フォーラム - neorail.jp R16
発行:2017/2/25
更新:2018/1/8

[3424]

【グリーンヒルいこま】いま問う「電車特定区間」のココロ(前編)


「電車特定区間」(1984年4月)を読み解く(再)
【東海道線・横須賀線】終電、横須賀市内のトンネル、「カートレイン」、それに「ライナーホーム」で「電車特定区間」を読み解くココロミ(試)【埼玉県議会】
【和歌山県】「日根野駅」「府府境」で「電車特定区間」を読み解く(空)
【京都府】「京葉線の快速運転」を「長尾始発」から類推するココロミ(試)【都市計画道路牧野長尾線あり】

(約24000字)

 [3419]の補足として、「電車特定区間」(1984年4月)をあらためて読み解くことを試みます。この一連の記事としては、「(趣味誌やウィキペディアなど)みんながそういっているがでどころがよくわからない『鉄識』」([3107])を脱するべく、一次資料(や、それに準じるもの)をじぶんで参照して、間違ってもいいですからじぶんで理屈を考えてみるということを目指します。

※たぶん、鉄道にはまったく詳しくないわたし、たわし的に(≒はでに、ひどく)間違えると思いますから、この一連の記事をうのみになさらぬようオネガイシマス。(恐縮です。)いかなる『鉄識!』(趣味誌で見た!)も前提とせず、いまインターネット上で探してすぐに読むことのできる公的な記述など、および、(鉄道というドメインに固有でない)一般的な認識(知識)に基づいて我々、(ほぼ)ゼロから調べながら学んでいくプロセスを体験してみようではありませんか。

※「旅客営業規則」としての条文を読みさえすればぎゃふん! …それでは条文を読んだだけであって、「電車特定区間」の成り立ちや経緯をわかるということには直結しません。

 前編([3424])では、東京よりもシンプルな大阪の「電車特定区間」を読み解きながら、東京と大阪に共通する「電車特定区間」設定の理屈(条件や根拠)を探ります。特に片町線(学研都市線)に着目し、東京の京葉線との比較を試みます。

 中編([3426])では、新幹線の駅と県庁所在地、それに貨物線を除く複々線化区間という観点から「電車特定区間」に迫ります。また、東京都および千葉県における「電車特定区間」について、「大島空港」「調布飛行場」「千葉県庁立体駐車場」を含めて深めます。

 後編([3421])では、主に1970年ごろの国会会議録を検索し、現在の「電車特定区間」の設定につながる事案や議論などの発掘を試みます。また、現在のJRが定める「旅客営業規則」から「特定都区市内にある駅」「中心駅」などの項目にも注目しながら、「電車特定区間」が、鉄道事業者と利用者の間での便宜的な取り決め(約款)に過ぎないことを再確認します。

 この一連の記事では、「電車特定区間」について理解することはさることながら、興に任せての…いえ、Googleストリートビューの画像やYouTubeの映像も参照して臨場感を高めながら、「電車特定区間」の全域にわたって具体的なイメージを持つことを目指します。

※こう、○○線には乗ったことあるよ(だいぶ前だけど)、というのではなく、いま、どうなのか、それは資料(YouTubeを含む)を参照することで知ることにいたしましょう。ちょっと片町線についてわからないことがあるのだけれど、といって、(東京から見て)『我々はさっそく大阪へ飛んだ』というわけにはいかないとです。これが新函館北斗([3304])やSunderland station([3154])、それに「ジェネラル・パトン通り」(「Z5300、だあしぇりゃっせーん!!」[3382])といえば、もっと納得されることでしょうけれども、(東京から見ての)大阪でも同じことなのであります。


☆「電車特定区間」(1984年4月)を読み解く(再)


 まずは現行の条文および図がどうなっているのか、それが「第1!」です。

※「まずは〜が第1である」はセーフで「まず第1に〜である」はアウトなんですよ! へぇ〜!! …蛇足ではございました。この一連の記事そのものが蛇足のようなものですから、あしからず。

・JRおでかけネット(JR西日本)「電車特定区間」
 https://www.jr-odekake.net/railroad/ticket/guide/02.html
 https://www.jr-odekake.net/guide/img/info/edenkukan.gif
 https://www.jr-odekake.net/guide/img/info/osaka_dentoku.gif

