・「非活用詞」で『ポイントが高い』を読み解く(試) ・ついでに「**の見地」「片足を残す」を読み解く(談)
(約8000字)
もはや自由研究は始まっているッ!! きわめて恣意的に「夏の学校」([3071])のご案内です。(個人は主観です。)
・国立国語研究所「ニホンゴ探検2016 ― 1日研究員になろう!」(2016年7月16日開催)
https://www.ninjal.ac.jp/event/young/tanken/ninjal2016summer/
> 国立国語研究所では,児童・生徒・一般の方に研究所を公開し,日本語の魅力と不思議に触れられる一般公開イベントを開催します。夏休みの自由研究のテーマにもピッタリです。
・「コーパスを使ってみよう」のイメージです(「前回の様子はこちら!」より)
https://www.ninjal.ac.jp/event/young/tanken/files/20150718_15.jpg
とのことで、主に「不思議」のほうを探ってみたいという意欲的なかた(ただし「児童・生徒」が優先されるです)などあられましたら、どうぞ参加なさってください。(「魅力」のほうは自由研究には仕立てにくいでしょう、の意。)
・Google ストリートビュー 「国立国語研究所」付近
https://goo.gl/maps/EXip1JG1f722
本格的な日本語に関するおはなしは、ぜひ本職のほうのかたにぶつけていただきたく、まったく余談で恐縮ですが近年『ポイントが高い』の成り立ちのようなものを探ってみます。
・[3296]
> 「便利な定規」([3089])をつくろうというのは『非常にわかりやすい』ことであり、いま素朴に一種『ポイントが高い』テーマではありましょう
・発言小町「ポイントが高い」(2010年5月4日)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/0504/312647.htm
> 男性の意見をまったく聞かずして、女性同士で女性の物差しを使って「私たちの方が平均点高いのに…」ってな話をしていること自体、男性にポイントが高い行為とは思えないのですが
質問者ではなく回答者が使っています。元祖「小町的にポイント高い」ですね、わかります。「〜に支持される○○」「〜に好印象を与える○○」の意で使われています。
それでも、「点数」の話だから「ポイント」という言葉を使ったという、それなりに辞書的な用法に片足が残っているような(※後述)、そんな印象を受けます。
※「利用者の意見をまったく聞かずして、事業者同士で業界団体の『便利な定規』を使って」([2938])などと読み替えて、え゛ー、ウチの話ですか、とヒヤヒヤしてみるとよいかもしれません。
・Honda Cars 茨城南(2010年7月16日)
http://www.hondacars-ibarakiminami.co.jp/site/153_ranking14.html
> ハイブリッドカーなのにマニュアルトランスミッションがあるということのポイントが高いようです。
「ハイブリッドカーなのにマニュアルトランスミッションがあるということによって、(このクルマが)お客さまに人気です」の意で使われています。
さすがにホームページ掲載にあたってキレイに書かれてはいますが、従業員の言葉そのままであれば「〜があるのが『ポイント高い』みたいです」などと、品詞も文法も主語もよくわからない発話(※)であったかもしれないと想像されます。
※発話全体がまるっと鴨川…いえ、まるっと100人載っても…いえいえ、まるっと『ゼロフィルなフィラー!』([3178])であるかもしれませんよね。確かに「発話」はしているが、その実、なんら「発言」はしていないという状態が、あるのですよ。…ぎゃふん。
あるものが「ある」か「ない」かというのは2値の状態しかとりえない評価項目であり(「主観確率」[3099]も参照)、「なめらかな連続値」を取らない評価項目([3029]も参照)に対して「ポイントが高い」と述べるのは、たいへん比ゆ的な用例であるといえそうです。
・最近の「ポイントが高い」(2015年9月26日)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20150926_722671.html
> 標準搭載なのはポイントが高い。
別売りのオプション品が「標準搭載」となれば、金額に換算して「○円分、高い」と評価されうる項目といえますから、それなりに辞書的な用法とも受け取ることが可能です。ただし、後から増設できないものが「標準搭載」だというのであれば、直接には金額に換算しての評価はできませんが、非搭載の機種との差額などによって、あくまで金額に換算しようと試みることは可能で、やはり「○円分、高い」と評価されうる項目になってくることがわかります。
