・「御茶ノ水23時」から「三鷹6時35分」までの中央線を読み解く ・待たれる特快の速達化、騒音対策が「壁」 ・地下鉄各線との乗り換えさばく中央・総武線(各駅停車) ・表1 現行ダイヤ(平日)における武蔵小金井(以西)始発の中央・総武線(各駅停車) ・表2 現行ダイヤ(土休日)における武蔵小金井(以西)始発の中央・総武線(各駅停車)
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2017年3月のダイヤ改正について、16日、JR東日本の支社が発表しました。
・JR東日本 八王子支社(2016年12月16日)
http://www.jreast.co.jp/hachioji/20161216/20161216_info04.pdf
・JR東日本 千葉支社(2016年12月16日)
http://www.jreast.co.jp/chiba/news/pdf/pre1612_daikai.pdf
このうち八王子支社の発表によりますと、▼中央・総武線(各駅停車)で武蔵小金井に滞泊していた列車6本のうち1本が削減(平日は三鷹、土休日は中野に入区するよう変更)され、▼新宿23時08分発の下り快速が増発されるということです。
実際に変更になる列車がわずか2本でも、この時間帯の運行に変更が加えられるということには大きな意味があります。
今後、▼中央・総武線では、山手線からの転属となる車両を活かしてのホームドア設置、▼中央快速線では12両化、それに▼立川市内での南武線・青梅線の立体交差化などの動きが続くとみられます。今回の改正には、目先の利便性だけでなく、車両の運用や工事の時間などを確保するねらいがありそうです。
●「御茶ノ水23時」から「三鷹6時35分」までの中央線を読み解く
中央・総武線(各駅停車)では、津田沼、中野、三鷹の車両基地や、千葉、御茶ノ水など駅への滞泊に加え、一部の列車を武蔵小金井の車両基地に滞泊させて、朝ラッシュ時の運用数を確保してきていることが知られています。
今回の改正で変更となるのは深夜の列車ですが、関係の深い早朝の列車について、現況をまとめます。
早朝に武蔵小金井始発(一部、国分寺、立川始発)で東行きの各駅停車として運転される列車は7本あり、武蔵境−三鷹間で緩行線に転線(武蔵境から三鷹駅2番線に入線)するため、快速下り線(三鷹駅3・4番線から武蔵境への進出)との平面交差となり、同じ時間帯の快速下り線の運行を妨げます。下り線では、三鷹6時35分発の539T列車までは、東京発着の各駅停車として三鷹まで緩行線の線路で運転されています。7時台の780B列車(武蔵小金井発西船橋行き)を除き、武蔵小金井発着の緩行線の列車は、三鷹駅で6時28分までに緩行線に入り、快速線の運転本数が増える時間帯には平面交差が問題にならないようダイヤが組まれていることがわかります。
・YouTube 【土曜日】国分寺駅4番線で発車を待つ各駅停車および武蔵小金井から立川へ回送される緩行線車両(2014年3月1日)
https://www.youtube.com/watch?v=l-N-A8WRwFw
・YouTube 国分寺駅4番線から発車する千葉行きおよび武蔵小金井2番線で発車を待つ緩行線車両(2014年6月、撮影曜日不詳)
https://www.youtube.com/watch?v=2H4YGeh4A3Y
・YouTube 立川駅4番線に回送で入線する折り返し千葉行き(2013年8月、撮影曜日不詳)
https://www.youtube.com/watch?v=q8M-1bXIP1E
■表1 現行ダイヤ(平日)における武蔵小金井(以西)始発の中央・総武線(各駅停車)列車番号 | 始発駅 | 発時刻 | | | | 418B | 武蔵小金井 | 4:48 | 550B | 武蔵小金井 | 5:15 | 526B | 国分寺 | 5:45 | 660B | 武蔵小金井 | 6:02 | 620B | 武蔵小金井 | 6:08 | 610B | 武蔵小金井 | 6:19 | 780B | 武蔵小金井 | 7:02 |
■表2 現行ダイヤ(土休日)における武蔵小金井(以西)始発の中央・総武線(各駅停車)列車番号 | 始発駅 | 発時刻 | | | | 500C | 武蔵小金井 | 5:17 | 620B | 国分寺 | 6:04 | 660B | 国分寺 | 6:19 | 626B | 立川 | 6:16 | 618B | 武蔵小金井 | 6:42 | 680B | 武蔵小金井 | 6:47 | 610B | 武蔵小金井 | 6:55 |
なお、平日の武蔵小金井5:15発の550Bとなる列車は、451Bとして中野4:43発、武蔵小金井5:04着のダイヤで送り込まれています。武蔵小金井に滞泊しないものの、同駅への発着が維持されている格好です。また、土休日の武蔵小金井5:17発の500Cとなる列車は、401Cとして中野4:43発、武蔵小金井5:04着という、平日の451Bと同じ時刻で運転されています。
過去には車両基地の都合で設定されていたとみられる変則的な列車が、現在も中野からの送り込みによって維持されていることがわかります。
※一般に、▼車両の高信頼化による予備車の削減、それに▼幅広車両の導入による定員増やピーク時の利用客そのものの減少を受けての運用数(配置数)の減少で、かつてほど車両基地に余裕がない状況ではないともいわれます。
改めて深夜の列車に着目します。
今回の改正で増発される新宿23時08分発の快速の時間帯は、御茶ノ水23時台以降の東京発着の各駅停車(新宿23時16分発の2275Tから)が運行される時間帯の直前にあたります。上りでも、水道橋23時03分発の2128T(青梅発東京行き)からが各駅停車となっており、御茶ノ水23時を境に運行の様相がはっきり変わるようすがうかがえます。
