フォーラム - neorail.jp R16

Googleの「AIによる概要」で誤った内容が表示される事象について


発行:2014/12/19
更新:2018/9/3

[2980]

【貨物線のいま】

貨物線のいま(5) 貨物列車の拡充と在来線の高規格化、客貨の関係「逆転」も

河北新報 新車両 受益 貨物鉄道 トレイン 青函トンネル BRT 建築限界


(約3000字)

 貨物線の話ですが、こんどは東海道線(東京−神戸間)の話です。

・NHK「貨物列車が物流を救う」(2014/10/29)
 http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2014_1029.html

 > 「去年11月から潮目がはっきりと変わった。鉄道貨物に大きな波が来ている。全国各地、すべての産業で取り扱い量が増えている。さらに新しい客の商談が急速に伸びている」

 > 「これまで『鉄道貨物は長距離』と認識されていたが、中距離でもトラックが足りなくなっていることから、これまでより距離の短い荷物でもお話を頂戴している。これまでは一般的にトラックを選ぶか鉄道を選ぶかの分岐点が500キロと言われていたが、今は400キロ程度になっている」

 > 「ヨーロッパやアメリカは貨物専用の線路があるが、われわれは旅客列車と同じ線路を走っているので、ダイヤを設定するうえでも旅客列車と調整が必要だ。鉄道輸送の半分は東京と関西地方を結ぶ東海道線を走っており、1編成の車両数を増やして輸送力を強化するために、将来的にはこの区間に貨物専用線路を建設することも考えていきたい。それが、日本の産業の発展や国際競争力を高めるためにもつながる」

 上掲の引用部分は、NHKがインタビューした、JR貨物の営業担当取締役氏のご発言です。鉄道貨物が好調だという話は以前からちらほらとニュースになっていましたが、貨物専用の線路を新たに引こうかというほどまでとは思っていませんでした。

※なお、上掲のニュースは既に掲載期間が終了し「リンク切れ」になっております。代わりに以下を参照ください。

・はてなブックマーク「NHK NEWS WEB 貨物列車が物流を救う」
 http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2014_1029.html

 夢のある話には喜んで飛びついてみるほうの私ですが、それでも、いくらなんでも今から貨物専用の在来線を別線で建設するとなれば(※)無駄が多いように感じます。

※上掲のインタビューでは具体的な建設方式には言及されていません。

 2020年などといわず、2035年くらいを考えますと、地方や都市間の幹線において、貨物列車を増強すること(増発や貨車の増結:編成重量の増加や機関車の出力増強)と、特急列車を高速化すること(160〜200km/hへの高速化:線形の改良や電動車の出力増強)は、線路の設備上、同じような投資(路盤の強化、線形の改良、変電所や架線の増強や交流化、架線電圧の引き上げ=欧州や新幹線との共通化、それにともなう建築限界の拡大など)を必要とします。ならば、貨物と旅客が別々ではなく、同時に進められるのがベストです。あるいは、より多くの列車を設定する(受益が大きい)と見込まれる貨物側がインフラを負担し、旅客側が使用料を払うというのが自然というものです。

・野村総合研究所(NRI)「2020年に向けた小売業態のあり方」(2011/1/21)
 http://www.nri.com/jp/event/mediaforum/2011/pdf/forum146.pdf

 東日本大震災の直前の資料ですので、だいぶ状況が変わった部分もあるかとは思いますが、長い目で見れば、キオスクがコンビニにとって代わられる、百貨店とコンビニの売上高が逆転する、西武有楽町店がルミネになる、といった、逆転現象やプレーヤーの交代といったものは、いつの時代にも起きてきたことです。鉄道においても、本業の鉄道輸送において、そういう「逆転」が起きつつあるのであれば、きちんとそれに応じた再編や改変をしていく必要が出てきます。

 貨物鉄道(の会社)だから、旅客鉄道(の会社)だから、という話だけでなく、鉄道(業界)だから、JR(政府が株式を保有)だから、というのでは、できないこともあるでしょう。西武鉄道と外資との確執(?)も記憶に新しいところですが、うまく協業できれば、例えばAmazonの資本やGoogleの技術を導入して(あくまで例え話です)、鉄道貨物と道路輸送をスマートに接続させる(荷役のさらなる情報化や自動運転など)、各社の配送センターに専用線(もしくは専用道:貨物版BRT)を引き込むといったことも早期に具体化していけるはずです。できるなら今すぐにでもとりかかりたいとうずうずしていらっしゃる方も多いことでしょう。


・河北新報「「第2青函トンネル」建設を 青森県内で待望論」(2014/7/9)
 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201407/20140709_25001.html

 > 新幹線の中に丸ごと貨物列車を載せるトレイン・オン・トレインや、擦れ違う時のみ新幹線を減速させる技術も研究するという。県などによると、どちらも例がなく、実現の見通しは立ってない。トレイン−は研究と新車両の製造に計約3000億円かかるとされ、擦れ違い時減速は安全への懸念が大きい。
 > 新たな青函トンネルを建設する場合、総工費は約5000億円と見込まれる。過去のトンネル工事の地質データがそろっているので、既存の技術で建設は可能だ。
 > 県議の一人は「膨大な費用を使い、ただ貨物列車を新幹線に載せるだけなら、初めから2本目のトンネルを掘った方が賢い」と指摘する。

 研究者や中央省庁としては、難題に挑んだほうが長く仕事ができる(※)という、試験があるから勉強をするのか、試験勉強をしていれば安心だから勉強するのかわからないような面もありますが、現実は試験ではなく、切実です。

※ちょうど[2978]で述べました、開発が計画通り着実に進む話の逆といえます。

・河北新報「仙山線雪で立ち往生 300人閉じ込められる」(2014/12/3)
 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201412/20141203_73051.html

