フォーラム - neorail.jp R16
発行:2016/2/3
更新:2020/8/26

[3170]

「カチカチ」を読み解く


「カチカチ」とは
電信とは
『羊飼いの少年』が『磁石』を『発見』
「キャリントン・フレア」に学ぶには
表1 電気通信の普及に至るまでの主な発見・発明の歴史(ウィキペディア等より抜粋)

(約21000字)

 さすがに「リレーと呼ばれる継電器!」などとおっしゃるような人が、このサイトをご覧になるとは思われませんが(そもそもサイトに到達できないと見込まれます)、とはいえ、「リレーって、あれでしょ、1個○○円でザラッと皿に入って売ってるやつ?」(アコガレの「電子工作」に入門すべく共立エレショップさんに初めて注文するフレッシュなかた[3106])という漠然としたイメージのかたもいれば、「いまどきリレーなんて…えっ? 『デジタル継電器』!?」(「停電の自動化」[2977])というような戸惑いなど、いろいろ混ざって、社会的にはよくわからない(誰もが同じように理解しているわけではないので齟齬が生じやすい)状態だと思います。

[2477] (2005年11月8日)
 > 仮に、リレーを使った制御を「カチカチ世代」、マイコンを使った制御を「ピコピコ世代」と呼んでみます。
 > 「カチカチ世代」では電気が流れているかいないかで制御を行なうために、1つの制御に電線を1本使い、操作卓とのI/Fに接点を使うわけです。
 > 「ピコピコ世代」では、電線を使うものの通信は「デジタル」であり、1本の電線で何種類もの制御ができます。

[2856] (2007年)
 > カチカチ世代(リレー)のCTCは長持ちしますが、ピコピコ世代(マイコン)のPRCはあまり長持ちしません。

[3119] (2015年)
 > 「JUL 28 1952」と記された継電器(「カチカチ」)が見られます。必見です。

[3135] (2015年)
 > 併結された編成同士は、電気連結器を介して力行やブレーキの操作(「指令」)が伝えられ、一つの運転台で編成全体が制御できる、と説明されます。しかし、運転台の操作がダイレクトに伝えられる電気的な「指令」であって、電線を直結していた時代はよかった、といいつつ、いま、いかにして電気連結器を用いた併結運転が実現されているのでしょうか。
 > E231系に始まりE259系も含まれるTIMS、伝送路としては「アークネット」の世代の車両では、電気連結器を介して併結された編成の制御には、電気連結器の前後で接点情報とアークネットとの変換を都合2回、挟んでいるらしいとわかります。

 技術的詳細を知ろうとすることは、ちょっと(かなり)「お行儀のわるい」ことですから、そこには深入りせず、しかし、基本のところはきちんと理解しておきたいなどと(私のような素人が)言いだしますと(いえ、私が言っているだけですが)、(素人にとって)むずかしい選択が迫られます。

 以下、当面のリレーに関する『事項等』…いえ、「話題」を読み解くのに必要になりそうな範囲で、なるべく広く見渡せるように、まとめてみようと思います。


●「カチカチ」とは


[3109]
 > かちかち山

 「カチカチ」とは、電磁リレー(電磁式継電器)が動作するようすを擬音的に表したものです。火打ち石を鳴らすと火花が飛び、石とは直接には接しない場所で火がつく…いえ、電磁石に電気を流すと、絶縁された別の回路のスイッチの接点が動いてオンとなり、電磁石に電気を流すのを止めると、バネによって接点が引き戻されてオフになるという仕組みです。

・オムロン「一般リレー テクニカルガイド」
 http://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/generalrelay_tg_j_10_2_1-4.pdf

・Wikipedia「Relay」
 https://en.wikipedia.org/wiki/Relay

 > The American scientist Joseph Henry is often claimed to have invented a relay in 1835 in order to improve his version of the electrical telegraph, developed earlier in 1831.

・ウィキペディア「ジョセフ・ヘンリー」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%BB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC

 > 1830年、マイケル・ファラデーより先に電磁誘導を発見したが、発表が遅れたため、発見の功はファラデーに譲ることとなった(1831年)。1831年には電磁気を動力源として動く世界初の機械を作った。電動機の元となったものである。ただし回転運動ではなく、棒の先の電磁石が前後に振動する形だった。これは棒が振れたときに2つの電池の一方と接触して電磁石の極性が逆転し、反対方向へ動く力が生じる仕組みだった。この実験からヘンリーは1832年に自己誘導を発見した。

 > ヘンリーは多くの発明をしたが、一切特許化はせず、これらの成果をもとに他の人間が製品化することを大いに援助した。1835年にヘンリーが発明した継電器(リレー)は電信機の発明(1837年)の基礎となった。このサミュエル・モールスによる発明に対し、ヘンリーは多くの支援を行った。

 すぐさま傍題に逸れて恐縮ですが、このヘンリーという人、基礎研究としての興味から、実用としての社会的インパクトまで、渾然一体として、むしろ自然な状態で研究に臨んでいた人だったとうかがわれます。(一種「未分化」な「原始時代」[2947]といってしまえばそれまでではありますけれども。)

 ヘンリーが火打ち石から継電器を着想したかどうかは不明ですが、最初のほうの発明では、水車小屋で粉を挽くような、そして、オラの父ちゃんDIY…いえ、簡単な構造だからちょちょいと修理してしまおう的な…いえ、既にある機械を、電気によって動く機械に置き換えようという、いま「電気・電子・機械」と分けられるうちの「電気」にあたる部分の研究であったわけです。(いえ、「発明すべく研究した」のか、「研究の結果、発明に至った」のか、ヘンリーがどうとらえていたのかや、社会でどう受け取られたのかなどについては、もっと深く調べないとわかりません。ここでは端折りますが、おもしろそうですね。)

