・「官営のち払下げ」スキームの有用性 ・新幹線も「官営のち払下げ」 ・「払下げ」にかかる『鉄算用』 ・『先人の知恵』としての「負担割合の決定方法」に関する一考察 ・表1 国鉄長期債務の分担(ウィキペディアより作成) ・表2 旧国鉄の長期債務(鉄道・運輸機構の図より) ・表3 美しいハーモニーを奏でる「負担割合」の決定方法
(約8000字)
[2997]に続いて、主たる区間を概ね時速200キロメートル以上で走りながら忘れられてきた、古くて新しい課題を概観します。
○「官営のち払下げ」スキームの有用性
・ウィキペディア「官営模範工場」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E5%96%B6%E6%A8%A1%E7%AF%84%E5%B7%A5%E5%A0%B4
> 八幡製鉄所、造幣局、富岡製糸場は日本三大官営工場とも称される。
> 明治維新後、新政府は江戸幕府や諸藩が経営した造船所や鉱山などの事業を引き継ぐとともに、工部省が中心となって官営模範工場を新たに開設し、日本の近代化、資本主義化を図った。
小学校のうちに造幣局までは学ばなかったやのような気もするんですが、そして、「八幡製鉄所すごい!(見て見て! 漢字で書けるよっ!)」「富岡製糸場すごい!(見て見て! 三連休パスで行ってきたよっ!)」ということになって、「日本○大***」という視点での一般化には、多くのかたは至らないままオトナになっているのではないかと疑われます。
一般化という視点とは別に、いえ、逆に、誤った一般化をしてしまうおそれといいましょうか、日本の近代史を学ばないうちには、あたかも「江戸時代は全国が農村や漁村であった(工場は1つもなかった!)」「明治維新で各地に工場がつくられた(それまで工場は1つもなかった!)」と、この、カッコで補った部分を誤解する余地が混ざっておりましょう。
ちょっと(かなり)説明が短すぎるので、別の事典を参照してみましょう。
・コトバンク「官営事業民間払下げ」
https://kotobank.jp/word/%E5%AE%98%E5%96%B6%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E6%B0%91%E9%96%93%E6%89%95%E4%B8%8B%E3%81%92-1520224
> 明治政府が民間産業を育成するため、所管の官営鉱山や官営工場の一部を、民間の払受け人とくに特権的政商などに払い下げた措置。官業払下げともいう。官業払下げについては、財政緊縮の目的で1875年(明治8)に当時大蔵卿(きょう)の大隈重信(おおくましげのぶ)が主張したことがあるが、その後、1880年に布告された「工場払下概則」が、実現の直接の契機になった。
「官営」という言葉が現代では新規には使われなくなっているのでスキームが見えづらくなっていますが、民間ではできない先進的な事業や研究開発を「官」(自治体や、その附置研究所なども含みます)が率先して行い(これを「模範」というと時代っぽいですが、事実上「模範」です)、技術や事業が安定したところで、あるいは、民間で担える下地のようなものが整えられたところで、おもむろに「レッツ払下げ! これからは民間で取り組む時代だっ! 契約書にサインしてボクと握手っ!! 県庁の記者会見場でにこやかに笑って笑って!(もっとくっついてぇ! ぱしゃり)(目線くださいっ! ぱしゃり)」([3174]のノリで恐縮です)が一種「発動」されてくるわけです。(専門家の理屈の上で契約が合理的かというだけでなく、広く一般にどう見えるかというのも大事だという「素人合理性(仮)」([3081])のためには「笑って笑って!」もたいへん重要だろうなぁ、の意。)
・CiNii先生「払下げ」
http://ci.nii.ac.jp/search?q=%E6%89%95%E4%B8%8B%E3%81%92&range=0&count=20&sortorder=1&type=0
・「優良基礎豚「ダイ2サキタマ」の生産と維持」埼玉県農林総合研究センター研究報告 No.12 pp.67-70(2013年3月)
http://ci.nii.ac.jp/naid/120005580464
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0909/documents/619735.pdf
> 優良基礎豚「ダイ2サキタマ」は,埼玉県で(物江ら,1981)作出したランドレース種系統豚「サキタマ」の種雌豚と他県5系統のランドレース種系統豚の種雄豚を交雑して(略)5年間かけて改良し,平成7年度に系統豚認定されたランドレース系種豚である.
> 1996年から県内農家への払下げを実施
> コンピューターソフトを用いた交配計画を作成し実施
> 17年目の2011年
> (略)の推移は,PHPPIソフトを用いて算出した.