> 本体だけのタブレット時は、薄く600gを切っているので片手でスッと持ち上がる。逆にキーボードと合体時はもともと小さい分、約1kgは感覚的にズッシリくる。これは見た目で「こんな感じか」と思うポイントより上か下かで印象が異なるので面白い。
「ポイントが高い」というフレーズはあちこちで使われながら、「ポイントが高くなる」や、「ポイントが低い」「ポイントが下がる」というバリエーションは全然ほとんどちっとも使われないのが、「ポイントが高い」だけが一種「流行語」であることの証といえましょう。
では、一種「活用」しさえすればいいのかといえば、とんでもない! 『見た目で「こんな感じか」と思うポイントより上か下かで印象が異なる』とグダグダ述べるのは、よりいっそう苦しい印象があります。
※メーカーが使用している用語(以下《》で示す)や、メーカーの設計意図(明示的には公表されずともホウボウでそれなりに言われていることを含む)をなぞってきちんと書く(なおかつライター氏の特有の表現も活かす)のであれば「《本体のみ》の重量は600gを切っており、(タブレットとして利用することが考慮されているので重量のバランスもよく)片手でスッと持ち上がる。ただし、《キーボードドック接続時》は、フットプリントは変わらないものの厚みは増し、重量が約1kgにまで増えるため、ズッシリくる。」となるでしょうか。後半部はむずかしいですが「机の上などに置いた本機を持ち上げる時、姿勢によっては本機の厚みが見えず、『予想外』の重さまたは軽さに驚かされることがある。わずか数年前に『軽い』と感じていたのと同じ約1kgの重さでもズッシリくるというのは、『より軽い』タブレットに慣れたということでもある。」などと、やはり「面白い。」を残すのはむずかしそうです。どうしても「面白い。」というのであれば、製品や読者ではなく筆者自身(の感覚)を「面白い。」とするしかなく、「約1kgにまで増えるため、ズッシリくる。もっとも、1kgといえば×××(発売当時「軽い」と評判で、誰もが知っている製品名)と同じで、それをズッシリくると感じている自分が面白い。」などと…そういえば同じライター氏が別の記事で既にそういう表現をされていたかのようにも記憶します。だからといって、この記事で端折ってはいけないでしょう。
・個人のブログ「見た目で「こんな感じか」と思うポイントより上か下かで印象が異なるので面白い」(2006年6月6日)
http://tht.sblo.jp/article/815466.html
> 白いものには「軽そうだ」という先入観を持つので重く感じられることが多い…といったことには無頓着なのだろう。
☆「非活用詞」で『ポイントが高い』を読み解く(試)
まさか、『ポイントが高い』に関連して論文を探そうなどと思う人がいるなんて…ここにいましたですよ(=私です)。
・(参考)「抽象概念を表す漢語名詞に付随する意味的韻律」日本認知言語学会 第11回全国大会(2010年)
http://www.hino.meisei-u.ac.jp/is/oishi/SemanticProsody/JCLA11.pdf
> 一見中立的な意味を持つ語と共起する語彙に,(多くは価値評価的な)意味の偏りが見られる現象は,コーパス言語学の分野で「意味的韻律」 (semantic prosody)と呼ばれている(Louw 1993, Stubbs 1995, Partington 1998, Sinclair 1996, Hunston and Francis 1999)。
> 上原(2007)は,日本語の品詞構造に認知言語学的考察を加えているが,形容名詞(いわゆる形容動詞)が語根の拘束性や形態的有標性の観点から,動詞よりは名詞に近いものであること,むしろ動詞と形容詞が「活用詞」という一つのカテゴリーの下位カテゴリーであるのに対し,形容名詞は名詞やサ変名詞とともに「非活用詞」というカテゴリーを構成しているという説得力のある議論を展開している。
ぬおー。ぬおー。近年のいわゆる「わあぃポイントが高い! ***ポイントが高い***!!」構文のソレ、そのものですよっ…といって、そのうすしおをささげます。…えっ、ハーベストが在庫切れですと!?(「ハーベストへのうすしおが足りない」事案について[3161]を参照。)
・(参考)博士論文「現代日本語における複合語の意味形成 構文理論によるアプローチ」名古屋大学(2011年2月)
http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/14817/1/%EF%BD%8B9083.pdf
