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【研究ホワイトボックス】

研究を楽しく「追体験」! 真っ白のキャンバスに虹色の未来を描く方法、教えます。
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発行:2015/11/5
更新:2017/8/19

[3125]

【研究ホワイトボックス】

研究ホワイトボックス(6) 研究方法を研究するには(前編)


いわゆる研究方法論
「考えない人」が集める「判例」への批判
認知特性の類型化を離散数学してみる
「真の判例」が「再発見」されるとき

(約15000字)

 「ITホワイトボックス」のひそみにならって「研究ホワイトボックス」と称して([3051])、[3093]に続き、研究の話題を読み解くための話題を提供([3103])いたしたくございます。

※ここで研究しようというわけではありません、の意。

 前編([3125])では、いわゆる「研究方法論」と対比させ、研究を「立体化」させる方策を探ります。これまで「リアルタイム」または「過去の一点」にある対象を研究することが大半であった状況に対し、「時間の経過」を採り入れ、対象を継時的・通時的に観察しようとする新しい動きを紹介します。具体的には、▼「末弘厳太郎の判例研究方法論とその限界」(2010年)に着目します。

 後編([3126])では、駅におけるユーザーインターフェース(UI)の開発がデザイナー頼りであることに関して、研究として取り組む必要があることを指摘します。このため、▼自然科学の発達の歴史、▼研究もできるデザイナーを育てるカリキュラム、の2面から、研究方法を研究する方法を探ります。具体的には、▼メンデレーエフの周期表、▼年代測定法、▼工芸・美術に関する博士後期課程の実情に着目します。

 この「あらまし」だけでは、えっ、と戸惑われることと思いますが、前編・後編を通してお読みいただいた後には、なんとなく、そういうことか、そういうことだなぁ、と感じていただけると確信します。(私が勝手に確信します、の意。恐縮です。)

 それぞれ、余談として、前編では▼認知特性の類型化を離散数学っぽく試みる、後編では▼「鉄道史」を研究たらしめるポイントについて触れます。


●いわゆる研究方法論


・日本放射線技術学会「研究方法論と基礎統計学」(2015年3月24日)
 http://www.jsrt.or.jp/data/publication/item/pub05/1944/

 > (目次より)
 > 第一部 研究方法論
 > 3.文献検索方法のすすめ〜日常業務と研究の情報収集を対象として〜
 > 4.実験研究方法論
 > 5.調査研究方法論〜アンケート調査の実施方法〜
 > 6.事例研究方法論〜臨床での課題を研究に結びつけるために〜
 > 7.質的研究方法論〜質的データを科学的に分析するために〜
 > 8.放射線技術学研究のための統計学入門

 ふつう、研究方法論といって思い浮かべられるのは、このような、いま、目の前に具体的な個別の研究課題があって、それに取り組むに際して、いま、何をどのように進めたらよいですか、という、一種「ハウツー」であろうと思われます。

 ここでは、この種の「方法論」と一種「直交」するような研究方法論といいますか、研究(一人の研究でなく、分野としての全体)を立体的にする方策を探ってみます。

 といって、もう少し予備的な説明が必要かと思います。

・計測自動制御学会により転載された毎日新聞社説「古い学術界を変える時だ」(2002年2月10日)
 http://www.sice.or.jp/info/oudan/mainichi.html

 > 大学の工学は土木、機械、電気工学など19世紀以来の垂直型研究が幅を利かせているが、個別技術が成熟した現在は、横断型の研究を推進することが緊急課題だと指摘している。

 インテルのCPUの開発戦略で有名な「チックタック戦略」を連想させられます。

・米インテル「Intel Tick-Tock Model」
 http://www.intel.com/content/www/us/en/silicon-innovations/intel-tick-tock-model-general.html

 図を見ますと、またネーミングからも、あたかも時計のごとく自動的かつ一定間隔でチックとタックを交互に主役とするかのように見えますが、いえいえ、そんなに単純ではないでしょう。

※いま、極端にサイクルが間延びしたとしても、長い目で見ればやはりチックタックであって、などと想像されます。(あくまで想像です。)

 チックとタックの配分を考えるとき、チック−タック平面(と仮に呼びます)を上から見下ろして、過去の配分の状況を何層も積み上げて、さて、次の5年はどうしましょうか、と考えるわけです。ある時点における研究開発の平面(テーマや投資の配分)をマネージメントするために、時系列方向での積み上げ=「追加の次元」(チック軸、タック軸に、3つ目の軸を加える、の意)が必要となることがわかります。

 このことを指して「立体的」と呼んでみます。単に「直交」といっただけでは、まだまだ平面から飛び出せない(かもしれない)と心配されるわけです。

※チックタック平面といって、その実、(理想的にわかりやすい)チック軸とタック軸が直交する平面でなく、(わかりにくいが現実的な)極座標の平面にチック相とタック相があるというイメージもありましょう。そこにz軸を増やして円柱座標にすれば「立体的」であります。

・「円柱座標」
 http://www.math.kobe-u.ac.jp/HOME/higuchi/h25kogi/H25int11.pdf

 もう一つ、心配があります。

 チックとタックは、常に動的に、適応的に配分が調整され続けなければなりません。誰の目にも明らかなほど配分が歪になるまで放っておかれる、ということでは、あまり意味がない(戦略がうまく機能していない期間や、投じた労力が無駄になる部分など、いろいろな意味での損失の積分値のようなものを、最小化することができない、の意)わけです。

 国鉄の研究開発の現場では、意欲的に先進的な取り組みがなされた(ほぼリアルタイムで「1958年のサイバネティクス」[3041]、あるいは「1964年の速度感」[3124])ものの、その後、研究体制を継続的にアップデートしていける仕組みが機能しなかった([3041])とみられます。いわば、「これからはツバメの時代だ!」といってツバメがバババババ([2967])、「これからはペンギンの時代だ!」といってペンギンがドドドドド([2920])、ということであっては、それは(画一的な)「号令」であって(複雑で柔軟な)戦略とは呼ばれないわけです。

※「これからは○○の時代だ!」については、[2731],[3097],[3103]も参照。バババババやドドドドド(単一の施策の水平展開)によって解決できる問題が山積である(単純なアプローチだけでも当事者が満足する)というのは、事業体としては若いステージなのではないか、成熟するにつれ、バババババやドドドドドでは解決できない複雑な問題ばかりになっていくのではないか、ということについては「バタフライな問題」([2955]ほか)を参照。もっとも、「これからはバタフライの時代だ!」といってパパパパパと解決されるのであれば、それはそれでよいことなのかもしれません。

・通商白書2006「垂直展開から水平展開へ」経済産業省(2006年)
 http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2006/2006honbun/html/i2213000.html

 「これからは水平展開の時代だ!」というのでなく、将来にわたって垂直展開と水平展開をいかように使い分けましょうか、といえば、立体的たりえます。

 さらに、チックとタックの「切り換え」を意図しては行なわず、自然に任せるという状況はどのように表現できるでしょうか。

・「代数らせん」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%95%B0%E8%9E%BA%E6%97%8B

・「対数らせん(等角らせん)」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BE%E6%95%B0%E8%9E%BA%E6%97%8B

 時計のように規則正