フォーラム - neorail.jp R16

Googleの「AIによる概要」で誤った内容が表示される事象について


発行:2014/10/22
更新:2015/12/11

[2958]

【報告書から読み解く鉄道の未来】

京都駅・新大阪駅での「外国人によるひとり歩き点検隊」報告書を読み解く

順路 KDD 観光庁 ハインリッヒ ピクトグラム プラザ 英語アナウンス 京都駅 調査票


(約5000字)

 先だって、以下のような実地調査も行なわれていました。

・国土交通省 総合政策局「外国人による「ひとり歩き点検隊」について −成田空港及びその周辺 編−」(2006/3/16)
 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010316_2_.html

・観光庁「東京国立博物館における「外国人によるひとり歩き点検隊」実施結果を公表します」(2009/9/15)
 http://www.mlit.go.jp/kankocho/news04_000010.html

・国土交通省 関東運輸局
 http://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/kikaku_sinkou/chikosin/gutaika02/pdf/gut02-01.pdf

 > 大規模ターミナル等(成田空港、羽田空港、秋葉原駅、横浜駅)の交通結節点において、外国人による「ひとり歩き点検隊」を実施し、意見収集

 とのことで、秋葉原での調査のようすはニュースサイトでも報じられていました。

・アキバ経済新聞「外国人らが、秋葉原駅で「ひとり歩き点検隊」−利便性をチェック」(2008/2/27)
 http://akiba.keizai.biz/headline/855/

 報告書が見つけられませんので、記事にある以上の詳細は不明です。

・国土交通省 近畿運輸局「ひとり歩き点検隊実施報告書」(2009/9/11)
 http://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/koutsu/kankou/template_hitoriaruki_00.html

 近畿運輸局で行なわれた調査に関しては、報告書が一元的に閲覧できるようになっていました。

・国土交通省 近畿運輸局「大規模交通結節点における外国人観光旅客に対する情報提供手法開発調査 新大阪駅 外国人によるひとり歩き点検隊 報告書」
 http://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/koutsu/kankou/hitoriatuki20sinoosaka.pdf

 > 近畿運輸局管内では、これまでに、関西国際空港及びその周辺(平成18年6月)、京都駅及びその周辺(平成20年2月)で「ひとり歩き点検」調査が行われている。

 > 大阪市交通局は、平成19年12月20日より、大阪市営地下鉄 新大阪駅にサービスマネージャー(巡回型案内専門職員)を配置している。その案内件数をみると、配置後の4ヶ月間で3,744件(全件数の8.2%)の外国語による案内があり(図表5)、1日平均では約37件となっている。

 > 乗車人員:65,622 降車人員:66,954

 仮に、乗車あるいは降車のどちらかだけで何か戸惑うことが起きるのだとして、約65,000人のうち実際にサービスマネージャーに質問する人は380人(約0.6%)ということになります。その中の37人が外国語での質問だったという話です。ほぼ、ハインリッヒの法則に従っているとみられます。

・「ハインリッヒの法則」
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%92%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

 仮に、すべての利用客が何かしらの不便な状況に遭遇するとした場合、実際に質問した人1人に対し、困ったが質問しなかった人が29人、困ったと感じなかったり、我慢したりして、結果として質問しなかった人が300人いる、ということになります。つまり、困ったが質問しなかった人が1日平均で11,000人はいて、困る困らないの差に言語の違いが影響しないとすると(非現実的な前提ではありますが)そのうち1,000人は困ったが質問しなかった外国語の旅客だった、という計算になります。実際には、外国語の旅客のほうが、より困るとみられますので、もっと多くなるのではないでしょうか。仮に、7時から22時までの15時間のうちに11,000人の全員に声をかけるとすれば、毎分12人ずつに声をかける必要があることになります。サービスマネージャーは何人いれば間に合うでしょうか?

