・地下鉄の「車両限界と建築限界」 ・日比谷線に「20m車」、新駅での「手戻り」避けるため? ・車上信号式ATC、日比谷線開業に間に合わず ・(自らの)『鉄識』を(自ら)疑う ・「車両基地」の建築限界とネットワーク
(約23000字)
成田空港から東葉高速線そして東京メトロ東西線に直通する「メトロウイング(仮)」を、JRでいう「幅広車両」で運行できるのでしょうか([3043])。
本稿では「車両限界と建築限界」を概念的(※)に探ります。このため、前編([3107])で、日比谷線の「車両限界と建築限界」が、これまでどのように扱われてきたのかを、資料から(想像で補う部分もありますが)まとめてみます。後編([3108])では、(戦後の)国鉄の在来線における車両の開発の歴史をひも解き、近年JRでいう「幅広車両」、国鉄でいう「裾絞り車体」の普及の経緯を追ってみます。
※あくまで「概念的」ですから、最終的に「できるorできない」といった「答え」のようなものには到達しません。恐縮です。
●地下鉄の「車両限界と建築限界」
車両限界と建築限界は、地下鉄かそうでないかは問わず、鉄道では必ず定められるものです。しかし、「狭いトンネルを走る地下鉄で電車が揺れたら、天井や壁にぶつからないのだろうか」と素朴にギモンされる(当時、された)ということから、とりわけ地下鉄では(≒地下鉄博物館では)「丁寧に説明」されてきたという背景があるかと思います。説明としても、「トンネル」は見た目的にわかりやすいので、本稿でも、まず地下鉄の車両限界と建築限界を見ていきましょう。
・[3043]
> JRでいう「幅広車両」にこだわるとしますと、東葉高速線の土木構造物はJR線相当の建築限界で建設されているとみられますので、信号機や架線柱などの一部、ケーブルなどの大がかりな移設が必要にはなるとみられますが(とはいえCBTCへの置き換えや空間波デジタル列車無線への移行において、もともと必要となる工事であります)、JR線の幅広車両の直通も可能とみられます。東西線についても、地上区間はほぼそのままで可能ではないかとみられます。地下区間は、主に駅部の壁面の化粧板やホームが支障する程度であれば、さほど大がかりでない工事によって拡幅することが可能とみられます。
> 東葉高速線の建築限界や車両限界について、明示的に寸法の数字を示した資料は見つけられません。土木学会の「図-2」が縦横比を含め正確に描かれていると信じながら、縦3500mmと明示されている長さを(定規で測って)ヨコにしてみますと、駅部を含め、しっかり3500mm以上の幅が確保されていることになります。本当でしょうか。
いかなる資料の何ページに「xxxxミリメートル」という記載があった、それを見つけるまでは事実だとはみなさないという、一種「手続き的」な態度もたいへんスバラシイとは思いますが、誰もがそこまでの資料収集ができるとは(労力としても)限りません。
※余力ありましたら、可能な範囲で「xxxxミリメートル」を見つけて別途、まとめたくございます。
近年の新聞や雑誌(ただし趣味誌でない)の記事などでは、「建設に関わった機構関係者」の言として「理論上は○○も可能」(乗り入れや最高速度など)などと安易に報じる何かもあって、しかし、これ、厳密にいえばかなり越権的なことで、引き渡しが完了した後の設備について建設した者があれこれいうのはどうなのかとも心配されます。
他方で、新線の設計にあたっては、かなり長期の(そもそも建設の債務償還も30年や50年かかるわけですが)、例えば60年後に違う使い方をすることが求められても対応できるような予備的な構造を備えておく、土木だけは設計にかなり余裕を持たせておくということは、(それをすることがコスト面で難しくなくなった)ある時代より後の時代にあっては一種「常識」でもありましょう。
そうした話を知ってか知らずか…いえ、知ったような知らないような状態に(私たちが)ありつつ、しかし、それはそれとして、できるだけ公的な資料に基づいて「○○が可能」かどうかを探ってみたい、そういうときにどうすればよいのだろうか、という話です。
・「ワンポイント基礎知識 車両限界と建築限界(Rolling stock gauge and Construction gauge)」RRR(鉄道総研)(2003年7月)
http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0004/2003/20000403070301.pdf
・「鉄道建築限界測定方法およびその測定装置」(2012年)
http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0004/2012/0004005691.pdf
※「発明余話」が必見…いえ、必読だと思います。
・「gauge」
http://ejje.weblio.jp/content/gauge
http://d.hatena.ne.jp/lar-lan-lin/20130526/1369558572
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2015-01-14.html
余談ですが、「ゲージ=軌間」と狭く思い込んではいけません。「標準的な寸法、規格」というのも「なれの果て」のような語義にすぎず、きっと、げじげじっと「さしがね」をあてて測ったり確かめたりする、あるいはげぇっと(失礼!)窮屈に、あるものが所定の輪っかを通れるか確かめて大きさを確かめる(ジェットコースターの身長のソレや、空港の手荷物のアレ)、その擬態・擬音的なものから来ているのではないかなぁ、と、「古期フランス語『計量ざお』から」との説明を見て勝手に想像してみました。