・Google ストリートビュー 「和歌山県庁」前
 https://goo.gl/maps/JKqr2HnFasr

 大阪では、▼大阪環状線を中心として、▼大阪府に隣接する府県の県庁所在地や新幹線の駅まで、という区間設定の意図(のようなもの)が浮かび上がります。

 東京では、▼山手線を中心として、▼東京都に隣接する県の県庁所在地まで、▼複々線化の終点まで、という意図(のようなもの)が浮かび上がります。

・青梅線、五日市線は、全線が東京都内です。
・茨城県、栃木県、群馬県は東京都と隣接しません。
・山梨県は東京都と隣接しますが、東京都から山梨県へ直接つながる線路はありません。

※武蔵五日市から小菅村のほうなど経由して塩山まで線路が延びて中央線とつながれば、おお、山梨県庁すなわち甲府まで「電車特定区間」(ただし高尾−塩山間を除く!)…本当でしょうか。リニア中央新幹線も、わざわざ相模原市内を経由するんですねぇ@なるほどねぇ。

・Google ストリートビュー 都道206号線「自由乗降バス」付近
 https://goo.gl/maps/9ZLu59taJPB2
 https://goo.gl/maps/EYwRaVnVPsQ2

 > 当該区間でバスは旅客の要望により停留所以外でも停車することがありますのでご注意願います。
 > これより先 車間距離保持厳守

※「車間距離保持厳守」は赤字。…いえいえいえ、看板の文字が赤字ということですよ、念のため。東急バス「フリー乗降」([3422])も参照。

・横須賀線については久里浜まで電車特定区間に設定されています。
・埼玉県の県庁所在地が浦和でなく県央部にあれば…ぎゃふん。
・武蔵野線がなかったら、常磐線の電車特定区間が松戸までになったとしてもおかしくなかったかもです。

・埼玉県議会「JR東日本の運賃格差について」(2013年10月15日)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/e1601/gikai-gaiyou-h2509-g050.html

 > Q
 > 電車特定区間の範囲は、東京駅を基点とすると、北は京浜東北線、埼京線の大宮駅までの30.3キロメートル、西は中央線の高尾駅までの53.1キロメートル、東は総武線の千葉駅までの39.2キロメートル、南は横須賀線の久里浜駅までの70.4キロメートルであります。横須賀線は、高崎線および宇都宮線と同じ中距離電車にもかかわらず電車特定区間に入っており、久里浜駅までの距離は大宮駅までと比較して倍以上になっています。

 > A **** 企画財政部長
 > 本県の要望に対し、JR東日本は、「現行の運賃は乗降客数や運行形態、競合する路線の有無を考慮している。運賃収入の確保は大きな課題なので、減収を伴う運賃改定は行わない方針である。」と回答しています。
 > 運賃格差を抱えている他県の例としては、熊谷駅と同じくらいの距離で電車特定区間外にある茨城県の常磐線土浦駅、千葉県の成田線成田駅、神奈川県の東海道線平塚駅などがあります。これらの県では運賃格差に対する問題意識に温度差がありますが、(略)改めて運賃格差の見直しに向けた連携ができないか、近隣自治体としっかり意見交換をしてまいります。

 この要望の『相手先』として、東日本旅客鉄道殿では権限が足りないとの認識に…えーっ! 本当でしょうか。それなら、どこに要望すればいいんでしょうか。「JRグループ」のソレ(≒議題)に上げてもらえるよう、東京都と大阪府が東日本旅客鉄道殿ならびに西日本旅客鉄道殿に対して同時に要望しないといけないのではないでしょうか。埼玉県が地元の支社に(ひいては埼玉県が単独で本社に)要望しても意味がないとわかります。(※たいへんメッソウではございますが『事実上の認識!』にございます!)

