・騒音とは ・「杉並区環境白書」を読み解く ・(杉並区)鉄道の騒音は改善済み? ・(杉並区)「近隣公害」 ・表1 交通騒音(鉄道)の測定場所(杉並区環境白書より抜粋)
(約10000字)
騒音に関して入門してみようと思い立ちました。
ここでは、騒音を総合的に評価する「等価騒音レベル」に関して基礎的な知識を導入し、前編([3195])では杉並区、そして後編([3194])では大田区の報告書を正確に読み解くことを目指します。
…そして、思い立ったのは2014年度だったのですが、その時点で参照したPDFのURLが、2015年度末の現在、既に「リンク切れ」になっていてぎょっとします。もっとも、リンク切れになっても、特にCMSの上で「添付ファイル」扱いされるPDFについては、PDFのファイル名は変わらないことが多く、Googleでファイル名を検索すれば、それなりに最新のURLが判明するかと思います。
※これまで、騒音については新幹線([2997])、京葉線([3003])、埼京線([3105])に関連して触れています。また、駅の快適性([3010])、「建築音響」([3162])、空港関連の防音工事([3183])についても参照。
●騒音とは
そもそも、あらゆる音の中で「騒音」とはどういうものであるか、というところから話が始まりそうです。
・東京都環境公社 環境科学研究所「平成23年度東京都区市町村担当者研修 騒音の基礎知識 音の性質、測定と評価」(2012年1月24日)
http://www.tokyokankyo.jp/kankyoken_contents/research/documents/h23_souonkenshu.pdf
> 騒音になりやすい音
> 大きな音(極端に大きな音は難聴の原因に)
> テレビやラジオの音の妨げになる音
> 会話や電話の妨げになる音
> 仕事、読書の邪魔になる音
> 睡眠を妨げる音
> 純音(特定の周波数の音)を含んだ音
> 本来そこには存在しないはずの音(ひゅ〜ドロドロドロ)
騒音といいますか公害といいますか、いわば「有害な音」の説明ですね。
深刻な順に並べ替えますと、▼人体への安全性の点から「大きな音」、▼健康への影響の点から「睡眠を妨げる(状況下での)音」、▼その他、生活上の不便になるという点から「妨げ・邪魔になる音」が挙げられるということです。
これに加え、知覚上の特性として「純音」と「錯覚」が挙げられているという、ちょっと複雑な構造になっています。もう少しスッキリと示せないものでしょうか。
・柏野牧夫「錯覚から見た聴覚の「賢さ」」日本バーチャルリアリティ学会誌(2005年3月)
http://journal.vrsj.org/10-1/s19-25.pdf
> もともと含まれていない音が聞こえることも珍しくない.
> 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,反復単語を聴取しているときの脳活動を計測した.
> 聴覚の知覚世界は,時間も,空間も,そして対象事物の記述自体も,耳に入力された音響信号の物理的な特性とは単純に対応しない.つまり錯覚に満ちている.
・東京都環境科学研究所「都市部における騒音の新しい目安」(2006年1月25日)
http://www.tokyokankyo.jp/kankyoken_contents/research-meeting/h18-01/1805-pp.pdf
> 京急線の減衰曲線(大田区)
> 曝露量反応曲線
> 横軸に騒音の値、縦軸に気になる等の回答の割合を示すものである。
> 一般に30パーセントの人間が不快と感じる値が、基準値となる。
> 以下、騒音に曝露された量と住民反応の曲線を、曝露量反応曲線と呼ぶ。
> 今後の課題
> 騒音の新しい目安を広く普及させ、環境行政の施策に生かす。
> 鉄道と道路について基準値に差を設けるかどうかの検討を行う。
> 鉄道騒音と道路騒音や道路騒音と建設工事騒音などの複合騒音の評価 。
確かな課題が挙げられています。
●「杉並区環境白書」を読み解く
さっそく杉並区の報告書、いえ、「杉並区環境白書」と呼ばれる白書を読んでみましょう。
・杉並区「杉並区環境白書 平成16年度版(資料編)1 大気汚染・交通騒音・振動・交通量の状況(P1〜P30)」(2004年)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/kankyohakusho_s02_2.pdf
> 推定等価騒音レベル(単位:デシベル)
> 環境庁の「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」に基づき、等価騒音レベルの推定値を測定結果より算出しました。(指針値昼間60デシベル 夜間55デシベル)
