・技報とは(仮) ・「空気系統」とEthernet ・はい! こちらトラムでゴザイマッス… ・サーベイとは(仮)
(約10000字)
いまツイッターで「INTEROS」「論文」といって一種「飛び交って」います。
え゛ー、挙げられているリンク先は技報ですよね、技報と論文は位置づけが違いますよね、わかっておっしゃっていますよね、と再確認されましょう。
●技報とは(仮)
論文には、論文としての要素や構造があるんです、という話を「メタ目次」と呼んで[3093]でまとめています。技報では、このうち、新規性や有用性の「詳細な説明」を、…えー、その、まあ、いろいろな事情で一種「大たん」に省略し、タンタンと「ご報告」(技術報告)するものです。
その代わりになるのが特許で、特許では当然、新規性と有用性を示すわけです。しかし特許では、えー、その、端的には「わからないように書け」といわれます。これに対し、一種「都合よく」、さしつかえない部分だけを「たいへんわかりやすく」書くのが技報である、ともいえましょう。…本当でしょうか。
きわめて大ざっぱには、大学や研究所でいう「論文」が、企業では「技報+特許」に相当し、そして、業績としては、「論文」または「特許」が挙げられ…シビアには「数えられ」るわけです。
※ビジネスとしては特許あってこそですから、特許より前に(発明がオオヤケになる)論文、ということは避けられ、特許の後に論文(新規性がない)、というのも受け付けられず、どうやっても「技報+特許」になる、というより、本来は技報すら必要ないとも言い張れるところ、そうではなく技報を公開するんだというのは、たいへん「貢献的でコミット!」な、ありがたいことだと再認識される気がいたします。
技報のほうが具体的でわかりやすくおもしろいので、論文のほう…いえ、論文を読まずにもっぱら技報ばかりを読む、という一種「生活」になっていく人も多いことでしょう。しかし、あくまで技報は技報で、たいへん「都合よく」、うまくいった部分だけにフォーカスして、あたかも「できた→動いた!」([3071])であるかのような、つまり、論文には必須の実験や評価([3034]も参照)の部分「やってみた→動かなかった→改良した→これだけよくなった!」(仙台市「科学工作の進め方」[3129])が全然すっぱりちっともまるっと抜け落ちているんです。
※「全然すっぱりちっともまるっと」はいいすぎで、それなりには実験結果や評価が述べられる場合もありましょう。ただ、実験結果と評価こそが骨格となる論文とは構成が異なり、技報としては提案手法(発明)そのものを、いかなるものであるか説明するのが目的ですから、その目的に必要な範囲で補足的に実験結果が示される、という意味で(意味の上で)、論文とはかなり異なるものです。
これは特許でも、なぜそのような発明に至ったのか(モチベーションといって「動機」)、この発明が(ニーズや課題に対して)ベストな答えであるのか(他の方法より、どのくらい性能がよいのか)、ということまでは問われませんから(単に新規性と有用性が示されればそれでよい、の意)、どうにも、企業では「できた→動いた!(ただし非公表)→すかさず特許」と、そこで終わってしまう、その結果、「なぜ」が問われにくくなり、やがては小手先の性能の改善ばかりに注力されやすくなっていく、という一種「構造的な何か」的なものがあるやのようにも思われて…きませんか、そうですか。
※このことからは、ワーストとしては、技報に書くようなことしかしない、きちんとした実験や評価を行なおうという考えがまったくない、という「人材!」が育ってしまう(その限りにおいてはたいへん優秀に育つ、の意)、ということも心配されますが、私には実感のある話ではありません。もし実感されていらっしゃるかた、いらっしゃいましたら、それこそ、さしつかえのない範囲で都合よく、補足いただければと思います。
企業としては、そういうものだといって、その『小手先』をスポンジでじゅーっ…いえ、きわめて鋭く研いでいく、というのは一種「正常な進化」といわれましょう。企業(開発部門)とはまったく異なる立場から、いわゆる「イノベーション」を狙うのが、研究所(企業の研究部門を含みます)だというわけです。
●「空気系統」とEthernet
いま、ひとつのPDFを参照して、開発と研究の質的な違いを体感してみましょう。
