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駅での多言語の案内に関して新しいニュースが出ました。
・日本経済新聞「駅内放送、文字入力で多言語に JR東が自動翻訳システム」(2016年3月8日)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08H1F_Y6A300C1MM0000/
> パソコンで日本語の文章を入力すると、自動的に複数の外国語に翻訳して駅で放送するシステムを開発する。
『制約付き自動翻訳』([3021])にしてください、お願いですから(比ゆ的に)「(既存の自動翻訳ソリューションの類を)買ってきて取りつけ」のレベルでは導入しないでください、といいたくなりました。
目の前のスマートフォンやタブレット端末であれば、機械翻訳であることが一目瞭然であるので、おかしな翻訳が出力されても苦情は出ない(そんなものだというあきらめが了解されている)と思われるところ、館内アナウンス(いわゆる「放送」)で流す音声メッセージとしては、極めて高い品質が期待されます。
※期待される品質を満たしていないメッセージが流されても、受け取ってもらえない(認知上、一種の雑音として無視される?)おそれがあると懸念されますから、十分に実験なさってください、ぜひ。内房線や東京メトロでも、アレ(合成音声のソレ)をきちんと聞き取ろうというのはたいへんなことで、多くの人がもはや聞き取ることはあきらめて、「なにか鳴ってる→電車くるんだ→乗ろ。」くらいの省力化した認知で済ませているのではないかなぁ、と想像します。これも実験や調査がされたいですね。
▼自動翻訳の質、▼合成音声の質ともに、2020年までに良好なものが実現されるとは信じられません。
※合成音声の品質評価については[3034]も参照。
・[3021]
> 指さしマップの「アプリ」版がほしいところです。制約付き自動翻訳といいますか、テンプレートといいますか、メニューからシーンを選び、主語や目的語を選択していくと、「浅草へ行くには東京メトロの改札口を入ってください」くらいの文章がきちんと出てくる、できれば音声でも聴けるとできれば、現状でベストを尽くした「おもてなし」であると、自信を持って言うことができるのではないでしょうか。
> 同じだけの手厚さを究極には「管内全駅」(1700!)で求めることが期待できるのか(略)いかにして全駅に共通して手厚い案内の態勢を敷くことができるかが重要です。
「制約付き自動翻訳(仮)」と、それに対応する「(自動)合成でないアナウンス」(ナレーターによる事前吹込みまたは、各言語の音声合成のソフトウェアを、各言語の専門家が操作して『音片』を作成のどちらか)、ということであれば、「管内全駅」(1700!)への普及も見据えてのソレとして大歓迎です。
フリーテキストを入力させようという発想は、「緊急時」には何が起きるかわからないから、という素朴な理屈から出てきたのだろうと決めつけますが、いえいえ、何が起きるかは無限にバリエーションがあるように思えても、(「御社」が責任を持つ範囲ということで見れば)鉄道営業法や消防法に準じて必要となるアナウンスの文面は、ちゃんと有限です。(だからこそ、一般の建物用の非常放送装置が市販できるのです。)
・「ただちに避難してください」
・「その場で身の安全を確保してください」
・「係員の誘導に従ってください」
・「警察官の指示に従ってください」
・「手荷物検査を行ないます」
・「ゴジラが歩き回っています」
・「ゴジラを刺激しないでください」
・「ゴジラの落とし物に触らないでください」
・「ただいま運転を中止しています」
・「運転再開をお待ちください」
・「他社線を利用してください」
・「本日の運転はありません」
・「駅を閉鎖しますので、すみやかに退場してください」
・【責任の所在に関するもの】:「当社の判断により」「監督官庁の指示により」「地元自治体の要請により」
※仮に「ゴジラ」としましたが、このあたり、何が起きようとも翻訳してアナウンスできなければならないと考えるか、そういうときはNHKを流せばいいんだとして、駅としては、所定の誘導だけを(多言語で)行なえばいいんだと切り分けるか、という話でゴザイマス。
「自動翻訳ソリューション!」を売り込む側としては、いかに精度が高いかといってアピール、あるいは御社のためだけに専用の辞書をつくって保守しますよ、とおっしゃるでしょうが、これを真に受けてはなりません。自動翻訳のソフトウェアは、まだまだ、出力がまともであるか判断できるくらいには語学のできる人が使うものだという暗黙の前提がございましょう。現場の駅員(1700! 東京圏だけでなく東日本ぜんぶ!)が使えるものでは決してないといいきります。
…なにもないよりましだとおっしゃいますか、そうですか。(あくまで想像です。)
・「たいへん足元が滑りやすくなっておりますので、気をつけてお帰りください」→「滑りやすい坂道金持ちは帰れ、大変なことになるぞ」(あくまで架空の誤訳です。…おお、これはこわいキョーハクですね、わかります。[3174])
・「ジパング倶楽部特別なカシオペアスイートでいく」→「大急ぎで高所得退職者のための甘い寝台車は星になる」(無理矢理ですが想像です。…星になっちゃいました☆[2959])