・日本経済新聞「秋田新幹線脱線は「除雪不十分」 運輸安全委が調査報告書」(2014/4/25)
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2404T_V20C14A4CR0000/

・時事通信社「秋田新幹線脱線事故 写真特集」(2013/3/3)
 http://www.jiji.com/jc/d4?p=kma303&d=d4_disaster

 鉄道が山間部の地平を走っているばかりに、動物との衝突が絶えない、または大雪の中、倒木で停電して何時間も閉じ込められる、という話にもなります。秋田新幹線の列車が在来線区間で(…と、正確を期そうとすると微妙な言い回しになりますが)雪に乗り上げて脱線するという事故もありました。いずれは全国どこの山間部でもあまねく高規格な「ほくほく線」(※)、という将来像があるのかもしれませんが、それが道路とは別建てで、となると、建設も維持もおぼつかないと思います。

※除雪が追い付かないなら明かり区間を最小限にしてしまへ〜、という鉛筆的な。それが「ほくほく線」であり、また、豪雪地帯の重要な道路をトンネルにする工事が続々と進められている背景でもあります。除雪を追い付かせようとするより、はるかに建設的です。(文字通りの意味でも。)

 鉄道と道路は、土木面である程度、共用が可能な部分があります。鉄道と道路を一体的に整備するという点で、成田新幹線は好例です(直接に構想が実現せずとも、将来に備えた予備的な設計の考え方が優れていたという意味で)。インフラを造ったはいいが維持しきれない、という50年後の問題を防ぐためにも、点検や改修が道路と鉄道、1度で済んでしまえば効率的です。50年ごとに毎度毎度、別のインフラを造ってごっそり乗り換える「ヤドカリ方式」で行くつもりなのでしょうか。それを成り立たせられるほどの資源や財政が、50年後にもあるのでしょうか。そう考えていくと、今後ますます、トンネルも高架橋も1つで、鉄道も道路も、という方向性が重要になってくるという気がしてきます。


この記事のURL https://neorail.jp/forum/2980/


この記事を参照している記事


[2988]

車両デザインにみる「成熟市場」〜欧州視点で見直す国内鉄道

2014/12/24

[3025]

駅構内通路の「時間帯一方通行化」

2015/4/4

[3053]

Re:[3051] これからの「混雑率」の話をしよう

2015/5/27

[3103]

「ATACSの首都圏全域展開」を読み解く(前編)

2015/8/23

[3105]

「ATACSの首都圏全域展開」を読み解く(後編)

2015/8/23

[3183]

「富里市中心部を東西に通り抜け、芝山町中心部を経て芝山千代田駅に接続し東成田駅に至るルート」を読み解く(談)

2016/2/27

[3213]

研究ホワイトボックス(10) ハイパー・ゼロ:「後方業務」としてのパスファインダーと「LHR」

2016/4/1

[3224]

【北総】「千葉県営水道」の大規模改修を読み解く(仮)

2016/4/6

[3225]

「駅ナンバリングの実施」を読み解く

2016/4/6

[3254]

大洗鹿島線へのJR車の乗り入れ計画の中止(1991年)をATACSで読み解く(至)

2016/4/23

[3258]

神奈川県「かながわ交通計画」で「神奈川東部方面線の機能を有する路線」を読み解く(前編)

2016/4/25

[3264]

京成千葉線・京成千原線を読み解く(続)

2016/5/1

[3304]

どうなる千葉駅(7) 上野駅「発車時刻表」(1966年)を見ながら国鉄本社・電気局「北総」(1972年)外一式を「Z39.2」(1966〜1968年)で読み解こうという無謀なココロミ

2016/7/18

[3320]

武蔵野線(JR貨物グループ)を読み解く(貨)

2016/8/6

[3347]

【南武線ほか】東京都「踏切対策基本方針」(2004年)を読み解く(再)

2016/9/2

[3379]

【高崎線】このセカイに新たなトリビアがまた1つ(略)

2016/11/4

[3395]

【冬の自由研究】「TOSBAC-5400M10」(1969年)とともにビデオリサーチ「ふぉーかす’86」を遠目に眺める(仮)

2016/12/31

[3446]

千歳線(1992年7月)を遠目に眺めながら「成田空港行」を読み解く(仮)

2017/4/14

[3449]

貨物線のいま(12) どうなる成田線・常磐線

2017/4/14

[3491]

貨物線のいま(13) 旅客会社のシステム投資、貨物会社のプラスに

2017/6/15

[3539]

【自由研究】ゆるシミュ(5)

2017/8/31

[3645]

どうなる埼京線 / FGTの開発が近鉄へ

2018/5/18

[3754]

【A9・Exp.】まだ見ぬ「模範演技」を求めて(三日月島MV編)

2019/8/25


関連する記事


[4827]

【会津若松】「なよ竹」で「只見線」を読み解く(仮)【電源開発】 tht - 2022/7/1


[4997]

【武蔵野線】見返りと塩害と連接バス【稲毛・上尾・藤沢・綱島・鶴川・相模大野】 tht - 2023/3/3


[4851]

貨物線のいま(17) 新金線の「E電」扱いに必要なものとは tht - 2022/9/1


[5249]

「京成松戸線」とは何か(新) tht - 2024/8/8


[4030]

PPPガッサンエル’72 tht - 2020/4/1


[4968]

A列車で行こう9はダンスミュージック!? 〜北海道切断事件(仮)〜 tht - 2023/1/1


[4763]

いま問う「急行貨物列車」のココロ tht - 2022/6/1


[4247]

要望DLEL 〜ふぉー!!〜 tht - 2020/10/1






neorail.jp/は、個人が運営する非営利のウェブサイトです。広告ではありません。 All Rights Reserved. ©1999-2026, tht.