※このPDFは論文ではなく、研究開発の動向をまとめた「レビュー」ですが、著者の小笠氏は「車両制御技術研究部主管研究員」(掲載当時)とのことで、ふだんは研究して論文を書くのが仕事のかたですから、そうしたかたが書かれた記事は、仮に内容やタイトルが、そこらの雑学本や趣味誌のものと大差ないように感じられても、いいえ、たいへん大きな違いが内在しているはずだといって先入観を持たれましょう。
・小笠正道「鉄道車両のブレーキ技術」鉄道総研 RRR Vol.71 No.8(2014年8月)
http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0004/2014/0004006101.pdf
> 図1 ブレーキの分類
> 図2 電気指令式空気ブレーキにおける電空演算
情報(電気・電子・機械・土木・情報でいう情報)だけを勉強し、機械(同、機械)は勉強しませんでしたという身には、この図が衝撃をもって受け取られます。「電気系統」と「空気系統」が対等に並べられ、ああ、そういうことだったのかと、いまからでも機械に入門したくなってくるのです。
・[3102],[3129]
> 油圧系のソレ
航空機の制御系として一般に知られているかと思いますから、「電気系統」と並べて示すには、まず「油圧系統」が好適だと感じます。その上で、ああ、電気でなければ油圧なんだ、さらに空気でもいいんだ、といって「空気系統」が(歴史的経緯に反した流れで勉強してしまった、つまり最新の「情報」分野だけを勉強した側からは、そういう順番で)無理なく理解できるように思われます。
※もっと歴史的には、「電気系統」もまた、電気より前の機械制御のソレ(油圧、空気)を参考にして実現されたはずです。(機会あれば別途まとめたく予定いたします。)
ブレーキそのものについては、ここでは本題でないので、意図して飛ばします。(何かを、目的を持って読み解く際には、どこが自分の目的にかない、どこは自分の目的にかなわないか、よく見分けていくことが求められます。とはいえ、自分ではわからないので調べているのですから、どこが自分の目的にかなわないのかなど、自分ではなかなかわからず、わからないほどベラボウにぜんぶ律儀に読まないとならず、そして時間がかかるんです、わかりますわかります!)
> 図4 列車内情報伝送系における階層構造の例(IEC31675準拠)
> 1990年代後半以降に採用が増えてきた制御伝送は,編成に引き通したイーサーネットケーブルなどで5Vや3.3Vなどのデジタル信号列を送受信する技術です。列車内ネットワークに接続された各機器の状態量や各機器への制御指令を,ソフトウェアを介したシリアル伝送で伝達します(図4)。
> 一般にTCN(Train Communication Network)と呼ばれ,最近では「INTEROS(Integrated Train control/communication networks for Evolvable Railway Operation System)」などのシステムが具現化されています。
さて、この先の文もついつい律儀に読みそうになりますが、いいえ、ここでは、この項の冒頭で簡潔に示される歴史的な経緯をこそ、きちんと知ることが最も重要です。「ふーん、それで?」といって読み飛ばしていいほど軽いことでも、単なる飾りでも、紙面を埋めるための蛇足でも、まったくないのです。
・「編成に引き通したイーサーネットケーブルなどで5Vや3.3Vなどのデジタル信号列を送受信する技術」は、イーサネット(Ethernet)でしょうか?
・図4の「列車内ネットワーク」は、どのようなモデルで設計されたネットワークでしょうか?
・「INTEROS」を「TCN」の一種とみなす場合の分類基準は何でしょうか?
このあたりをきちんと、自分の業界の知識でなく、よその業界の知識もふまえて、その間に何ら優劣をつけず、中立に見ることができるようになりたいですね、といって一種「かつ望」されます。
・「かつ徳」(本文とは無関係ですが、じゅるるー)
http://katsutoku.jp/menu/
●はい! こちらトラムでゴザイマッス…
※ゴザイマッス([3124])。
・電気通信大学「第97回研究開発セミナー【10月27日開催】」(2014年10月3日)
http://www.uec.ac.jp/news/event/2014/20141002-4.html
> 「電化/非電化線、軌道/鉄道線の相互直通に向けた技術」−架線・バッテリーハイブリッドLRV”Hi-tram(ハイ!トラム)”の概要
も、もっ、もしやっ、きわめてラヴリー([3133])な「りっちぃとらみぃ」の名付け親だったりしませんか?