・ウィキペディア「マッチ」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%81

 > 火は人間の生活に必要不可欠のものだが、木の摩擦熱や火打石による発火法は手間のかかる作業だった。1827年にイギリスの化学者ジョン・ウォーカーが塩素酸カリウムと硫化アンチモンを頭薬とする摩擦マッチを考案した。形態的には現在のマッチとほぼ同じであったが、火付けが悪かった。

 > このため、1830年に、フランスのソーリアが黄燐マッチを発明した。これは頭薬をどんなものにこすりつけても発火するため普及したが、その分自然発火が起こりやすく、また黄燐がもつ毒性が問題となって、製造者の健康被害が社会問題化した。そのため、19世紀後半に黄燐マッチは禁止されてゆき、1906年、スイスのベルンで黄燐の使用禁止に関する国際会議が開かれて、黄燐使用禁止の条約が採択され、欧米各国は批准した。しかし、マッチが有力輸出商品だった日本は加盟しなかった。結局、1921年(大正10年)になってようやく日本は黄燐マッチの製造が禁止されたが、日本における黄燐による健康被害の実態については、不透明な部分が多い。

 「マッチ以前」の日常的な点火方法がわからなかったのですが、金属の板に石を打ちつける等、焚きつける側に火薬的なものを置いておく「逆マッチ」ともいうべき方法など、いろいろあったようですが端折ります。

※余談ですが、フィクションで描かれる昔(あるいは古風な「世界観」)の食事のシーンで、やたら簡単に「温かい食事」が出てくるのには、ウソとマコトがないまぜになっていて、▼(地域や気候から)暖房を兼ねて常に火を絶やさないので「温かい食事」がリーズナブルであった、▼(登場人物が)暖房を使える階級であった、等々、いろいろ「考証」されないと「リアリティのようなもの」が薄れることがわかります。朝や昼には「温かい食事」はとらないという社会のほうが多かったかもわかりません。…いえ、「正しくないからケシカラン!」というのも短絡的すぎるはなしで、考証にどれだけコストをかけたのかが、作品のあらゆる面での質とも比例しましょう、というはなしであります。考証を踏まえた上で一種「ふっとんだ」、まったく架空の「世界観」をリアルに感じさせるという、夜勤のおともに肉だんごを買い求めて「親方っ! 空から…!!」という好例もありますです。…タニタ!(いまさら。)

・(個人のページ)(2001年5月5日)
 http://home.att.ne.jp/moon/ALICE555/food-fr-1.htm

 > 昔、フランス語の授業を受けてた時、「あなたの国では、暖かい食事を一日何回取りますか」という質問をされて、「ん?変なこと聞くなぁ、暖かいご飯って、朝と昼と夜と、三回に決まってるじゃん?」なんて思ったものでしたが・・・。実際に体験してみると、よく分かる。フランスがグルメの国なんて、誰が言った? みんな、ちっとも、ご飯なんて食べてないじゃないよー!!!


●電信とは


 「***電信電話」のうち電信です。

・個人のページ「ブナブナっと『トトロ論』」
 http://www.yk.rim.or.jp/~rst/rabo/miyazaki/totoro_i.html

 > トトロがサツキたちに手渡したササの葉にくるんだお土産にはブナ科のドングリがギッシリ詰まっていた。それは、クリと長短各種のドングリであった。サツキたちは、これを庭に植えて例の「ドンドコ踊り」によって芽吹かせることに成功する。その後、電報を届けに来た郵便配達のおじさんがサツキの観察スケッチをチラリとのぞくシーンがある。そこには、画面左より背の高い順に「クヌギ」「シラカシ」「コナラ」「マテバシイ」とはっきり樹名が記されている。(C-671)いずれも関東以南によく見られるブナ科の植物である。マテバシイのみ九州を中心に分布するが、このドングリは最も美味しいそうだから、美食家のトトロが種を取り寄せ、好んで植えていたのかも知れない。

 > 大人のノスタルジーから現代を否定してはならないという自戒であり、子供達に対して森への扉を開けておくという責任からであった。(注18)
 > (注18)「となりのトトロ絵コンテ集」掲載インタビューより(P434)

※この筆者が植物に関してどのくらい詳しいのかわからず、あくまで「電報」のソレとして示します。恐縮です。きわめて形式的には([3093],[3097])、まったく信用されません。でも、楽しいですよねぇ。「楽しいから!」というところを不自然に隠さず、もっと自然に書けばいいのにと、あくまでいまとなっては思われるのではないでしょうか。

・ウィキペディア「電信」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E4%BF%A1

 > 1746年にはフランスの科学者ジャン・アントワン・ノレーが200人以上の修道士を集め円周約1マイル(1.6km)の輪を作り、それぞれに鉄線で繋いだライデン瓶電池から放電させ、全員がほぼ同時に電気ショックを感じたのを観察し、電気の伝送速度が高速であるのを確認した。

 > 1753年にはスコット誌(Scots Magazine)の投稿で、一文字ごとに割り当てられた電線でメッセージを送る静電気電信が提案され、相手側で針を偏向させる静電気電信機のアイデアが掲載された。この案は欧州で実演されたが、実用的な通信機に開発されることはなかった。

 > アレッサンドロ・ボルタが1800年にボルタ電池を発明し、実験用の直流を生み出したことで、当時唯一の電気発生源として知られていた静電気発生器の一時的な放電に比べ、さまざまな効果を生み出す低電圧電流を発生させることが可能になった。

