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・都内各線のホームドア設置状況と、未設置路線での技術的課題 ・ホームドアに欠かせない「TASC」 ・参考
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りんかい線で初めて、2つの駅にホームドアが設置されます。9月28日、りんかい線を保有・運行する東京臨海高速鉄道が発表しました。
・東京臨海高速鉄道(TWR)「ホームドア整備計画について」(2015年9月28日)
http://www.twr.co.jp/info/2015/info_home_door.html
国際展示場駅で2018年度中、大井町駅で2019年度末に使用を開始する予定ということです。
大井町駅は、りんかい線のほかに、JR京浜東北線、それに東急大井町線が乗り入れるターミナル駅です。東急大井町線のホームでは、2012年3月にホームドアの使用が開始されています。東急大井町線では、2020年を目標に全駅でホームドアが設置されることが決まっています。
また、JR大井町駅でも、国、東京都および品川区が主導する形で、ホームドアが設置される見込みですが、具体的な設置時期については明らかにされていません。
一連のホームドア設置の動きは、2020年に東京で開催される国際的な規模の障がい者スポーツの大会にあわせたもので、国や東京都が中心になって進められています。競技会場、空港、選手村などを結ぶ経路上の駅が対象とされているとみられます。このため、東京高速臨海鉄道では2019年度末まで、東急電鉄でも2020年を目標としてホームドアの設置が進められます。JR大井町駅でも、同じ時期までに設置されることが期待されています。
●都内各線のホームドア設置状況と、未設置路線での技術的課題
都内では、JR在来線・私鉄・地下鉄の各線でホームドアの設置が進められてきています。
羽田空港とJR浜松町駅を結ぶ東京モノレールでは、2002年9月に全駅でホームドアが使用開始になっています。羽田空港の拡張などにあわせて、その後、開業した駅でもホームドアが設置されています。東京モノレールでは、ホームドアの設置とともに快速運転が開始され、速達性も高められました。
東京メトロでは、南北線、丸ノ内線、有楽町線、副都心線と、千代田線の支線の全駅でホームドアの設置が完了しています。日比谷線では、ホームドアの設置に向けて車両を統一する予定となっており、2020年までに開業予定の「虎ノ門新駅」では、開業時からホームドアが使用されるとみられます。ほかに、東西線では、開口部を拡大したホームドアが試行されています。ただ、これらの路線を含めて、今後のホームドアの設置の具体的な時期は明らかにされていません。
東京メトロ千代田線は、小田急電鉄、JR常磐緩行線と相互乗り入れを行なっていますが、保安装置の違いから、3社を直通できる車両が一部に限定されていました。9月12日に小田急線内で新しい保安装置「D-ATS-P」への切り替えが行なわれ、現在、JRの車両の小田急線での試運転などが進められています。早ければ来年春にも、千代田線で運行されるすべての車両が3社の路線を直通できるようになる見通しです。これを受けて、ホームドアの設置へ向けた具体的な検討が3社の間で始められるとみられます。
東京メトロ東西線は、JR線、東葉高速線と直通運転を行なっていますが、保安装置や無線などの違いから、▼JRの車両は東葉高速線では運行できず、▼東葉高速鉄道の車両はJR線では運行できない状況です。JR線では、2018年以降に新しい列車制御システム「ATACS」の首都圏全域での展開が計画されており、このうち、具体的な時期は決まっていないとみられますが、中央・総武緩行線での「ATACS」の導入にあわせて、各社の車両がいずれも3社を直通できるようにする取り組みが進められるとみられます。第3セクターである東葉高速鉄道の財務状況から、同社の負担を軽減したり、将来にわたって維持費を削減できる方法で対応することが、同社に出資する沿線自治体などから期待されているとみられます。また、東西線では、列車を増発するため線路やホームを増設する工事が進められており、都内で最悪とされる混雑が緩和できると期待されています。これを受け、いわゆる「ワイドドア車両」を廃止できるかが注目されます。
なお、中央・総武緩行線には、競技会場の最寄り駅となる千駄ヶ谷駅、信濃町駅があります。10月28日にJR東日本が発表した「今後の重点取組み事項」で、新橋駅、新木場駅とともに、2020年の大会の開催にあわせて駅改良工事を行なうことが明らかにされていることから、ホームドアの設置についても取り組みの時期が注目されます。
・JR東日本「グループ経営構想V「今後の重点取組み事項」の更新等について」(2015年10月28日)([3120]でも紹介しています)
http://www.jreast.co.jp/press/2015/20151015.pdf
都営地下鉄では、三田線の全駅で2000年9月までに、大江戸線の全駅で2013年5月までに設置が完了しているほか、新宿線で2020年までに設置予定となっています。京浜急行、京成電鉄と直通運転を行なっている浅草線については、設置時期を含め具体的な計画は明らかにされていません。京成電鉄で2017年度までに、新京成電鉄で2018年度までに「C-ATS」の使用が全区間で開始される予定で、これにあわせ、3社(および新京成電鉄)の間でホームドアの設置へ向けた具体的な検討が始められるとみられます。
●ホームドアに欠かせない「TASC」
駅のホームにホームドアを設置すると、電車をこれまでよりはるかに正確に、ホームの決まった位置に停止させることが求められます。
電車の定位置への停止は、運転士が持つ運転技術の中でも難易度が高い部分といわれます。▼車両の性能の違い、▼乗客の数(重量)、▼天候(レールと車輪の摩擦)、▼線形(曲線半径など)などが互いに影響しあうことが知られています。
運転士の役割は、列車の運転操作だけではありません。前方を注視することも重要な役割です。定位置へ停止するために、前方への注意がおろそかになってはなりません。また、前方で不意に動くものを見たときに注意がそちらへ行き、ブレーキの操作に遅れが出ることもあるといわれています。どんなに訓練を重ねても、人間の身体的・認知的な能力には絶対的な限界があることが知られています。
このような人間工学的な面から、列車を自動的に運転するATO(自動列車運転装置)の開発が進められてきました。