・(現在はリンク切れ)
http://www.tht-software.net/link.html
・「充電器を増やさずに架線レス電車化できる主回路方式」RRR 2009.11(2009年11月)
http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0004/2009/0004005128.pdf
※「名付け親deどっかーん☆」については[2993],[3099]なども参照。かの有名な「アメダス」あたりも『秀逸』だといって軽く6時間くらい…略。
INTEROSが云々、といって、「曽根センセイ」(日本テレビ)、「鉄道ジャーナリストの梅原さん」(NHK※2)、「鉄道技術ライターの川辺氏」(東洋経済、TBSラジオ)を本件専門家扱い(※1)するのは、(個々の社や記者・ライターがということでなく、この業界が)きわめて未熟だという印象を拭えません。当事者でない、中立的にコメントいただける「お立場」がいいんだというと、(取材が)鉄道総研には向かわないということもあるのでしょうけれども、いいえ、実態は知りませんが名目上は、きちんと独立の研究所でありましょう(「中立な研究機関が日本にはない?」[2935]も参照)。安心して(記者やライターが)鉄道総研の門をたたいてよいのではないかと楽観されます。
※1 学位にも、守備範囲や賞味期限のようなものがあるでしょう。そして、記者がライターにコメントをもらいに行ってどうしますか(同業者でしょ)、の意。
※2 ちょうど、INTEROSに続いて報じられた「藻(バイオ燃料)」のニュースでは、「みずほ情報総研」のかたが、たいへん丁寧かつわかりやすく、しかも体系的で網羅的な、実にスバラシイ「説明」をされていたので、うーん、鉄道の技術に関して、この種の方が呼ばれないということは、技術に関するIRが不十分(コンサルタントや、シンクタンクのアナリストなどが『企業訪問』してヒアリングしたりする、それを一律「お断り」していたりしませんか、の意)なのではないかと疑います。たいへん疑います。(なお見解は個人です。)
・「本件専門家(1)」
http://www8.cao.go.jp/jyouhou/tousin/h16-08/389.pdf
> 開示されないのは,市民(国民)一般の個人情報に係る氏名ではなく,専門家の氏名である。不開示部分に係る行政文書は,環境影響評価法の趣旨に関連する文書であり,同法の本質は事業者の意思決定過程の透明化(説明責任の履行)にあるのだから,5名の氏名を開示すべきなのは,なおさらのことと考える。
> **局長は,かかる専門家の助言に基づいて,現地技術調査実施の是非,作業計画の策定を行っている。このような政府の政策決定に影響を与える専門家の氏名という個人情報と,市民(国民)一般の氏名という個人情報とを同視すべきでない。
> 学会やマスメディアなどで,社会に民主主義が機能しているなら,匿名による専門家の見解など到底考えられない。したがって,**庁と専門家との信頼関係が優先されるべきではなく,**庁は,専門家の氏名を明らかにしないならば,専門家からの助言であったという説明は撤回すべきである。
※単に「本件専門家」の用例を見つけるべく「Google先生にご登場願」ったところ、いきなり出てくるのがこれだとは、アナドレません。
・「本件専門家(2)」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/175/toup/t175022.pdf
> Aを確認できなかったことから(略)****氏(以下、「本件専門家」という。)に対して見解を求めたところ、本件専門家より「Bが失敗した」との見解を得たため、Cが失敗したとの結論を得たものである。
※いま絶妙に、A→B→Cという「変せん」が観測されます。AとBだけでCとまで言えるのか、いえいえ、BなしでもCと言えたかもしれないところ、きちんとBを得たので確かにCなんです、ということですね、わかります!