 > イギリスのウィリアム・スタージャンは1825年に、ニスを塗った鉄片に絶縁した導線を巻いた電磁石を発明し、電流で磁力を強化することが出来るようになった。1828年、アメリカのジョセフ・ヘンリーは導線をさらに何重にも巻くことによりさらに強力な電磁石が出来、抵抗値の高い長い導線上でも電信が出来る様になった。

 > 電磁石を利用した電信機は1832年、ロシアのパヴェル・シリングによって完成。ガウスとヴィルヘルム・ヴェーバーは1833年にドイツ・ゲッティンゲンでまた電信機を完成。

 > 1835年にはジョセフ・ヘンリーがリレーを発明し、長導線上の弱電流でも強力な電磁石を制御できるようになった。

 > 同年のその後、ガウスはボルタ電池ではなく電磁誘導の起電力を利用し、一分間に7文字の信号を伝送することが出来るようにした。
 > その後カール・アウグスト・フォン・シュタインハイルは1835年から1836年にかけて、ミュンヘンで電信機の設置を行い、1835年に開業された初めてのドイツでの鉄道沿いに電信用電線の敷設を行った。

 通信のシステムとしては「電信」で、印字された紙を持って走る人を組み込めば、サービスとしての「電報」になるわけです。急ぎの用だといけないから開けてごらんなさい…などと、急ぎの用だから電報するんですよねぇ。手拭いをかぶったおばあちゃん([3164])、電報だというだけで、かなり動転しているとわかります。

※おばあちゃんのセリフなんて覚えていないですって? 子どもの観客としては子どものセリフしか印象に残らない…などと、そんなことでは後年、いつまで経っても「同期の人」としかコミュニケーションできない「残念な人」になってしまいますよぉ、といっておどかしてみます。本当でしょうか。

・ウィキペディア「カール・フリードリヒ・ガウス」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%82%A6%E3%82%B9

 > 地球磁気の研究に関連して、フーリエ級数展開の高速な計算方法を開発し、データ数が2の冪乗の場合についてを論文に記述しているが、これは後の電子計算機の時代に FFT として定式化(が再発見)された方法と本質的には同じものである。

 > 電気でのキルヒホッフの法則に当たるものを発見し、電信装置を作り上げた。これは1873年のウィーン万国博覧会に展示された(この話を旅行中の船上で人から聞き、思索の末にモールスは電信符号を発明した。ガウスとウェーバーの電信機は、電流計の針の振れ角の大きさで通信をするアナログ方式であったが、モールス符号はデジタル方式である。またモールスは英文に対して符号長が平均的に短くなるように印刷所の活字の割合を参考として符号の割り当てを決めてもいる)。

 いろいろ系統だてて勉強するより、ガウスの功績を、時代順に勉強したほうが、はるかに勉強になりそうな気がします。

・ウィキペディア「継電器」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B6%99%E9%9B%BB%E5%99%A8

 > もとは有線電信において、伝送路の電気抵抗によって弱くなった信号を「中継」するために発明されたものである。
 > 継電器を用いることを、時として「アンプする」という

 電池の発明(1800年)から電信の実用化(1835年)までを通しで見ないうちには、このわずか2文を、きちんとは理解できないことに気づきます。

・「博覧会一覧(年表)」国立国会図書館
 http://www.ndl.go.jp/exposition/s1/index.html

 えっ、1873年? と驚かれます。1837年の間違いではないかと思いましたが、そのころにはまだ、万博はありませんでした。早くは1835年にそこそこ実用化されつつ、ドイツでは鉄道の沿線に敷設されつつも、(仮には明治政府が)「電信外一式ください!」といって一種「発注」できるくらい(あくまで例えです)になるには、30年以上もかかっているわけです。

 1873年は明治6年で、あー、明治6年といえば、小学校が置かれ、鉄道が敷かれ、と、それなりに生々しく、国内の資料のあれこれが頭に浮かんできます。

・「1873年ウィーン万国博覧会」国立国会図書館
 http://www.ndl.go.jp/exposition/s1/1873.html
 http://www.ndl.go.jp/exposition/s1/1873-1.html

 > オーストリア政府は、万博への最新技術の出展を促すため、工業所有権についての特別法を制定した。しかし、30カ国、7万以上の出展品が寄せられたにもかかわらず、イギリス、フランス、アメリカの3大国はあまり革新的な発明、製品を出品せず、産業技術という観点からは目新しさに欠けた。

 > ただでさえ、万博出展品の模倣事件が頻発する状況にあった。そこでオーストリア政府は、出展品は収用の対象外とする特別法を制定し、また、工業所有権の国際会議を開催した。この会議は、1878年第3回パリ万博時にも行われ、国際博覧会に出品された発明は保護すべきであることなどが確認された。
 > 討議を経て、1883年、工業所有権の国際的保護を定めたパリ条約が締結される。ここで、国内外の発明者を平等に扱う原則や、同盟国内での出願日付の扱い等が定められた。

・ウィキペディア「ウィラード・ギブズ(Josiah Willard Gibbs)」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%96%E3%82%BA

 > ギブズは、イェール大学で研究を続け、1863年には博士号を取得した。それは、アメリカ合衆国における最初の工学博士号だった。その後、ギブズは、イェール・カレッジ講師となり、2年間はラテン語を、そして1年間は、彼が当時自然哲学と呼んでいたものを教えた。1866年、ギブズは、研究のためヨーロッパに渡り、パリ、ベルリン、ハイデルベルクで、各1年ずつ過ごした。彼がニューヘイブン地域から離れたのは、生涯でほぼこの3年間だけだった。