しかし、列車の発車から停止まですべてを自動化した路線では、運転士の仕事が単調になり、眠気やストレスが強まることが報告されています。このため、列車の運転の自動化では、▼完全に自動化して、運転士も乗らないようにする(「GoA 4」、いわゆる「ドライバーレス運転」)、▼運転士が主体で、自動化技術は補助的に使用する、▼運転士としてではなく、案内や介助、非常時の避難誘導のための係員として乗務するなど、望ましい自動化のありかたが国際的に議論されてきています。
こうした背景のもと、国内では、既存の路線にホームドアを設置する場合、線路に「TASC」(定位置停止装置)を整備するのが一般的になっています。
「TASC」は、ATOのうち、列車を停止する操作だけを自動で行なうものです。TASCを含むATOを使用するためには、列車の走行位置(基準点からの走行距離)を高い精度で把握できる仕組みが必要になります。
従来のATS(いわゆる「新型ATS」=「ATS-P」を含みます)は、「地上子」と呼ばれる線路に置かれる送信機から送られる情報を、車両の床下に設置した受信機で受けとり、車両に搭載したコンピューターを使って、車両の速度を制限したり、赤信号の手前で停止できるように自動でブレーキをかけたりする仕組みです。
ATSでは、地上と車両の間の通信が、「地上子」の上を車両が通過する一瞬だけに限られています。高い精度で定位置に停止するためには、短い区間に多数の「地上子」を置かなければならず、現実的とはいえません。
これに対し、ATCや新しいATSなどでは、制御のための情報を、レールと車輪を通してやり取りします。いわば「点」ではなく「線」といえる、連続した通信が可能なのです。このため、制御のための情報を非常に細かくしたり、リアルタイムで状況の変化に対応したりできます。TASCを含むATOを使用するには、レールと車輪を通して情報をやり取りできるATCなどが整備されることが前提になることがわかります。
地下鉄では、早い時期からATCが使用されていたため、その後、TASCやATOの機能を追加することが容易だったことから、ホームドアの設置が早くから進んでいます。JRでは、山手線、京浜東北線では、ATCが使用されているため、車両の更新(6ドア車の廃止)にあわせて整備が進められてきています。
小田急線で先月12日に使用が開始された「D-ATS-P」は、ATCと同等の機能を備えた、最新のATSです。名前こそ「ATS」ですが、情報のやり取りはレールと車輪を通して行なう方式です。車両の運転台には「TASC」に関する表示灯も備えられており、TASCを含むATOを使用するための技術的な準備が既に完了しているとみられます。また、京浜急行、都営浅草線、京成電鉄、それに新京成電鉄で導入が進められている「C-ATS」も、レールと車輪を通して詳細な情報をやりとりする方式で、ATCと同等の機能を備えています。こちらも、「C-ATS」の全区間での使用開始によって、TASCを含むATOを使用するための準備が整うことになります。
りんかい線と直通運転を行なっているJR埼京線では、2017年秋に新しい列車制御システム「ATACS」の使用が池袋−大宮間で開始されることが明らかにされています。ATACSでは、情報のやりとりにレールと車輪を使うのではなく、無線を使います。最悪の場合、列車が脱線しても、通信や制御を続けることができるのです。しかし、電波の状況によっては通信が途切れる可能性もあることから、高速で運転する新幹線などへの展開は予定されていません。
りんかい線の駅でホームドアを設置するためには、りんかい線の保安装置(現在は、JR線と共通の「ATS-P」)がTASCに対応することが必要です。JR埼京線の車両と共通の対応ができることが期待されることから、りんかい線でも、少なくとも情報のやり取りをレールと車輪を通して行なう方式に変えるための工事などが行なわれるとみられます。
●参考
・東急電鉄「2020年を目標に東横線・田園都市線・大井町線の全64駅にホームドアを設置します」(2015年1月9日)
http://www.tokyu.co.jp/information/list/?id=157
・朝日新聞「ホームドア、東横線など3線全駅に設置へ 東急電鉄」(2015年1月9日)
http://www.asahi.com/articles/ASH195J3RH19UTIL02C.html
・JR東日本「京浜東北線大井町駅へのホームドア導入の検討について」(2014年11月27日)
http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141119.pdf
・国土交通省「ホームドアの設置状況」
http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk6_000022.html
・米運輸省 連邦公共交通局「An Assessment of the Business Case for Communications-Based Train Control」(2013年9月)
http://ntl.bts.gov/lib/55000/55500/55530/FTA_REPORT_No._0045.pdf
・日立国際電気「東京モノレール(株)殿向 ホーム柵用対列車画像伝送システムの納入」
http://www.hitachi-kokusai.co.jp/ir/business/1403/year/jigyo78_06.pdf
・小田急電鉄「新型自動列車停止装置(D−ATS−P)の全線設置が完了 小田急線の列車運行の安全性が更に向上 急カーブやポイントなどでの速度制御機能が向上します」(2015年9月11日)
http://www.odakyu.jp/program/info/data.info/8317_2581772_.pdf
・個人のブログ「小田急の新しい信号・保安装置「D-ATS-P」」(2011年4月5日)
http://mirai-report.com/blog-entry-1012.html
・京成電鉄「平成27年度 鉄道事業設備投資計画」
http://www.keisei.co.jp/keisei/setsubi-toushi/
・新京成電鉄「新型ATS「C−ATS」を一部区間で使用開始(12/6〜)」
http://www.shinkeisei.co.jp/topics/detail.html?news_id=738
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