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・外房線の「表定速度」を詳細に読み解く ・外房線を「迂回率」で読み解く ・表3 特急「わかしお3号」における停車駅間ごとの「表定速度」 ・表4 「表定速度90km/hくらい」に対する比率 ・表5 東京駅を起点とした外房線の主な駅へのJR線の迂回率
(約7000字)
[3284],[3285]の続きです。
前編にあたる「新しい広域流動(4) 外房線・東金線」([3284])では、YouTubeの映像とGoogleストリートビューの画像を参照しながら、外房線の「完成形」のイメージを共有しました。
中編にあたる「空から昔の新茂原を見てみよう」([3285])では、国土地理院の空中写真を参照して、1980年代の外房線の貨物輸送について往時をしのび、19世紀末からの外房線・東金線の建設と、後年の電化、CTC化、複線化の流れを追いました。
以下、後編にあたる本稿「外房線を「迂回率」で読み解く」([3286])では、特急わかしお号の映像から停車駅間ごとの表定速度を求め、外房線の列車の速さを実感します。外房線の主な駅と東京駅の間での「迂回率」を求め、沿線での道路交通に対する優位性を確かめます。
●外房線の「表定速度」を詳細に読み解く
・[3284]
> ・YouTube 土気→大網(2014年6月15日)
・YouTube 「わかしお3号」(「土気踏切」)→上総一ノ宮(2012年4月6日)
https://youtu.be/hjNa-qfzypk?t=45m53s
同じ区間を特急わかしお号で…なんと速い!
※映像は東京(京葉線ホーム)から安房鴨川までですが、ここでは土気からの区間を見てみます。映像のかた、アリガトウ! …といって、謝意を示します。(単に視聴するだけでなく、データとして活用させていただきます、の意。)
・「わかしお3号」(53M)
http://ekikara.jp/newdata/detail/1301261/42998.htm
東京−上総一ノ宮間(海浜幕張停車※)の所要時間で見ますと、最速の列車(「わかしお9号」:60分)と、最も所要時間の長い「わかしお1号」(65分)の差は5分しかありません。(両端の値は外すという意味で)標準的な所要時間といえる「わかしお3号」(61分)を見てみます。
※海浜幕張に停車しない「わかしお17号」は59分。
■表3 特急「わかしお3号」における停車駅間ごとの「表定速度」| 区間 | 距離 (km) | 所要時間 (分) | 表定速度 (km/h) |
|---|
| | | | | 東京→海浜幕張 | 31.7 | 25 (1552秒) | 76.1 (73.5) | | (東京→新木場) | 7.4 | (500秒) | (53.3) | | (新木場→二俣新町) | 15.2 | (660秒) | (82.9) | | (二俣新町→海浜幕張) | 9.1 | (362秒) | (90.5) | | 海浜幕張→蘇我 | 11.3 | 9 (488秒) | 75.3 (83.4) | | 蘇我→大網 | 19.1 | 11 (696秒) | 104.2 (98.8) | | 大網→茂原 | 11.4 | 7 (442秒) | 97.7 (92.9) | | 茂原→上総一ノ宮 | 8.7 | 6 (351秒) | 87.0 (89.2) | | 上総一ノ宮→大原 | 14.2 | 11 (641秒) | 77.5 (79.8) | 大原→勝浦 (御宿停車) | 13.7 | 13 (948秒) | 63.2 (52.0) | 勝浦→安房鴨川 (安房小湊停車) | 22.4 | 24 (1442秒) | 56.0 (55.9) |
※所要時間(分)は市販の時刻表より。括弧内の値は映像より。1:23東京発、9:43新木場通過、20:43二俣新町通過、26:45海浜幕張着。あわせて1522秒ということで、これ、7秒遅れたのか、8秒早く着いたのか、どっちでしょう?(なんと、2秒遅れただけ?)