 > 1869年、ギブズはイェール大学に復帰し、1871年に数理物理学教授に任命された。これは、アメリカ合衆国における、最初の数理物理学教授職だったが、彼が全く論文を発表しないためもあって無給だった。

 これより前の人は、いくら工学に貢献する業績を積み上げようとも、工学博士ではなかったわけですね。


●『羊飼いの少年』が『磁石』を『発見』


[3164]
 > 『羊飼いの少年』が『磁石』を『発見』(別途まとめます)

 というわけで、そこを起点としてまとめた表がこちらでございます。

■表1 電気通信の普及に至るまでの主な発見・発明の歴史(ウィキペディア等より抜粋)

内容人物国・地域
BC900磁石の発見
magnet
(羊飼いの少年とも)古代ギリシア
BC600摩擦電気に関する記述Thales古代ギリシア
BC100ヘロンの噴水と蒸気タービンアレクサンドリアのヘロン古代ローマ
1269Epistola de magnete
(磁気の性質に関する実験報告)
ペトロス・ペレグリヌス
Pierre de Maricourt
フランス
1575scrittura tattile
(タイプライターの原型)
(イタリアの印刷業者)イタリア
1581The Newe Attractive
(磁石と航海術に関する著作)
Robert Normanイングランド
1581
〜1600
electricus
(磁石の研究)
ウィリアム・ギルバート
William Gilbert
イングランド
【静電気の時代】
1600versorium
(検電器)
ウィリアム・ギルバートイングランド
1646電気
electricity
トーマス・ブラウンイングランド
1650真空ポンプオットー・フォン・ゲーリケドイツ
1663硫黄球を用いた摩擦起電機オットー・フォン・ゲーリケドイツ
1695ドニ・パパンの真空エンジンドニ・パパン
Denis Papin
イギリス
1746ライデン瓶電池
Leyden jar
ピーテル・ファン・ミュッセンブルーク
Pieter van Musschenbroek
オランダ
1746電気の伝達速度を調べる実験ジャン・アントワン・ノレー
Jean-Antoine Nollet (Abbé Nollet)
フランス
1749避雷針ベンジャミン・フランクリンアメリカ
1751(ライデン瓶が伝来)(オランダ
→日本)
1752雷雲凧揚げ実験ベンジャミン・フランクリンアメリカ
1753静電気電信のアイデア欧州
1762電気盆ヨハン・ヴィルケ
Johan Carl Wilcke
スウェーデン
1769ワットの蒸気機関
「馬力」の考案
ジェームズ・ワット
James Watt
スコットランド
1769蒸気自動車ニコラ=ジョゼフ・キュニョー
Nicolas-Joseph Cugnot
フランス
1775電気盆の改良
Electrophorus
アレッサンドロ・ボルタイタリア
1776ゐれきせゑりていと
(ライデン瓶を修理)
平賀源内日本
1780ごろおもちゃの「電気銃」
(内燃機関のアイデア)
アレッサンドロ・ボルタイタリア
【直流電流の時代】
1794ボルタ電堆アレッサンドロ・ボルタイタリア
1800ボルタ電池ニコルソンと
カーライル
William Nicholson
and Anthony Carlisle
イギリス
1807Rivazのエンジン(内燃機関)
De Rivaz engine
François Isaac de Rivazスイス
1816電信システム
※数字と文字のダイヤルで送受信
Francis Ronaldsイギリス
1825電磁石
electromagnet
ウィリアム・スタージャンイギリス
1827イェドリクのダイナモイェドリク・アーニョシュ
Jedlik Ányos István
ハンガリー
1828電磁石の改良ジョセフ・ヘンリーアメリカ
1830黄燐マッチシャルル・ソーリア
Charles Sauria
フランス
1832電磁石を用いた電信機
※16個の黒鍵と白鍵のキーボード
:6個の検流計
パヴェル・シリングロシア
【交流電流の時代】
1832電磁式発電機
(「ファラデーの円盤」)
マイケル・ファラデーイギリス
1832ダイナモ
(交流発電機の原型)
ヒポライト・ピクシーフランス
1833ガウスとヴェーバーの電信機
※2値の符号でアルファベットを表現
カール・フリードリヒ・ガウスと
ヴィルヘルム・ヴェーバー
ドイツ
1835電磁継電器ジョセフ・ヘンリーアメリカ
1836モールスの電信およびモールス符号サミュエル・モールスと
アルフレッド・ヴェイル
アメリカ
1846テレタイプ
※28キーのピアノ状のキーボード
ロイヤル・E・ハウスアメリカ
1859キャリントン・フレア(太陽嵐)
※電信システムで火花放電、火災が多発
リチャード・キャリントンらが観測
エリアス・ルーミスが1861年に報告
欧州・北米
1872QWERTY配列の原型クリストファー・レイサム・ショールズアメリカ
1873ウィーン万博
1876ガソリンエンジンニコラウス・オットードイツ
1882QWERTY配列クリストファー・レイサム・ショールズアメリカ
1883工業所有権の保護に関するパリ条約
1889エッフェル塔(パリ万博)
1893無線トランスミッターニコラ・テスラアメリカ
1898点火プラグニコラ・テスラアメリカ


 アレが入ってない! …とおっしゃるあなたは、まぎれもなく「その道のプロ」([3076])です。人が「電磁○○」すなわち「カチカチ」を活用して機械や通信を実現していく過程に焦点を当てた表とご理解ください。歴史的な貢献をすべてもれなくリストアップすることは目的とせず、歴史の流れを把握しやすくすることを目的とします。

 そして、エッフェル塔などというもはやたいへんシンボリックなソレが、うーん、実に「技術ドリブン!」なソレだったんですねぇ、と再認識されましょう。(社会科でなく理科の自由研究の題材によさそうですね、の意。)

