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[2959]に続いて、英語(ほかの外国語も含む)の話です。いわゆる「おもてなし」に向けて、駅版「指さし会話」の各国語版を整備していく話が出てきました。
・日本経済新聞「指さし地図で東京駅を案内、JR東日本など」(2015年3月11日)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO84205440Q5A310C1L83000/
> JR東日本グループなどでつくる「東京ステーションシティ運営協議会」は14日、外国人客向けに「東京駅指さし会話マップ」を使った案内を始める。道案内する際によく使うフレーズや、駅構内の場所を多言語で表記している。
> 英語、韓国語、中国語の3種類のマップ(A3判で二つ折り)を用意。東京駅の訪日旅行センターなどで配布するほか、ホームページからもダウンロードできる。
> 「this way(こちらです)」、「Local Train(在来線)」などのフレーズが書かれ、駅員や店舗スタッフが指でさしながら案内する。
・東京ステーションシティ「東京ステーションシティにおける訪日旅行者を対象とした「東京駅指さし会話マップ」の発行について」(2015年2月17日)
http://www.tokyostationcity.com/pdf/20150218_press.pdf
> 2015年3月14日(土)以降、東京ステーションシティ ホームページ英語サイト内において3か国語の同マップをダウンロードいただけます。
・同「TOKYO POINT AND SPEAK MAP」
http://www.tokyostationcity.com/en/access/
とっさのときは、やはり紙(紙メディア)が便利で安心ということですね。([2770],[2784],[2864]も参照。)
数字の読み方も載っていますが、「2000(nisen)円からお預かり」しまして「377(sanbyaku-nanajyu-nana)円のお返し」となると、お手上げな感があります。「お釣りです」「領収書です」「足りません」「多すぎます」などといった、より基礎的な語については指さしマップの対象外(それ以前)ということでしょうか。必要があれば、通常の旅行用の指さし会話の本を併用すべしということなのでしょう。ならば東京ステーションシティに特化した内容になっているかといえばそうでもなく、「JR」「東京メトロ」「都営地下鉄」「スカイツリー行きのバス」や「鳩サブレ」「白い恋人」といった固有名詞は載っていません。他方で「成田エクスプレス」「ジャパンレールパス」は載っているという、いみじくもJR(JRグループ)な色の濃い(「ろくでもない」[2968])状態になっているように感じます。
また、東京ステーションシティの責任の分界点を越えるものではなく、改札を入った後のことは一切サポートしないマップとなっています。一番よく聞かれるのは「この電車は○○(駅名)に行きますか?/止まりますか?」というものだと想像しますが、東京駅のJRのきっぷ売り場で「浅草」などを探してしまう、あるいは、わからないまま改札を入ってしまい、JRの駅構内で浅草行きの乗り場を探してしまうというエラーに対しては、誰も助けてくれない(指さしマップにないので指させない)という状況がありえます。
※「東京メトロの改札口に入り直してください。JRの改札口を出るには、間違えて入場した旨を改札口の係員に申し出てください。」を指さしたいですよね。ちょっとしたことでも、すぐに複文が必要となってきます。なんでもかんでも「This is a pen.」並みの単文で事足りるなどとは、夢にも思ってはいけません。
・「複文」
http://ejje.weblio.jp/content/%E8%A4%87%E6%96%87
ならば、と、いわゆる「エキサイト先生」(※)に自動翻訳を頼むと、入力する日本語文の質がかなり高くないと、まともな翻訳結果は得られません。実質、自動翻訳は、辞書を引きながら自力で翻訳できる人が確認のために使うくらいがセキノヤマで、そうでない人が使うと、出てきた翻訳結果がひどいものであるということすらも自分ではわからない、という「編集部の者より鉄道に詳しい方」([3017])と似たような状況となってきます。
