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[2907]への補足です。
・[2907]
> 今後のATOS導入線区で出発時機表示器が設置されないのではないかというウワサが、あちこちの掲示板やブログなどで流れているようですが、一理あるなぁと思うとともに、設置されない場合について、その背景を洗い出してみました。
ウワサに反して、横浜線のいくつかの駅で出発時機表示器が設置されたという投稿がツイッターで散見されます。しかし、全駅で、これまで通り車掌用、運転士用、駅員用の出発時機表示器が多数(=橋本−八王子間では4両編成対応の位置にも?)、設置されるのかどうかは、依然として不透明です。[2907]で見落としていた部分について、改めてまとめてみます。
出発時機表示器という「業務用」の表示器をのぞき見て「ライフハック」としゃれこんできた「お客さま」としては残念でしょうが、いま、なんとしても出発時機表示器の設置箇所を減らしたいとしますと、いくつかの方策が考えられます。
・設置対象駅を絞り込む
・運転士用、駅員用の設置をやめる(車掌用のみを設置する:短い編成については、最後尾を揃えることで兼用とする)
設置対象駅を絞り込む方法としては、以下のような方法が考えられます。
・出発時機表示器によって指示を出す駅を、一部の駅(採時駅、連動駅など)に限定する
・出発時機表示器を使わずに指示を出す(または指示の代わりとする)
駅を限定する方法では、単に出発時機表示器の設置箇所が減るというだけでなく、非連動駅の駅装置をこれまで以上にシンプルにすることができるというメリットが得られます。
旅客案内装置における「ホーム系」と「改札系」の違い([2946])になぞらえますと、これまでのATOS導入では、出発時機表示器という「運転系」(という正式な呼び方があるかは知りませんが)の機器を設置するためだけに、非連動駅にも高信頼なコンピューターを置かなければならなかった、ということができます。非連動駅から「運転系」をなくす(非連動駅では旅客案内機能だけに徹する)ことによって、コンピューターはいうにおよばず、足元の通信回線も、過大な信頼性を確保することは必要なくなり、WiMAXや事務系と共通のLANで十分とすることもできるでしょう。かなりのコストダウンがはかれるとみられます。
一方、出発時機表示器を廃止するということは、駅装置の設計にも手を入れる必要が出てくるということになります。出発時機表示器を設置しないのに出発時機表示器を制御する機能を残しておくのは無駄です。(実運用では使わない機能でも、構築時にテストは必要になります。)とはいえ、通常、駅装置の設計はなるべく変えたくないと考えられるでしょう。ここから、連動駅と非連動駅を分けて考えるという発想が出てくるのです。将来的には出発時機表示器を廃止するとしても、今回は非連動駅だけで廃止する、という、いわば「段階的な廃止」をしていくことがありえます。これまでの「段階的な構築」の逆ともいえ、実にATOSらしい(自律分散システムらしい)話といえましょう。
※これは青梅線・五日市線でのATOS導入がどのように進められるのかということにも関係しますが、PRCが既設である拝島のみに、連動駅用のATOS駅装置を設置し、拝島以外の駅では、すべて非連動駅用のATOS駅装置を設置することで、システム構成の大幅な簡素化および低コスト化をはかるということもあるのではないかと思われます。(あくまで推測です。)また、埼京線でのATACS、京葉線でのネットワーク信号制御システムへの対応も控えており、開発工程を時期的に分散させるためにも、非連動駅の駅装置の簡素化は、早い段階で取り組まれるのではないかと予想できます。
次に、出発時機表示器に代わる方法で指示を出すということについては、[2907]でまとめたように通告伝達システムの活用が真っ先に思い浮かびます。ただ、通告伝達システムを経由して、個々の列車に対して個々に別々の指示を出すためには、指令側において通告伝達システムとATOSとを連携させるための新たな開発工程が必要になります。また、その取扱いを定めるマニュアルの改訂も必要で、かなり大掛かりな話になってきます。
今回、このような通告伝達システムの運用の高度化を後回しにしたいとなれば、例えば「抑止」の指示だけを、出発時機表示器から通告伝達システムへ移すといった対応が考えられます。
出発時機表示器を使用せずに「延発」を指示する方法としては、出発信号機を使うことが考えられます。連動駅であれば、発車時刻に合わせて進路を開通とする(出発信号機を進行現示にする)ことが可能です。非連動駅についても、出発信号機に相当する閉塞信号機(いわば「みなし出発信号機」)の現示を、在線状態に上乗せして制御する(前方に列車がなく進行現示になる場合でも、システムによって意図的に停止現示を出す)ことを許せば、発車の時分を明示しない「延発」に相当する指示を実現できます。