・「エッフェル塔」国立国会図書館
 http://www.ndl.go.jp/exposition/s1/1889-1.html

 > エッフェル塔(La Tour Eiffel)は1889年第4回パリ万博の最大のモニュメントとなった建築物である。

 > エッフェル社は、そもそも鉄の建造物を多く手がけた会社であった。エッフェル塔の建築以前にも、1878年のパリ万博の展示館や、フランス最古の百貨店「ボン・マルシェ」、自由の女神の骨組、ガラビの鉄道用高架、パナマ運河などを手がけていた。特に、鋼の橋を作っていた技術を垂直方向へ応用して作られたのがエッフェル塔である。

 > 着工は1887年1月28日、完成が1889年3月31日で、建設期間は2年2カ月であった。建設作業は危険を伴うものであったため、労働者のストライキにあったりしたものの、作業員に死亡者を出すこともなく、異例の速さで完成させることができた。最終的に、エッフェル塔の鉄筋部には7,300トンの錬鉄が使われ、高さは312メートルとなった。

 > 1889年5月6日、無事にオープン、5月26日にはアメリカ・オーティス社製を含めたエレベータ(水力)5基が設置され、朝9時の開場にも関わらず、8時から多くの観客が列を作った。期間中には200万人がエッフェル塔に上り、その中には、イギリス王太子やサラ・ベルナール(S. Bernhardt)、開催中のパリ万博に多くの出品をしていたエディソン(T. A. Edison)などもいたという。ただ昇ってパリ市街を眺めるだけという行為が、人々にとって意外にも大きな娯楽となった。

 > 夜には、三色のアーク灯によるサーチライトでライトアップされ、エッフェル塔自体は電灯で光を放っていた。アーク灯と電灯が使い分けされていた時代であったことがわかる。また、各階には電話があり、電信局も設置され、新時代を象徴する様々な技術を内蔵していたのである。

 > 建設に多くの反対意見があったにもかかわらず、完成後は多くの芸術家の作品に描かれることとなった。建築から20年後には取り壊される予定であったが、無線の時代を迎えると、1906年にアンテナが設置され、第一次世界大戦時にはドイツの無線を傍受するなど軍事拠点としても活躍した後、現在ではパリの街には欠かせない存在となっている。

 このあたりの狭い年代を丹念に追いますと、いま「機械・電気・電子・情報」といわれるうちの「電気」から、(主として半導体の発明によって幕が開く)「電子」の一歩手前ともいえる「無線通信」までの流れがよく見えてくるのではないでしょうか。

※黎明期の無線通信の回路は、あくまで「電気」であって、「図太いコイル!」やらなんやら、あくまで電気(電磁気学)の知見で実現されていることが、いまとなっては素朴に驚きですよねぇ、たぶん。1963年の「磁気式列車自動制御装置」([3107])も参照。

※最も安易で平易な例えとしては、「電子音がPiPiPi!」と鳴れば「電子(笑)」で、「チャイムがチーン♪」と鳴れば「電気(笑)」だと…いえいえいえ、メッソウもございません。そこはこう、その、いわゆるひとつの「UX(笑)」として、中身はバッチリ「電子」でありながら表向きには「チーン♪」…ということもありましょう。

 年表をきわめて大ざっぱに(※)見ますと、まず、「電気と磁気が別物であることがわかるまで」の時代(BC900年〜1600年)、「静電気の応用を考えた」時代(1600年〜)、「直流電流(電池)が発明され電磁石の応用に至る」時代(1794年〜1832年)、「交流発電機が発明され無線通信に至る」時代(1832年〜1893年)、とに分けることができそうに思われましょう。

※いえいえ。面倒だから手抜きしようというのでなく、意図して大ざっぱを目指すことによって『確かなアウトライン(笑)』のようなものを一種「抽しゅつ」しようという「魂たん」でございます。

 これらの時代の境目には、境目をまたいで活躍した一種「越境的!」な人たちが散見されます。ウィリアム・ギルバート、アレッサンドロ・ボルタ、その後の時代になると境目といっても複雑ですので一概には挙げにくくなり(また、そのことをもって複雑だとわかることができ)ますが、ニコラ・テスラといって、その実、無線トランスミッターとともに点火プラグも発明するんだというところが、なんともソレ(あらゆることを網羅的に考え尽くさないと発明には至らない⇔発明を目指すとあらゆるものを発明できる下地のようなものが生まれる?)だと見受けられます。

[3137]
 > 情報(電気・電子・機械・土木・情報でいう情報)だけを勉強し、機械(同、機械)は勉強しませんでしたという身には、この図が衝撃をもって受け取られます。「電気系統」と「空気系統」が対等に並べられ、ああ、そういうことだったのかと、いまからでも機械に入門したくなってくるのです。
 > 航空機の制御系として一般に知られているかと思いますから、「電気系統」と並べて示すには、まず「油圧系統」が好適だと感じます。その上で、ああ、電気でなければ油圧なんだ、さらに空気でもいいんだ、といって「空気系統」が(歴史的経緯に反した流れで勉強してしまった、つまり最新の「情報」分野だけを勉強した側からは、そういう順番で)無理なく理解できるように思われます。

 この流れでいうところの「機械」については既に詳しい本が古今東西たくさんありますね。

・日本機械学会「新・機械技術史」(2011年1月)
 http://pub.maruzen.co.jp/shop/9784888981965.html

 「機械」と関連深いのが数学です。いかなる数学がいかに応用されているかをきわめて広く俯瞰できる本、というのもあるようなのですが、たいへん敷居が高く感じられ、まだ読めていません。