※同じく映像より、27:22海浜幕張発−35:30蘇我着、36:36蘇我発−45:35土気通過−48:12大網着、48:50大網発−56:12茂原着、56:44茂原発−1:02:35上総一ノ宮着、1:03:05上総一ノ宮発−1:13:46大原着、1:14:41大原発−1:30:29勝浦着、1:31:18勝浦発−1:55:20安房鴨川着。
※同じく映像より、「土気トンネル」(880m)は、46:11〜46:42の31秒で通り抜けています。102.2km/hですね、わかります! 「1秒」で「28mあまり」進む速さです。『名状しがたい50m走のようなもの!』なら「1秒76」ッ!! …「1秒」は、とってもでっかいどう。
仮に、新木場−市川市高谷間の複々線化と、それに伴う変電所の増強などで、新木場−二俣新町間でも表定速度が90.5km/hになるとしますと、この区間、605秒となり、55秒ほど短縮されると見込まれます。
二俣新町−海浜幕張間で防風柵や防音壁などの整備で、運転速度の引き上げなどありますと、仮に蘇我→大網間と同じ表定速度になるとしますと、この区間、314秒となり、48秒ほど短縮されると見込まれます。
両方あわせれば、東京→海浜幕張間で103秒の短縮となり、おお、市販の時刻表の上では「22分!」などと…(略)。(あくまで勝手な推定です。)
仮に「表定速度90km/hくらい」という一種「目標値」([3089])があるとしました場合に、現状がいかほどかといって、表の形式を変えてみます。
■表4 「表定速度90km/hくらい」に対する比率| 区間 | 比率 |
|---|
| | | 東京→海浜幕張 | 0.82 |
|---|
| 海浜幕張→蘇我 | 0.93 | | 蘇我→大網 | 1.10 | | 大網→茂原 | 1.03 | | 茂原→上総一ノ宮 | 0.99 | | 上総一ノ宮→大原 | 0.89 |
|---|
| 大原→勝浦 | 0.58 |
|---|
| 勝浦→安房鴨川 | 0.62 |
|---|
※表3のうち、映像から読み取った「表定速度」での比率です。重ね重ねアリガトウ! 「表定速度90km/hくらい」に対して、10%を超える差のある区間を太字で示します。
比率で見ますと明らかですが、蘇我→大網間だけが突出して速いというわけでもなく、上総一ノ宮→大原間も十分に速いことがわかります。大原→安房鴨川間が遅いのは、現状では単線の行違いの都合でどうにもならないことです。仮に、当初計画されていたという「勝浦までの複線化」が実現しますと、単純には大原→勝浦間でも「表定速度90km/hくらい」が達成されるということになるのでしょう。
これに対して、京葉線内が遅い(東京→二俣新町間が特に遅い)というのが、東京−上総一ノ宮間での速達サービスを担うに際してのネックであろうとみられます。
・Google ストリートビュー 「上総一ノ宮駅」付近
https://goo.gl/maps/RUY2QyqP88G2
●外房線を「迂回率」で読み解く
「迂回率」については、先に[3283]で、道路の場合のソレを見てみました。
…とはいいましても、「迂回率」の定義は、文脈によって異なります。
・(参考)「首都機能移転による災害対応力の強化に係る検討」
http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/information/council/shuto-research/jishin_kentou/c_js26.html
> (道路)
> ・各新都市−主要都市間の最短ルート距離を1とした場合の各ルート距離の比率を「迂回率」として定義。
> (鉄道)
> ・各新都市−主要都市間の最短所要時間を1とした場合の各ルート所要時間の比率を「迂回率」として定義(この際、待ち時間は考慮せず、乗車時間を使用)。
> 評価基準
> 通常ルート(迂回率=1.0)が使用できる。
> 通常ルートは影響を生ずる可能性が高いが、1.0<迂回率≦1.5の代替ルートが使用できる。
> 代替ルートは存在するが、迂回率>1.5である。
道路と鉄道を同じ基準で評価できるようにするための定義ですね。
・(参考)「交通の概況」
http://www.cgr.mlit.go.jp/tottori/upload_files/ac_plan_h15_04.pdf
> 国道9号の主要都市間の迂回率は、各都市間とも高い値となっています。特に、気高−青谷間は6.9と非常に高い値となっています。青谷・羽合道路のある青谷町〜泊村間、泊村〜羽合間は、1.2と低い迂回率となっています。
> 国道29号の鳥取市と若桜町の迂回率は、国道29号が通行不能の場合、鳥取県内から若桜町に向かうには国道53号及び国道373号、国道429号経由となり、迂回率は3.1となっています。
> 国道53号の鳥取市と智頭町については、国道29号及び国道429号、国道373号等が迂回路となり、迂回率は3.1となっています。
・(参考)個人のページ「迂回率が6倍強」
http://looprailway.blogspot.jp/2016_03_01_archive.html
> 直線距離わずか800mのところを5kmかけて走っており、6倍強になる迂回率は世界一ではないかと思います。
・(参考)国土交通省「連続立体交差事業の整備効果にかかる参考資料集」
http://www.mlit.go.jp/common/001083622.pdf
定義によって、いかなる値を「迂回率が低い!」といって「高く評価!」する(線形がよいと判断する『めやす』とする)かは、まったく異なってまいります。数字だけ見て決めつけてはイケマセン。
房総半島の太平洋側をまるっと…いえ、ぐるっと走る外房線では特に、「迂回率」に着目すると、線形や(主な駅の)立地のよしあしが定量的に見えてきそうです。
・個人のページ「廃線跡-外房線旧線跡探訪 太東〜長者町間」
http://7-pref.com/tokushu-sotobohaisen.htm
