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発行:2015/12/9
更新:2018/12/20

[3141]

【報告書から読み解く鉄道の未来】

「新たな相模線交通改善プログラム」を読み解く(後編)


相模線の「長期」「超長期」新駅を仮想的に歩く
(仮)海老名運動公園前駅:厚木から1.7km、地平か【海老名市】
(仮)作の口駅:問われる「人にやさしい土木」【相模原市中央区】
(仮)西久保駅:UR団地と高速道路IC至近、駅用地も取得済み【茅ヶ崎市】
(仮)上今泉駅:新たな「徒歩10分」圏で川沿いも市街化?【海老名市】
(仮)磯部駅:魅力が再発見される?「七橋」そして「ねこ坂」【相模原市南区】
表2 相模線の旧停留場(廃止)と「新駅」候補の対応
表3 「長期」で部分複線化を目指すとされる区間
表4 「超長期」での全線複線化まで単線のままとされる区間

(約20000字)

 「地元自治体などでつくる相模線複線化等促進期成同盟会に対し、2010年7月22日にJR東日本が提示した段階的整備内容」につきまして、相模線複線化等促進期成同盟会(以下、「期成同盟会」)が2014年3月に公表した「新たな相模線交通改善プログラム」(以下、「同プログラム」)を、いま、通しできちんと読もうと思います、ということで[3140]の続きです。

 前編([3140])では、地元の期成同盟会がまとめた同プログラムにおける、▼地元の都合と▼鉄道事業者の都合を、なるべく正確に「しゅん別」しながら読み解くことを目指しました。あわせて、小田急・相鉄との関連が深い「海老名駅」について、三井不動産の資料を参照して期待を高めました。

 後編では、同プログラムにおいて地元が実現を目指すとしている「5つの新駅」について、同プログラムの上で複線化の工程(部分複線化と、その後の全線複線化)と整合が取れているかを確かめます。また、Googleのサービスをフル活用して、一種「生々しい青写真(仮)」のようなものを描いてみます。


●相模線の「長期」「超長期」新駅を仮想的に歩く


・ウィキペディア「相模線」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E6%A8%A1%E7%B7%9A

 > 1931年(昭和6年)
 >  4月29日:厚木駅 - 橋本駅間 (18.7km) 延伸開業し全通。上今泉停留場(現在の井戸坂踏切橋本側にあたる)・(略)・作ノ口停留場が開業。

 > 1943年(昭和18年)
 >  4月1日:神中鉄道と相模鉄道の合併により、相模鉄道相模線となる。
 >  10月1日:香川台停留場、中新田停留場、上今泉停留場、上磯部停留場、作ノ口停留場休止。

 とのことで、かつての停留場(1943年に休止、1944年に廃止)を一種「復活」させる意味合いもあるようです。

■表2 相模線の旧停留場(廃止)と「新駅」候補の対応

区間停留場
(〜1943年)
新駅時期概算費用
北茅ケ崎−香川間円蔵・香川台(仮)西久保長期
(2026〜2030年)
80億円
社家−厚木間山王原・新中田(仮)海老名運動公園前長期
(2026〜2030年)
80億円
海老名−入谷間上今泉(仮)上今泉超長期
(2031〜2045年)
70億円
相武台下−下溝間上磯部(仮)磯部超長期
(2031〜2045年)
70億円
上溝−南橋本間作ノ口(仮)作の口長期
(2026〜2030年)
80億円


 概ね、87〜102年ぶりに復活するかしないか、といったところだと読み解かれましょう。▼遠くは圏央道の開通効果もあって、▼狭くは相模線そのものに地の利がある(中央線と東海道線をほぼ直線で結ぶバイパス線をなしている)ことから、どんなに「赤字」でも廃止は考えにくく、今後ともタンタンと電車が走り続けることと見込まれます。