・広中平祐 編「第2版 現代数理科学事典」(2009年12月26日)
 http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/gendaisuurikagaku/


●「キャリントン・フレア」に学ぶには


 後発の分野ほど、従前の分野を体系化して用いたり、一種「総集編!」…いえ、「再放送!」と見せかけて「最終回!」を『改変!』…いえいえいえ、「集大成!」(ただし「完結編!」とまではいってない!)であることは、よく知られています。この点から、「情報」は「電気・電子・機械(・土木)」にまたがりますし(「第0層」[2944]として局舎や通信網の建設も含めれば土木、の意)、「鉄道」や「宇宙」は、まさに「電気・電子・機械・土木・情報」をぜんぶ使うという「お立場」だと早合点されましょう。(それなりに適切な早合点であるはずです、たぶん。)

 そこで「キャリントン・フレア」ですね、わかります!

 それって宇宙の話でしょ(笑)、わしゃあ宇宙はよくわからんでのぅ([3119])…などと、いえいえいえ、きちんと現実的に、電気鉄道が電気鉄道である限り対策が求められる実地の話です。

※「鉄道」といって、その実、「宇宙」の知見も遅滞なく取り込みましょうという「貪よく」なソレを目指してみるのはいかがでしょうか、というひとつのおすすめであります。「いますぐ『わが国』における鉄道のキャリントン・フレア対策を万全にせよ(しないのはケシカラン! そして他国のことは知らん!)」などと、そういうことをいうと確かにアレです…こう、ゆんゆんと…(略)。

・スーパーフレア
 http://www.usss.kyoto-u.ac.jp/etc/symp6/shibata.pdf

 > 太陽の望遠鏡観測は始まってまだ400年。
 > 太陽を1万年「観測」するにはどうすれば良いか?
 > 太陽型星を1万個、1年間観測すれば、太陽を1万年観測したのと同等のデータが得られる!
 > しかし、8万個の星の観測データを解析するのは大変。人手が必要
 > そうだ! ひまを持て余している、京大の1回生を動員しよう

 なんと!

 > 巨大フレアの痕跡(氷床中窒素酸化物)

 > 最大級の太陽フレアの1万倍のエネルギーのスーパーフレアが起きると、太陽の明るさが2倍程度増加する可能性がある。
 > 太陽が突然2倍明るくなり、2時間継続すると、砂漠(+草原)地帯の温度は、5〜10度上昇。
 > 3倍明るくなり、5時間継続すると、温度は〜40度上昇。

 > 我々の太陽で、最大級のフレアの1000倍(1035erg)のスーパーフレアは、およそ数1000年に一度の頻度で起こる可能性があることが判明した。
 > ただし、これでは人類は絶滅しない

 「1000倍」では「絶滅」まではしませんが(したくないです)、航空機に乗っていると4Svと見積もられる放射線量のうちかなりを浴びることとなり、全員が吐き気、半数が死亡、ということです。ここまでわかっていてもなお、太陽嵐の到達が予想されたからといって全世界の航空機の運航を止められるかというと、東海地震(の予知)で予め鉄道を止めるのと同じくらい、難しそうです。

 「5倍」にあたる「キャリントン・フレア」でも、深刻です。

 > 多くの衛星の故障
 > 地球規模の通信障害
 > GPS故障

 送電網や、(電線の)通信網がアンテナとなってしまい、莫大な電流が流れ、配線自体が焼ける、変圧器が焼ける、それが延焼して(同時に)火災が多発する、ということです。1859年には、電化された鉄道網はなかったということですので、鉄道としては太陽嵐について「経験がない」ということになる(※)わけですが、いえいえ、きちんとシミュレーションされておかなければならないことだとわかります。

※無線通信もなかったので、電離層がどのくらいの期間、めちゃくちゃになるのか(それによって無線通信ができなくなる)など、当時(1859年)、観測もできていないので、端的には「わからない」といえます。

・情報通信研究機構(NICT)「太陽から地球までの観測データをもとに宇宙環境の変動を予測する宇宙天気予報」(2011年)
 http://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/1101/02.html

 > 2000年7月の「バスチーユ・イベント」では、非常に大きな地磁気嵐によって大気密度が増え、その影響を受けた人工衛星「あすか」の姿勢が制御不能に陥り、翌年には地球に再突入してしまいました。

 > 私たちが「ハロウィン・イベント」と呼んでいる、2003年10月末に太陽の活動が非常に活発になった時期に、日本の人工衛星「こだま」に搭載されたセンサーにノイズが入って地球の方向を見失い、衛星の姿勢制御に不具合が発生しました。このときは、活動が静穏になってから衛星の復旧作業が行われました。
 > 「ハロウィン・イベント」の際には、スウェーデンのマルメで停電が起きています。

 > 前回の太陽活動の極大期には、まだ、衛星測位はあまり高度な利用をされていなかったので、次の極大期にはどんな影響が起きるか、はっきりわからないところもあります。

※確かに2003年10月には、ドローンは飛んでいませんでしたよね。

・ナショナルジオグラフィック日本版「太陽嵐で大規模停電が起きるわけ」(2012年6月4日)
 http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120604/311168/

・新学術領域(研究領域提案型)「太陽地球圏環境予測」事務局(名古屋大学太陽地球環境研究所)「研究組織」
 http://www.pstep.jp/organization.html

・AFPBB News(AFP通信)「「ねじれた縄状」の磁場出現、太陽嵐予測の手掛かりに 研究」(2014年10月24日)
 http://www.afpbb.com/articles/-/3029856