・NHK「“藻”エネルギー 開発最前線」(2014年12月19日)
http://cgi4.nhk.or.jp/eco-channel/jp/movie/play.cgi?did=D0013773239_00000
※リンク先は「2014年12月」の放送内容ですが、今年、同じかたに再度、聞きに行った、ということだったのでしょう、たぶん。
・みずほ情報総研「みずほ情報総研 技報」
http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/giho/index.html?rt_bn=ir_top_main_menu
> シミュレーションや計算科学技術など、サイエンス分野における当社独自の論文集です。
技報といって…技報でしょ、と再確認されたくあります。
・http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/giho/pdf/006_04.pdf
ぐ…、ぐぬう、そしてぐはっ、と、図表の詳細さに圧倒されますが、しかし、みずほ情報総研として「○○の現状」「○○の導入(課題から導入効果まで)」を詳細に検討するための詳細なデータであって、いま、この誌上で(サイエンスの当事者として、サイエンスの)研究成果を報告しているわけではなく、まぎれもなく技報だといって安心されます。
●サーベイとは(仮)
研究にあたって、先行研究を網羅的に調べることを指してサーベイといいますが、いえいえいえ、サーベイってば、まあまあ([3136])、どんな業界でも通用するメタな何かだと思います。
いま神妙に「メタ目次」のひそみにならって(いえ、そちらも私なので『セルフひそみ』ですね、わかります!)「メタサーベイ」をば…
・定評ある教科書、その著者(監修者でなく実質の分担執筆者)
・学部教育も担う教員(「わかりやすく説明」しようとしている):が直接、指導した結果として発表される、いわば「生の」研究成果(「『来年のAI』は教育的」[3099])
…いわゆる雑学本を何冊、積み上げようとも「○○に詳しい」とみなしてはならず(どんなに詳しくても、あくまで「楽しく読む」ものです、の意:その意味では私も楽しんでます→新刊にはそれなりに飛びつきます[2947])、監修者や、「退官」後に私大へ移られるという意味での「大センセイ」は、社会的にはそっとされ、貴重な時間はすべて若い人のために使っていただきたく、その代わりに、どのような人たちが「(社会に対して)わかりやすく説明」する労力を負うのがよいかといえば、研究のためのサーベイで着目すべき一種「ホットな研究シーン」に直結している人たちだと思わされます。
こうした人たちが、実は当事者(少なくとも『第一線』の技術者、あるいは役員、それに広報など:事業者、事業会社、の意)よりも技術やその背景に明るい(よく理解して、その結果、今後の動向も展望できる)ということは、往々にしてあると思われます(「風向角」[2989])。そして、「ジャーナリスト」や「ライター」と決定的に違うのは、技術をよりよくしていきたい、という価値観およびその実現方法を(研究や、狭くは工学系の学位の取得を通じて)共有しているということです。つまり、まだ行なわれていない「未来の研究」や、自分が関わっていない「他人の研究」についても、あたかも自分が、いま取り組んでいるかのように読み解くことのできる想像力のようなものを持っているのだと、(最大・理想的には)いえましょう…いえいえいえ、本当でしょうかっ!?
その答えはぜひ、高校生のかたにあっては高大連携のソレやオープンキャンパスなどで大学の先生に直接、聞いてみてください。そして、えー、その、まあ、その『答えっぷり』を見て進学先を決めればいいんではないでしょうか、といって何かを投げてみます。恐縮です。
・ウィキペディア「曽根悟」(敬称略)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%BD%E6%A0%B9%E6%82%9F
> 1957年5月30日に(略)この講演を当時高校3年生であった曽根が聴いて、信号保安に関する話が分からなかったため、電気工学を専攻するきっかけとなった、と東京大学最終講義で語っている。その後、卒論・修士の研究で新幹線に関わっている。
・博士論文「脈流電動機とその回路の研究」(1967年)
http://ci.nii.ac.jp/naid/500000411794
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gakui/cgi-bin/gazo.cgi?no=101413
> 課程博士
※ウィキペディアでは種別が明示されていませんが、きちんと課程博士(この時代に課程博士、の意)だとわかります。
・(参考)
http://www.lrt.co.jp/kbj/08_071022.php
> 国鉄志望を就職担当教授に止められて
> 1967年同大学院博士課程修了(工学博士)。