・埼玉県「農業技術研究センターについて」(2015年4月1日)
http://www.pref.saitama.lg.jp/b0909/h27shinntaisei.html
どのように呼ぶか、また、広く一般に認知されるかは別として、どの時代にも、どの分野でも、「官営模範工場」そして「払下げ」という「スキームのようなもの」が、とっても重要である(民間では必ずしも代替が利かない)ことが実感されてまいります。
※「PHPPIソフト」も気になるんですが、どういうものなのかわかりませんでした。
○新幹線も「官営のち払下げ」
1964年に開業した東海道新幹線も、▼まったく新しい技術の意欲的でスピーディーな開発、▼多額の設備投資、▼これまで顕在化していなかった需要の創出(東名阪の相互での「日帰り出張」)と、まさに「官営模範事業」の様相が強くあります。
時代が下って、いま(1991年)、これまでに建設された新幹線のインフラが民間に「払下げ」されるという、めでたいステージに進みました。つまり、「新幹線(技術)は完成した」のです。あとは需要に応じて事業(サービス)されればいいんだという、それならJRに限らず新幹線を担ってもいいでしょ(「私鉄初の新幹線運行へ 京成電鉄」[3173],[3183])、という理屈が開けてくる、その入り口に、私たちは立っているといえましょう。
※京成電鉄が、といって、おお、上野駅で「既存の新幹線網」と接続しています。しかし、距離が短いといって認めないのかなぁ、などと邪推されます。それでも、新幹線と呼べない技術的な理由はそのくらいしか思い当りません。新幹線の特別扱いが続く限り、在来線の高速化に「ブレーキ」がかかり続ける(在来線での線路敷立入りの罰則化がしにくい)ということになり、こちらの不利益がないようにと目配りすることが本質的な課題であって、呼びかたは「新幹線」でなくてもいいのかもしれません。…といって「スーパー特急はどこに消えた?(オホーツクに消ゆ!)」というわけです。かしこ。
・日経BP SAFETY JAPAN「民営化が可能にした東海道新幹線への投資」(2007年11月22日)
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/bookreview/33/index4.html
> 1991年に、著者らの主張が通り、新幹線保有機構が解体され、JR東海は、東海道新幹線のインフラに独自判断で投資することが可能になった。
と、著者は理解しているということが述べられている本の書評ですね。
・同(続き)
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/bookreview/33/index5.html
> 本書の記述に対する異議もあるだろう。しかし民営化から20年を経た現時点で行うべきは、まずなによりも当事者による証言集めだ。
そこはまったく同意であります。貴重な本ですね。
・ウィキペディア「新幹線鉄道保有機構」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A%E9%89%84%E9%81%93%E4%BF%9D%E6%9C%89%E6%A9%9F%E6%A7%8B
> 保有する施設を旅客鉄道株式会社に譲渡したことにより、1991年に解散した。現在、権利義務は、(略)鉄道建設・運輸施設整備支援機構に継承されている。
中立的には、インフラ部の「払下げ」が(「著者ら」の)「大きな声」によって「前倒し」となった、と理解できそうな気がします。では、旧国鉄の債務はどうなるのかという、そこはどうしてくれるんだと、国民としてはいいたいところではないでしょうか。
○「払下げ」にかかる『鉄算用』
旧国鉄の債務について、私たちはふだん、すっかり忘れています。さっそくおさらいしてみましょう。
・ウィキペディア「日本国有鉄道 国鉄長期債務償還とその破綻」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%9C%89%E9%89%84%E9%81%93#.E5.9B.BD.E9.89.84.E9.95.B7.E6.9C.9F.E5.82.B5.E5.8B.99.E5.84.9F.E9.82.84.E3.81.A8.E3.81.9D.E3.81.AE.E7.A0.B4.E7.B6.BB
> 分割民営化によって処理すべき債務は、最終の国鉄長期債務25兆0600億円のほか、鉄建公団債務および本州四国連絡橋公団債務の国鉄負担分、北海道・四国・九州の各新会社に対する経営安定化基金原資を合わせた31兆4500億円に昇った。さらに民営化にともなう年金負担などの将来費用5兆6600億円を加えた37兆1100億円について、国鉄清算事業団と新幹線鉄道保有機構、新会社6社(JR東日本、JR東海、JR西日本、JR貨物、鉄道通信、鉄道情報システム)が承継した。このうち新会社が5兆9300億円、新幹線鉄道保有機構が5兆6300億円を引き継ぎ、残る6割に相当する25兆5200億円について、国鉄清算事業団が引き継いだ。
> 『平成8年度決算検査報告』会計検査院、1998年3月。
とのことで、表1にしてみたく思いました。
