|
(約2000字)
[2983]の続きです。
・失敗知識データベース「羽越線脱線事故」(再掲)
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CZ0200715.html
> 3.先頭車両は危険が大きい。
> といっても、乗客全員が先頭車両を避けたら問題となるが、最近の電車で先頭車両を「女性専用」としているが、いかがなものか。
この話をきちんと扱うとすれば、編成中の車両ごとに事故時の危険性(死傷するリスク)を計算し、車両ごとに異なる保険料を運賃に上乗せして徴収する(もしくはリスクの高い車両の運賃を割引する)、というくらいしか思い当りません。いずれはそういう時代が来るのかもしれません。
2階建て車両で座席ごとにリスクを算定するとなると、過去に事故がないのでたいへん難しいのではないでしょうか。廃車になろうかという211系の2階建てグリーン車を使って衝突実験(いわゆる「大月事故」や踏切での事故を想定した側面からの衝突、新潟県中越地震の時のように脱線したまま走行することによる底面への衝撃など)でもしないと、データが得られません。そういう「活用法」も、検討されたのでしょうか。何も考えないまま自動的に廃車にされていくようでは「真っ白」([2938])といわざるを得ません。
・失敗百選「大月駅で特急と回送電車が衝突(1997)」
http://www.sydrose.com/case100/316/
> 中央線の東京ー甲府間には、列車運行を管理するATOS(東京圏輸送管理システム)が1996年12月に導入されていたが、ATOSでは、入れ換え作業のダイヤは管理していない。入れ換え作業には基本的に、ATS等で止まらないように、自由に入れ換え作業ができるという運用方針があり、その判断は運転士に委ねられている。
> 駅構内での入れ替えなど、スイッチを切って行う作業も残っている。同社は運転士がATSを気にせず運転できるよう、約90駅であった同様の作業を見直し、大月、甲府など計約80駅では廃止した。
ほかに、リスクというほどではありませんが、連接台車でない限り、車端部は揺れが大きくなります。にもかかわらず、優先席や車いすスペース(ベビーカーにも対応)が車端部に設定されている現状は、合理的とはいえません。車両の中央部を優先席にするほうがよいのではないか、という仮定のもと、そうした場合の乗降時間への影響を実験で調べる、といったことを「Smart Station 実験棟」([2864])を活用して行なっていかなければならないのです。人が含まれるシステムに関しては、いわゆる「ICT技術」を使うという意味で「Smart」を目指す、それ以前の基礎的なところでの実験(実験によって施策を決めていくという考え方)が、圧倒的に不足していると感じます。
・損害保険料率算定機構「業務内容」
http://www.giroj.or.jp/service/index.html
そもそも、現時点において旅客鉄道事業にどのような保険がかけられているのでしょうか。
・商事法務研究会「運送法制研究会報告書」(2013年12月)
http://www.shojihomu.or.jp/unsohosei/unsohosei.pdf
上掲の報告書によれば、旅客運送事業において、▼航空、海運は国際条約に沿った保険がかけられている、▼自動車は(国内の制度として)保険加入が義務化されている、▼鉄道は賠償責任保険に入っているが適用件数が少なく、個別対応に近い状況にある、ということのようです。
> ・鉄道運送については,過失推定責任によっており,自然災害の場合や第三者又は旅客自身の行為に起因する場合には,運送人から無過失を主張することがある。
> なお,車両の設計上の瑕疵に起因する場合には,一次的には運送人が責任を負い,必要に応じ,車両メーカーに求償する。
> ・ 鉄道についての賠償責任保険は,相当な額以上の損害が生じないと保険金が支払われないため,適用件数は少ない。
> 本研究会において,旅客の生命・身体の保護を重視する観点から,消費者契約法のように個別の条項につき信義誠実の原則に適合するか否かを判断するのではなく,一律に片面的強行規定とする考え方の当否につき,検討を行ったところ,次のような指摘があった。
> ヘリコプターの遊覧飛行では,死亡につき責任限度額を定める例があると聞いている。新たな運送形態の出現の余地があるので,産業を阻害するような強行規定はあまり設けない方がよい。
専門家の間でたいへん意見が分かれているということ、また、なぜ意見が分かれるのか、どのような観点があるのかということが実によくわかる報告書になっています。法律や制度の設計には、工学とは異なる難しさがあるということですね。
※鉄道に関する法令の、いわば「白紙改正」に向けた課題については別途まとめる予定がございます。
自動車では「あたりまえのこと」になっている保険や事故のとらえ方(法律上の責任のありかた)を、鉄道でも「あたりまえのこと」にしていくことが、これから取り組む課題になってきているといえます。
また、鉄道車両を使った衝突実験を、「お客様」に見えないところでこっそりと進める(見せてはならない、エンギでもないものだと思われている?)よりは、むしろ実験の映像を企業CM([2862])に盛り込むなどするくらいのほうが、かえって「信頼感」を持ってもらえるのではないか、とも思います。
・「縁起でもない」
http://www.weblio.jp/content/%E7%B8%81%E8%B5%B7%E3%81%A7%E3%82%82%E3%81%AA%E3%81%84
|