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Googleの「AIによる概要」で誤った内容が表示される事象について


発行:2015/3/31
更新:2016/2/13

[3023]

「人身事故」を読み解く

急病人 輸送障害 整列乗車 北朝霞 等分 死亡事故 広島 降車 岡山


(約6000字)

 [2911],[2974]、および以前に掲載しましたニュースに関連する話です。

・このサイト「【武蔵野線】 北朝霞でホーム延伸、混雑緩和のため」(2014年4月26日)
 http://atos.neorail.jp/atos3/news/news_140426.html

 なお、このサイトでは死亡事故に言及する際には「死亡事故」と記載し、死傷を区別しない「人身事故」という用語は使用していません。

 以下では死亡事故に言及しますので、強いストレスを受ける恐れのある方は閲覧を中止してください。

・読売新聞「酔客の線路転落、6割が「直行」…JR西分析」(2015年3月31日)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/20150331-OYT1T50113.html?from=ytop_main3

 > 駅のホームから転落する酔客のうち6割は、ベンチから突然立ち上がるなどして、線路に向けて一直線に歩いていることが、JR西日本の調べでわかった。

 > 国土交通省によると、2013年度、ホームの乗客が絡む人身事故は全国で221件起き、10年前から倍増。そのうち酔客は約6割を占めている。

 > 同社の安全研究所(大阪市)が、同社と大阪市営地下鉄で起きた酔客が絡んだ転落・接触事故56件について、ビデオ映像で分析した。

 > その結果、ベンチに座っていたり、柱にもたれたりしていた客が突然真っすぐ線路に向かってホームを歩き出し、落ちる例が33件。ホーム端で立つなどしていた酔客がバランスを崩す例が17件で、ホームの端を歩いていて足を踏み外すケースは6件だった。

 > (図)酔客がホームから転落するパターン
 > 1 突然線路に向かって歩き出し、そのまま転落する 6割
 > 2 線路近くに立って、突然大きくバランスを崩して転落する
 > 3 ホーム端を線路に並行して歩き、ふらついて転落する
 > 対策:線路側を向いていたベンチを線路と直角に変える

・国土交通省「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成25年度)の公表について」(2014年7月)
 http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr8_000019.html

・同「2 運転事故に関する事項」
 http://www.mlit.go.jp/common/001060505.pdf

 > ○人身障害事故の原因別の内訳は、公衆等が無断で線路内に立ち入る等して列車等と接触したもの(線路内立入り等での接触)が189件(45.0%)で対前年度4件(2.1%)減、これによる死亡者数は152人で同7人(4.6%)増でした。「線路内立入り等での接触」については、自殺かそうでないか判別できないまま人身障害事故として国へ報告されているものが比較的多く含んでいると見られます。

 > ○旅客等がプラットホームから転落したことにより列車等と接触したもの(ホームから転落して接触)は52件(12.4%)で対前年度4件(8.3%)増、これによる死亡者数は21人で同5人(31.3%)増でした。

 > ○プラットホーム上で列車等と接触したもの(ホーム上で接触)は169件(40.2%)で対前年度6件(3.4%)減、これによる死亡者数は10人で同2人(25.0%)増でした。

 > ○乗降口の扉に手荷物等を挟んだまま列車が出発して旅客が負傷したものなど鉄道係員の取扱い等によるものは11件でした。

 読売新聞の記事にある「221件」は、上記の52件と169件を足し算した数字ですね。1件で複数の人が死傷したケースもありえます。件数だけでなく死傷者の人数にも着目しましょう。

 そして、いわゆる「人身事故」について見るには、これ以外の数字も合わせて見る必要があります。

・同「4 輸送障害に関する事項」
 http://www.mlit.go.jp/common/001060507.pdf

 > ○線路内立入り等による輸送障害(部外原因)は、2,044件(38.3%)で対前年度187件(8.4%)減でした。このうち、自殺によるものは、605件で同26件(4.1%)減、動物によるものは465件で同49件(9.5%)減でした。

 以下、人数(人数が示されていないものは件数)が多い順に並べ、(以下で参照するため)仮に分類の記号を付けます。

・F 「線路内立入り等による輸送障害(部外原因)」(「自殺によるもの」および「動物によるもの」を除く):974件
・E 「線路内立入り等による輸送障害(部外原因)」で「自殺によるもの」:605件

