|
(約4000字)
駅での旅客案内について、「ホーム系」と「改札系」という違いがある([2943])という話について、さらに詳しくまとめます。(線路閉鎖による逆線走行で「接近放送」が流せない話[2945]への補足にもなります。)
以前、ホームでの自動アナウンスと軌道回路との関係が話題になりました。
・[2557]
> 以前、おりはら様に助言して頂いた次発の放送タイミングですが、ほとんどの駅がぴったり○秒・分間隔と、周期性がないが実状です。
[2506]で、おりはらさんがまとめられています。改めておさらいします。
「次発放送」(と、このサイトでは呼びます)のタイミングについては、列車の発車直後に流れるものと、一定の時刻ごとに流れるものとで、それぞれタイミングを決定する仕組みが別々にある(ようだ)ということですね。
前者については、軌道回路によって、列車が駅の外に出た(連動駅であれば、出発信号機を当該列車が越えた)ことを検知した時点を起点とし、設定された秒数の経過後(ディレイですね)に「次発放送」を流すようになっているのではないかとみられます。いわば、「接近放送」の逆バージョンのようなもの(「発車後放送」とでもいいましょうか)といえるかと思います。軌道回路に依存する以上、各駅によってタイミングはバラバラになります。(信号機の位置がバラバラ、列車の速度もバラバラだからです。)そのバラつきをある程度、吸収して、どの駅でもそれなりに同じようなタイミングで自動アナウンスを流すためには、ディレイが設定できる仕様とするくらいしか方法が思い当たりません。(いわば、遅いほうに揃えるということになります。)
※南武線以降の「お客さま向け在線モニタ」(と、呼んでみたくなりました、[2906])を見ていますと、軌道回路による在線検知のありようが実感できます。決して見やすい、わかりやすい案内とはいえないのですが、これはこれで、勉強になります。
後者については、毎時10分,20分,...とか、5分,10分,15分,...とか、7.5分,15分,22.5分,...といった、その区間での列車の密度に合わせ、列車と列車のちょうど中間になるようなタイミングを初期設定として導入時に設定してあるのではないかと思います。これを、駅の裁量でも変更できるのでしょう。
[2511]でも述べていますが、いわゆる「発車時刻」は目安に過ぎませんので、発車時刻の何分前、というタイミングの決め方は、少なくともATOSでは行なっていないとみるのが自然かと思います。何しろ、「発車時刻」を動的に変更することも可能(ただし、鉄道営業法による制約で、遅らせるほうだけが許されるとみられます)で、この場合、発車時刻からの逆算でタイミングを決めるとなると、どの時点での発車時刻に基づいてタイミングを決めるのか、発車時刻が変わるたびにキュー(自動アナウンスのタイミングの予約)を入れ直すのか、という問題が出てきます。これによって、案内の漏れや過大な重複(極端には、「次発放送」が流れ続ける)が生じてしまいます。また、ここに上限回数([2506]、※)を設定してしまっては、20分、30分にわたって列車が来ないとき、最初の10分間に2回だけ流れて、あとは何もなし、となってしまいます。
※そういう解決策もあるにはあると思いますが、あまり(というより、かなり)エレガントとはいえない解決策といえます。
PRCと連動した自動旅客案内では、発車時刻の1分前から電光掲示板での当該列車の案内を点滅表示にするという仕様になっていますが、発車が遅れれば延々と点滅したままになる(発車ベルスイッチの操作を起点とし、一定のディレイの後に繰り上げ、とみられています、[2506])ほか、点滅表示中は日本語表示だけになり、英語表示がいっさいされないという問題があります。なお、点滅表示の仕組み(PC-98のエスケープシーケンス[2906])を考えれば、点滅中(点滅している部分=1行目だけ)に表示内容が固定になるのはいたしかたないとわかりますが、別立てで「日本語の点滅」と「英語の点滅」を周期的に表示(点滅せよという制御コードを組み込んだ文字列を、交互表示)させるルーチンを入れることも可能で、この点では手抜き(※)といわざるをえません。
※PRCが手抜きなのではなく、PRCと連動する「発車標制御装置」(正式な名称は不明です)が手抜きだということです。あるいは、手抜きと見えるような単純な(しかし確実な)プログラムしか組むことができないような、プログラム実行環境上の厳しい制約が何かあるのかもしれません。そこまではわからないままでの話となる点は、どうかご容赦いただきたく。