> 注 等価騒音レベル : 全列車の騒音のエネルギー値を昼間54,000秒(朝7時から夜22時)夜間32,400秒(夜22時から翌日朝7時)で割り、平均のエネルギー値を求め、「騒音レベルに戻したもの。
> マイクロホンを線路から12.5m、地上1.2mの地点に置いて3時間測定し、1列車ごとの騒音のエネルギー値を類型別に算出し、測定結果と列車本数により推定値を求めた。
■表1 交通騒音(鉄道)の測定場所(杉並区環境白書より抜粋)線路名 | 測定場所 | 軌道構造 | | | | 西武新宿線 | 上井草二丁目 | 平面 | | 西荻北三丁目 | 高架 | 中央線 | 上荻二丁目 | 平面 | 総武線 | 天沼二丁目※注1 | 平面 | 地下鉄東西線 | 高円寺北四丁目 | 高架 | | 高円寺北一丁目 | 高架 | 井の頭線 | 浜田山三丁目 | 平面 | 京王線 | 上高井戸一丁目 | 高架 |
ここかなぁ、と思われる測定場所をGoogleストリートビューでそれらしく見てみましょう。(あくまで推定です。)
・「上井草二丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/uDB37MbXyd82
軌道中心からの距離を測れるということで踏切が選ばれるのかなぁ、と推定されます。また、騒音を測定する目的からして、大きな道路は避け、住宅地で測定するということも前提となりましょう。
・「西荻北三丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/6hrS734AfNQ2
(鉄道以外の大きな音を避けるという点から)駅前を避けつつ、軌道中心からの距離を地上で測れる道路となると、ここかなぁ、と推定されます。武蔵野市との境界。高架橋の防音壁が架線柱(電化柱)の箇所だけ途切れています。片側は公園、片側はマンションで、うーん、絶妙に反響音が大きそうです。
・「上萩二丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/EVvJAqjxxP82
高架とはいいながら制限高3.8mの表示がある(※)、たいへん高さの低い(高架橋としては低い部類に入るとみられる)ガードですね。
※昔(高架化された当時)は、表示がなかったかもしれません。これまで、高さ3.8mを超える車の通行には許可が必要でしたが、近年、4.1mまでは許可が不要になったとのことです。これにあわせ、高さ3.8mのガードについても明示的に制限高を表示するようになった…はずです、たぶん。ガードなどの制限高さについては[3107]も参照。
・「天沼二丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/B3JHmGLkfft
あくまで「平面」とのことですので、跨線橋の脇の階段を下りたあたりと推定されます。(線路の上を通る)道路の橋桁による反響音が大きそうにも思えますが、それも含まれるのが「騒音」というものですから、一種「(区内の)ワースト地点」っぽいサンプルを入れておくというねらいもあるのかなぁ、と思われます。
・「高円寺北四丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/1WFN7nfQdpy
うーん、測定対象の事業者の社宅の前とみられます。いかなる事情で測定場所に加えられているのかはわかりかねます。(本当にわかりません。)しかし、この場所が加えられていることで、何かのバランスのようなものが取られているのではないかと想像することはむずかしくなさそうだなぁ、と想像されます。(あくまで想像です。)
・「高円寺北一丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/FB4EgRgByX92
回収された放置自転車を一定期間、保管しつつ(申し出があれば)返却する「自転車集積場」があり、線路に張り付くように個人商店が並び、…という、一種たいへん「杉並」らしい場所ですね、わかります。
・「浜田山三丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/wBG6cvRBc1N2