※なんと。「生え抜き」については[3126]も参照。1962年にあって、既にそういう、大学の先生が引きとめようとするような何か(国鉄に行っても研究はできないぞ、的なもの)が国鉄にあったということ、なんでしょうか。
高校3年生の曽根センセイが「わからない(とわかった)」のは、AF信号がどうのこうので「電源同期式」([3121])だの…という「ATCやいかに」というあたりで、直接には[3124]や、広くは[3107]あたりではないかと思います。曽根センセイ(当時17〜18)に、負けてはいられません、といって一種「発ぷん」されたく思います。
(そういう意味で)未来の大センセイ(の候補)は、もう、数えきれないほどたくさんいるのです。楽しみですね。
・高大連携の例(大学)
http://koudai.tsukuba.ac.jp/
・高大連携の例(都道府県)
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/shougaku/renkei/koukou-daigaku/zisseki.html
・京都大学「高大連携の行方について」(2011年4月)
http://www.t.kyoto-u.ac.jp/publicity/no55/foreword/5ffyd2
> (前略)1990年代の半ば頃(略)2000年頃から「ブラックボックスを開けよう」と題するポケットゼミナールを始めました。身の回りのエレクトロニクス製品を実際に壊して中を覗き見ることで、技術的創意工夫を感じてもらおうというものです。 好奇心から、親の目を盗んで珍しいものを恐る恐る分解し、結局壊してしまうのは、少年期の特権であったはずなのですが、今のよい子には許されていないことのようです。遅まきながらが、大学でそれを体験してもらっているわけです。
> 実際に壊して
> 実際に壊して
> 結局壊して
※ギクッ…。INTEROSに興味を持つくらいであれば、思い当る人、たくさんいそうですね。
> (最近は研究室教育が密室的なものとして批判の俎上にあがっているようですが、現場感の希薄な意見だと思われます。)大学は、卒業研究や実験・実習系の授業など、 少人数教育に関する長い経験を積んできており、初等中等教育の場にノウハウを輸出できる立場にあります。したがって、出前講義のような座学的なものだけでなく、実験・実習的な活動をサポートする方向が重要ではないかと考えています。
> アウトリーチ活動は、初等中等教育における実習や課外活動を支援し、科学を身近なものとして楽しむ文化を醸成する役割を担うべきだと思います。成績評価や進学といったことに直結させると、たちまち形骸化が進むことは容易に想像されます。
まさに「研究ホワイトボックス」などと称して、そういうことの、さらに入口となるようなことをできれば、と感じています。成績も何も関係ないところでフラッと聴いた話が、その後を大きく左右することって、ありますよねぇ。
> 工学部に入学しても、勉強内容に興味が持てず、行き先を見失ってしまう学生の割合は確実に増えています。このパラドックスについては、いろいろな説がありうるので、ここではあまり深入りはせず、関係することを少し述べておきます。
> 大学は試験による選抜を一種の必要悪として維持しているわけですが、偏差値という単一尺度に連動するペーパーテストの結果で選抜を続けている限り、それに鋭く焦点を合わせた受験テクニックだけが見苦しいほどに進化し、教育内容や生徒の興味など、本来重要であるべきことは、後ろに置き去られてしまいます。その矛盾を和らげるためにも、高校生に大学での勉学のあり方や学問の内容の面白さを直接的に語りかける努力を意識的に行わなければならないのだと思います。また、高校だけでなく、理科離れに決定的な影響を持っていると推定される中学あるいは小学校高学年程度にまで前線を拡大する必要があると感じています。
> アウトリーチ活動は、砂漠に水を撒くようなものだと躊躇している方もおられると思います。私も当初はそのような気分で、あまり効果は期待せずに細々とやってきました。しかし、実際には反応はいろいろな形で現れてくるもので、高校での授業を受けましたという学生が案外身近にいて、声をかけてくれたりするといったことが少なからずあります。
> 自分の専門と高校の教育内容にギャップのために、彼らに向かって、何を教えてよいか分からないと戸惑われている場合も多いかも知れません。身の回りの成功例を見ると、最先端の研究と高校の教育内容の中間点に、ほどよい課題を設定できていることが分かります。これは研究者一人一人が懐を深くするという意味で考えるべき点でしょう。
こういう話をしてくださるセンセイがいらっしゃるかどうかを確かめつつ、偏差値にとらわれず能動的に大学や学部学科を一種「選び取って」いくことができれば、たいへん納得のいく大学生活(勉強そして卒業研究、の意)を送れることでしょう。
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