※ただし、これからは移動閉塞なATACSやCBTCだといういま([2945],[2978])になって、軌道回路に依存する処理を「ハードコーディング」するのは好ましいことではなく、「次世代型ATOS」([2954])に向けて通告伝達システムの運用を高度化していくのが「正攻法」であることにかわりありません。
・「ハードコーディング」
http://e-words.jp/w/E3838FE383BCE38389E382B3E383BCE38389.html
これによって、副次的に「発車時分を発車直前まで何度、変更しても、現場が混乱しない」というメリットが得られます。
これまでの出発時機表示器による「延発」の指示では、必ず「時分」も表示されます。これは逆に、その指示を何度も変更することができない(しにくい)ということになっていました。
車掌としては、発車予定の時分が指示(表示)され次第、そこから逆算して、いつ発車ベルを鳴らせばよいか、また、その前に、いつ「まもなく発車します」とか「時間調整のため○分ほど停車します」とアナウンスすればいいか、を考えなくてはなりません。(そうしないと、指示された「時分」に発車を間に合わせることができません。)もし、発車予定の時分に近づいてから、再度、発車を遅らせることとなれば、利用客からみれば、「さっき、○分ほどといってから○分経ったのに、まだ発車しないのか?」ということになってしまい、不満が募ります。
いわば、エレベーターの表示をブラインドにする話([2996])と同じで、あえて意図的に隠すことによって、混乱やイライラを防ぐことができるのです。ラッシュ時の山手線などで見られるように、発車標では、変更後の発車時刻を非表示にすることは、既に行われています。これが乗務員に対しても行われるようになるとみれば、自然なことといえます。情報が多すぎれば対処しきれないという点で、本質的なところでは乗務員も利用客と大差ないのです(認知上の負荷については[2908],[2923],[2949]なども参照)。
最後に、運転士用、駅員用の設置をやめるということになるとしますと、これは将来的に「立ち番」を廃止したり、運転に関する権限を指令と車掌に集中させ、駅からはなくしていく流れに沿ったものといえます。ホームドア(可動式ホーム柵)の設置も進められることが望まれますが、例えばホーム上での安全監視を「運転系」ではない単純な(資格の要らない)業務とする(いわゆる「高給をはむ者」[2856]でなくても務まる仕事としていく)ことができれば、全面的に警備会社に委託することも可能になってきます。
これまで出発時機表示器を使って出されてきた指示のうち、「抑止」だけは全駅で表示できる必要があるように思えます。しかし、[2907]で先述のように、「抑止」は、列車が駅にいなくても、駅間のどこにいても伝達できる必要があり、本来、無線で伝達されるべきものです。それでも出発時機表示器に「抑止」の表示が出るようにされているのは、むしろ駅員(「立ち番」=列車を発車させる権限を持つ)のためだったのでしょう。「立ち番」を廃止していく、あるいは、駅員に対しての指示がタブレット端末などで行なえるようになっていけば、出発時機表示器で「抑止」を表示することも、このために全駅に出発時機表示器を設置することも、駅員用の出発時機表示器を設置することも、必要ではなくなります。
運転士用の出発時機表示器が必要かどうか、という点では、車掌がドアを閉めない限り、また、最近の信号機が進行現示でない限り発車できないのですから、必要ないといえます。また、運転士に対しても迅速な伝達が必要な指示としては、動き出すほうでなく止めるほう、つまり「抑止」ですが、これは上述の通り、駅に設置した表示器よりも通告伝達システムを用いることが妥当な種類の情報です。
・[1777]
> 常磐線E231系にはATOS専用のモニタが運転台に設置される予定と聞きました
・[1779]
> へー。初耳ですね。どうやって情報を受け渡しするんでしょう?。
> そんなことが簡単に出来るなら、是非教えて貰いたいものです。
・[2466]
>「ATOS専用のモニタ」というのは不正確な表現ですが、要は通告伝達システムの車上モニタのことだったようです。
・[2861]
> 「車掌用ATOS情報システム」というものが、通告伝達システムとは別に用意されるとのこと。モニタが専用かどうかは別として、運転台のモニタに列車の在線位置や遅延時分が表示されるとのことです。車掌が車内に居ながらにして駅員と同等の情報が得られるわけで、これは強力なツールになりそうですね。
ATOSの開発はかなり早く、その時点では列車と指令の間のデジタルな通信手段が実現していませんでした。出発時機表示器(や、その前身となった「通知合図器」)は、制約の多い環境下で生まれた「最善の策」だったといえます。デジタル列車無線が実現し、より低廉な自営(MVNO)WiMAX網も使用可能となったいま、やはり、広い意味では「役目を終え」ようとしている([2907])といって「過言」ではないでしょう。
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