 GPSが故障するということは、コンピューターや携帯端末の時計が狂うということで、それを引き金としてシステム障害が多発すると予想されます。

 通信障害のうち、バッテリーで無線通信を行なうものについては、機材が直接、発火したり、周りから延焼しない限りは、太陽嵐が収まった後、ただちに使用できましょう。気球や無人飛行機で携帯電話の基地局を運用しようというのも納得です。携帯電話同士を結んでのP2P通信網も考えられます。要は、電線、商用電源、衛星にまったく頼らない通信システムができていれば、備えとなるわけです。

※ライフラインはいずれも重要ですが、(このサイトのテーマとして)ここでは通信のみに着目します。水道、道路、それに電気そのものは扱いません。あしからず。ガスについては別途まとめられればと思います。

・愛知県「ライフラインの防災対策」
 http://www.pref.aichi.jp/bousai/lifeline/tuusin.html

 > ***の通信設備ビルについては、風水害防護、火災防護、耐震性を考慮して建築されています。
 > 全国主要伝送路の多ルート化、ループ化が施工されており、どこが切れても通信が途絶しない通信ネッワークが構築されています。
 > 全国主要中継交換機の分散設置が構築されており、1つの交換機が故障しても他の交換機で通信をカバーする仕組みができています。
 > 大量の通信ケーブルは、地下に埋設した管路やとう道(ケーブル専用のトンネル)に収容しており、この管路及びお客様ビルと地下管路との接続については、上下動の地盤振動に強いフレキシブル方式となっています。
 > 交換機を含む通信ネットワークを24時間監視し、故障発生時等は遠隔制御で早期サービス回復ができます。
 > 大規模災害発生時における通信確保として通信衛星を活用し衛星回線を開設する機器や長時間停電時に通信用電力をカバーする移動電源車等の災害対策機器を配備しています。
 > 震度5弱以上の地震が発生した場合、災害対策本部員は自動的に出社する出動基準をとっています。

 > ***の通信設備ビルについては、風水害防護、火災防護、耐震性を考慮して建築されています。
 > 全国主要伝送路の多ルート化、ループ化が施工されており、どこが切れても通信が途絶しない通信ネッワークが構築されています。
 > 全国主要中継交換機の分散設置が構築されており、1つの交換機が故障しても他の交換機で通信をカバーする仕組みができています。
 > 交換機を含む通信ネットワークを24時間監視し、故障発生時等は遠隔制御で早期サービス回復ができます。
 > 大規模災害発生時における通信確保として基地局設備を搭載した移動無線基地局車や長時間停電時に通信用電力をカバーする移動電源車等の災害対策機器を配備しています。
 > 震度5弱以上の地震が発生した場合、災害対策本部員は自動的に出社する出動基準をとっています。
 > 平常時より様々な災害を想定した訓練を実施しています。
 > 被災地域への通信の疎通確保対策として、パケット通信を利用したiモード災害用伝言板サービスを提供しています。また、平常時にも体験できるよう毎月1日や防災週間、お正月などに体験サービスを実施しています。
 > 気象庁が配信する「(一般向け)緊急地震速報」や地方公共団体などの「災害・避難情報」をお届けする緊急速報「エリアメール」を提供しています。

 おおー、一般電話については「平常時より様々な災害を想定した訓練を実施」していないんですね! わかりますわかります!! …などと(略)。

 まじめには、一般電話は「寸断されても速やかに復旧してユニバーサルサービスを続けること」が一種『高いレヴェル』で「義務」となっていたはずで(詳しくは別途、調べ直します)、3日もすれば避難所に臨時電話が引かれることが期待されます。このために毎月「8円」を上乗せで払っているんですよ、と説明されましょう。

 かといって、業務用の通信システムのバックアップは通信衛星に頼りきりになってしまっているという「懸ねん」もあるのではないでしょうか。衛星通信システム(衛星だけとか地上局だけという意味でなくシステム全体として、の意)と地上の通信網(ただしマイクロ波などを含む)が同時に寸断されることまでは想定していないわけです。また、地上についても、速やかに復旧できる態勢が確保されているのはあくまで電話(や、NTTの光ファイバー)だけで、民間の(NTTでない、の意)光ファイバー([3064])があちこちで寸断されました、ヨソのはいいからウチのを速く直してっ!!(ああっ、わが社のBCPがっ! …BCPが絵に描いたモチにっ!! 「1秒単位」で「ン十億円」がっ…) …などといわれましても、電話工事の業者はすべて、まずNTT回線の復旧に駆り出されることでしょう。

・ツイッター「安否確認 − 家族や友人の安否を確認しよう」
 https://support.twitter.com/articles/20170078#

※あくまで私見ですが、大規模災害時に「ツイッターで安否確認」などと、絵に描いたモチの最たるものだと決めつけています。民間の(普段はどうでもいいと思われている)光ファイバーが多数、寸断されれば、事実上、日本中の『イソターネット』が機能しなくなる(需要をさばけなくなって、誰もまともに通信できない)…という悪夢もよぎりますが、あくまで悪夢であってほしく、対策があらかじめ進められ、その実体をともなって「安心」が叫ばれることが期待されます。(根拠のない「安心」に安心していてはイケマセン、の意。)

※この、「電話」の事業者(移動体を含む)が法的に負っている重いソレをまるで知らないかのような軽さが(意図されていないとしても、読者から見て)感じられてしまい、あたかもインターネットのほうが頑丈ですという、確かに「アメリカ国内」ではそうかもしれませんが、日本は日本ですからねぇ、という、そこを踏まえていない、きわめて形式的に翻訳されただけの記述のように思えてしまいます。(「真のギーク(笑)」とまでいわずとも、フツーのまともなエンジニアであれば一般に「知らないはずがない」ので、エンジニアの話をまったく聞かずに書かれたのか、あるいは意図して「強弁!」されているのかなぁ、とまで疑われそうに思えてきます。「記載事項」[3148]も参照。「素直そして正直」とはいいがたく感じるのは私だけではないと信じたいです。)