・「さしがね」
http://www.edu.yamaguchi-u.ac.jp/~tech/okasun/sasigane-manual.pdf
・「計量ざお」
http://www.shuzui.jp/president-blog/2009/post-26.html
・大阪府 商工労働部 計量検定所 検査課「計量の歴史」
http://www.pref.osaka.lg.jp/keiryo/syoukai/tadasiikeiryou4.html
> 天秤が公正さをはかる神聖な秤として扱われるのに対し、棹秤は低く見られてごまかしの道具のようにも扱われることも多かったようです。
> これは、天秤が貴重品や宝石などの、比較的高級な分野に使われたのに対し、棹秤は食料品や日用品などの庶民的なものを量るのに使われていたことからきているようです。
> また、棹秤は構造的に重さをごまかしやすかったということも、その理由のひとつでした。例えば、紐をねじった状態で支えたり、小指で棹を押さえたりして、水平になったようにごまかします。
なるほど、と、一種「通りいっぺん」の「度量衡の歴史(制度の変遷だけを追う)」でなく「秤<はかり>の歴史(民衆のキモチを含む)」としてたいへん詳しく見受けられます。(食用金箔と牛肉を重さで比べるはなし[2965]も参照。)いま、「計量ざお=棹秤」と理解して、使わない時にどうやってしまっておくのか、一つの店や船などに何本ほど備えてあったものなのか、そしていくらかまとめてしまってある「計量ざお」がバラバラと、げじげじと、鉄筋の束を持ち上げる時にぶつかりあってげじげじいう、あの音がするのかなぁ、などと勝手に想像します。本当でしょうか。
・「鉄筋の束」
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100274
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100690
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100507
※クレーンを使うことで、かえって人が「重さ」に無頓着になるという面があるわけです。「ロボットスーツ」などと称して重量物を軽々と持ち上げられるようになったら、この種の事故がこれまで以上に頻発しそうでもあります。大いに心配し、そして回避していきたく思われるかと見受けられます。
・三島市「〜重量を計る器具〜 棹秤【さおばかり】」
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/ipn000036.html
> 守随氏販売及び改の棹秤
> 棹秤を使っての計量は、棹の一端(皿の上)に品物を載せ、把手を支点に分銅を移動し、棹が水平になった時の目盛を読んで重さを計ります。
・「秤座」だった「守随氏」「神<じん>氏」
https://kotobank.jp/word/%E5%AE%88%E9%9A%8F%E6%B0%8F-1337017
製造と販売だけでなく「改<あらため>=検定」(計量や測定の正確さを維持すること)が大事だといって、それをぜんぶ秤座に任せたわけであります。そして、その秤座が不正をハタライテいないかは、どこがどうやって監督していたんでしょうか。「編集部の者より鉄道に詳しい方」([3017])…いえ、「秤座よりも秤に詳しい人」がいなければ、秤座の監督は務まりません。「秤座のOB」でも「第三者」と認められるのでしょうか。調べてまとめるとおもしろそうです。余談でした。
・「The lying scale.」
https://www.cartoonstock.com/cartoonview.asp?catref=jfa0376
・「'Five pounds of money lost to diet programs.'」
https://www.cartoonstock.com/cartoonview.asp?catref=efi0032
・地下鉄博物館における説明
http://blogs.yahoo.co.jp/japanlove1945/62377444.html
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-94-a3/japanlove1945/folder/1523284/44/62377444/img_13?1373330514
> トンネル内の建築限界と車両限界を学べます。 かなり学習スペースが多いです\(o)/
> 日比谷線のマッコウクジラ。懐かしい車両達です(つД`)ノ
しっかり学習できそうですね!(…せっかく行ったなら「学習」して帰ってきましょう! の意。)
同館での展示では、単線のシールドトンネルが再現され、建築限界が青、車両限界が黄色のフレームで示されています。そしてたいへんわかりやすく(≒わざとらしく)地上信号式ATC(WS-ATC)における信号機(後述)と機器箱が左右に置かれ、剛体架線は建築限界の内側に…「屋上装置(パンタグラフ)にかかる車両限界」の説明が省略されていることがわかります。この展示での黄色のフレームの上から、剛体架線の下までの空間(RRRの記事では、図1に破線の枠で示されています)に、パンタグラフだけがあってよいということです。車両のエアコンなどは、この展示での黄色のフレームの内側に収めてあるということですね。
いま、子どもになったつもりで「学習」してみますと、別のコーナーで「新CS-ATC(車上信号式ATC)」の解説が誇らしげに展開されてあったとしまし
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