■表1 国鉄長期債務の分担(ウィキペディアより作成)最終の国鉄長期債務 | 25兆0600億円 | 鉄建公団債務および本州四国連絡橋公団債務の国鉄負担分、 北海道・四国・九州の各新会社に対する経営安定化基金原資 | 6兆3900億円 | 民営化にともなう年金負担などの将来費用 | 5兆6600億円 | (計) | 37兆1100億円 | | | 新会社が承継 | 5兆9300億円 | 新幹線鉄道保有機構が承継 | 5兆6300億円 | 国鉄清算事業団が承継 | 25兆5200億円 | (計) | 37兆0800億円 |
300億円ほど、どこかへ行ったという計算になるのは気のせいでしょうか。いずれかの数字に誤記がないか確かめ…るのは省略します。(恐縮です。)
・鉄道・運輸機構「国鉄長期債務の処理及び事業の収支構造」
http://www.jrtt.go.jp/02Business/Settlement/settle-saimu.html
http://www.jrtt.go.jp/02Business/Settlement/images/imgSettleSaimu01.gif
> 昭和62年4月1日の国鉄改革の実施に伴って発足した旧日本国有鉄道清算事業団は、旧日本国有鉄道から引き継いだ約25.5兆円の国鉄長期債務等の償還のため、約11年半余に渡って旧日本国有鉄道から承継した土地やJR株式の処分を行ってきました
> 現在の機構は、旧国鉄職員の年金の給付に要する費用等の支払い、その支払いに充てるための土地及びJR株式の処分を行っております。
> その他収入は、資産運用収入、国庫補助金収入等。(国庫補助金収入は平成18年度で終了)
図では、正確な比率がわからない描かれかたになっています。アトグサレないようにいっせいに電卓をたたいてみましょうか。はいドーン!(表2)
■表2 旧国鉄の長期債務(鉄道・運輸機構の図より)有利子債務 | 16.1兆円 | 56.9% | →国の一般会計に承継 | 無利子債務 | 8.1兆円 | 28.6% | →国が免除 | 年金等債務 | 4.0兆円 | 14.1% | →国鉄清算事業本部が負担 | | 0.2兆円 | 0.7% | →JRが負担 | | | | | (計) | 28.3兆円 | | |
年金等債務の負担内訳としては、国鉄清算事業本部が約96.4%、JRが約3.6%と推定されます。(0.15兆円+3.99兆円=4.14兆円と仮定して算出。)
○『先人の知恵』としての「負担割合の決定方法」に関する一考察
ちょっと傍題にそれてみましょう。
表2の、数字だけを見てみます。
負担額の大小で順位をつけて、1つ下位の額に対する比率でいいますと、国鉄清算事業本部が負担する額は20.1倍、国が免除した額は2.0倍、国の一般会計に承継された額は2.0倍で、年金等債務のうちJRが負担する額は実費のようなものといいましょうか、(退職者の人数と平均余命で決まります:たいへん失礼で恐縮ですが、お金の話です=どうぞ長生きください、の意)ボトムアップにその額になったのだと想像されてきます。この「0.2兆円」を除いた部分では、「等比」の配分となっていることがわかります。
・「等比級数的に分割」
https://books.google.co.jp/books?id=oeQSgDgHxacC&pg=PA66&lpg=PA66&dq=%E7%AD%89%E6%AF%94%E7%B4%9A%E6%95%B0%E7%9A%84%E3%81%AB%E5%88%86%E5%89%B2&source=bl&ots=BtbcHErtZ6&sig=DmeQYQhnAPjMkB4XTIJu5dsPWyE&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjDnrSDgcnLAhVKi5QKHZxtBTEQ6AEIHDAA
・「等比級数的に増加」
https://books.google.co.jp/books?id=oiDIBNGniy8C&pg=PA39&lpg=PA39&dq=%E7%AD%89%E6%AF%94%E7%B4%9A%E6%95%B0%E7%9A%84%E3%81%AB%E5%88%86%E5%89%B2&source=bl&ots=-9jwjumYm-&sig=5ptw0FtZsX-Gdsm7ancNmi31-yY&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjDnrSDgcnLAhVKi5QKHZxtBTEQ6AEIOTAG
・「平均律」
http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/sonic_wave/musical_scale/doc_html/musical_scale.htm
> このような考察をして少しでも音楽家、作曲家、ミュージシャン、アーティスト、芸術家の役に立つことができれば嬉しい。