・日本銀行「日本銀行の業務継続体制の整備状況とその評価(平成23年度業務概況書(付5))」(2012年5月29日)
 https://www.boj.or.jp/about/bcp/boj_bcp/bcphyouka.pdf

 > 通常の一般電話・FAXに加え、携帯電話、衛星電話等の無線通信手段、災害時優先電話、電子メール、日銀ネット電文など、様々な通信手段を用意している。こうした通信手段については、技術の変化を踏まえて、必要な改善を行ってきている。

 > 国内では、災害対策基本法、国民保護法等の関連法令および首都直下地震対策大綱において、日本銀行は、それぞれ「指定公共機関」および「首都中枢機関(経済中枢)」と位置付けられており、重要な金融・決済機能の当日中の復旧などを求められている。
 > 国際的にも、日本銀行は、ジョイントフォーラムによる「業務継続のための基本原則」およびBIS支払・決済システム委員会と証券監督者国際機構による「金融市場インフラのための原則」5に基づき、それぞれ中央銀行および資金・証券決済システムの運営主体として、適切な業務継続計画の策定などを求められている。

 > 日本銀行の業務拠点の建物や設備については、仙台支店、福島支店を中心に、一部天井・外壁の剥落や窓ガラスの破損等がみられたが、全体としては大きな損傷はなかった。また、通信手段についても、通信インフラの輻輳から、携帯電話・メールや安否確認システムを通じた職員向け安否登録依頼メールの利用に一部支障が生じたが、災害対策本部と被災地域に所在する各支店・事務所、あるいは政府等との間の通信手段は、行内回線や災害時優先電話によって確保された。

 > 日本銀行の一部支店では、津波に関する避難指示を受けて職員が一時支店から退避した。これを受けて、本店では日銀ネットに関する必要データを代行入力し、支店の一部機能を代替した。さらに、日銀ネットの利用者である一部の金融機関で、被災直後に社内システムの障害が発生した。こうした先では、通常の手段(CPU接続)で日銀ネットと接続できなくなったが、日銀ネットの利用者向けマニュアルに従い、代替手段(端末接続)を用いて当日中に決済を完了させた。

 > CPU接続とは、日銀ネット利用先のコンピュータと日銀ネットコンピュータを直接回線で接続してデータの授受を行う接続方式。端末接続とは、日銀ネット利用先の端末と日銀ネットコンピュータを回線で接続してデータの授受を行う接続方式。

 > 一時、「日本銀行がシステムセンターを大阪に移した」とか、「本部機能の一部を大阪に移管する準備に入った」といった、全く根拠のない噂が一部で聞かれた。

 > もっとも、今回の地震については、日本銀行の主要な業務拠点がある首都圏を震源としたものではなかったことに加え、震災の発生が金曜日の午後であったため、被災日当日に業務継続にあたる役職員の確保は大きな問題にはならなかったほか、週末に対応のための時間を確保できたこと、業務終了間際であったため、事務処理がほぼ終了していたこと等、日本銀行の業務継続という観点からみれば、様々な要因に助けられた面もあった点には留意が必要である。

※「わが社のBCP!」といって、その実、真に深刻な状況下にあって、政府機関や日銀と比べて、「わが社」がどのくらいの重みがあるのか、きちんと踏まえられなければなりません。…もちろん、ここでいう「わが社」に鉄道は含みません。(みなさま、それぞれの「わが社」と読み替えていただければ、の意。)

 傍題ですが、普段から使っていないものは急には使えません([2947],[2949])。もはや「電話」など使わないよ☆、というかたにあって、避難所でも「臨時電話なんてどうでもいいからWiFiを使わせろ☆」といわれましょうが、どこでもすぐに、というのは、かなり難しそうです。電話って、どうやってかけるんだっけ、電話って、どうやって話せばいいんだっけ、と、いまや四六時中、SNSまたはメールで仕事が済んでいるとあらば、かなり戸惑うはずです。

・JR東日本「京葉線変電所等機器焼損について」(2007年1月25日)
 http://www.jreast.co.jp/press/2006_2/20070107.pdf

 いま、異常電流が流れ込んでも、その影響を狭い範囲に封じ込めるためには、絶縁を徹底することと、可能な限り電気回路を(リレーで)分離することだ、と読み解かれます。電信網の構築にあって、長距離の伝送で減衰した電気信号を「増幅」すべくリレーを用いたのと似た発想で、しかし目的は逆で、回路を分断することが目的となるわけです。

※「キャリントン・フレア」にも耐えうる『極超高耐圧』の「フィルタ」や「シールド」をば…などといって、平時にはまったく「おーばすぺっく!」となるソレよりも、壊れたらすぐに直せるようにしておく、というのが最善なのだろうと、いたってフツーの落雷対策([2202])や、近くて遠くはNTTのほうを見ながら思ってみるとよいのではないでしょうか。土木の耐震性のはなし(壊れてはならない)とは、考えかたが違うわけです。これまた安易に平易な「ニッポンはスゴイ!(『和のココロ』で独自技術!)」式の表現を試みるなら、「台風や台風、それにスーパー台風などによる洪水などに備えた「流れ橋」!」などと…(略)。

・京都府「第5回上津屋橋(流れ橋)あり方検討委員会が開催されました」(2015年7月30日)
 http://www.pref.kyoto.jp/doroke/news/nagarebashi20150730.html


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