このあたりの、軌道回路との関連の強さ・弱さによって、同じ自動旅客案内でも、「ホーム系」と「改札系」という区分がなされ、別々に開発される(されてきた)という違いになっているとみられます。いま、どれだけこの違いが残っているのかはわかりませんが、仮に「改札系」では「軌道回路と直結しない部分では、多少信頼性が下がってもよい」といった、安全上の制約に縛られない自由な開発ができ、その結果として、新宿駅などのフルカラー発車標や、東京駅のLCD画面、横浜駅のPDPなど、多彩な「改札系」を試行的に導入していくという柔軟さにつながっているのだとすれば、たいへん重要な区分だといえます。
※安全上の制約とは、例えば制御装置として産業用コンピューターを採用しないといけないか、通常のPCやワークステーションでよいか、といった違いを指します。当然、後者のほうが、高性能な機種を安価に調達できます。(その代わり、寿命は短くなります。)あるいは、終電後に電源を落とし、初電前に起動するといった運用ができる(24時間稼動でなくてもよい)か、といったこともあるでしょう。
なお、「ホーム系」と「改札系」という表記は、電光掲示板(発車標)のメーカーでの記載によります。この区分が、メーカーによる便宜的な呼び方であるのか、JR側による呼び方なのかまでは、わかりません。
なお、「改札系」には、改札外、および改札内のコンコース(乗り換え通路)を含みますが、ホームと直結する階段付近の発車標は「ホーム系」に属することが多い(多かった)ようです。八王子でいいますと、横浜線の電光掲示板は、「改札系」では16ドット、「ホーム系」(乗り換え通路の、ホームに降りる階段至近の箇所を含む)では24ドットだった、という違いがありました([2925])。
旅客案内装置が「ホーム系」と「改札系」とに分かれているのは、主に連動駅での話で、非連動駅では明確には分かれていない場合が多いと思います。早期にATOSが導入された線区(常磐線あたりまで?)の非連動駅では、まずホームに電光掲示板を設置し、次に改札にも設置する、という順序での展開が図られてきました。従来でいうところの「ホーム系」のみを整備し、改札口の電光掲示板もこれに統合したとみることができます。また、連動駅と非連動駅の違いを加味するなら、非連動駅での自動旅客案内というもの自体がすべて「改札系」のようなもの(連動駅ほどの高信頼性が求められない)だとみることもできます。
・新陽社「LED式表示」
http://www.shin-yosha.co.jp/product/kahen/led/
・新陽社「LCD式表示」
http://www.shin-yosha.co.jp/product/kahen/lcd/index.html
> 西武鉄道 所沢駅
> 方面別行先案内4台とお知らせ2台との、6台の55型LCDで表示器を構成しており、新駅舎開業に合わせて設置しました。行先案内では先発列車の停車駅ライン上を光が流れ、表示に動きを持たせる工夫をしています。
ウェブブラウザで「マーキー」が大流行した上で廃れたのを思い出します。これになぞらえるならば、いまは、わあい、マーキーもできるぞ〜、の状態なのかなと推測できます。将来的には、次第に洗練されていくか、洗練されず淘汰され、結局もとの静的な表示に回帰するのか、のどちらかになるといえます。もちろん、洗練されていくことこそが進化であって、いろいろ試行錯誤したものの結局あきらめる([2942]など)というのは、研究開発においては最大の「負け」といえます。
・新陽社「PDP式表示」
http://www.shin-yosha.co.jp/product/kahen/pdp/index.html
高崎駅にもPDPが導入されていたんですね。
> 待合案内等、至近距離で旅客誘導が少ないところにLED発車標とは異なるコンセプトで設置しています
座って、あるいは立ち止まって、じっくり読むということですね。ならば目の高さに設置してほしいなぁ、と思います。開発から設置までコンセプトが一貫されていないところが残念です。
なお、このサイトでの電光掲示板に関する説明でも、ホームと改札口・コンコース(つまり「改札系」)とを分けて記載している箇所がありますが、上述のような背景をすべて理解した上で分類していたわけではないのです。(当時はそこまでわかりませんとも。)それでも、電光掲示板をよく見ていれば何となくは気づくもので(設置時期が違う、方面表記に番線の数字がない、「電車がまいります」の点滅表示、などなど)、それによって、知識がなくても結果的に「ホーム系」と「改札系」の違いにつながる部分に着目できていたことになります。そのくらい、大きな違いがあるということですね。
| |