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さすがに15年も経ちますと、いろいろ想像できるようになってくるものです。長年の疑問がひとつ、解けそうです。
・[537] tht
> 西千葉で変なものを見ました。2番線(千葉方面)の電光掲示板にこう表示されていたのです。
> 「 中 野 」
・[542] tht
> 目を凝らしてみると、確かに2番線の発車標に「 中 野 」と表示されていたのでした。その後すれ違ったA線の電車は、もちろん「千葉」行きでしたが。
・[543] おりはらさん
> ATOSの放送はあの掲示板に出た通り喋ります。
> ただし、ATOSはダイヤが乱れるとダイヤの計算途中でも電光掲示板に表示されるので、ほどなく直されたと思います。
> 私もかつて根岸線石川町駅でダイヤが乱れたときに電車がくるまで、行き先が4回も変わったのをみたことがあります。
> そのとき一回だけ「桜木町行き」になった(北行ホーム)のですが、大船方面から桜木町行きはポイントの関係でありえないので、ちゃんと放送で「桜木町行き」というのか待っていたのですが、直前に「大宮行き」に直されました。
・[545] AE103さん
> 実は私も西千葉駅2番線の「中 野 」を目撃しました。
・[2511] tht
> ・即座に反映されるのはいいものの、指令所で変な入力がされると(?)変な表示になることもある模様。([537],[541],[542],[543],[545]参照)
中央線の高架化工事では、運休区間の前後で「逆線走行」が行なわれました。これが参考になります。
・YouTube 逆線走行のようす(2012/5/19)
http://www.youtube.com/watch?v=XvCAHjjKvUk
・個人のブログ「JR中央線 武蔵小金井駅線路切り替え工事」(2012/5/19)
http://ameblo.jp/yohnen2/entry-11257127780.html
> 東小金井駅。ここから以東は東京まで10分毎の直通運行。
写真では「東小金井」行きの表示となっており、えっ、と思いましたが、よく見れば東小金井駅ではなく武蔵境での写真ですね。キャプションが間違っています。
武蔵小金井1番線(新宿方への折り返しは逆線走行となる)の電光掲示板に「当駅始発 東小金井 」という表示が見られます。
※この工事における東小金井での「武蔵小金井行き」の写真を探しているものの、いまのところ見つけられていません。みなさん、珍しい行き先としての「東小金井行き」には注目されても、システム上、興味深い、肝心の部分にはあまり着目されなかったということでしょうか。逆に、みなさんが特段の興味を持たれる状況ではなかったということは、東小金井の電光掲示板が消灯していたといったことはなかったものとみられます。(…と、みてよいのでしょうか?)
・個人のブログ「中央線高架化工事(2012年8月19日取材)」(2012/8/30)
http://mirai-report.com/blog-entry-1189.html
一連の工事にともなう武蔵小金井の配線の変遷がわかりやすくまとめられています。工事中のどの段階でも、1番線から新宿方への折り返しは(通常)できないことがわかります。
武蔵小金井から逆線走行での発車となる列車の案内が正常(少なくとも電光掲示板の上で正常)に行なわれていることから、まず、ATOSの上では逆線走行を行なうことも想定した(データ上、不正とはみなさず許容する)仕様になっているとみられます。これは、ATOSが線路閉鎖も管理している(=線路閉鎖され逆線走行ができる状態でも、ATOSによる管理がされなくなるわけではない※)ため、当然といえば当然です。
※もちろん、線路閉鎖された区間では軌道回路がすべて短絡(⇔短絡させることを線路閉鎖と呼ぶ)した状態ですので、在線検知は行なえず(当該区間のすべての閉そくにまたがった長大な列車が在線しているようなもの)、「接近放送」はいっさい流せなくなります。(流すタイミングとなる在線位置=軌道回路の状態変化が起きないため。)この状況下では、列車情報の繰上げはPRCと同様に発車ベルスイッチの操作([2506])か、あるいは駅装置の手動操作によって行なっていたものと思われます。
石川町での北行の「桜木町行き」については、指令での入力に手間取り、まず桜木町を選択、その次に大宮を選択、といった操作が行なわれたとみられます(あるいは単に間違って桜木町を選択しただけかもしれませんが)。当時、マウスが使えたかは不明ですが、使えたとしても、ドラッグはできなかった(カーソルキーやタブキーの代わりにマウスでポイントして選択するのみ)とみられます。このため、このような入力ミスや、入力ミスの訂正に時間がかかっただろうことは、(いまでは)容易に想像できることです。
※1999年の当時はわかりませんですとも。裏返せば、これまでにどれだけ多くの資料が世に出てきたことでしょう。
このため、桜木町で南側へ折り返す「逆線走行」も、システム上、エラーにはならないということでしょう。また、この点で[2511]の「指令所で変な入力」という表現は妥当ではありませんでした。
