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10月2日、三菱重工業(三菱重工)の新しい試験設備が広島県三原市の同社工場内に完成したとのことで、NHKでも報じられています。
・NHK広島「海外規格も対応の鉄道試験設備」(2014/10/2)
http://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20141002/4807491.html
> 新しい設備は、国内の多くの鉄道より幅の広い、海外で標準的な規格に対応した1周3.2キロの線路を備え、最高時速100キロでの本格的な車両の走行試験のほか、信号や運行システムの試験も行うことができます。
> また、海外での開通前に、この施設で現地の担当者の運行訓練を行うことによって、納期の短縮にもつなげられるということです。
ニュースだけで足りるようなら、ああ、自分はこの話にはたいした興味を持っていないんだ、ということになりますが、そうでない場合は、当事者のプレスリリースを読みにいくことになります。
※以下、プレスリリースを題材にした長文読解の解説のような様相を呈しますが、ご容赦ください。
この施設の概要がパンフレットにまとめられています。
・三菱重工業「総合交通システム検証施設 MIHARA試験センターパンフレット(PDF/1.2MB)」(2014/10/2)
http://www.mhi.co.jp/news/story/pdf/1410025579.pdf
> Multipurpose Integrated Highly-Advanced Railway Applications
そうきたか、という感じですね。日本語では「総合交通システム検証施設」とありますが、英語の略称を加味するなら「統合型多目的高度先進鉄道アプリケーション試験センター」になります。念のために係り受けもパースしておきますと、「高度先進鉄道アプリケーション」が一語で、「統合型」と「多目的」が並列で「試験センター」に係ります。日本語の「交通システム」では、かえって守備範囲が曖昧で、「ゆりかもめみたいなの」(新交通システム:AGT、自動案内軌条式旅客輸送システム)専門の施設であると誤解されかねません。また、「試験」と「検証」では、後述するように「試験」のほうが広範な意味を持っています。英語のほうがよく練られているなぁ、と思います。
※このサイトでも、「高度先進鉄道アプリケーション」にあたる造語を無理やりにひねってひねり出したのが、現在のドメイン「neorail」(2006年8月から使用)なのですが、なかなかしっくり来ないものです。論文でよく使われる表現の中では「Urban Railway」あたりが近いものの、都市近郊でなくてもシステムは刷新されていきたいと願う立場からは、Urbanと決め付けてはいけないと思います。
なお、AGTについても同日、時速120キロに対応する車両の開発について発表されています。既設のゆりかもめなどを高速化するのは難しいとみられますが、つくばエクスプレスの無人運転化のほうが早期に実現しそうであります。(メーカーが異なる上、法令の改正も必要かと思いますので、ただちに、とはいきませんが、将来的な方向性として。)
・三菱重工業「新交通システムのマーケットを飛躍的に拡大 最高速度120km/時の高速車両を開発」(2014/10/2)
http://www.mhi.co.jp/news/story/1410025580.html
・NHK「時速120キロの新交通システムを開発」(2014/10/3)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141003/k10015081211000.html
試験センターの話に戻りますと、施設の中身としては、まさに実物大のミニ鉄道で、高架部あり、50パーミルの勾配あり(JR東日本管内であれば既に降雨防災強化工事が完了しているような、見事なまでに典型的な盛土区間です)、三菱お得意の大画面を備えた「中央指令室」も備え、鉄道のすべてが一式揃っているといえます。線路は標準軌と狭軌の3線軌で、標準軌のレールについては欧州規格を採用とのこと。また、明記はされていませんが、架線柱の形状が欧州っぽく見えます。
プラットホームは北と南に計2箇所あり、北については、低床車両と通常車両に対応するよう、高さが2段階になっています。AGTについてはフルスクリーン型のホームドアを備えた建屋が設けられています。パンフレットの地図には「留置エリア」との表記も見えますが線路は描かれておらず(写真でも空地になっています)、試験のたびにクレーンなどで車両を載せ換えるとみられます。将来的には自動入れ換え(!)に対応する留置線の整備や複線の高速すれ違い実験設備、トンネル、橋梁、新型踏切の実験なども行なわれたりするのかもしれませんね。
これは「三菱のチカラ」で何とかなる話ではございませんけれども、近くを走るJR呉線との間に引込み線があるわけでもなく、見学者のアクセスがJR三原駅(や、もっと遠くの駅)からクルマ、ということになるのが、かなり「おしい」ところです。(実務で訪れる人は構いませんが、要人の視察では「先進性」への印象が薄れてしまう懸念があるかと思います。灯台下の袴はただちに白いとまではいえないがグレーで微妙、といえます。)
※東京・国立の鉄道総合技術研究所には、JR中央線との間に引込み線がありましたが、高架化に先立って廃止されています。鉄道の研究施設として、JRと線路がつながっていないのはどうかと素人目には映りますが、現実問題としてはあまり困らないのでしょうか。(困らないから廃止になったのでしょうけれども。)
そして、肝心なのは土木・建築としての鉄道でなく、その上の「アプリケーション層」の部分です。この施設は、信号・通信から運行管理(オペレーション)までを包含する「アプリケーション」に主眼が置かれ、新興国などに納入しようとする鉄道システム一式を、必要に応じて実際に構築し、完全な状態でのデモンストレーションを行なえるようにしている点が最大の特色です。「日本の新幹線と基本は同じで、この部分についてはそちらの要求に合わせます」といった言葉での説明だけでなく、動く現物を直接、見せることができるのは、たいへん強力なことと思います。
発表で特に触れられていない点としては、無線関係がどのように扱われるのかが気になります。現地向けシステムのデモンストレーションをするとなれば、当然、実際と同じ方式の無線を使用したいところでしょうが、電波法上、屋外ではできないはずです。そこだけ、国内仕様(当該の工場内で免許を得た方式)で固定するのでしょうか。
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