・A1 「ホーム上で接触」により「負傷」:160人
・B2 「線路内立入り等での接触」により「死亡」:152人
・B1 「線路内立入り等での接触」により「負傷」:39人
・C1 「ホームから転落して接触」により「負傷」:32人
・C2 「ホームから転落して接触」により「死亡」:21人
・A2 「ホーム上で接触」により「死亡」:10人
・D1 「その他」により「負傷」:12人

※A〜DとE、Fは重複計上されていないと説明されています。

 ニュースや運行情報で「人身事故」といわれたとき、みなさまが想起されるのは、E、およびB1とB2のケースだと思われます。Eが605件もあるというのは重い事実ですが、とはいえEでないもの(A〜D)による死傷者が426人、Eがすなわち人数であるとすれば、41.3%もの人がA〜D(Eでない)によって死傷しているのです。

 なお、Fが974件もあるというのは多いように感じますが、柵や高架によって「立入り」が防がれている都心部でFは少ないのではないかと思います。したがって、都心部を除く全国各地で、路面電車の直前横断や、田園地帯などで、同じ人が1日に何度も、何度、注意されても、「近道だから」といって線路を横断するようなケースが想像されます。それらが「積もり積もれば」([2997])974件にもなるということなのではないかと思いますが、本当でしょうか。とはいえ、同じ人が別の輸送障害を引き起こせば人数も延べ人数として数え上げられていくこととなります。想像が当たっているか確かめられるような統計は、どこにもないでしょう。

 もっとも、上と下の「外れ値」(※)は除いて考えるとしますと、自動的にFとD1は除いて考えることになります。

※あくまで数字として見たときの、統計処理上の機械的な意味合いとしての「外れ値」です。なかったことにするとか、重要でないということでは、決してありませんので、誤解なきよう。

 鉄道会社が「人身事故」とアナウンスしたり表示したりするケースは、件数でいえば1026件(ただしD1の件数を含む)あり、全国で1日に約2.8件となります。東名阪の3大都市圏で3等分と仮定しますと、東京でも名古屋でも大阪でも、ほぼ毎日、どこかで起きているという割合になります。

※事故の直後に正確な内容がわかっているとも限りませんから「人身事故」と総称してアナウンスされるのは必然といえます。

 221件中の約6割とのことで、約133件が酔客が絡む事故となります。酔客が絡む事故が起きる駅は都心部に限られる(郊外の駅では起きない=飲むのは都心=転落・接触を起こすほど酔ったままでは郊外の駅まで移動できない=郊外の駅まで移動でき車内で寝込まず降車できた時点では少しは酔いも覚めている=郊外の駅では起きない)と仮定すると、東名阪の3都心で発生確率が均等であれば各々44件となるところ、大阪だけで56件を占めるということは、東京、名古屋よりも大阪では酔客が絡む事故の発生確率が1.27倍ほど高い(?)といえます。本当でしょうか。

 記事を読み返すと「同社」とあり、今回の分析対象が大阪近郊だけでなくJR西日本の「管内全駅」と読み取れます。大阪だけでなく、京都に神戸、奈良も岡山も広島も含んでの数字であることになります。同様に他の地域についてもJR東海の管内でいえば名古屋と静岡、JR東日本の管内では東京、横浜、埼玉と新潟、仙台、長野などが「飲める都心」でしょうから、ほぼ、東日本と西日本で半々、残りが名古屋、そして博多や小倉など、という比率で分布しているのではないかと想像されます。(あくまで想像です。)

※そして、都心部(東京でいえば山手線の内側)では歴史的にJRと地下鉄しかなく、私鉄の駅まで移動できたなら、その時には酔いもいくらかは覚めているということです。

 「突然線路に向かって歩き出し、そのまま転落する」ような酔客でも、ベンチを見つけて座ることはできるのです。ベンチが持つアフォーダンスの強さが実感できます。アフォーダンスに抗うのは、とてもたいへんなことです。今後、ベンチの向きを変えれば事故を防げるという実験結果や具体的な数字が出てきたならば、全国各地の駅でこぞってベンチの向きが変えられていくことでしょう。

 (全国での)221件における酔客が絡まない事故は約88件で、その比が地域間で変わらないと仮定しますと、JR西日本管内では酔客56件に対し酔客でない事故は37件くらいあるという計算になります。37件の中には、視覚障がい者が誤って接触・転落する事故、急病人が倒れこむ事故、その他の事故があるとみられます。

