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武蔵野線の新駅「吉川美南」に関するニュースです。新駅は開業したらおしまい、ではありません。現在進行形です。
・JR東日本千葉支社「2015年3月ダイヤ改正について」(2014/12/19)
http://www.jreast.co.jp/chiba/news/pdf/pre1412_timetable.pdf
吉川美南7:00発の西船橋行きが1本、新設されます。吉川美南を始発とする定期列車の設定は、2012年3月の開業以来、初となります。
・「【武蔵野線】 吉川−新三郷間に折り返し可能な新駅、2011年度めど」(2008/8/16)
http://atos.neorail.jp/atos3/news/news_080816f.html
> 新駅の設置により、スムーズな折り返し運転が行なえるようになるほか、ラッシュ時に新駅−西船橋間での増発が可能となる。新駅での構内留置が可能であれば、同区間で約30分の終電の繰り下げおよび初電の繰り上げも可能になる。ただし、現時点で具体的な運行計画は公表されておらず、新駅での折り返しは異常時のみに行なう予定とされている。
・「【武蔵野線】 吉川美南駅が開業」(2012/3/17)
http://atos.neorail.jp/atos3/news/news_120317.html
> 吉川美南で折り返しが可能となるまで、武蔵野線では、留置線や待避線を使わずに折り返し可能な駅は、電車区に隣接する東所沢に限られていた。現時点では、吉川美南で折り返し運転を行う定期列車は設定されていないが、多客時に吉川美南−西船橋間で増発される列車や、1日数本の列車が、中線である2番線を使用する。
基本的には2008年にまとめた通りで、以下のようないわゆる「タイムライン」が想定されているのではないかとみられます。
・1 新駅の開業直後は折り返し設備を定期列車では使用しない(多客時や異常時のみ)
・2 数年後、輸送計画上、必要であれば、新駅を始発とする列車を数本、設定する(営業しながら乗務員の習熟を進める?)
・3 開業から10〜15年後くらい(?)に、大幅なダイヤ改正(大幅な増発や優等運転の導入など)とともに新駅で折り返す列車を多数、設定する
今回、「タイムライン」上のフェーズが2に進んだ、ということにほかなりません。とはいえ、武蔵野線に特有の事情として「競馬開催日の多客輸送」があり、既に、定期列車に準じる頻度で吉川美南折り返しの臨時列車が運転されてきました。乗務員の習熟は、ほとんど完了しているのではないでしょうか。
また、このフェーズでは、吉川美南で折り返す列車の設定が「数本」に留まるわけですが、これは、ラッシュ時や日中に折り返しを多数設定するということは、すなわち増発するということになるからです([2910],[2939],[2971])。増発に直結しない折り返しとしては、初電の繰り上げや終電の繰り下げのために、吉川美南に夜間滞泊する列車や、早朝に新習志野から出区して吉川美南で折り返す列車を設定することも、このフェーズで検討されていく(※)のではないかと思います。
※むしろ、実現が遅れれば遅れるほど、できるのになぜしなかったんだ、というソシリを免れないといえます。お急ぎください。
・「謗りを免れない」
http://ejje.weblio.jp/content/%E8%AC%97%E3%82%8A%E3%82%92%E5%85%8D%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84
なぜ、開業直後に折り返し設備が定期列車では使用されないのかという点では、新駅設置の費用負担、いわゆる「スキーム」に目が行きます。
仮に、新駅設置の費用負担との兼ね合い(※)が「ある」とすれば、開業から3年間で何かが済んだ、あるいはついていたものがとれた的なものがあるのかもしれません。「ない」とすれば、折り返し設備にかかる費用はすべてJRが負担しているのですから、遠慮なく最初からどんどん使うことも可能だったとみられますが、費用負担とは関係なく、純粋に輸送計画上、必要がなかった、ということなのでしょう。
※立体交差化と同時に線増や追い越し設備の新設などを行なう場合に比べれば、兼ね合いというほどの兼ね合い、例えば、道路の財源や地元負担なのにJRが得をする(おまけで線路が増える、ホームが長くなるなど=立体交差化を越えた便益=「お釣り」がくる)のはまかりならん、といったものはほとんどないのではないかと思います。
・千葉日報「京葉・武蔵野線を増発 通勤時、混雑緩和へ 利用減の特急、廃止も JR、来春ダイヤ改正」(2014/12/20)
http://www.chibanippo.co.jp/news/economics/231208
> 武蔵野線は、平日朝の吉川美南発西船橋行きと西船橋発府中本町行きを各1本増発。西船橋駅止まりだった1本は京葉線直通の東京駅行きとし、乗り換え駅として混み合っていた西船橋駅の利便性向上を図る。
新聞としては、通常のダイヤ改正を淡々と報じただけでしょうが、少なくとも地元の県紙なのですから、もう少し「地元目線」で、武蔵野線の不便さ(区間によっては始発=初電が遅く終電が早い、途中駅での折り返しがなく「並べば座れる」という保証がまったくないなど)や、吉川美南が新設された効果などに焦点を当てて書いてもよいのではないでしょうか。型通りに報じることは客観的なようでいて、実は「業界目線」なのかもしれません。
それはともかく、このフォーラムとしては「乗り換え駅として混み合っていた西船橋駅の利便性向上を図る」という一文を正確に理解することを目指してみましょう。
「お客さんが増えて列車の混雑率が高まった」から増発(運転区間を延長)するのでは、ないのです。あくまで、西船橋の武蔵野線ホームにおける降車客の滞留(武蔵野線の西船橋止まりの電車から京葉線直通電車へ乗り換えるための)が問題なのです。ホーム上の旅客流動の問題を防ぐ、あるいは緩和するために、京葉線方面に向かう乗客を乗せたまま直通する(直通列車を設定する、あるいは特定の列車をピンポイントで京葉線直通に振り替える)ということなのでしょう。実に奥ゆかしい話([2911])です。
このことは、プレスリリースでは十分に説明されていません。関係者としては「常識」であるということの裏返しでもあるのでしょうけれども、利用客はいうにおよばず、プレスリリースを仕事として読む沿線自治体の担当者、新聞などの記者が必ずしも正確に理解しているとは限りませんから、多少くどくなっても、毎回、きちんと説明を加えたほうがよいのではないでしょうか。
もちろん、記者クラブでの発表(ですよね、たぶん)ではきちんと口頭で補足説明が行なわれ、それもあって千葉日報で上述のような補足がなされるに至っているのだと思います。このあたりで、インターネットにプレスリリースさえ上げてあればいいんだ、とも、プレスリリースを「起こして」いさえいればいいんだともいえない、いわば利用客を代表する質問者としての記者の役割の重要性が改めて実感されるかと思います。
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