> 日本語では、名詞・動詞に形容詞を加えた3主要品詞の構造を持つ英語などの言語とは異なり、形容詞類(形容詞・形容名詞)は形態的に1つの独立した主要品詞としての位置づけはなく、むしろ他の主要品詞の下位分類に位置づけられるという点である。すなわち、本節の図2で提示した特徴に示されるように、下2つの形態のタイプ(上原は活用詞と呼んでいる)が形態的有標性の点で近似しており、上3つのタイプ(上原は非活用詞と呼んでいる)が同様に近似していることから、日本語の語彙は形態的に2大品詞に分類されると特徴づけることができる、としている。そして、形容詞は動詞とともに、また形容名詞はサ変名詞とともに、形態上それぞれ2大品詞「活用詞」と「非活用詞」の下位カテゴリーであると考えることができる、としている。
「図2」を参照しないと「下2つ」「上3つ」が具体的に何であるのかわからないのはまずいでしょ、と思われなかったでしょうか。そうですか。
> 現代日本語の複合語を扱った先行研究においては一般的に要素還元主義的なアプローチがなされてきているが、湯本(1977)及び石井(2007b)は、複合語には要素の意味とその関係から組み立てられる「くみあわせ性」(くみあわせ的な意味)と要素のくみあわせからは導くことのできない「ひとまとまり性」(特殊化された慣習的な、ひとまとまり的な意味)を認めることができる、という指摘をしている。
「複合語」と「文」の判別すら定かでない、などと…(略)。ある「構文」に、具体的にどんな内容が入るかは問わず、おお、ここで「○○構文」入れますか、入れちゃいますかっ…的なソレにあっては、もはや「構文」だけで何らかの意味や表現をなしているとも感じられてきそうです。
※「いっけなーい!」構文([3233])なども参照。一種『変化球のようなもの』としましては「シテの「**」から「**」まで」構文([3152],[3282])なども参照。
・[3152]
> ・シテの「あれは目の赤い」から「お家へおかえり」まで。
・[3282]
> ・シテの「お探しのお忘れ物は銀の恵方巻ですか、それともミスリルの恵方巻ですか」から「承って候ふよ」まで
> 「お忘れ物承り所」([2959])のほうなど遠目に眺めながら(略)。
・[3174]
> 「ウィング号」は京急だけっ! 京急油壺マリンパークすいぞくかん学園でボクと握手!! みんなで呼んでみようぉ〜!(うぉーッ!! と呼ぶ者あり) けいっ、きゅーん!! …などと(略)。
> 「ここで残念なお知らせがあります」などと称して「○○(できるの)は●●(施設名等)だけ!」の出典がわかりませんでした、と記して、そのオリジナルに敬意を表します。
・[3071]
> ・最近の「終了のお知らせ」
「スクリプト」([3185])や「ポライトネス」([3045])との判別もあいまいになってくるように感じられます。(個人差がございます。)テキストでありながら話し言葉の性質が流れ込んでくるということは、そういうことなのでありましょう。他方、書き言葉から話し言葉への逆流といいますか、文字でしか書かれなかったようなフレーズがおもしろく使われていくというのも、とってもおもしろい現象だと思いまーす。(もっと個人差がございまーす。)
※「思いまーす」は[3185]で初出でーす&「明日発売デース」の初出は[3201]デース。
※「でーす」は平板に(意図的に感情を隠すような、しかし、わざとらしく『感情を隠してますアピール』をするような)、「デース」は「どうぇっす↓」もしくは「でえぃす↓」などと…(略)。あざとい日本語って、こうですか? わかりませーん! 、と記して、そのオリジナルに敬意を表します。
☆ついでに「**の見地」「片足を残す」を読み解く(談)
「ついで」などと称しては一種「ご弊!」がありますが、ちょうど好適なニュースが出ていたので、これを機に思い出したように述べてみようと思いました。(恐縮です。)
・(もっと傍題)読売新聞「関ヶ原の小早川秀秋、肝疾患で「寝返り」遅れ?」(2016年6月25日)
http://www.yomiuri.co.jp/science/20160625-OYT1T50018.html
> 戦国武将・小早川秀秋(1582〜1602年)が西軍から東軍に寝返った際、決断が遅れたのは過度の飲酒で肝硬変から発症した肝性脳症による判断力低下の可能性があるとするユニークな説(略)***総会で発表する。
> 国立国際医療研究センター肝炎情報センター(千葉県市川市)も、大量の飲酒は肝硬変の原因の一つで「記述にある症状からは肝硬変が疑われる」という。
※史料の記述だけでは「肝性脳症の発症」までは断定できないということですね。
> ****・静岡大名誉教授(戦国史)は「寝返りの遅れは東西どちらが有利か最後まで迷っていたとするのが通説だ」とした上で、「当時は15歳頃からの飲酒も多く、医師の見地からはそのような解釈も成り立つのでは」と話している。
こう、あたかも「**の見地」を***の研究に取り入れることなど考えたこともなかった的なコメントだと感じられましょう。これまた、**や***を適切に読み替えて、え゛ー、ウチの話ですか、とヒヤヒヤしてみるとよいかもしれません。わあぃ*****ー*ッ!!