※かくしてよくわからない翻訳がレポートに堂々と書かれて提出されるんですね、わかります。
※「Google先生」に「エキサイト先生」の所在をたずねると、きちんと教えてくれます。さすが…なのでしょうか、なんなのでしょうか。種明かしをすれば、「エキサイト先生」というアンカーテキストとともに自動翻訳サービスへのリンクを張っているページが世の中にたくさんあるということですね。
・「関の山」
http://ejje.weblio.jp/content/%E9%96%A2%E3%81%AE%E5%B1%B1
同じことは日本語の側にもいえます。
・NHK「やさしい日本語の試み」(2006年)
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2006_02/060203.pdf
> 「1文を短く」は,具体的には「○○は△△だ」というような文を想定しており,「○○は□□だから△△だ」のような内容は2文に分けるということを考えている。
日本語の話者同士での対応であっても、日本語が難しいためにエラーが起きているということはよくあることでしょう。ただ、リンク先で述べられているように単文を羅列しさえすれば、どんな内容や場合でもわかりやすいかといえば、必ずしもそうとは限りません。
先の例でいえば「JRの改札口を出るには、間違えて入場した旨を改札口の係員に申し出てください。」と簡潔に言うことができているでしょうか。このような場面ではむしろ、「簡潔な複文」を目指すのが一番スマートであるように思います。
実際の応答を録音して起こせば、「浅草? あー、浅草(行き)は東京メトロですね。ここ(JR)じゃないんですよ。一度、(JRの)改札を出て、東京メトロの改札に行ってください。Suica? そのままだと出られませんね、(JRの)改札口で(係員に)言えば『大丈夫』ですよ」などとなることでしょう。そして出てくる「大丈夫」というマジックワードが、指さしマップには単独で載っていることに気づきます。「○○すれば大丈夫」という限定的な保証を示したいときに、いきなり「No problem!」をバーンと指さすわけにはいきません。
・[2770]
> 小さな駅では人員が限られ、その少ない人員をすべて対面での対応に回せるように…ということなのでしょう。ディスプレイでの表示は実現するのに音声は人手に頼るというのはアンバランスです。異常時のアナウンスを機械に任せようという考え方はしないのでしょうか。何か不都合があるのでしょうか。
> デバイスとしては目新しいのですが、発想が貧困です。これではまるで、駅員さんの手書きの貼り紙かホワイトボードを出しておくのと(内容と体裁が)大差ありません。せっかくシステムを組むのですから、どんな情報が必要なのか精査してもらいたいところです。
> 何を可変表示にし、何を印刷物にするべきか…刻々と変わる状況を伝えるにはディスプレイが必要でしょうが、決まりきった乗換方法は紙でも伝えられます。
大きな駅であっても、人員は限られています。人員があてにされればされるほど、相対的に配置が足りなくなってきます。指さし会話も必要ではありますが、真に必要とされているのは、各国語の利用者が各々に自己解決できる情報ツール(紙メディアを含む)の整備でしょう。
・[2958]
> そもそも、サービスマネージャーだけですべてに対応しきれる問題ではなく、「困ったが自己解決できて、質問する必要はなかった」という環境をいかに作ることができるか、という、サインシステムや自動アナウンスの重要性が、改めて実感できる数字だと思います。
東京駅だから特別扱い、といいますか、同じだけの手厚さを究極には「管内全駅」(1700!)で求めることが期待できるのかといえば、それはありえないでしょう。「盛りサイン」([2908])と同じ話で、いかにして全駅に共通して手厚い案内の態勢を敷くことができるかが重要です。
と考えていきますと、指さしマップの「アプリ」版がほしいところです。制約付き自動翻訳といいますか、テンプレートといいますか、メニューからシーンを選び、主語や目的語を選択していくと、「浅草へ行くには東京メトロの改札口を入ってください」くらいの文章がきちんと出てくる、できれば音声でも聴けるとできれば、現状でベストを尽くした「おもてなし」であると、自信を持って言うことができるのではないでしょうか。
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