「浜田山三丁目」は、井の頭線の測定場所です(杉並区による測定は1か所のみ)。なるべく両側の駅から等距離で(上下線とも、列車がそれなりに速度を出して通過する地点、の意)、しかしGoogleのクルマが通れる道路というとここしかないですが、ここではなくても、このあたりの踏切ならどこでも、(杉並区内の)井の頭線の沿線としてたいへん典型的な測定場所といえるのではないかと思われます。(誰もが思います、たぶん。)周囲が開けており、極端に響く反響音はなさそうです。わたし的には、京成千葉線の沿線での体験からして、走行音自体は小さくなくても(≒それなりに大きくても)、さほど不快感は感じられないのではないかと想像されます。
※なぜ不快感が低いのかといって、その理由を探るのはきわめて困難ですが、強いていえば、▼慣れている(これがたぶん最大)、▼(なぜ慣れることができるかといえば)等間隔なダイヤで走行音も規則正しい、▼惰行(ノッチを入れずブレーキも入れず惰性で走行すること)中はレールと車輪からの音(と空調の音)くらいしかしない、▼複雑な反響音が混じらない、▼残響がきわめて小さい、などなど考えられますが、まったく根拠はございません。少なくとも、ダイヤが乱れた時のJR線のような、駅間のそこかしこで何度も加速と減速の音をぐぉんぐぉんと響かせるようなことは、京成千葉線や井の頭線のようなダイヤ(列車回数や時隔)ではほとんどありえません。
・「上高井戸一丁目」(推定)
https://goo.gl/maps/ydybZEi5xky
https://goo.gl/maps/u7fJGYMeMjn
京王線の測定場所ですが、これまた制限高「3.9m」の表示があるガードで、微妙です。(高架化の時期によっては、4.1mを確保の上、表示なしということにもなっていたかもしれません。)そして、地上には、高架化前からあるのではないかと思われるようなコンクリート製の防護柵が残って(?)いるようです。世田谷区との境界で、どちらかといえば周辺一帯が世田谷らしいともいえる場所であり、この測定場所が杉並らしい(よいサンプルである)とはいいがたくあるようにも感じられますが、杉並区としては京王線の騒音も測定しなければならないんですね、わかります。
京王線が杉並区を通る区間は、▼下高井戸駅の西方ちょっと(駅は含まず)の区間と、▼上掲の「上高井戸一丁目」(八幡山駅を含む)の区間の2つだけです。しかし、下高井戸のほうは、至近に「首都高速4号新宿線」が通っており、事実上、「上高井戸一丁目」でなければ京王線単独の騒音は測定できないということです。
井の頭線についても、「浜田山一丁目」は、井の頭線が杉並区内を通る区間のうち、ほぼ中心に位置しており、もっとも典型的なサンプルとするべく「浜田山一丁目」が選ばれているであろうと想像できます。(端的には「よいサンプル」であるといえます。)地上区間のない丸ノ内線は除外されています。
JR線については、杉並区内の区間の西端(「西荻北三丁目」:高架)と東端(「高円寺北一丁目」:高架)、中間については、高架(「高円寺北四丁目」)と地平(「上萩二丁目」)、それにワーストっぽい地点(「天沼二丁目」:地平)と、たいへんバランスを考えて選ばれているとみられます。
西武新宿線については、杉並区内を通る区間の中間地点というと井荻(いおぎ)駅付近になるものの、大きな道路(「環八通り」)ですので避けられます、となれば、上井草か下井草のどちらかに寄った地点を選ばざるを得なくなります。いかにして下井草でなく上井草が選ばれたのかはわかりかねますが、井荻駅との駅間距離は上井草のほうが長く、その区間の中間といえば「上井草二丁目」だということになります。本当でしょうか。
2003〜2007年の5年分の数字も見ようと思います。
・杉並区(2009年、URLは2015年度末現在)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/905/21kankyohakusho_s03.pdf
「騒音」と「振動」に分けて記録されている測定値のうち「騒音」だけを見ますと、2007年に2地点で極端な変動がみられます。
・「西荻北一丁目」で極端に低下している
・「高円寺北四丁目」で極端に上昇している
・武蔵野市「本田東公園」
http://www.city.musashino.lg.jp/shisetsu_annai/shisetsu_koen/000975.html
https://twitter.com/musashino_hope/status/454516013002805249
・横河武蔵野フットボールクラブ「【イベント】本田東公園の開園式のお知らせ」(2014年)
http://www.yokogawa-musashino.com/%E3%80%90%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%80%91%E6%9C%AC%E7%94%B0%E6%9D%B1%E5%85%AC%E5%9C%92%E3%81%AE%E9%96%8B%E5%9C%92%E5%BC%8F%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B