※JR東日本の回答をストレートまっすぐ…いえ、文字通りに読めば「山手線内」「大阪環状線内」の割引を廃止して、その分(=あくまで収支の計画上でのそろばんです!)だけ、「電車特定区間」を広げるという方向には進めるのではないでしょうか。

※埼玉県庁を加須市や羽生市もしくは熊谷市、あまつさえ本庄市などに移転したら、JRは自動的に「電車特定区間」を改訂してくれますよね!? …えーっ!! 後述の「特定都区市内」といって(当時)「浦和市内!」といっても…もっとえーっ。現在の「さいたま市内」といって、「大宮市内!」が増えてもなお、高崎線は大宮駅しか入りません。宇都宮線は土呂、東大宮、川越線は日進、西大宮、指扇までが「さいたま市内」ではあります。


☆【東海道線・横須賀線】終電、横須賀市内のトンネル、「カートレイン」、それに「ライナーホーム」で「電車特定区間」を読み解くココロミ(試)【埼玉県議会】


 埼玉県議会で引き合いに出される横須賀線(大船−久里浜間)は、いかなる理屈で「電車特定区間」に設定され続けているのでしょうか。

※「普通列車グリーン車」運行のためかと邪推しかけますが、それでは千葉県内の電車特定区間の外(都賀−成田・成田空港・成東、蘇我−君津・上総一ノ宮、臨時では鹿島神宮や館山も)での「普通列車グリーン車」の運行の根拠がないことになってしまいます。

・JR東日本「一部のエリア」に関する説明です
 https://www.jreast.co.jp/tickets/info.aspx?GoodsCd=2093

 > 乗車中に日付が変わった場合、有効期間終了日の翌日のみ、改札を出場しない限りご利用可能です。なお、一部のエリア(東京電車特定区間内)においては、最終電車まで有効です。

 おお、「電車特定区間」(東京・大阪とも)と、それ以外の区間の違いは、当日のきっぷを終電まで有効とするか否か(≒そもそも終電が終点に着くのが何時であるか)というところにあるのだとわかります。

 東海道線の終電と横須賀線の終電を見比べれば、「電車特定区間」の事情が見えてくるのではないか…いえいえいえ、東海道線と横須賀線では、いずれもじゅうぶんに「終電が遅い」とみなせます(=この項で後述)。

 「電車特定区間」には、きっと鉄道事業者としての切羽詰まった都合があるのだろうという先入観を持ってみます。横須賀線の大船−久里浜間(を「電車特定区間」とする理屈)にも、そういう切羽詰まった事情がきっとあるはずだと思うんです。単に「お客さまお客さま(神奈川県内や横須賀市内のお客さまだけ『厚遇!』)」ではないと思うんです。(恐縮です。)

 例えば、末端で単線区間を残しながらも所定の輸送力(1日あたり)を確保するには、初電を早く&終電を遅くしないといけないという理屈がありそうだとも思われてきそうでした。成田・君津・上総一ノ宮までしっかり複線化された千葉県内では、終電間際まで多くの列車を運行でき、表定速度も高いので、終電は早くていいんだと…えーっ!

※「電車特定区間」というものは、運賃(収支)の「ねがいましては案件!(そろばんのお時間がやってまいりました!)」であるだけでなく、過剰な投資(=トンネルの改築が必要な横須賀市内での複線化&マクロ的には京急線との二重投資にもなる)を避けながらの輸送計画という面がありそうだとの感触にございます(=後編で詳述)。もっとも、単線のままでも必要となる(横須賀線の)トンネルを維持する費用の原資はどこから捻出されているのかといって、すべてが横須賀線の利用者(ただし貨物を含む)だとは思えないのですが、うーん。「逸見トンネル」については「影響解析」([3156],[3413])という形で、結果的には外来の原資でトンネルの事実上の耐震診断や補強ができたのだよ的な空気も漂いそうです。(あくまで空気です。)

・Google ストリートビュー 内房線「君津駅西詰」付近
 https://goo.gl/maps/f4mTYx7zRYS2

・Google ストリートビュー 「↑地下道くぐる」「横須賀横断地下道」付近
 https://goo.gl/maps/YMHxAruNBHT2
 https://goo.gl/maps/2ddESd676FS2
 https://goo.gl/maps/T3UST1zSo5y

・Google ストリートビュー 「逸見駅入口交差点」
 https://goo.gl/maps/oSEMYq7MmSA2
 https://goo.gl/maps/oksZYnbjhFT2
 https://goo.gl/maps/WGHP2WTBFMC2

 ほら! すぐそこに線路も見えてるしぃ…あたかも画面左手のペデストリアンデッキの方向に『JR逸見駅!』があるやのような気配すら漂いますが、ぜんぜんちっともそういう位置関係(≒歩行者の動線)ではございませんので、あしからず。

・Google ストリートビュー 「【浜】大船駅」のイメージです