 とはいえ、武蔵野線とも似て、沿線での需要がバラバラと、短い区間をちょっと乗って、私鉄の駅に「出る」利用がほとんどだとしますと、必ずしも全線複線化が急がれるということでもないのでしょう。例えば、部分複線化が順々に進められてきている東武野田線も、その時代その時代の配線の中でベストが尽くされてきているように見られます。そして、ついに一部の区間で急行運転をば、というところまで到達しました。これこそ「段階的整備」というものだと実感されましょう。

 そうした背景のもと、地元側が設置を目指すとする新駅についても、▼茅ケ崎−海老名間での増発に資する、香川−寒川間、社家−厚木間などの部分複線化と連動した形で、(仮)西久保駅、(仮)海老名運動公園前駅が「長期」とされ(全線複線化を目指す「超長期」より前の時期の目標に盛り込まれ)、同じく▼上溝−橋本間での増発に資する部分複線化と連動した形で、…と思いきや、「長期」とされる(仮)作の口駅が含まれる区間は部分複線化の候補には上がっておらず、うーん、新駅についてはかなり検討が浅いのかなぁ、と心配になってきました。本当でしょうか。

 詳細なほうのPDFを参照します。

・相模線複線化等促進期成同盟会「新たな相模線交通改善プログラム」(2014年3月)
 http://www.go-go-sagamisen.ecweb.jp/data/improvement/program-4.pdf

 > 第1ステップ(ケースA)・信号保安設備の改修、分岐器の改良、PRC改修等による輸送改善
 > 【整備効果】第1 ステップ(ケースA)の実現により、現行のピーク時運行所要時間(上り63分、下り67分)が、それぞれ3〜6分程度短縮することが見込まれます。また、データイム運行所要時間が約50分になるとともに、パターンダイヤ化が可能になると見込まれます。これは、行違い施設を3駅(香川・厚木・上溝)に整備した場合と同等の効果になります。

 > 第1ステップ(ケースB)・・行違い施設の整備(7駅)
 > 【整備内容】現在列車の行違いができない7駅(香川・宮山・門沢橋・入谷・下溝・上溝)に行違い施設を新設します。なお、7駅のうち、4駅(香川・宮山・厚木・入谷)を先行整備し、その後残りの3駅(門沢橋・下溝・上溝)の整備を行います。
 > 【整備効果】4駅行違い施設の整備が実現することにより、現行の運行所要時間(上り63分、下り67分)が、それぞれ10〜15分程度短縮され、パターンダイヤ化が可能となります。残りの3駅行違い施設の整備が実現することにより、運行本数も5本/時が可能になると見込まれます。

 部分複線化を先行して行なう区間を、仮にもリストアップできるというのは、すなわち、(部分複線化後の、あるいは工事途中の各段階での)配線略図から「時隔曲線」([3089])を引いてウンウンうなるということそのものですから、単に自治体の要望ということでなく、それなりにJRも加わっていないとなされえないことであるはずです。

 しかし、後から「降ってわいた」という印象もある「4駅で先行・残り3駅」などとする「(ケースB)」については、うーん、JRが加わっていない(形式的には子会社の調査会社などが加わっていても、本体としてはまるで乗り気でない:おざなりな)検討なのではないかと邪推されます。(あくまで邪推です。もし違っていましたらたいへん失礼をば、と、あらかじめ謝ります。)

・「おざなり」と「なおざり」
 https://kotobank.jp/word/%E3%81%8A%E3%81%96%E3%81%AA%E3%82%8A-897698

■表3 「長期」で部分複線化を目指すとされる区間

区間区間の途中に含まれる駅
香川−寒川間(1.7km)なし
宮山−倉見間(1.4km)なし
門沢橋−社家間(1.6km)なし
社家−厚木間(2.6km)(仮)海老名運動公園前駅
海老名−入谷間(3.0km)(仮)上今泉
相武台下−下溝間(2.9km)(仮)磯部
下溝−原当麻(はらたいま)間(1.3km)なし
番田−上溝間(1.5km)なし
(計:16.0km)