・武蔵野市議会(2005年)
http://www.city.musashino.lg.jp/shigikai/shigikai_shitsumon/shigikai_ippanshitsumon/001257.html
> 平成17年第4回定例会
> 吉祥寺東町4丁目の旧ポンプ場跡地について
なんと、2005年の時点では(下水の)旧ポンプ場跡地、その後、暫定のスポーツ広場として整備された後、2014年4月にリニューアルされたという経緯であったとわかりました。杉並区による測定場所が本当にこの場所(の道路上や杉並区側)であったとすれば、2006年までは塀などによる反響音で騒音レベルが大きめになっていたところ、2007年にいきなり更地になるなりして見通しが開け、反響音が大幅に低減した、ということがあってもおかしくありません。しかし、すべて武蔵野市側での要因であるため、仮に杉並区が詳しい報告書を公表したくとも、武蔵野市の旧ポンプ場跡地の整備状況に言及することは躊躇されるだろうと想像されます。(あくまで想像です。測定場所が本当にここかどうかも確かめていません。)
・「杉並区西荻北一丁目(武蔵野市吉祥寺東町四丁目)」(2014年3月)
https://goo.gl/maps/aeiM4jfSsiB2
・個人のブログ(2008年5月9日)
http://kuwazu.blog77.fc2.com/blog-entry-104.html
と思いきや、2008年5月には、まだ「旧ポンプ場」が解体されていませんでした。2007年度の測定で騒音が極端に低下したことの説明にはなりませんでした。振出しに戻ります。
・東鉄工業「一面耐震補強工法 施工実績」(2013年10月)
http://www.totetsu.co.jp/tech/doboku_tech06.pdf
> 高円寺・阿佐ヶ谷間高架橋他3箇所橋脚補強その他工事 東京都杉並区 40本 自平成14年7月 至平成15年2月
> 新宿エリア高架橋耐震補強その他2004工事 東京都杉並区他 10本 自平成16年7月 至平成17年3月
> 中央線その他エリア耐震補強2005工事 東京都杉並区 150本 自平成17年3月 至平成18年2月
> 中央線その他エリア耐震補強2006工事 東京都杉並区他 121本 自平成18年1月 至平成19年2月
> 中央線その他エリア耐震補強2007工事 東京都杉並区他 100本 自平成19年2月 至平成20年3月
> 中央線その他エリア耐震補強2008工事 東京都杉並区他 33本 自平成20年2月 至平成21年2月
> 中央線その他エリア耐震補強2011工事 東京都杉並区 2本 自平成23年8月 至平成24年3月
> 西荻窪・吉祥寺間西荻窪北町高架橋耐震補強工事 東京都杉並区 6本 自平成24年1月 至平成24年3月
高架の耐震補強の結果、あるいは、施工のための高架下の利用状況などの変化によって、騒音レベルが極端に変動した、というのが、最もありそうな要因ですね。やっとわかってきました。
杉並区内では、2006年度までに69.5%(上掲の462本のうち321本)の高架橋柱の耐震補強が終わっていた(ただし東鉄工業による、上掲の工法での施工箇所に限ります=計462本:が、同じ時期に同じ工区で他の会社は施工していないでしょうし、ほかの工法での補強はもっと前に済んでいたかと記憶します)こととなり、その影響が2007年度の騒音の測定に表れたとしてもおかしくありません。
それでは「高円寺北四丁目」での極端な上昇は、どう説明できるのでしょうか。
・個人のブログ(2006年1月29日)
http://blogs.yahoo.co.jp/naritanisi/24120239.html
高架下は店舗として利用されており、現在も営業中の「ビッグ・エー杉並阿佐谷南店」が、2006年1月には既に営業していたことがわかります。
・杉並区「ペットボトル回収拠点」(2005年3月)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/guide/detail/2040/peto_itiran.pdf
所在地の「阿佐谷南2-37-2」に該当する店舗はありません。2005年3月の時点では、当該箇所の高架下は店舗ではなかったのでしょうか。とすると、耐震補強の工事が終わってから、高架下が店舗になったとみられますが、そうであれば2006年度の測定結果にも影響が出ていなければ説明がつきません。
●(杉並区)鉄道の騒音は改善済み?