 …という、入試やら採用試験やらで出題されそうな問題は、各々で解いていただきたく、そして解くまでもなく、かなりの潜在的な「お困り」に対応しきれていない恐れがあることがわかります。そして、そもそも、サービスマネージャーだけですべてに対応しきれる問題ではなく、「困ったが自己解決できて、質問する必要はなかった」という環境をいかに作ることができるか、という、サインシステムや自動アナウンスの重要性が、改めて実感できる数字だと思います。

※…というのは、関係者や専門家にとってはあたりまえすぎる前提だと思います。報告書でも、わざわざ書かれてはいません。読む側としては頭に入れておきたい、という意味で上述しました。

 > 言語別にみた際の外国人旅客の行動に、際立った傾向(交通機関や駅の施設設備の利用に偏りがある、職員に対する質問内容に特徴がある 等)はみられなかった
 > ヒアリング結果は、職員の個人的印象であるため、本報告書への掲示は割愛する。

 妥当な取り扱いだとは思いますが、実は特徴があるのに現場で把握できていなかったりということがないかな、という不安も、ちょっと残ります。大丈夫でしょうか。

 > 調査ルートは、「新大阪駅で公共交通機関を乗り換えて(あるいは、きっぷを購入して)、目的地(空港、大阪市内の観光地・繁華街、他地域)に行く」という設定で、調査対象箇所を網羅できる6ルートを作成し、外国人旅客がひとり歩きできる環境となっているかについて、実感を持った評価、意見を聞く(図表10、11)。また、時間を無駄なく使うため「一筆書き」の動線で調査を行うように努める。
 > なお、調査員には事前にルートを提示せず、同様に、人的案内業務を行っている職員には事前に質問項目を提示せずに実査を行う。

・国土交通省 近畿運輸局「京都駅における外国人によるひとり歩き点検隊 調査報告書」
 http://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/koutsu/kankou/19hitoriarukikyoutoeki.pdf

 > 調査はより現実に即した具体的な意見の吸い上げと、実査の効率化を図るため、調査対象施設を最大限網羅し、かつ仮想的な目的を与えられるような複数のコースを設定し、その順路に基づいて実査(点検)を行った。
 > なお、調査員にはこのコースについての地図などは一切事前に提供せず、「目標施設を探しながら歩く」という現実感を失わないよう配慮した。

 よい調査方法だと思います。京都駅での調査ではさすがに時間がかかりすぎた(=拘束時間に応じて支払う謝金が高くなる⇔総額が先に決まっているので、例えばグループインタビューの時間を削らなくてはいけなくなる)ので、新大阪駅での調査では「一筆書き」に変えたということですね。対応する係員の側にとって「抜き打ち感」が出るようにというのも、京都駅での調査を踏まえた改善なのかなと思います。調査に継続性があり、調査を重ねるたびにきちんと(調査方法そのものの)改善が積み重なっていくのは重要なことです。

 京都駅の調査で「有識者」とされている2名の調査員については、新大阪駅の調査で「YOKOSO! JAPAN 大使」と明記されており、透明性が高まっています。また、調査のようすが写真でも掲載されており、「YOKOSO! JAPAN」のロゴが印刷されたお揃いのパーカーを着た調査員たちが、思い思いに調査票に記入しているようすがわかります。とても楽しそうです。

 > 「乗り場(Tracks)」
 > 新幹線の行先、ホームを示す電光掲示板の右側部分(「16両編成」「当駅始発」部分)は、英語表記されていない。 (英)
 > 「列車がきます」も英語で表記があればよい。(英)
 > きっぷ売り場の標識には英文字で「Shinkansen」と表記されていなかった。(英)
 > 「きっぷうりば」とだけ書いてあるのでJR線、地下鉄のどちらなのかわからない。(簡)
 > 自動扉の内外の券売機に、どんな違いがあるのかわからない。(簡)
 > カウンターでも券売機でも同じきっぷが買えることを表示してほしい。(繁)

 現場としては、わからなければ有人の窓口に来るだろう、と構えているんだと思いますが、自動扉(自動ドア)の向こうでよく見えず、しかもちょっと薄暗くなっているところ(「びゅうプラザ」)に入るのは、かなり勇気がいると思います。