■表4 「超長期」での全線複線化まで単線のままとされる区間

区間区間の途中に含まれる駅
茅ケ崎−香川間(3.4km)北茅ケ崎・(仮)西久保
寒川−宮山間(2.1km)なし
倉見−門沢橋間(1.4km)なし
厚木−海老名間(1.7km)なし※
入谷−相武台下間(1.7km)なし
原当麻−番田間(2.1km)なし
上溝−橋本間(4.9km)(仮)作の口・南橋本
(計:17.3km)


 営業キロで見ますと、ほぼ半分の16.0kmを「部分複線化」、残り半分の17.3kmを後から「全線複線化」として目指すことがわかります。そして、茅ケ崎から3.4km、橋本から4.9kmの区間が「全線複線化」までは単線のまま残るということで、ここから、しかるべきダイヤ(密度)が決まってくるということですね…いいえ、逆に、所定の密度(毎時の本数)を実現するにあたって、この区間は単線のままで問題ない、という順序で決められる話であることでしょう。

※ほかに、列車の本数を増やさずとも、「幅広車両の投入!」によっても「輸送力増強」が図られるということもありましょう。

 部分複線化をこの通り「長期」(2026〜2030年)に目指すのであれば、(仮)海老名運動公園前駅だけでなく、(仮)上今泉、(仮)磯部の実現も同時に目指したほうが、新駅の整備費用が安く抑えられる可能性があります。それでも盛り込んでいないということは、▼需要が見込めない、▼全線複線化に至らない段階で途中駅が増えるとダイヤ編成が困難になる(部分複線化の計画が狂う)、ということなのかなぁ、とも想像されますが、ちょっと理解が及びません。恐縮です。

 そのうち、(仮)海老名運動公園前駅については、前後の▼門沢橋−入谷間(8.9km※)が連続的に複線化されるため支障がない、とも考えられます。なお、連続して複線になる区間としては、同区間が最長で、▼相武台下−原当麻間(4.2km)が続き、そのほかの区間では1.5km前後で複線と単線が切り替わるという計画です。

※厚木−海老名間(1.7km)が相鉄とのソレでうまく複線化(線路を共用するなり何なり)されると仮定しての話です。そんな「うまい話」が…と、いいえ、どの社にとっても「うまい話」になるよう調整していく、いわゆる「環境づくり」も大事なことでしょう、たぶん。

 相模線沿線から茅ケ崎へ向かう需要が多いのか少ないのかよくわからないのですが、茅ケ崎−寒川間の複線化は「超長期」(2031〜2045年)まで着手されないという「プログラム」になっています。このとき、実は茅ケ崎以西の東海道線から(小田急線ではなくJR線で)橋本へ向かう需要が想定よりも大幅に増えそうだということが早い段階でわかった、というようなことがありますと、川越線の西大宮と同じ状況(有効長15両に対応する用地が自治体の負担で取得された[3011])で、事実上の行違い設備の増設の策として、(仮)西久保駅の整備が急がれる、ということにもなりえます。

 (仮)作の口駅についても、同様に、仮に小田急多摩線の上溝延伸([3004])が決まった場合に、JR相模線の上溝−南橋本間での需要が、…がぁっ(略)、ということで、事実上、上溝−(仮)作の口−南橋本間を繰り上げで部分複線化するような、仮には上溝駅の橋本方の分岐器まで南橋本駅構内だということにして(既に連動駅である南橋本駅の配下として、南橋本駅の南側の分岐器を上溝駅の南側まで移すんだと)云々、などと想像されます。(あくまで想像です。)

※南橋本、あるいは橋本より遠くからも大挙して上溝への流動が増え…そのココロは「上溝から始発で座れてうれしい!(直通先が東京メトロなので便利!)」、ということです。いわゆる「B/Cの値」([2938])では、「始発で座れてうれしい!」を定量的には考慮できていないようですから、「小田急線の延伸後のJR線との乗り換えは相模原が大多数で、上溝で乗り換えようとする客は下溝−南橋本間だけだろう」というくらいの一種『決めつけ』で需要が想定されていても驚かれません。

※後述の通り、(仮)作の口駅を単線のまま整