・「携帯電話はマナーモードに切り替え通話はご遠慮ください」→「マナーそして遠慮のない交換電話細胞の拡声モード」(謎ですが想像です。…細胞の声を聴けっ!! 割烹着も真っ青の誤訳ですね、わかります![3081])
原文(日本語)の意図に反した翻訳とならないよう、または不適切な表現に翻訳されてしまわないようにという配慮を、プログラムと辞書だけで何とかしようというのは難しいのではないでしょうか。
固有名詞を辞書に登録すれば、確かに精度があがりましょうが、かえってトンチンカンになることもあるのではないかと不安視しなければならないと思います。
入力する日本語の文章がアレで、何をいいたいのか、命令なのか依頼なのか注意なのか、肝心なところが翻訳されず、名詞や形容詞だけの羅列になって(翻訳後に)意味をなさない文字列が出力されるということは、まだまだ、結構あるのではないかと疑います。
・清く正しい…かどうかよくわからない「細胞の声が聴こえる」
http://develop.zool.kyoto-u.ac.jp/gakushikai.html
http://www.goodkyoto.com/p005_detail.html?search=%E7%AC%AC%EF%BC%91%E5%9B%9E%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%A2AGORA+2015%EF%BC%8F%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AE%E5%A3%B0%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%8F%EF%BD%9E%E6%AC%A1%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F
> 自律神経はすべてNeural Crestからできているのです。
※うーん。包含関係がよくわかりません。
> 「***, do what other people don’t do!」
※これを面と向かって言われる(すなわち、できていないといってハッパされている)というのは研究者としては致命的ではないかなぁ、といって恐れてみます。…これはこわい「フランス語話者の英語!」ですね。
・ウィキペディア「神経堤」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%A0%A4
> 迷走
> 遊走
※いやー、細胞の声としては「迷ってなんかないやい」「あそんでるんじゃないやい」といっていたり、するのでしょうか。
・「あそんでるんじゃないやい」(1,296円)
http://www.cospa.com/detail/id/00000059254
・「みんなで間違えよう」(2012年7月27日)
http://portal.nifty.com/kiji/120726156614_4.htm
http://portal.nifty.com/2012/07/27/a/img/pc/051.jpg
現在も、出口サインは上掲の写真の通りですが、このサインより高い位置の壁面のポスター掲出枠に、白っぽいワープロ拡大コピーのソレ(たいへん目立たない、の意)で、英語や中国語で、同じこと(地下鉄の浅草駅へ行け、の意)が書かれているように(電車の窓から)見えました。現状では、「ここに雷門って書いてあるよ☆(このくらいの漢字は読めるよ☆)こっち(East Exit→)でいいんだね」と(誤って)了解されそうであります。サインシステムの改訂によって、出口サインに直接、英語と中国語で「徒歩では遠いから都営浅草線に乗りたまへよ」と(理由と指示を述べる文で)書いてほしいなぁ、と思われるかもしれません。
※「ホームドアから離れてください」([2942],[3148])も参照。「佐貫町(マザー牧場最寄駅)」([3181])も参照。
・(再掲)[3021]
> 東京駅
> 「浅草へ行くには東京メトロの改札口を入ってください」くらいの文章
なるほど、JRでたずねれば浅草橋駅で都営浅草線に乗り換えるように案内されるんでしょうか。知名度からいって、「東京駅から地下鉄丸ノ内線の新宿行きに乗り銀座駅で地下鉄銀座線の浅草行きに乗り換えてください」と案内するほうが通りがよさそうだと思われました。そういう細かい面も織り込みながら『制約付き自動翻訳』(のようなもの:実質、有限個の定型文から選ぶだけのもの=一種「ホワイトリスト方式」のソレ)を完成させていってほしいなぁ、と「せつ望」いたします。(恐縮です。)
もっとも、「無料Wi-Fi!」が普及すれば、母語のQ&Aサイトにアクセスして「いますぐ教えてくださいっ!」するほうが速くて正確なんだということにもなるのかもしれませんね。
※「困ったが自己解決できて、質問する必要はなかった」という環境([2958])についても参照。
※多言語への対応を動機としつつも、日本語の案内も洗練されることに期待したく思います草々。
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