外形的な「エビデンスレベル」([3097])として、「国立国際医療研究センター肝炎情報センター」のほうが高いということは、もはや誰も疑わないでしょう。しかし、本件発表1つで「通説」が書き換えられるかといえば、いいえ、「戦国史」の研究コミュニティの一種「主流派」の諸センセイがたにも「医師の見地」を正確に理解いただいて、そのような理解が広まって、否定する材料も出てこず、結果的に「新しい通説!」が成立していくまで、きちんと時間や順序を経なければなりません。また、本件武将(!)に限って「医師の見地」を導入して考察するのでなく、症状と歴史的イベントに強い関係が疑われる事案すべてに対して、もれなく「医師の見地」を導入していかなければなりません。それが「学問的エレガンス」([2992])ですよねぇ。わあぃ歴史研究の界隈でも医師不足…ぎゃふん。(メッソウもございません。)
・(個人のブログ)「本件武将」のイメージです(2013年9月26日)
http://ameblo.jp/boggy-bar/entry-11622496359.html
・一般社団法人 発明推進協会「既存武将」「新武将等」のイメージです(1995年12月)
http://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/199512news.html
・「OECD加盟国で最下位レベル!? なぜ日本は深刻な“医師不足”なのか」(2010年4月8日)
http://diamond.jp/articles/-/7830
> プライマリケアに対応できる幅広い臨床能力
※「プライマリケアに対応できる幅広い臨床能力」については[2987]も参照。「学位を取得済みであることを忘れて、もう1回、学位論文に取り組もうかというような」([3213])というときに必要になる研究能力(自分の専門にとらわれず初期の総合的な判断ができて、誰に引き継げばよいか判断できる、の意)も、似たようなものであると感じられませんでしょうか。これを指して「プライマリ研究に対応できる幅広いサーベイ能力」とでもぎゃふん。…やだなぁ、先行研究を踏まえての一種「二次研究!」だけでは「過学習!」に陥るんですよぉ。たぶんゼッタイ([3287])&エビデンスなどないッ!(マコトに恐縮でございます。)
・「片足を残す」のイメージです
http://thesaurus.weblio.jp/content/%E5%AE%88%E5%82%99%E5%81%B4%E3%81%AE%E7%84%A1%E9%96%A2%E5%BF%83
http://syounennyakyuu.com/archives/832
http://syounennyakyuu.com/wp-content/uploads/2015/02/ad963b530e163cfc74722fcec2a12d74-300x200.jpg
> 私が子供達に教えているリード幅は歩幅4歩で教えています。理由は安全にベースに戻れてなお且つそれなりのリード幅だからです。
おおー。「フィートな文化圏の『歩幅の幅』!」([2988])もそれとなく参照。
・[3126]
> 一種「臨界現象」のような様相で起きると仮説
この『「臨界現象」のような様相』を、「臨界現象」という語を使わずに表現できないかなぁ、というのが、「片脚を載せてズルッと」(滑りそうで滑らないが滑り始めたら一気に滑りきる)というソレにつながったのでした。まさに「(野球の)盗塁」の感覚ですね、わかります!
※「滑りそうで滑らない」状態にあってなお、その内部での「名状しがたい自由度のようなもの!」が高く、「滑ったとまではいえない」範囲で、活発に動き回っている(静止しているわけではない)というところまで含めて、まさに「盗塁」ですね、わかります!
・[3178]
> もはや「電子」に片脚を載せてズルッとすべりそうになってるでしょ
※「猫のひげ」だけに、ネコの脚のイメージで1つ。わあぃ猫脚のレトロふぁにちゃーッ!
・[3187]
> シミュレーション([3097])に片脚を載せてただちにズルッとすべるようなソレ
※うっかり力加減を間違えるような感じといいましょうか、『あちらのお客さまからでございます。』を気取ろうとして滑らせすぎちゃったよ…がっ☆しゃーん。
・[3282]
> 「納得感」が一種「シュミット的!」にポーンとはねあがる「名状しがたい閾値のようなもの!」
ヒトの言動については「足」、事物や動物については「脚」、それらを区別しないとあらば「あし」と表記しようではありませんか。レッツ片あしを残そう運動が見逃した幻の**を追えッ!! …えっ。
・「DNGR-G48」(648円)
http://blog.digit-parts.com/archives/51861515.html
※レッツDNGR-G48! これでキミもあしたからDNGR-G48だっ(北海道と沖縄を除く)。
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