※石川町での北行の「桜木町行き」は、単に桜木町で営業運転を打ち切り、そのまま回送列車として北行の線路を運転する場合でもありえる表示ともいえますが、この表示の原因がデータの入力ミスだとすれば、わざわざそんなややこしい列車になってしまうとも考えにくいと思います。
その上で西千葉です。西千葉の2番線で、かなりの時間にわたって「 中 野 」や「 三 鷹 」と表示されていた(※)としますと、単なる入力ミスでなく、何か根本的な原因があるとみることができます。
※ある1本だけがそうなったのでないことは、複数の方がばらばらに目撃されていることから明らかです。また、いくらなんでも、たった1本のおかしな表示にたまたま私が遭遇するというのは確率的に考えにくいことといえ、私が目撃した前後の時間帯では、しばらくの間、こういう表示だったと考えるのが自然です。
例えば、ATOSの上では、総武線(各駅停車)の電車は西千葉で折り返している(という扱いになっている)という可能性があります。具体的には、西千葉での下り着時刻と、同じ列番の電車の(千葉駅で折り返した後の)西千葉での上り発時刻を、あたかも西千葉で折り返すかのようなデータとして持っている、ということが考えられます。これに、通常は、下り着時刻に対して無条件に「千葉行き」という情報を備考情報として付与し、西千葉の旅客案内装置では、列番に対する本来の行き先(千葉駅での折り返し後の上りの行き先)の情報ではなく、無条件に付与された備考情報としての「千葉行き」という情報を使って、「千葉行き」と案内しているのではないかと考えることができます。
※自分でも「本当かいな?」と思いますが、こうしておけば、千葉駅の1・2番線がATOSから見えないままであっても、特段の問題は起きないはずです。ATOSの上では、西千葉の2番線を出た電車は一度消え、よくわからないがなぜか西千葉の1番線にいきなり入ってくる、といった具合なのかもしれません。
これが、指令によって臨時にダイヤが変更された際には備考情報の付与が行なわれず(あるいは間に合わず)、ATOSが持っている生のデータに基づいた自動旅客案内が行なわれた、とみることができるのではないでしょうか。
また、上り電車については、「当駅始発」や「折り返し」の案内になってしまうのを打ち消すような設定を上乗せしてあるものとみられます。こちらは、ダイヤの情報への備考の付与ではなく、駅装置側での設定によるものとみられ、このため、私が見た[542]の状況下でも、1番線の上り電車の案内は正常で、自動アナウンスで「当駅始発」といったりはしなかったわけです。
※もっとも、列番に対する情報が1つのまま、2番線と1番線の両方で案内を実現するためには、もう少し仕掛けが必要で、例えば、1つの情報を西千葉の駅装置で(自動的に)コピーして2つにし、2番線と1番線のそれぞれで、発車のタイミングによる繰上げを行なっている、とか、そもそも同じ情報が2つずつ送られる、いったことかな、と思います。
2番線のアナウンスがどうなっていたかは確かめようがありませんが、上述のような「折り返し」や「当駅始発」を打ち消すような設定は2番線に対しても利いている(そうでないと、通常時に2番線で「折り返し千葉行き」の案内になってしまう)と考えられ、結果として、「(折り返しでも当駅始発でもない)中野行き」と案内されたのだろうと推測できます。
※繰り返しになりますが、1999年の当時はわかりませんですとも。そして、いまでも実際のところはよくわかりません。あくまで推測です。
西千葉と同様の例はほかにありませんが(府中本町での武蔵野線の電車の折り返しが似ていますが)、稲毛の4番線なども気になるところではあります。一方、東神奈川の2・3番線([2927],[2928])は、西千葉のちょうど逆の状況といえるかと思います。
長年の疑問が解けようというのは個人的なヨロコビに過ぎず恐縮ですが、実はこの話がATACSやCBTCと関連していることに、いまさらながら気づいたわけです。
上述のように、ATOSがもともと逆線走行にも対応するように設計されているとみられることから、今後のATACSやCBTCの導入にあたっても、特段、大きな改修を必要としないだろうということになります。今回のサイトの更新で、一部、大きな改修が必要になるとみられると記述した箇所がありますが、これを訂正いたします。
※「大きな改修」と記述していた時点では、ATOSの設計が根本からひっくり返るかのような印象を持っていましたが、決してそんなことはないとみられます。
現在の設備での逆線走行では、ATSも切った状態での運転となるため、ATSの地上子からの列番情報の取得も行なえないはずです。逆線走行がたいへんなのは、軌道回路やATSのレイヤーでの話で、ここがそっくりATACSなりCBTCなりに置き換われば、ATOSより上はそのままで、やっと、ATOSが本領を発揮できるようになる、ともいえます。まだまだ先の長い話ですね。
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