「今後の課題」にすらも入れてはいけないということでもあります。近年スマホ…いえ、誰が言ったか知らないが言われてみれば確かにスマホ…いえいえ、どこかに書いてある問題設定や背景を「コピペ」しては、絶対にいけません。「コピペ」がいけないかどうかはどうでもよく、まず、自分が困ります。自分で考えて決めた問題設定ではないからです。
・夏休みに「札束」(1億円の模擬紙幣(約10キロ))
http://www.jiji.com/jc/d4?p=pom212&d=d4_eco
なぜ模擬紙幣でよいのかといえば、「重さを体感!」することだけが不可欠だからです。実際に「1億円!」の価値が、そこにあることは要件ではないことがわかります。子どもに聞けば元気よく、また付き添いの大人でも「(本物のお札だと)盗まれるから〜!!」と答えそうですが、それはまったく関係ないのです。仮に「盗まれるから」だとすれば、あなたが(札束を目の前にすればただちに)盗む人だと疑われていることになってしまいますが、いいんですか?
※全体の整合性をきちんと考えて発言することは大人でもとっさには難しいということが、よくわかります。説明する側は、すべて事前に入念に検討の上、何をどういうべきか、決めてあるのでスラスラと説明できるのです。
問題設定など、研究の動機(モチベーション:近年スイッチ…いえ「やる気」にあらず)を除いては、「コピペ」することも勉強のうちです。歴史年表を引き写すのも、あるいは自分のテーマに合わせて抜粋したり要約したりするのも、まっとうな勉強です。事典など参考図書は、そのためにあるのです。
何が自分の研究に欠かせない必須の要件なのか、それを1つに絞れているか、を確かめつつ、そうなっていなかったり、わからなければ、確実にできるもの1つ(!)に絞るという最終手段もありましょう。
3つや5つあるものに1から3(5)まで順位を付けよ、というと難しいですが、いちばんいいのを1つ選べ(しかもいまなら超オマケして、選んだ理由までは問わない!)、となれば、それなりにできましょう。「イタリア(の世界遺産だけ)!」と、迷わず決めた「長男」くんにならって、その勢いで最後までまとめましょう。
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