・見通しよく「目次」をなぞる ・注目してもらうためのポスターづくり ・「自由研究」のゴールとは
(約5000字)
[3091],[3092]に続いて、いよいよ自由研究をまとめます。
★見通しよく「目次」をなぞる とりあえず模造紙、というだけで文系っぽいというのは偏見ですが、模造紙を使う場合でも、いきなり書き始めて(「描き」始めて?)はいけません。
研究の成果をまとめるもっともフォーマルな形式としての論文には、決まった「目次」があります。いえ、「メタ目次」といいましょうか、こういうことを、この順で述べよ、という決まりがあるのです。
・1. 研究の動機、背景(近年スマホ)
・2. 他の人がこれまでに行なった研究(を自分も知っていますと示す、の意)
・3. 実験や調査の目的、方法、結果(データ、ひたすらデータ)
・4. 考察(実験や調査の結果から読み取れること)
・5. 結論、まとめ(本研究で行なった実験や調査の目的と要点、考察の要点を簡潔にまとめる)
いま、やさしーく、やさしーく「言い換え」ることを試みてみましょう。
・1. 最近ヤバイ、これ、超おもしろい
・2. みんな知ってるよね(ということを自分も知ってるですよアピール)
・3. 今回の「お題」はコレ! そしてご用意しました実験セットはコチラ! さっそく実験してみたところ、○○が××した件
・4. …というわけで「お題」の答えは××でした(それだけ)
・5. 忙しい人のために1分で
…ちょっと(かなり)やさしくない気がしないでもないですが、まあ、こんな感じではないのかなぁ、と思われます。恐縮です。
・朝日新聞「(ことばの広場 校閲センターから)やばい=すばらしい?」(2015年7月28日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11886428.html
・発言小町(読売新聞)「「〜〜の件」って表現、はやってる?使いますか?」(2013年12月18日)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/1218/634224.htm
※「お題」はラジオや雑誌が発祥かなぁ、と推測します。メディアがネットになっても、ほとんど変わらないんですね、わかります。
そして、(自称)やさしい版を、さらに読み解いてみます。
・1. これさえなかったら、こんなことしていなかったのに…いえ、よいきっかけだったと(一種、後付けで)思い込んで、自分の「やる気」とするわけですね、わかります
・2. 「車輪の再発明」でなく、「車輪」というものは知っていますよアピール(※)
・3. いま起こったことをありのままに…いえ、ありのままに書いているかのように、余計なことは一切書かず、時間経過や手順の上で後戻りすることなくまっすぐに、しかし妙に手際よく「『一晩寝かせたカレー』がこちらにご用意してございます」的な何かを感じさせつつ、の意
・4. 「それだけ」を超えてはなりません。「それだけ」であるのがエレガントなんです。また、「…というわけで」と3.を受けることが必須です(実験や調査に基づかず勝手な「主張」を述べてはイケマセン)
・5. 忙しくなくても、通常5.だけを読んで読んだ気になっています(という方が多いはずです)
※同じ研究、例えば「車輪」を改良する研究に取り組む「仲間」に対しては、同じテーマで競争しようとしていますよ、と示すはたらき、そして「車輪」の研究をしない「普通の人(専門家でない)」に対しては、どこまでが専門家みんなが知っていること(いわば「常識」)で、どこからが自分の新しい「チャレンジ」なのか、位置づけを示すはたらきと、2.には2つのはたらきがあります。「知ってることだけ」知っている、つまり、本研究で何をどこまで「知ってること」扱いするのかを示すということでもあります。
★注目してもらうためのポスターづくり 模造紙1枚(ポスター)にまとめる場合も、これと同じで、上から下へ、同じ高さでは左から右へ、話が進むように、項目ごとの枠をつくります。枠が先です。書いていったら紙が足りなくなりましたぁ、などということは、あってはなりません。
実験するにしても調査するにしても、3.がメインですから、紙の上の面積としても3.の枠を最大に取りましょう。タイトルと1.で、上から3行分(3マス分)、5.は最下行の1〜2行分ですね。
3.には、「当店イチオシ!」…いえ、今回の研究で得られた最大の成果である、実験や調査の結果をまとめた「表」や「グラフ」を、デーンと大きく載せてください。見る人は、おおー、と、表やグラフを真っ先に見てくれます。
※実際、ポスター発表を見るとき、タイトルなんぞ見ずに、メインの図表だけを見て、自然に吸い寄せられていっては、気がついたらあれこれ質問攻めにしていたり…ということが多々あるかと思います。(感想は個人です。)
・立教大学「ポスター発表のポイント(理系向け)」
http://www.rikkyo.ac.jp/aboutus/philosophy/activism/CDSHE/_asset/pdf/MoP_FUROKU.pdf
> 発表者はWelcomeの雰囲気を
※これ、いちばん大事ですよね。発表の間ずっと(発表者も質問者も)ゴキゲンで陽気に、そして、そのためにお菓子やコーヒー、時間によってはアルコールなどが供される(こともある)のかと早合点してみます。
・ポスター発表「あるある」(※画像はイメージです。)
http://www2.rikkyo.ac.jp/~tokiwa/images/album_images/2014/Glyco2014/IMG00210.jpg