※さらに傍題ですが、まったく新規性がないと断じます。もっと本気で実験および考察をなさらないと本業の業績まで疑われるおそれが出てきかねません([3050])。いえ、おもしろいのでもっと「本格研究!」([3091])してくださいオネガイシマス、というココロです。最初にするのは、作曲を勉強することですね。作り手がどのように「音のセカイ」を捉えて作曲しているのかを知らないままMIDIの規格だけを見て、あるいはオシロスコープだけを見ていても、どうにもならないと思いました。
そして、こちらに「一晩寝かせたカレー」([3093])…いえ、表3をご用意してございます。
■表3 美しいハーモニーを奏でる「負担割合」の決定方法負担者の数 | 負担額の分割 | | | 1 | 『全額自己負担』 (リニア中央新幹線) | 1.n | n割を補助金(または積立金、保険など)でまかなう (健保における自己負担割合) | 2 | 『折半』 | 3 | 2群で『折半』の上、片群内でさらに『折半』 (『国が1/2、県と市が1/4ずつ負担』) | 3以上 | 財政規模などで順位をつけ『等比級数的』に配分 『焼肉定食』([3180]) | 3以上 | 負担者を2群に分け『折半』 | 3以上 | 負担者を階層化し、各階層で『折半』 または特定の階層以下(以上)で『等比級数的』に配分 |
仮に「負担割合について国と協議する」などといって、その実、細かい額の増減を恣意的に左右…いえ、「タイトー海老名開発センター」のほうにむかってAB海老ななめうえっ(たそがれ列島ごはんですよ全国版[3181])…いえいえ、上下させることは、まったくエレガントではありません。そこをココロエテイルほど、「できる」「できない」をはっきり言える(交渉の「俎じょうの上」に上げることができるのは、表3の「お支払いプラン」のメニューからどれを「チョイスして選択!」するか、それだけだ)ということで、しかし、その背後にある表3の理屈を知っていなければ、「国は『逃げ腰』だ!」などと、実に表3を知らないことが暴かれるような発言を、仮には知事などがなさってしまうという、ちょっとミットモナイことになってくると心配されるわけです。
・ウィキペディア「数論」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E8%AB%96
・同「ウラムの螺旋」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E8%AB%96#/media/File:Ulam_1.png
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/69/Ulam_1.png
> 自然数を螺旋形に順に並べ、素数にあたる位置だけを強調表示した図。特徴的パターンが見えるが、その意味はまだ解明されていない。
・インプレス「ランダムと思われていた素数に、ある偏りが見出される」(2016年3月15日)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/20160315_748369.html
> Natureが14日付けで報じたところによると、スタンフォード大学のKannan Soundararajan氏が3月11日に公開した論文で、「ある素数とその次の素数は、最後の桁の数字が同じものになることを避ける傾向にある」ことが判明したという。
整数を数え上げるために10進数を用いるという時点で、本来、「数(すう)のセカイ!」にはなかった、おかしな桁区切りを持ちこむことになるわけですから、それによっておかしな効果(エッジ効果とも球面集中現象ともいうようなソレ)が「出てしまう」のは避けられない一方、それは人為的なソレであるので、それ自体にはほとんど意味がないような気もします。(理解が正確かどうかはわかりませんが恐縮です。)
仮には、素数の数え上げに最適化した「素数進数(仮)」のようなものを用いれば、素数が出現するたびに桁が増えると、それだけのことでありましょう…たぶん。そして、かなり傍題でした。
中途半端ですがここで稿を改めます。(マコトにイカンです。)
・明治安田生命「はつらつ世代」(1994年4月)
http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/corporate_info/about/history/yasuda/index.html
・個人のブログ「はつらつ時代」
http://foodesign-kato.blogspot.jp/2007/02/18.html
・八十二銀行「スキームはつらつ」(2008年5月16日)
https://www.82bank.co.jp/ct/other000003900/ki_pdf_h20status.pdf
・NHK「人工知能は人類を超えるか!?」(2016年3月17日)
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0317.html
> どれだけ技術が進んでも人間にしかできないことが数多くあるはずです。
「thtと呼ばれる人工知能!」に記事を書かせたいと、ちょっと本気で思いました…ちょっとだけ([3059])。おや…ゲフンゲフン。
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