・杉並区「杉並区環境白書 平成15年度版(本編)第2編第1章 公害の防止(P9〜P30)」(2003年)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/kankyohakusyo_H03.pdf
> 区内には鉄道が5路線あり、線路に隣接して住居が建てられた場合や運行本数の増加によって、今後問題となる地点が出てくる可能性があります。
> (3)鉄道の騒音と振動
> 区内を走っている鉄道のうち、4路線について定点測定を実施しました。過去5年間の測定結果は資料集<第1−2−15 表>を参照してください。
> 区では、この測定結果をふまえて私鉄各社に対し、ロングレール化の促進、施設や車両の保守点検及び運行方法などの改善に努め、沿道住民への被害の軽減を図るよう要望を行っています。
2003年の白書で「私鉄各社」とあるのは、その時点には、JR線(高架化され防音壁があり、ロングレール化の時期も早かった)に比べ、私鉄のほうが騒音が大きかったことに基づいています。
私鉄でもロングレール化がほぼ完了し、新型車両への置き換えなど低騒音化のための事業者の取り組みがほぼ一巡したことを受けて、杉並区の環境白書での鉄道の騒音の扱いはたいへん縮小しており、直近の白書では、改善すべき課題としては取り上げられていません。すなわち、現状が続く限り、杉並区内の鉄道には特段の騒音の問題はないとみなすということとみられ、白書では、鉄道よりも深刻な道路の騒音について、多くの紙面が割かれています。
他方、2003年の白書にあるように、運行本数の増加を事業者が検討する場合には、騒音が現在の水準や基準値などを上回らないよう計画することが自治体側から求められる(杉並区に限らず、あらゆる沿線自治体から求められる)ということでしょう。
●(杉並区)「近隣公害」
傍題ですが、「近隣公害」に関する杉並区の白書の記述が、たいへん秀逸なものとなっていると感じました。
> <近隣公害の特徴>
> ○ 感覚公害
> 近隣公害に関する苦情の大半は騒音・悪臭・振動などの感覚公害です。近隣公害は人の心理的・主観的要素が強いだけに、基準値などの数値だけでは割り切れない面が多く、根本的な解決を困難なものにしています。
> ○ 加害者と被害者の位置関係
> 近隣公害のトラブルにおける加害者と被害者の位置関係は、隣接している場合、道路を隔てている場合、同一建物内の場合など、ごく狭い範囲のなかでの公害問題であることがわかります。そのため、直接の対象となっている公害現象のみでなく、日頃の相隣関係が間接的な要因となっている場合が少なくありません。
> ○ 多様化する内容
> 近隣公害の苦情の内容は多種多様で、時代の移り変わりとともに変化していきます。社会状況の変化に伴い、区民の公害に対する関心の度合や環境ニーズの変化が、苦情の内容や件数に影響していることも考えられます。騒音の原因には、飲食店のカラオケや人声、一般家庭のピアノ、クーラー、ぺット、商業宣伝放送など多岐にわたっています。
> また、ばい煙は事務所のボイラーや焼却炉、一般家庭でのごみ焼却などが、振動は残土置場や材料置場での建設機械によるものや、道路状態の悪化などが、悪臭は地下汚水槽、飲食店の換気扇などが主な原因としてあげられます。
> ○ 弱い加害者意識・強い被害者意識
> 一般的にみて、近隣公害で迷惑を受けたことがあるという人が多く、逆に自分も加害者になり得るという意識のもとに日頃から注意をしている人は少ないものです。近隣公害の場合、加害者が「他人に迷惑をかけている」と認識することが、解決にあたっての出発点になります。しかし、実際には被害の度合について被害者と加害者では認識に開きがあることが多く、解決を遅らせている場合があります。
もっとも、内容自体は古くから広くいわれてきたことで、もしかすると、もっと秀逸な図書などを参考に記述されているのかもしれませんが、それでも、適切な図書を参考にしてきちんとした白書に仕上げようという熱意のようなものが伝わってきます。
直近の白書では、やたらと数値目標とその達成度ばかりに焦点があてられていて、読んでためになる、区民が考えるきっかけとなるような内容が減っているようにも見受けられます。そんなことで「白書」と称していいんでしょうか。
後編([3194])に続きます。
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