http://www2.rikkyo.ac.jp/~tokiwa/images/album_images/2014/Tennenbutsu/DSC03805.JPG
・日本植物学会「高校生研究ポスター発表」
http://bsj.or.jp/bsj79/student_poster.html
逆に、いくら3.がメインだからといっても、3.だけで「自由研究!」と称しては、さすがに自由すぎます。曲がりなりにも研究と称するためには、1.から5.まですべてが書いてあることが求められます。いえ、学校のセンセイが求めなかったとしたら、それはそれでいいんですけれども、将来的には自由研究にも、そうした研究のキホンのようなものが貫徹されていくような時代が来ないとも限りません。それを「先取り」したと思って満足してみてください、ちょっとだけ。
2.は、模造紙では小さな字で下のほうに書けばいいんではないでしょうか。本当でしょうか。大部分を3.に、といいますか、これまた模造紙では、3.と4.をも一緒にしたような枠でもよいでしょう。
※小さい字とはいえ大事でないということはまったくなく、どこにもまったくちっとも書いていないという状態にしてはイケマセン。小さかろうとも、必ずどこかに入れるのです。
※そして、国会中継で出てくる説明のボードでデータの出典や参考文献が最下部に書いてあって、「ボード立て」といいますか、木製(に見える)のソレに立てたときに、ちょうど隠れるという、なんということでしょう! これでは参考文献を示さない自称ナントカ、のようなものになってしまいます。それでも、隠れたのは偶然であるとみなして、まあ、いいんではないでしょうか。本当でしょうか。そして、参考文献を問い合わせる「電話」は、いったい何件くらいかかってくるんでしょうかねぇ。同様に(同様と評すのは気が引けますが、いえいえ、やっぱり似ていますとも)、学校の廊下の壁に張り出されたときに、手前に置かれた会議用テーブルの上の、他の人の工作で隠れて見えないという…工作に悪意はないんです、置いた人にも悪意はないんです。見えないからといって、手前の工作をどかしてまで見ようとする人、どれだけいるんでしょうか。工作が「お手を触れずにご覧ください」だったら、どうするんでしょうか。それでも、そこに書いてあればいいんです、たぶん。
★「自由研究」のゴールとは 4.や5.で、とりわけ自由研究におけるソレで難しいのは、子どもが素朴に持った「感想」をいかにして盛り込むかということです。きちんと取り組めば、単に終わった、たいへんだった、ということでなく、もっと複雑で繊細、しかし雑多ともいえる「感想」を持っているはずです。それを子どもが自分で言語化することを期待するのは、とてつもなく無謀です。かといって無理に引き出そうとしても、誘導っぽいソレになってしまいます。注意深くそして巧妙に聞きだしてみましょう。
・「何がどうしてこうなった?」:そのまま3.や4.に書く。「何」「こうなった」を3.に、「どうして(whyにあらず:how)」を4.に書く(必ず分けて書く)
・「予想と違ったのはどこ?」:4.で強調して書く。時間軸的にはウソになるが3.で仮説として入れる(後から入れる、そして4.で受けて答えたかのように見せる)
・「うまくいかなかったのはどこ?」:4.や5.で「今後の課題」に入れておく
・「次は何してみたい?」:突拍子もなく脈絡のないことでなければ、同。突拍子だったらそれはそれで「○○にも興味を持つなど関心が広がった」などと「強弁」すればいいんですね、わかります
引き出さないと出てこないとはいえ、「次は○○してみたいよね?」などと言ってしまってはアウトでしょう。いえ、「週末のお父さん」としてはうっかり、同僚や部下を相手に言うかのような調子で、具体的すぎることを言ってしまうかもしれません。お気を付けのほど、ぜひ。
・「強弁」
http://kotobank.jp/word/%E5%BC%B7%E5%BC%81-478954
・「○○にも興味を持つなど関心が広がった」(「興味や関心」)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/review/wg/shishin/k_4/pdf/s2-2-1.pdf
・「今後の課題」
https://scholar.google.co.jp/scholar?q=%E4%BB%8A%E5%BE%8C%E3%81%AE%E8%AA%B2%E9%A1%8C+site%3Ajsce.or.jp&btnG=&hl=ja&as_sdt=0%2C5&as_vis=1
※今回やらなかった(そこまではできなかった)ことを正直に「今後の課題」として記すケースと、自分たちでは取り組む予定がないことを3つくらい挙げるケースとに大別されましょう。わかりきったことでも書いておくことが大事で、それすら書いていないと、「そんなことも知らないのか」というコメントが(査読や発表で)つけられてしまいます。他方で、コメントする側としては「今回は○○したということで、今後、××することも検討なされてはいかがでしょうか」などとコメントするだけの簡単な…いえ、簡単なコメントだけで済んでしまうという、カナシイやら「肩すかし感が半端ない」やら、といった話でもありましょう。そうしたこともろもろいっさい、5.だけを読めばだいたいわかるので、5.だけを最初に読むんです。
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