 > 何箇所かあるきっぷ売り場に外国語の説明が無いので、例えば、東京方面、九州方面のきっぷを買うにはどの列に並べばよいのか、券売機でも購入できるのかなどがわからず、うろうろして時間が過ぎてしまう。案内標識や案内人がほしい。 (韓)(簡)(繁)

 少し日本語のできる調査員3名が断片的に語って相づちを打ったりした内容をまとめてあるのだと思います。想像ですが、以下のような一連の会話があったのだろうと思われます。

1:「きっぷ売り場に外国語がないんですよねぇ」
2:「そうそう、何箇所もあるのに(社局の違いがわかりにくい)」
3:「(新幹線では)〔のぞみ〕と〔みずほ〕で窓口が別なんだと思っていましたよ」
2:「それ、あるある〜」
3:「券売機でも買えるんでしたっけ?」
1:「わからないとうろうろしてしまいますよねぇ」
2:「ですよねぇ。それで時間ばかり経つという」
3:「案内の人がいるといいですね」

※そして、2番目の人は実質、何も言っていないという…ありがちな話です。

 > たとえば、JR(在来線)を表現するピクトグラムは主に3種類存在しており、前知識が全くなければ、これらが別々の鉄道と誤認してもいたしかたあるまい。

 > 韓国語・中国語グループの調査員からは、スペース上、多言語の表記が難しいと理解しつつも、英語の理解できない外国人旅客に対して、可能な限り分かりやすくしてほしいという希望が出され、ピクトグラムを多用する、番号や色で誘導する等の提案が有識者、調査員からあった。

 JR東海のポリシーはしっかりしています。ここに、言語だけによらない案内を採り入れていくことは、他の言語圏からの旅客に対して応えることになると同時に、日本語や英語ができても戸惑う部分への手当てとしても有効といえます。

 つまるところ、レゴブロックの組み立て図ですね。数字と絵、矢印しかありません。そして世界共通です。

・レゴブロックの組み立て図の例
 http://lego.brickinstructions.com/en/lego_instructions/set/1255/Car_Wash

・日本航空「機内でのお願い」
 http://www.jal.com/ja/flight/safety/flight/

 旅客機での安全に関する設備のご案内(いわゆる「機内安全ビデオ」や「安全のしおり」)も参考になるかと思います。絵、写真、ビデオで、「見ればわかる」という情報にしていく(文字、言語に頼りすぎない)というのは、そういうことであります。

※ノウハウを持っているところは持っているのですから、レゴ社や航空会社の人に見てもらうほうが話が早いのではないかと思います。それでも足りないところを実地調査で補うというのなら、わかりますが、最初から闇雲に調査しても、足が棒になるだけのような気もします。

 この調査でも限界はあるだろうというのは、しかたのない話ですが、宝塚線で英語アナウンスが割としっかりしている([2942])のは、国土交通省の後押しによるものなのでしょうか。ぜひ、これまでの知見が東日本でも活かされるとよいですね。各社が毎度、ゼロから検討していては、ムダが多すぎます。知見をうまく融通しあう仕組みが重要になります。

※それを「研究」ともいいますけれども。調査だけ行なって、報告書を出して終わりという、知見を一般化したところの「研究成果」にまでは至っていないところが、残念といえば残念なところです。

 なお、この実地調査は狭い意味での鉄道の利用に留まらない話になっています。

 > 電話上部に「国際電話はカードで」と表記されているのに、そこではカードが売られていない。
 > 100円マークと併せて「100円硬貨を使用するとお釣りが出ない(日本語)」という表示は、「100円硬貨しか使えない」と勘違いする外国人がいる可能性がある。

 NTTとKDD(現KDDI)という「境界」で起きる曖昧さの一例ですね。この話、監督官庁の枠を超えてNTTに持ち込むことは、はたしてあるのでしょうか。こういう点をとっても、やはり限界はあるものだと実感します。最終的には誰も責任を持ちきれない、ちょっと大きすぎる話なのではないかとも思います。2020年までに(昔は2010年までに云々、といっていましたが)、どこまで進むでしょうか。


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