 また、死傷しない、すなわち事故扱いはされないもののホームから線路に転落したというケースは、かなり多いという調査結果があります。

・第一生命 LifeDesign REPORT「視覚障害者等のホームでの事故を防ぐために」(2012年10月)
 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt1210.pdf

・日本盲人会連合「転落事故に関するアンケート調査結果」(2014年2月)
 http://nichimou.org/wp-content/uploads/2014/02/1105tenrakujikoan.pdf

 視覚障がい者のケース(事故に至らない転落を含む)では、ふとしたことで自分のいる位置や向いている方向がわからなくなることが原因といわれます。位置や方向を確かめるのに、点字ブロックに限らず階段の壁やベンチなどを使っている方もいるかもしれません。ベンチの向きが予告なく変わってしまうと危険ではないかと思います。こちらについても、実験するなどして安全を確かめてからでないと、実際にベンチの向きを変えるということはできないといえます。

 急病人が倒れこむケースについては、[2974]でも述べていますが、そもそも、わざわざホーム端に「整列」させなければよいわけですが、実際には逆の状況があります。ほぼ全駅に、無条件に乗車位置目標のステッカーが完備されているのです。乗車位置目標もまた、強いアフォーダンスを放つもので、ラッシュ時でもないのに、わざわざホーム端に立つことを促してしまいます。

 かすかな記憶をたどりますと、かつては乗車位置目標のステッカーなどなく、折り返しや始発での「整列乗車」を行なう箇所だけで、列を作るべき場所を示す白線の点線が引かれていただけだったように思います。

※総武快速線でいえば、津田沼の2番線で、先発と次発に分けて色違いの点線が引かれていたかと思います。乗車位置のステッカーについては、総武線の駅にはなかった時に京葉線の駅にはあって、「京葉線はすごい」などと素朴に感動したような記憶がございます。

・代官山ステキなまちづくり協議会「セミナー」
 http://daisukikai.org/?activity=%E5%90%84%E7%A8%AE%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC-2

・個人のブログ(2012年3月10日)
 http://kyounogakusyuu.wordpress.com/2012/03/10/

 > ・河野哲也氏との対談で、アフォーダンスの話があった。
 > ・「開発(Develop)」の逆のことば/概念が無い。市街地→田畑を表す概念が無い。ドイツだけにはある。
 > ・合理的とはなにか?ヒトの目の合理性が合理的であるとか、ヒトから見た善悪の判断だとか、それらは自由意志の獲得に起因するんだけれど、本質的にそれは合理的ではなくし、誤ることが多い。
 > ・つまり、「人間の判断・合理性とは異なる理性はありうる」。したがって、ニーズに応じたまちづくりは不幸になる。ヒトの眼差しを超越したものをいかにして生みだすか?それは、人間を超えた「正しさ」である。
 > ・しかし、その正しささえも、「少数派の抗えない正論」には抗えない。昔は子どもが溺れると「気を付けろ」と言うだけだったが、現在は「柵を造らなかった行政が悪い」となる。この主張は少数派だけれども声が大きく、正論で抗うことができない。この主張にいかに抗うかが鍵である。
 > ・アフォーダンスに似たような話で、「環境管理型権力」がある。ヒトはどのような環境で決定付けられるか?環境管理型権力からは逃れることができない。だから場所の設計は必要で、それは「客の回転率を挙げるために椅子を固く設計する」ようなネガティブな場面でもポジティブな場面でも存在する。

 > こうして文脈なく抜き出すと意味がわからなくなった。ただ、話の全体像は、「人間の合理性を超えたところに本当の合理性は存在するが、それも少数派の抗えない正論には抗えないため、いかにしてその正論に抗うのか」が主題だった。

 どんな設計にも、どんな施策にも、「副作用」はあるものです。いま、乗車位置目標の「副作用」について、本来の目的(整列乗車によって乗降をスムーズにし列車遅延を防ぐ)に対して割に合うレベルなのか再検討することが必要になっているといえます。また、ベンチの向きを変えるとなれば、急に向きが変わることの「副作用」(視覚障がい者にとっても安全か)にも十分な配慮が必要です。


この記事のURL https://neorail.jp/forum/3023/


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