http://7-pref.com/tokushu-sotobohaisen16.htm
> 外房線の上総一ノ宮以南は輸送量も少なく、費用対効果面から線路付け替えを行うほどの必要性はなかったようです。複線化も勝浦まで計画されたものの1995年に御宿〜勝浦間、1996年に東浪見〜長者町間が行われたのみでそれ以降は凍結されてしまいました。それでも1980年頃にルート変更を行った区間が太東〜長者町間と御宿〜勝浦間の2箇所ありますが、後者の旧ルートは複線化の際に現在の下り線(一部区間上り線)として再利用(新ルートを現在上り線(一部区間下り線)として利用)されたため、旧線跡として実質残るのはこの太東〜長者町間のみです。
> この区間は、太東を出てすぐに夷隅川を渡るために橋が架かっていましたが、新ルートは川を渡る区間前後のカーブを緩やかにし、その区間を含めて高架線で建設されました。この時すでに高架区間は複線化できるよう線路2本分で建設され、単線時代は現在の上り線側を運転していました。この区間を含めた東浪見〜長者町間は1996年11月に複線化され、これが実質外房線最後の複線化区間となりました。
※外房線の高速化は、まだ途中ではないでしょうか。「最後」と、勝手に決めつけてしまっては中立でないのではないかと心配します。
・「実キロ」(2001年11月12日)
http://nagoya.ta-ko.jp/articles/6600/6658.html
…という話もありますが、ここでは勉強だけできればいい(一種『名状しがたい意思決定のようなもの!』に使うわけでなし)として、市販の時刻表に記載の営業キロを用います。
東京駅から勝浦駅までの直線距離は76.8km、大原駅までは74.1km、上総一ノ宮駅までは64.1kmだといわれます(Googleマップの距離測定ツールにいわれます、の意)。この間、営業キロでは東京−千葉間が39.2kmで、千葉−上総一ノ宮間が43.0km、大原が57.2km、勝浦が70.9kmです。
■表5 東京駅を起点とした外房線の主な駅へのJR線の迂回率| 駅 | 直線距離 (km) | 営業キロ (千葉経由) | 迂 回 率 |
|---|
| | | | | 蘇我 | 34.7 | 43.0 | 1.24 | | 大網 | 52.3 | 62.1 | 1.19 | | 茂原 | 56.3 | 73.5 | 1.31 |
|---|
| 上総一ノ宮 | 64.1 | 82.2 | 1.28 | | 大原 | 74.1 | 96.4 | 1.30 |
|---|
| 勝浦 | 76.8 | 110.1 | 1.43 |
|---|
東京−勝浦間では、迂回率が1.43にまで悪化し、鉄道としては(やや)無理があることがうかがえます。ただ、迂回率は、起点をどこに置くかで大きく変わる数字です。この表1では、茂原では遠まわりとなりつつも上総一ノ宮では再び、鉄道として標準的とされる迂回率に一種「回復」することがわかります。
・Google ストリートビュー 「大原駅」付近
https://goo.gl/maps/wUnnqEyjtrM2
https://goo.gl/maps/Cx4hWoXSKTU2
https://goo.gl/maps/Zhg5t11qfwQ2
https://goo.gl/maps/FJKBy2oTFEr
・Google ストリートビュー 「勝浦駅」付近
https://goo.gl/maps/cUBv5CnTFoD2
https://goo.gl/maps/XVuJPtXPc272
https://goo.gl/maps/9VTAMdXuxcD2
https://goo.gl/maps/tbaPLnCMm7J2
https://goo.gl/maps/9G2sqx5rhgL2
・Google ストリートビュー 「安房鴨川駅」付近
https://goo.gl/maps/NhGxWmE6xYP2
https://goo.gl/maps/U3JcFpYnCAB2
https://goo.gl/maps/7bTEU1ucqp12
現状では所要時間の長さゆえ非現実的ですが、あくまで地理的なソレの比較のため、内房線の五井、小湊鉄道・いすみ鉄道を経由する場合もみてみますと、千葉−五井間が13.1km、小湊鉄道が39.1km、いすみ鉄道が26.8kmで、東京−大原間で118.2kmとなり、なるほど、営業キロで比べて外房線のほうが18.4%も短く、一種「地の利」があることがわかります。
※上総鶴舞−城見ヶ丘間を道路で、といいますと、14.7kmで「渋滞なしで20分」とのことです。この区間、鉄道では31.2kmあり、16.5kmも短くなります。それでも東京−大原間(五井−上総鶴舞…国道297号線…城見ヶ丘−大原)では101.7kmとなり、外房線のほうが5.2%短いとわかります。
さらに、Googleのルート検索によれば、東京駅から上総一ノ宮駅まで、京葉道路・千葉東金道路・東金九十九里有料道路・九十九里有料道路を経由して90.6km(「渋滞なしで1時間17分」)、首都高速湾岸線・東京湾アクアライン・東京湾アクアライン連絡道・首都圏中央連絡自動車道を経由して90.4km(「渋滞なしで1時間21分」)ということです。起点を東京駅でなく羽田空港にすればアクアラインが勝つでしょうが、東京駅からなら、総武線・外房線経由のルートは道路よりも短いことがわかります。
※九十九里まで「まるっと」まわるから遠いのかと思って「東金ICから圏央道経由」としても、確かに距離は90.2kmに縮まりますが、「茂原北」から先の一般道で所要時間がぐわんと増え、「渋滞なしで1時間31分」になるとのこと。
・YouTube 「第二寺の下踏切」を通過する下り特急わかしお号(2015年12月5日)
https://www.youtube.com/watch?v=xWY2Xw3mFgQ
https://goo.gl/maps/bDDHhPquuSE2
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