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「自由研究で『鉄道』」は敷居が…([3094])、とはいっても、何かできそうか、考えてみましょう。
・朝日新聞「ドクターイエロー8つのひみつ」(掲載日不明)
http://www.asahi.com/special/train/dr-yellow/?iref=natsuyasumi
> やあ、こんにちは。私はドクターイエロー博士だ。記者が調べた新幹線の情報をまとめている。ドクターイエローを研究するなら私の話が役にたつだろう。きみはドクターイエローが好きなのかい?
※ハーイ、ポールぅ…いえ、はかせはかせー! 「ドクターイエローに詳しい」のはわかったんですが、ふだんは何の研究をしてるんですかぁ? …いえいえ、「ドクターイエロー博士」を採用するにあたっても、直近5年の主要な論文を3部ずつ提出…なんて、いわれる時代がくるかもしれません。
・朝日新聞「震災を風化させぬように データを集め、被災地の“今”を表現 朝日新聞東京本社デジタル編集部 奥山晶二郎 記者」(2014年3月28日)
http://www.asahi.com/miraimedia/dj/interview/01/02.html
・情報処理学会「今月採録論文」
https://www.ipsj.or.jp/journal/info/sairoku.html
> 2015年7月3日更新
> 那須野 薫、奥山 晶二郎、中西 鏡子、松尾 豊:Twitterにおける候補者の選挙地盤に着目した国政選挙の当選者予測
せっかく「研究」しているんですから、もっとコンテンツに反映できるんではないでしょうか。「キレイでにゅるにゅるのFlashをつくりました!(それだけ)」というわけでもないでしょうに(仮に直接の担当はそれだけでも、共同研究の中でいろいろと見聞きしたものがありましょう)、もったいなくあります。
・(参考)「有名講師オンライン予備校『受験サプリ』・東大松尾研究室・経営共創基盤 共同プロジェクト」(2014年11月4日)
http://www.recruit-mp.co.jp/news/pdf/20141104_01.pdf
ところでキミは「研究のキホン」を知っているかな? 研究になくてはならないのは「仮説」じゃ。つまり、予想をたてて、それがあっているか、まちがっているか、たしかめるというわけじゃな。なあに、心配はいらん、かんたんなことじゃよ。
・仮説A ドクターイエローの仕事は「検査」だから、ゆっくり走って「丁寧に検査」するはずだ!
・仮説B 車体が黄色なら「夜間」でも目立つはずだ!
・仮説C ドクターイエローに窓が少ないのは秘密を守るため!
仮説Aをみてみよう。
この仮説があっているなら、「丁寧に検査」するためにはゆっくり走らなければいけない、といえる。速く走ったら「丁寧に検査」できない、ということじゃな。
この仮説がまちがっているなら、「丁寧に検査」するためにゆっくり走らなければいけないということはない、といえる。「丁寧に検査」することと、走る速さとは関係ない、ということじゃな。
(えー、なにそれー、と呼ぶ者あり。)
うむ。「丁寧に検査」できないと、こまるね。速く走ればいいのか、ゆっくり走ればいいのか、どっちなんだろう? キミはどっちだと思うかな?
(ゆっくりー! ゆっくりー! と呼ぶ者あり。)
それはどうしてかな?
(きょねん新幹線でおばあちゃんちに行ったのですが、「まどのそとのシャソウ」が速くてみられませんでした。だから速く走ったらよくみえないと思います、と呼ぶ者あり。[3048])
たしかにそうだね。
おっと、なになに? おお、みんなよろこべ! 「ヒントが書かれた紙」が出てきたぞ!!
(ワー! ワー! はかせのくせにー、ひきょーだぞー、と呼ぶ者あり。)
ドクターイエローは、「ふつうの新幹線」とおなじかたちをしているね。このかたちは「流線形」といって、速く走るためのかたちとして知られている。「カモノハシ」という鳥のくちばしのかたちをまねして造ったという話を聞いたことがキミもあるじゃろう。
(あっ、それそれそれ、速い! 速い! 速いの! それそれそれそれ、速いほう、やっぱ速いほう! と呼ぶ者あり。[3086])
(中略)
ドクターイエロー博士とは違って「JR東海」の人に話を聞くことはできなかったのじゃが、「検査」をするのは、どうもドクターイエローだけではないようじゃな。
ここまでかんがえたことをまとめてみよう。
・速く走ったら「丁寧に検査」できないかもしれない
・ドクターイエローは速く走るためのかたちをしているので、速く走れそうだ
・ドクターイエローのほかにも「検査」をするものがあるかもしれない
(わかったー! わかったー! えー、わかんなーい! と呼ぶ者あり。)
キミはわかったかな?