今回、新宿23時08分発の快速が増発されるところ、現行では、新宿23時09分発の千葉発立川行きの各駅停車(2117B列車)が運転されています。いずれの列車も中野から先の停車駅は同じですが、現行の各駅停車では三鷹23時31分着、立川23時49分着のところ、増発される快速では三鷹23時25分着、立川23時45分着となり、所要時間が3〜5分、短縮されます。2117B列車から快速へ利用客が移ることが予想され、将来的には2117B列車も削減(運転区間の短縮)が可能になるのではないかと考えられます。
※かなり子細な話題ではございますが、進路制御に使われる連動装置およびCTC(※ATOSを含む)について、▼早朝の水道橋駅を例に[3196]で、▼東葉高速線にかかる総武線側の動向について[3321]で紹介しています。中野駅、三鷹駅では、複々線化や東西線の乗り入れ以来、大きな改修が行なわれていないとみられることから、今後の動向が注目されます。
●待たれる特快の速達化、騒音対策が「壁」
中野−三鷹間の快速線(複々線化区間)は建設の年代が古く、線路北側に側道や緩衝地帯がないまま民家と接している区間があります。最も北側の線路である快速上り線では、中野23時58分着の新宿行き快速(2346T)が最終列車ですが、快速下り線では、この2346T列車の折り返しとなる新宿0時11分発、三鷹0時24分発の中央特快(2447T)が運転されています。
深夜・早朝の在来線の鉄道の騒音について明示的に規定する法令等はないとみられますが、事実上、新幹線に準じた運行をすること(0時から6時までの時間帯に、民家と近接する最も外側の線路で列車を運行しないこと)で当事者間の合意が得られているものとうかがえます。
・Google ストリートビュー 武蔵野市付近ほか(2015年3月)
https://goo.gl/maps/G2f63a3kQqD2
https://goo.gl/maps/2C7BtF34SkT2
線路の北側に側道が整備されていない区間でも、可能な限り公園や緑地を確保したり、防音や防振の性能が高い建物への建て替えを誘導したりする施策が自治体側で講じられてきているようすがうかがえます。また、JRの社宅(5階建て)が文字通り「身をもって」防音壁の役割を果たしているかのような箇所もみられます。しかし、高架橋の防音壁の高さが低いことや、積極的に騒音の低減を目指した遮音板などが未採用であること、架線柱(電化柱)の設置部で壁に隙間があることなど、鉄道施設側での対策も万全とはいえない状態にあることもわかります。
※線路の南側では、既に線路に沿った道路があったり、線路沿いにビルやマンションが立ち並ぶなどしている区間がほとんどで、北側ほど深刻な状況は起きていないと見受けられます。
快速線での終電の延長や、特快、土休日の快速の表定速度の引き上げなどには、この区間などでの騒音対策のいっそうの進展を待つ必要があることがわかります。じゅうぶんな「壁」がないことが増発や速達化の「壁」になっているというのは残念なことです。高架橋の壁が橋桁と一体的に構築されている箇所では、橋桁の取り替えを含む大規模な改修の時期を迎えるまで改善されない可能性もあり、利用客としてはもどかしい状況が続くと予想されます。
・(参考)JFE建材「遮音板」
http://www.jfe-kenzai.co.jp/product/07/02/index.html
※沿線自治体における交通騒音の測定については[3195]で紹介しています。
●地下鉄各線との乗り換えさばく中央・総武線(各駅停車)
中央・総武線(各駅停車)は、いわゆる「E電」であるだけなく、地下鉄各線との乗換駅を多数抱えている点で、快速線とは性質が大きく異なります。▼東中野・代々木・千駄ヶ谷・飯田橋・両国で都営大江戸線、▼市ケ谷・水道橋で都営新宿線、▼市ケ谷・飯田橋で有楽町線、南北線、▼飯田橋で東西線、▼浅草橋で都営浅草線と、さながら東京の地下鉄網の一部のような路線ともいえることがわかります。
山手線と比べてみましょう。山手線だけが停まる駅で乗り換えとなる地下鉄として、▼五反田で浅草線、▼原宿で千代田線、副都心線、▼高田馬場で東西線、▼巣鴨で三田線、▼駒込で南北線があり、京浜東北線の各駅停車も停まる駅を含めると、▼西日暮里で千代田線、▼御徒町で銀座線、日比谷線、都営大江戸線、▼有楽町で有楽町線、日比谷線、千代田線、都営三田線、▼浜松町で都営浅草線、都営大江戸線、▼田町で都営浅草線、都営三田線となっています。地下鉄各線との乗り換えにおいて、中央・総武線(各駅停車)だけで流動を担う部分が、山手線より大きいことがうかがえます。
武蔵小金井発着が続けられている緩行線の列車の中には、このことが関係するとみられる列車があります。▼前日の2179B(津田沼発武蔵小金井行き)から翌朝の780B(武蔵小金井発西船橋行き)となる武蔵小金井滞泊の列車です。
西船橋行きであることからも想像できるように、この列車は社局間での輸送力のバランスを支えているとみられ、この列車の存廃をJRの八王子支社だけで決定することはできないとみられます。2020年に向けての東京メトロ東西線の増発や京葉線・武蔵野線、それにりんかい線の運行との調整次第で、三鷹発着の東西線直通列車と中野発着の各駅停車とに振り替える形で削減するなどの方策が予想されます。
※「E電」は支社界(国鉄時代の管理局の境界)をまたいで運行されるため、E電の輸送計画は各支社ではなく本社で意思決定がされるものと見受けられます。
また、実現性やスケジュールなどの見通しは公表されていませんが、中央線の三鷹−立川間での地下線の線増による複々線化とも関係があり、地下線が未着工のうちは、緩行線の武蔵小金井発着は完全には廃止されないことも考えられます。
※社局間での流動について、飯田橋駅を例に[3047]で紹介しています。
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