(しかじかでカクカクだと思います、と呼ぶ者あり。)
…大幅に端折りますが、以下のようなことを、子ども自身の実体験(※)とも絡めながら、順を追って理解するよう、うながしていくような指導が期待されます。
・検査のしかたには、機械と人の2種類がある。
・旅客列車は高速走行するので検査も同じ速度で(も)行なわなければならない
・ドクターイエローによる検査だけでなく、深夜に徒歩や作業車で「ゆっくり」の検査もある
・「ゆっくり」の検査も、高速走行での検査も、どちらも重要で、役割が違う
・両方ともしっかりやることが「丁寧な検査」である
・ドクターイエローによる検査でも、機械によるものと人によるものの両方がある。
・機械による検査結果は、必ず人が確認しなければならないが、人だけでは見落とすことを機械が見つけてくれることもある
・最近は、「ゆっくり」の検査にも機械が導入され、コンクリートの探傷検査などで活躍している
・検査や点検には、いつも同じように(始業前や運転前など)するものと、抜き打ちでするものと、2種類ある
・ドクターイエローは抜き打ち検査である
・いつも同じ時間帯に検査していては、気温の変化など時間帯による影響(気温が上がった午後に架線がたるむなど)を見落とす恐れがあるのでドクターイエローが走る時間帯がいろいろ変えてある
※実体験ベースとはいえ、新幹線に乗ったことがあるか、飛行機に乗ったことがあるか、特急列車に…といったことは、ご家庭のプライベートであって、「おばあちゃんち」がどこにあるのかというのも、なかなか機微に触れる情報で難しく…だからこそ修学旅行があるんですね、わかります。
料理に例えて、ミキサーでぐわーん、と、包丁でとんとんとん、食材によって使い分けないと、おいしくできないよね、などといえばいいんではないでしょうか。低学年では難しいかもしれませんが、3年生なら十分、理解できそうです。
※といっても、近年「スムージー」などと称してズボラ…いえ、なんでもかんでもミキサーしてしまうご家庭もあって、例えが難しいかもしれません。(「スムージー」なご家庭を「いけない」とまではいえません。しかし、子どものようすをよく気にかけて、保護者が何かにとりつかれている観があれば、適切な対応が期待されます。子どもには、よくかんで食べる食事が必要です。)
高学年であれば、短距離走と持久走に例えるのもありましょう。走るといってもいろいろあって、どっちがすごい、ということでもない、ということが実感されましょう。
そして、大きな声でいうのはハバカラレますけれども、見学会に行っても(黒板に向かって30分くらいしゃべるでなく、展示物の横に立って「質問されたら答える」形式では特に)、ましてや現場の人が直々に説明するのでは、きちんと系統だてた説明は難しいでしょう。いきおい、「この装置どうだ大きいだろスゴイだろ(きょうは特別に触らせてあげようヨロコベ)」とか「毎日がんばってます(がんばりがすべてです、もし将来入社したらガンバレ)」的なことしか、いざとなるといえないものです。それぞれのことは個別にはわかってはいても、系統的な説明はできない、ということです。そこは教員や、教材をつくる人の専門性あってこその部分です。学研の人にも、がんばってもらいたく思います。
※かといって「約8分のビデオにまとめてございます」といって上映(「前振り」と「質疑応答」コミコミで15分、入れ替えに5分で毎時3回!)されても、わかっている人向けのおさらいにしかならず、初めてですと要点がなかなかつかめず、話の流れが見えません。それが「わからない」ということの正体でありましょう。朝日新聞のコンテンツでも、あくまでJR東海が大人向けに用意している広報資料そのまま(いえ、資料は見たことがなく想像ですが、一般に、の意)という感じで、「あれはこうです」「それはそうです」と単発にしか言っておらず、全体の流れが云々、というのは、やはり教員や記者に委ねられているといえましょう。
・なぜ「赤と白のストライプ」(黄色よりおめでたそう)でなくて「真ッ黄色!」([2467])なのか?(国際規格はあるのか?)
・踏切のバーの色や交通標識、「左側通行」など
調べていくと、実に多彩な「オトナの事情(グローバル版)」が出てきて、まとめにくいかもしれませんが、いえいえ、そうしたことを知るのも「自由研究」でしょう。
さて、いろいろな仮説をたてて、たしかめていくと、わからないことがあたらしくどんどん出てくるじゃろう。
・疑問A 普通の列車に「検査の人」が乗って「検査」できないの?
・疑問B 「夜間」にもドクターイエローが走っているの?
・疑問C 列車の窓は何のためにあるの?
新聞記事データベースや検索サイトをつかって、しらべてみよう。
(クリック! クリック! 超ウルトラスーパークリック! と呼ぶ者あり。[2945],[3018])
ひとつずつしらべていくと、どうして仮説があっているのか、どうして仮説がまちがっているのか、その理由がわかってくるじゃろう。さいしょにたてた仮説は、まちがっていてもいいのじゃ。仮説があっていることよりも、仮説をたてたことで、わからないことがどんどんでてくることや、それをしらべていくことのほうが、研究では大事なのじゃ。
疑問Cをみてみよう。
…端折ります。
・車両の基準を定めた省令が云々で定員に応じた換気や採光、非常時の脱出が云々、劇場など多くの人が集まる建物でも同じのはず(なのに映画館には窓がないですねぇ)
・新幹線の(客車の)窓は一度は大きくなったが、再び小さくなった
・ドクターイエローに採光が必要か?
・鉄道車両の製造方法(工法)をしらべてみよう
・窓は、鉄板に穴を開けてつくる
・必要がなければ、窓をつくらなければいい
・「わざわざ窓をふさいである」のでなく「もともとつくってないだけ」だとわかる
・ドクターイエローにしかない「変な窓」はある?
・必要さえあらば「えー、こんなところに窓?」という「変なつくりかた」もするんです
「窓が少ない」という見た目だけから「秘密を守るため!」だなんて、うーん、現場の人も、そんなことは考えたことがなかったなぁ、と苦笑いしつつ、「そういうこともあるかもね」などと、一種「話を合わせて」くださるわけです。それを真に受けて「『秘密を守るため』なんだって。『JR東海の人』に聞いたよ!」などといってはだめでしょう。
※日本語コミュニケーションにおいても「C2」が重要だと自覚されます([3061])。これを英語でできる自信のある方、いるんでしょうか。同時通訳ができても、意外とできなかったりしそうです。
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